駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

閏二月の朝に逝く

2016年02月24日 | 診療

                    

 臨床医の仕事でちょっと辛いのは、何時呼ばれるか分からないことだろう。もう何十年もやっているから習い性に成り、そういう仕事と心得ているが、年に何回か真夜中に突然起こされるのが段々堪えるようになってきた。

 自分の甘い方に偏る見通しは何時までも修正できず、週末だろうと予想していたHさんが未明に亡くなった。心配そうな家族の顔を見ると願望が入るせいか余命を長めに予想して仕舞う。教授でありながら超一流の臨床家でもあった恩師は、戦後逗留していた宿で往診を頼まれ、寝込んでいる老婆を後二日と診断し、その通りに亡くなったので村の人が驚き大した名医だと評判になったと聞いている。自分はもう何百枚の死亡診断書を書いてきたが、未だに死期を当てるのは難しい。

 看取る人の多くは天命を全うされた高齢の方が多く、病死と言っても自然死に近く、心の負担は少ない。今では六十代七十代は未だ若い感じがして、そういう患者さんの多くは癌死のため、様々な苦悶もあり、これで良かったのだろうかと心残りに感じることがある。

 それが人間なのかも知れないが全く同じようにしても感謝される家族、そうでもない家族と様々で、割り切るようにしているが、心に波風の立つこともある。月並みに大変なお仕事ですねえと表現できるものではない。多少辛くとも医者は収入で恵まれている。訪問看護師は私が帰った後も黙々と死後の処置をしてくれる。何かが伝えられ、何かが見落とされている。

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つつがない医院

2016年02月23日 | 小考

                  

 校庭に赤い実のなる木があり、鳥が食べに来ている。私が写真を撮ろうと近づくと逃げて行ってしまった。赤い実を食べていても赤くはなく、小鳥というよりは中鳥で、実を食い過ぎたか重そうに飛んでいった。

 時々先生はやさしいとお年寄りの患者に言われる。ちょっと愚痴を聞いて上げただけ、冗談は顔だけにして欲しい。

 三分診療までは行かなくても、冬期の午前中は混むので一人五分では時間内に診きれず、四分診療でやっている。色々訴えるので、平均より僅かに二三分多い時間を割いたからといって、なつかないで欲しい。

 当院には筒がない。頭が痛いといえば筒に入れ、腹が痛いと訴えれば筒に入れて、異常ないと返すことができない。あっちに行って異常がない、そっちに行って異常ない。息子が冷たい、嫁と上手くゆかなくて、娘の所に越してきたんだけど、頭が重くてよく眠れない、胸が重苦しくて飯がまづい。異常がないと言いながら呉れた薬が合わない、田舎の医者の薬の方がよかった。先生は田舎の医者に似て優しいからいい薬を出してくれそう。そうかなあ、当院には筒がないので、取り敢えず、話を聞いているだけですよ。

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MLBが待ち遠しい季節になった

2016年02月22日 | スポーツ

            

 マー君まいさん、良かった。今までにない感動、自分の時代にはそうした習慣がなかったので私は味わうことが出来なかった。子供の名前は公表しないとのこと、それがいい。

 家族や家庭のことの報道は慶事でも最小限でいい。不幸や不祥事はそっとしておくのが、礼儀だろう。

 野茂から始まりマー君まで、上手くゆかなかった選手も多いけれど、長く活躍して名を残した選手はアメリカという国に触発され変化成長しているように思う。野球だけではない何かが彼等に影響を与えているような気がする。短い文章でそれが何かを表現することは難しいし、理解できているかにも自信はないが、MLBというよりもアメリカの文化に鍵がありそうだ。まあ、日本にいては分からないことも多そうだが。

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ドナルドトランプ旋風の中身

2016年02月21日 | 政治経済

             

 アメリカ大統領候補指名選挙で共和党のドナルドトランプ氏が善戦というか旋風を巻き起こしている。まさかここまで頑張ると予想していなかった?評論家も、今ではさまざまな理由を挙げてこの躍進を予想していたかのように説明している。そしてマスコミは日本にこんな人は居ないと感心したように書いている。

 そうかなと考える。トランプ氏は言葉遊びと言っては言い過ぎかも知れないが、言葉を操ることでアメリカ大衆の不満を吸収し支持を集めている。そこそこ頑張っているし自分は白人なので優遇されて良いはずなのに、どうも恵まれないと感じている人達に、悪いのは彼奴等だ、けしからんのは奴等だ。そんな連中は閉め出すに限る。アメリカを守ろうとしない奴等に金を使うことはない、面倒見ることなど止めてしまえ・・・。なるほど、そうだと聞こえる言葉を繰り出してくる。それは不満のはけ口を求める人達の心を掴むが、詰まるところ排除と悪口に過ぎず、建設的ではなく成算も少ないと見られる。

 ただ、トランプ氏は言葉遣いの才能に恵まれているので、どのような批判も切り返しはぐらかし、「儂は正しい」路線を外れることはないだろう。勿論、言葉遣いが優れているだけでなく、計算策略にも長けているので、権力に近づけば実際には言っていることとは違う八方睨みで現実味を帯びた判断をし行動して行くだろう。マスコミは日本にこうした人は居ないなどと、とろいことを書いているが、同根同才の政治家は何人も居ると申し上げておきたい。

 ことほどさように、政治というかたぶん多くの仕事も、策略が極めて大きな意味を持つことに今頃気が付いている。政治家が本心で何を狙っているかどのような人物かを、時々立ち止まって考えないと策略で動かされてしまう。民主主義を謳いながら、民主主義の弱点を利用するのが、当然かも知れないが有能な政治家のようだ。

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世の中色々、患者も色々

2016年02月20日 | 世の中

       

  問題発言かも知れないが、地方色にも色々あると実感する。今でも医局に入った医師は地方病院に出張させられる。まあ、させられるという表現が適当かどうか分からないが、とにかく自分の望まない病院にも行かされる。そうして、あちこち回り、最終的に当地に辿りついたというか定着した医師に聞かされる台詞に、ここは良いところですねというのがある。食べものが旨いのか美人が多い?のか、どうしてですかと聞くと、怒鳴る患者が居ないと言われる。確かに皆無ではないが怒鳴る患者さんというのは一年に一人いるかどうか、まあ二年に一人くらいのものだろう。

 それが例えば大阪東南当たりだと、殆ど毎日のように怒鳴る患者さんが居て、うんざりするそうだ。まあ、それも文化かも知れないが、確かに嫌だろうなと思う。

 先日、近くの道路工事現場に大阪から仕事に来たおっさんが風邪っぽいとやってきた。診察した時点では37Cの微熱でちょっと咽頭に発赤を認めるが、関節痛や倦怠感も乏しく、今インフルエンザの検査しても陽性にはでないので、咽頭炎と思いますと軽めの鎮痛解熱剤を渡して返した。 

 ところが翌日受付で「何やこの薬、何にも効かへんやないか、夜熱が出て眠れえへんかった」と大声がする。看護師が受け付けさんが大変ですと呼びに来た。しょうがないので、私が対応に出て、みっともないことに怒鳴りあいになった。なんとか納まり検査をしたところ、インフルエンザであった。説明をしてタミフルを出してお引き取り願った。他の患者さんに耳元で「先生も大変ですね」とエールを戴いた。職員からは、大阪の人に悪いが、もう大阪弁は聞きたくないという感想が出た。ちなみに地元の患者さんであれば、ごめんなさい、最初は区別が難しいものですからで納得して戴ける。 

 これは極端な例かも知れないし、そうした地方では騒ぎ立てるほどのことではないかも知れないが、慣れていない私は楽しくない思いをした。

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