将棋の羽生名人は方向感覚が余り良くないらしい。天才棋士なのに妙なことを言うなあと思っていた。ところが先日NHKの囲碁を見ていたら碁の古谷裕八段もNHKに来るのに迷って焦ったなどと云っていたので、方向感覚は碁将棋の才能に関係ないんだと改めて知った。何となく、駒や石の動きを考えるからプロ棋士は抜群の方向感覚の持ち主だろうというのは単なる思い込みに過ぎなかった。
しかし、よく考えてみれば将棋盤や碁盤の上での東西南北が読みに関係あるはずはなく、流石の加藤先生でも将棋盤の東西方向を問題にされるとは聞かない。方向感覚というのは東西南北の感覚で、将棋や碁の局面を読むのには特別必要はないわけだ。当たり前と言えば当たり前で、むしろ駒や石の配置に敏感で、瞬時にそれを捉え、動きを読むのがプロ棋士なのだろう。
そういえば方向感覚の良い私は大して碁将棋が強いわけではなく、もし方向感覚と碁将棋の才能に相関があればたとえ晩学でも高段に成れたはずのわけだ。
方向感覚は持って生まれた感覚で運動神経にも優れた次兄は六十年代にアメリカ四十州を道に迷うこともなくワーゲンで走り回ってきた。 しかし、カーナビのできた今方向感覚の活躍の場は減り、知らない街を歩く時、元に戻ってくるのに役立つぐらいで、女房にナビ代わりに使われている。