私の好きなTVのひとつのコーナーに、朝の朝日テレビ系列でのワイドショーでの「そもそも総研」というものがあります。
これは以前は「玉川総研」と言って玉川さんという番組のレポーターの方が世の中の素朴な疑問に答えるために、自ら政治家のもとや有識者のもとを訪ね歩いたりしてひとつの見解を提示する、というものです。
番組の司会者が変わっていちおー模様替えが行われたみたいなので(中身は何もたいして変わっていないと思うけれど・・・)、このコーナーの名前も「玉川総研」から「そもそも総研」になったけれど、このコーナーの切れ味の良さも変わっていません。
この玉川さんて人、やるな~と思っていました。
去る12日の話題は、「いま原発は万が一、ということがあったときこれほどの大事故になってしまうから皆引き出したけど、原発がいろんな発電のなかで最も低コストだ、ということには誰もが異論をとなえてこなかったと思う。しかし、本当にそもそもこれだけ原発という事業を推進しなければならないほど原発って低コストなのか?」ということをやっていました。
え? と思いました。
私も低コストということについてはそう信じていたからです。
思わず引き込まれてまた見てしまいました。
すると長年原子力について研究をしてきたという京都大学の小出教授という方が、
「私もそう思って原子力推進の世界に若くして飛び込んだひとりだった。けれどすぐにそのまやかしに気付いた。私たちの時代は原子力は私たちの未来を支える夢の事業だと言われていた。私はそうでないことがすぐにわかったが、いまだに夢の事業というふりをして推進が続けられている。だいたい、原子力発電に必要なウランという燃料は石油に比べたって、石炭に比べたって、もっともっと世界に微量しかない鉱物なんですよ。それだけからしてもどんどん推進したってどうなるんだ、ってことでしょう。」というようなことをおっしゃいました。
そして玉川レポーターが、
「ではどうして先生は、いまだに原子力研究の第一人者としてその世界におられるんですか?」と尋ねると、
「中に居て、反対の立場からの発言をする人間というものが必要だと思ったからです。」ときっぱりとおっしゃいました。
番組では次に立命館大学の大島教授という方が出てきて、彼が自分で計算した、というコストについて発表されました。
そもそも政府が「原子力はコストが安い」と言っていることに対しての裏づけの資料として使っているのは、電気事業連合が昔作ったモデルケースによる算出に基づいたもの。
そのモデルがどのようにして「モデル」としてふさわしいのか、つまり、本当にどこにも偏っていないスタンダードなものであるかについては明らかにされていません。
されていなくったって、それを作ったのが電気事業連合であることからしてもう紛々と漂ってくるものがありますよね。
そして立命館の大島教授が算出したコストというのは、現実にこの40年間にどれだけの発電に対して、どれだけのお金がかかったかという実質を計算したもの。
こちらのほうが信憑性が高いに決まってんじゃないの。
それによると、はっきりとした金額を覚えていませんが、1キロワットの電気をつくりだすのにかかるコストは、火力が9円ほど、原子力が8円ほど、水力はがくんと低かったように記憶しています。
決して原子力は安くはないのです。
しかも、原子力には多大な税金が投入されていますからそれを考えるとだいたい原子力が10円ほど、火力、水力は変わらずぐらいとなり、原子力が1番コストも高い、ということが露呈しました。
私たちが毎月支払っている電気料金のなかにそちらに回るお金が含まれているんですって。
しかも毎月100円程度も!
全然知らなかったわ。
純粋に自分が使用した電気量を払っているんだとばかり思っていたけれど、そのなかから毎月100円も原子力発電の推進に使われていたなんて!
さらにしかもしかも!
原子力は再処理ということを考えたら、こんなものでは済みません、という話も出ていました。
・・・いったいいくらかけてあんなとてつもない破壊力のあるものを人間は推進してるんだろう。ほかの生き物達が笑うよ。大馬鹿者って。
大島教授いわく、「この金額が表に出れば、国民の合意を得られるのはちょっと微妙だと私は思います。」
そんなこと最初っから知ってたら微妙どころか、誰も原子力なんかに目向けないって。
もういいですって。
玉川レポーターはさらに自民党の河野議員に話を聞きに行きました。
今の民主党のていたらくぶりは誰もがさじを投げかけているけれど、そもそも原発について強力に推進してきたのは自民党ということもまた誰もがわかっていることなので、自民党にもう一度政権をとってほしい、というUターン現象も起きず、ふりたい旗がひらひらと宙をさまよっている状態になっていますが、確かに私も自民党にいったい今のこの状況をどう思っているのか聞きたかった。
すると河野議員はこう言いました。
「コストについての書類は、自民党の時代から通産省や経済産業省を通じて各電力会社に要請しているんですが、肝心なところがいつも黒塗りになってつぶして提出されるんです。こんなところが黒塗りでは何もわからないじゃないか、と言うと彼らはそこは各電力会社の機密事項だから見せられない、って言うんですね。」
玉川レポーターが、「えっ、それって通産省や経済産業省の大臣でもですか?」
河野議員、「いやぁ、大臣はきっと見ることができるはずだと思います。」
玉川レポーターはさらに詰め寄りました。
「だったら、大臣がリーダーシップを発揮して見せろ!って言えば、済むことなんですね。どうですか。今、自民党が原発を推進してきたんだから、そのへんの責任はあると思いませんか?」
すると河野議員は「当時、そのあたりを野党であった民主党も厳しく追及してこなかったわけだから、どちらにだけ責任があるとは思えませんが・・」と前置きしたうえで、しかし、当時にさかのぼって自民党の通産大臣や経済産業大臣を担当した人たちには責任がある、ということは真摯に認めていました。
「各電力会社の機密事項だ。」という企業に対して、大臣が一喝すれば済むところを大臣も、各企業と手を組んだ官僚たちの固いブロックにあってにっちもさっちもいかなかったのか、同じように抱き込まれているのか知りませんが、みんな腰抜けだわ。
ここでも結局、日本を仕切っているのは官僚なのかぁ、という思いを強くしました。
しかし、こういう問題が出るといつも不思議に思うんですが、どうして官僚の人たちってそんなにも利権が大切なの?
自分が自分で思っているよりも権力の座にいるんだな、ということがわかったとき、人間は弱い生き物ですから濡れ手に粟でその権力を行使して自分がおいしい目にあいたい、という気持ちもわからないではありません。
しかし、これは長屋の大家さんが毎月家賃のほかにもまんじゅうを売っている八っつあんのまんじゅうも袖の下で多少もらってました、というレベルの話じゃないんだよ。
日本の国運、衰退がかかっているっていうのにそれでも自分の利権を守るほうが大切って考えるかなぁ。
人間の体にとりついたウイルスが人間の体から栄養をかすめとっているうちに、そのせいで人間そのものが死んでしまったら自分も死ぬしかないでしょうに。
そんなこと幼稚園のこどもでもわかるよ。
それに、官僚だからって、本来の自分の職務を正しくまっとうしたい、っていう正義感にあふれた人だっているはずだと思うんだけどなぁ。
いまだにひとりもそういう人にはお目にかからない、っていうのが不思議でしかたがない。そういう人は目立たずひそかに自分の職務をまっとうして、ひそかに去っていくんだろうか。
そして、今日もっとも腹立たしいのは、たいていこういうことが勇気あるメディアに露出すると、
「だから、国民はもっと利巧になって、何もかもを鵜呑みにして信じるのではなく、自分たちでももっと監視したり、事実を知ろうとする目を怠ってはいけないのだ。」という論調です。
そんな言い方で美しくシャンシャンと幕を下ろしてしまっては何も変わらないじゃないの。
だって私たち国民は、普通のレベルなら、毎日配達される新聞と時折目にするテレビのニュース番組から政府の情報を得ているわけでしょう。
それを鵜呑みにして信じるのではなく、もっと個人でも目を光らせよ、っていうのは具体的にどうしたらいいのかそのノウハウを教えて欲しい。
新聞やニュース番組の隅から隅まで目を通したり、目を光らせていたら、今回のような京大や立命館の教授の話を知ることができましたか?っつーの。
何かマイナーな週刊誌や月刊誌まで手を伸ばしたら、そういう情報は載っているんですか?
違うでしょう。
だったら普段からどうしたらいいのかを誰か教えて頂戴よ。
メディアの玉川レポーターのように個人的に問題を追跡して、大学教授に話を聞きにいく、なんてことはできないんだから。
どうしようもない事態にもまで発展して初めて「だから国民は・・」とか言われたって遅いんだから。
あ~、今日はさんざ愚痴っちゃいました。
まったくオーラソーマっぽくないわ。
だからあんまり政治がらみのネタは書かないようにしよう、と思ってるんですけどねぇ。
今日は皆さん、「原子力発電は、実はコストが高い。」ってことだけ覚えておいてくださいな。
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