駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

教訓を生かす

2019年12月02日 | 世の中

                   


 今日は十二月二日、未だ三十日もあるのに今年も終わるという感じがしてしまう。師も走る程忙しいということらしいが、せいては事をし損じる。遠い昔医師に成り立ての頃、先輩に救急で呼ばれても走るなと言われた。走ると鼓動も早まり自然焦る気持ちが生まれる。落ち着いて診療に当たるために走ってはならないと言うわけだ。早速実行し、走りそうになったのでいかんと歩き始めたら、同級生のNにお前なんか走っても大丈夫、大勢に影響ないとからかわれてしまったのを憶えている。

 でもまあ走って現場について息が切れていては確かに良い判断は出来ない。長く様々な判断を迫られる仕事をしていて、良い判断には経験知識に加え一分でも良いから落ち着いて考えることが大切と学んだ。焦ると思考停止視野狭窄に陥り、間違えやすい。未だ未だ完璧には遠いが、間違いは減った。今では訴えられるような失敗はしなくなっているが、四十年前は今なら訴えられるような失敗もいくつかした。まあその頃は問題にならなかった。今の若い先生はそうした失敗が許されなくなっているので、ある意味成長の機会が減った訳だが、その分失敗を避けるための教育がきちんとされるようになった。昔は患者を診る臨床が研究に比べてやや疎かにされていた。恩師はその時代でも臨床を重んじる人だった。なーに研究研究と言って二十年残る仕事なんてほんの一握り九割は屑だよとおっしゃっていた。内科学会をそれを教訓に実際に役立つ臨床研究情報を増やした。卒後何年経っても毎年臨床教育研修がある。

 気のせいではないと思うが医学界の不祥事は他の業界に比べれば明らかに減っている。失敗から学ばなければ許されない仕事だからだろうと思う。

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