駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

踊り場のない階段

2012年11月23日 | 診療

     

 忙しくなると午前中の診療時間中に空き時間がなくなる。冬期以外は二、三回五、六分の隙間が出来、ちょっとインターネットを覗いたり、コーヒーを飲んでチョコレートを一囓りしながらスケジュール表や地図を眺めることができる。本当に集中していられる時間はまあ一時間が限度だろう。集中の度合いにもよろうが三十分に一回くらい数分頭と身体を解せれば理想的と思う。

 年によって多少違うが、十一月後半から三月始めくらいまでは午前中五十人ほどの患者さんが来られる。たかだか十人多いだけだが、二割増しで余裕がなくなってしまう。渋滞学というのがあるそうだが、車間を僅かに狭くしても順調に流れれば渋滞は起きないらしい。しかしながら不必要?なブレーキ操作によって忽ち渋滞が発生するという。患者さんというのは車以上に個性があり、五十人も居られれば必ず二三人時間を取る症例が混じっている。そこで生じた高々7,8分の遅れを取り戻すのは容易ではない。冗談だと思われるかも知れないが、フルネームで呼ぶのさえもどかしいくらいで、つい名前(苗字)だけで次の患者さんを呼び入れることになる。

 こうした診察がこれから三ヶ月続くかと思うと憂鬱になる。医学部を卒業して医者になって四十年、診察や勉強が嫌だと思ったことはないが、ここにきて忙しい診察が堪えるようになった。

 踊り場のない階段を四階五階まで登れと言われるのは、前期高齢者にはしんどい。


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