電脳筆写『 心超臨界 』

悲観論か楽観論かの問いにはこう答える
私の知識は悲観的なものだが私のやる気と希望は楽観的だ
( シュヴァイツァー )

不都合な真実 《 日米安保不公平論——西尾幹二 》

2024-10-31 | 05-真相・背景・経緯
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■『小樽龍宮神社「土方歳三慰霊祭祭文」全文
◆村上春樹著『騎士団長殺し』の〈南京城内民間人の死者数40万人は間違いで「34人」だった〉
■超拡散『移民受入れを推進した安倍晋三総理の妄言』
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日本が攻撃を受けたらアメリカはただちに参戦し、たとえ第三次世界大戦を引き起こすことになるとしても戦わなければならない。それに反し、アメリカが攻撃を受けた場合に日本は戦わなくてもよく、ソニーのテレビで戦争を眺めていればいいのだ、これは不公平だ、と彼(トランプ氏)らしい独特の言い回しで批判を述べた。(中略)日本の青年は安全地帯にいて、アメリカの青年は血を流してもよい、という前提に立ついっさいの議論はもう通らないだろう、と日本側でもすでに十分に承知されている論点である。


◆日米安保不公平論

『日本の希望』
( 西尾幹二、徳間書店 (2021/11/19)、p144 )

日本で初めて開かれたG20大阪会議(G20大阪サミット、2019年6月28日~29日)へ向けて旅立つ直前に、ドナルド・トランプ米大統領は、日米安全保障条約のよく知られた片務性について「不公平だ」と不満を表明した。日本が攻撃を受けたらアメリカはただちに参戦し、たとえ第三次世界大戦を引き起こすことになるとしても戦わなければならない。それに反し、アメリカが攻撃を受けた場合に日本は戦わなくてもよく、ソニーのテレビで戦争を眺めていればいいのだ、これは不公平だ、と彼らしい独特の言い回しで批判を述べた。率直かつストレートな表明で、語られた内容に疑問の余地はない。

ところがこの明白な問い掛けに、正直に応答した例は日本のテレビにも新聞にも現れなかった。わが国は経済的代償を支払っている。国土を軍事基地として提供し、むしろ求められる以上に貢献している。大統領は知らないだけだ。日本政府は正確なデータを彼に説明し、日本が精一杯対応していることを予(あらかじ)め耳に入れておくべきだ、などというような発言でさえ2、3見聞きした程度で、それ以上は口ごもる日本人が多かった。恐らく後ろめたさがあるせいだろう、政府も言論人も言葉を濁している。

その少し前にトランプ大統領は米無人偵察機がイランに撃墜されたことへの報復として、ミサイルを撃ち込む計画を承認したものの、発射直前に中止命令を出したことをツイッターで公表した。イラン側に150名の犠牲者が予想されると軍当局から知らされて、思いとどまったと彼は正直に語った。近づく大統領選挙への思惑が彼のすべての発言の背後にある、などとわけ知り顔に言うメディア関係者は多いが、彼の大胆さと慎重さの兼ね合いは必ずしも単なるパフォーマンスではない。

上の慎重さは、日米安保条約への疑問が人命の犠牲を第一に念頭に置いていたことの表れだとも言えるだろう。不公平との批判は端的にこのことを指している。日本の青年は安全地帯にいて、アメリカの青年は血を流してもよい、という前提に立ついっさいの議論はもう通らないだろう、と日本側でもすでに十分に承知されている論点である。

大統領は安倍晋三首相に再三再四にわたり「安保不公平論」について語っていたと伝えられる。けれども今までも、そして今度も、日本側では誰ひとり提起された問題を本気で取り上げようとはしなかった。3日間くらい風にさらして後は蓋(ふた)をする。今度もそうなりそうである。

安倍首相は憲法改正議論を国会の内外で広く推進しようと口先で言ってはいるが、どうも本気ではなさそうだ、と見破られている。トランプ氏の発言を好機と捉え、国民的規模の改正論議につなげていこう、という気概はまったくみられない。

さて、そうなると次に起こること、あるいは現に起こりつつあることはいったい何か。アメリカ側が日米安保を破棄する考えは今のところない、とトランプ氏はわざわざG20後の記者会見で付言している。しかし現実に破棄するのと同じことが現に起こっているのではないだろうか。

過去1年以上にわたり北朝鮮の核開発が進展する中で、アメリカが太平洋に艦隊を派遣するまでしたお陰で、バラク・オバマ前大統領の時代と違って、私たちは安全へのアメリカの庇護をずっと身近に感じるようになっている。あまつさえ金正恩氏をツイッターで誘い出してG20大阪会議の直後にトランプ氏が単身板門店に乗り込み、会談するという破天荒な行動力――今後どういう結果を生むかはもちろん未知数ではあるが――は、動きのない国際政局をひとりの人間の力で動かすことができるという可能性にかすかな期待を持たせる歴史的記録だったといってもいい。オバマ前大統領は核廃絶などと口先で綺麗ごとを言ったものの、拡大する中国の野望を見て見ぬふりをして妥協を重ね、同盟国を敵視する政策を繰り返した。かくてサウジアラビア、トルコ、日本等を不安がらせ、ドイツ、韓国、フィリピン等を中国側に走らせた。トランプ氏はさしあたりその尻ぬぐいをしなければならなかった。

トランプ氏は一種の革命家であるように思える。「上からの革命家」といってもいい。偽善とグローバリズムに蔽(おお)われたアメリカ国民の価値観をひっくり返そうとしている。しかも最初に立てた原則を変えない比類ない実行家でもある。やると言い出したらあくまでやり通す蛮勇ともいうべき意志の持ち主であることには、われわれも目を見張る。「日米安保不公平論」はそのような彼が大統領に選ばれる前から言い続けていた原則の一つであった。彼が大統領に再選されるかどうかはわからないが、この事実を今われわれはしっかり記憶に留めておく必要があると思う。

板門店での金正恩との会談で、ツイッターの誘いは一種の賭けであった、もしもうまく行かなかったら、自分はヘマを演じた大統領としてメディアから一斉に叩かれただろう。だからこの点で金氏に感謝する、と笑いながら語った。プーチンと習近平も顔負けの大胆不敵さである。しかも正直である。日本のメディアはここにも裏がある、トリックがあるに違いない、などとまたまた不正直な反応を披歴(ひれき)するに相違ない。
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