今週の朝採り野菜ボックスに手紙です
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10月に入りましたが先週末の台風一過以降、まだまだ暑い日が続いています。畑では葉物が予定より早く生育してしまって、「こりゃだぶついちゃうな」と困っている農家さんがいます。悪天候でも良すぎる天候でも、全くもって自然相手の仕事はなかなか難しいですよね。
野菜というのは気温で生育スピードが決まります。暑い季節に向かっていく春は1日、2日の種まきの時期のずれは何とも無いのですが、今の時期は1日の種まきのずれが1週間の生育遅れに繋がる、と言われている時期なので、葉物は3日ごとに種まきをします。本来はどんどん気温が下がっていく時期なので、生育スピードがどんどん鈍っていくからなんです。
葉物は早い人は8月下旬から蒔くのですが、大体は9月に入って気温が少し落ち着いてから、つまり、気温がこれから日に日に下がっていく時期に、3日毎の「ずらし蒔き」をするのです。ところがここ最近の気温ですと、2~3日のずらし蒔きがあまり効果が無く「収穫日が1週間ではなく2~3日しかずれない」という事が起きてしまうのです。
「沢山穫れるなら良いんじゃないの?」と思われるかもしれませんが、豊作だと市場の相場が下がり、消費者は嬉しくても農家はやっていけないのです。鋭い人は、「それは一般の農家の話だけで、契約栽培をしている有機農業をやっている農家は販路が決まっているか大丈夫じゃないの?」と思うかもしれません。
しかし、世の中、まだまだ有機農業に関心がある人は少なく安い野菜を買う人が多いのです。そうすると、普段は「たまには無農薬とか有機野菜も良いかもね」と買う人が普通の野菜に流れます。また、中には「どうしようもないから安くするから買って欲しい」というところも出てきてしまうのです。結果、契約栽培をしている有機農業の野菜でも廃棄しなくてはならなくなるのです。
また、流行のSDG'sの影響か、「勿体ないから廃棄野菜を売ってくれないですか?」という人が現われるのですが、前提として「正規品より安く」という条件をつけるのです。そういった人に対応する余裕は現場にはないので、廃棄する方が手っ取り早いのです。
結局、みみずの会やおかげさま農場のように「年を通して一定の値段にすることで、農家も買う側の消費者も同じ生活者として安定する」という思想で、相場に関係無く常に同じ値段で年を通して「提携関係を結ぶ」、という、そもそもの有機農業運動の原点に沿うことが、天候不順や損得を超えた古くて新しい関係なんでしょうね。