駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

目まいの訴えの背後に

2018年07月30日 | 診療

    

 台風一過、夏空が戻り蝉が喧しく鳴いている。とは言ってもまだ九州西部に居座り雨を降らせているようだ。一体どういう台風なのだろう。通常と逆コースを辿っているようで、予報官に日本通過の軌跡だけを見せればよくある秋台風ですねと言われそうだ。何だか六十数年の記憶と経験が役に立たない世の中になってしまった。

 めまいには天井が回って歩けない本当のめまいと、何だかふらつくふわふわするめまい感の二種類があると習った。今の教科書にもそう書いてあると思う。めまいは耳鼻科や神経内科の領域の訴えとされているが、実は市井の内科日常臨床では非常に多い訴えだ。そのほとんどがめまい感で、なかなかすっきりした診断に辿り着けない。大学病院や総合病院に精査を依頼すると型通りの検査をして心配なものではありませんとか自律神経失調でしょうと返されてくる。確かに命を取られたり寝たきりになるようなことはないのだが、心配ないと言われてもめまい感は消失しない。心配ないそうですよと言いながら、今日はどうですかと経過を診るうちに軽減することが多い。しかしながら何かの拍子にぶり返すこともしばしばで、診療と言うよりはお守りをするような感覚で診てゆくことになる。

 何を大袈裟なあるいは考え過ぎと言われても、こうしためまい感を訴える人達が感じている感覚にはどこかロカンタンの感じた不快感不安感に似ているものがあるのではと診ている。若い時に途中まで読んで投げ出したサルトルの「嘔吐」を理解できているわけではないが、生きている不安定さ不安感がこうしためまい感に関係しているのではと思っている。

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