日曜日、時間もあったことで、奥様から薦められたいわゆる「オーガニック給食」を推進している、いすみ市や韓国の事例が盛り込まれたDVDの上映会に行ってきました。
いわゆる「オーガニック給食」というのは、未来を担う子供達の食べ物こそオーガニックであるべきで、給食は義務教育機関に出す大事な食なのだから、給食こそオーガニックの素材で提供すべき、という考えで生まれたものです。
私は「オーガニックタウン成田」という名称で、成田がオーガニックタウンに邁進して欲しいな~、と思ったことがあったのですが、いわゆるオーガニック給食については、行政にその素地が無いというか、成田はまあしばらく無理だろうと思っていました。
ところがコロナ禍で一気に農村回帰、オーガニックという事を言う人はちょっと変わり者という時代は過ぎ去り、ヴィーガンも普通にしゃべれる時代となり、国も形上は「緑の食料システム戦略」というのを打ち出すようになりました。
ということで、トップが票集めになる、と思い決断すれば、問題はあるにしろ、オーガニックというのを行政が推進出来る素地が育ってきた、と思い始めております。
さて、話を戻して、上映会の話ですが、まず凄かったのが参加者。全員で30名ぐらいで小規模だったのはさておき、8割はご高齢者。まあ、関心がある人じゃないと来ないよね
DVDの内容は、この制作リーダーのような方が来ていて上映後の発言タイムで、「出来上がってまず専門家に試写してもらったら、『これは有機農業の事を言っているのか、給食の事を言っているのか、何を問題にしているのかわからない』と言われたのですが、専門家はそういった目で見れないんですね。そういったことを網羅してどう繋げるか、という事が大事だと思うのです」とコメントしていたのですが、まさにその通り。
私も「制作者の意図がまとまっていない、要点がわかりにくい内容だな~。色々、網羅して情報をまとめた、という感じだな」と思いました。前半の日本のオーガニック給食導入事例のところはNHKのドキュメンタリーのような感じなのでわかりやすかったのですが、後半の韓国の事例になると、NHKで言えばETV特集のマニアック内容のようなものになっていて、一般の人は良くわからないだろうな~という内容でした。
内容で参考になった点をまとめると
・千葉のいすみ市、長野の松川町がオーガニック素材を一部使い始めたが、供給元は元来の有機農家ではなく、退職後に新規就農した方がメインになっている
→農業で生計を立てている専業農家が、オーガニック給食でどうこうなったとか、給食のためにオーガニックで誰か作りはじめた、というのでは無かった。
・武蔵野市は給食質向上の歴史が長く、供給元を財団法人化していて、行政が責任をもって良い物を作ろうとしている
→数十年前から「子供達には良い物を」という考えで作っていたが、80年代の民間業者外注の流れに逆らえず、保守と新進がやり合う事態になってしまい、その解決策として市が100%責任を持てる外部団体として財団法人として給食を提供する団体を作った。
これにより、給食センターの中で給食行政トップ、献立を作る責任者、管理栄養士、実際に作る人達、作る施設が1つになり、給食について一括で何事もスムーズに動けるようになった。
1つの好事例としては、給食センターを立ち上げる際に建築士の設計では実態に合わないので、現場で作っている方々のの声を取り入れて設計をし直したことで、非常に効率の良い給食が出来るようになった。例えば、有機農産物は泥付きが多く、保健所で泥付きを調理場に持ち込んでは行けないという規制があるのですが、最初から「泥洗い場」という部屋を作ったので、問題無く扱えるようになった。
ちなみにここはカレーやシチューもルーから手作りで、香辛料、玉ネギを細かく刻んで炒めて、、、ということをやっている。調理師のトップも元料理人で「どれだけ手間をかけれるかが勝負だと思っています」と言っている。凄い
・韓国の「フードガバナンス」。給食の現場と行政や農家を繋ぐ仕組み、監視やチェックをする仕組みが凄い
→韓国は給食は「形として出せば良い」というレベルで、食中毒事件が起きた時に立ち上がったお母さんを中心に給食改善運動が起こり、日本で言えば有機農産物、あちらで言えば「新環境農産物」と言うのですが、それを使おうという試みが広がっており、行政によって温度差はあるのですが、8割使っているところもある、とのこと。そういった食材を仕入れ調理し供給する実体の団体と、それをチェック管理する専門家や市民団体と、それら全体を統括する組織が出来ていて、「安全な食をどう子供達に届けていくのか」ということを官民一体で実行するための地域ガバナンス体制が作られている。
まあこんな内容でした。
関心が無い方は、頑張ってここまで読んでも何だか良くわからない、という事になると思いますので、もうちょっと簡単にまとめるとこうなります。
・給食ってそもそもなんであるの?
・子供達の健康を考えれば添加物や農薬が極力使われていないものが良いよね?
・でも給食費ってコストが決まっているし、仕入れ業者もいっぱいあるし、効率も考えないといけないし、行政はそこまで出来ないよね?
・でも、いすみ市ってところで有機米を使った給食が始まったらしいよ。自分が住んでいる学校の給食もオーガニックに出来ないの?
といったところから、市民運動として、オーガニック給食を実現しよう、という人々が現われてきているのです。
ちなみに国が有機農業推進をする地方自治体に補助金を出す「オーガニックヴィレッッジ」という呼びかけがあるそうで、千葉県で名乗りを上げたのがいすみ市と佐倉市の2市だそうです。
今回の上映会に来ていた佐倉市の市会議員の方のお話では900万ぐらいの予算をオーガニックの推進のために使えるそうで、この予算をオーガニック給食の食材仕入れ補填に使っても良いそうです。(有機農産物は仕入れ値が上がるため)
ということで、こういった上映会を観ての私の感想ですが、「有機農業推進」と「給食の問題」を一緒くたに扱っている内容だったのですが、切り分けて考えた方が良いのか、一緒にまとめて考えた方が良いのかはケースバイケースだな~と思いました。いすみ市のように小さい行政であれば「有機米が出来たんだけど、これを東京の人に売るんじゃなくて地域の子供達に食べてもらいたい」と言ったような流れで一緒くたに出来たし、例えば成田のように農業が盛んな大きな行政では有機農業推進も給食も全く違う次元の問題が色々絡みあってしまいますよね。
例えば、給食というのはそもそも何なのか?というところから考えると、「義務教育期間中の給食は無償化にするべきだ」という方々もいますし、「シダックスのような経営効率主義の民間委託でよいのか」という方々もいますし、色々あると思うのですが、個人的に最大の問題と思うのは「給食の時間が短い事」だと思うのです。
オーガニックうんぬんと違う次元の問題で、私が知っている限り、小中学校で給食の時間は計画で20分、実質10分ちょっと。この短い時間で給食を食べさせているのは、言葉を悪くして言えば「栄養計算したエサを短時間で無理矢理詰め込ませる」ということですよね。
10分ちょっとで食べきれるのは食欲ある子、早食いが出来る子で、そうじゃない子は全部食べられないし、消化も出来ないし、小学校低学年なんて無理に食べて吐く子も。栄養計算して必要な栄養素を摂取させるために作った献立、といいますが、そういった話の前の問題です。
また、「食育」と言う言葉を教育現場でも使っていますが、イタリアなどは1時間かけて給食をとるし、必ず今日の献立の由来、食材の説明などを先生がする地域もあるそうです。
そこまでしなくても良いけど、栄養摂取だけ考えても、本来は早食いではなく良く噛んで食を楽しむ、という事を習慣付けてもらうためにも、給食に1コマ分使うべきでしょう、と個人的には思います。
準備、後片付けの時間をきちんと考え、せめて食べる実質の時間は最低でも20分はとった上で、食材の話、生産現場の話、世界の食糧供給システムの話、経済の話、食と命の話、作っている人達の話、などいくらでも食事の時間に学べる時間的余裕があればいいのにな~と思います。