私が今回の東日本大震災で被災された宮城県の多くの町を、ボケ予防の講演会や保健師さんたちの勉強会で訪れたことがあることは前の「岩手県田野畑村」にも書きましたね。
エイジングライフ研究所二段階方式の認知症予防活動のツールを導入し継続している市町村は、合併後でも17市町村あります。
月下美人(一夜花です)
もう15年くらい前の話です。当時宮城県知事をなさっていた浅野さんと面識がありました。浅野さんが「ボケ予防」に理解を示してくださって塩釜保健所、気仙沼保健所などが、市町村のボケ予防活動のバックアップをしてくれたのです。
もう一つは、国保中央会主催の「保健婦等老人性痴呆予防活動指導者養成事業」の委託を受けて平成10年から3年間実施しましたが、そこからスタートの町もあります。
一緒に活動したのはずいぶん前のことですし、それ以前に今回の震災の被害状況もはっきりしない中での電話でしたから、ほんとにドキドキしながら掛けたのです。
嬉しいことに電話の向こうの保健師さんの声は
「懐かしい。電話をありがとうございます」といった気持ちが伝わってくるものでした。
朝の月下美人
私の電話の目的は、遅ればせですが何よりお見舞い、そしてもう一つが
「3.11の時、正常だった高齢者をボケさせないで」ということでした。
生活が大きく変わって、ナイナイ尽くしの状態が半年続くと、脳機能検査の結果にもはっきりとその低下が見えるようになってきます。
その時になっても、まだ大丈夫。
本人が納得できる能力はまだ十分に残っていますから、よくよく認知症になるメカニズムを説明して生活改善指導をしてあげれば回復は可能ですから。
保健師さんたちが忙しいのは承知の上ですが、一日でも早く高齢者の方々に手を打っていただきたいと思ったのです。震災後もう5カ月ですから、どうしても電話をしなくてはという思いで受話器をとることができました。
つぼみは上向き
役場が流されたところもありました。
海に面してないために、大きな被害をこうむることがなかった町もありました。そのようなところも、被災された方々を受け入れて訪問をしていると異口同音に言われました。
「仮設住宅に集会所があるけど、人の顔もわからなければ、近所の地理もわからない状態で、コミュニティができあがるかどうか…と悩んでいます」という声もありました。
ところが、沿岸部を抱えている七ヶ浜や塩釜や名取の保健師さんたちから、うれしい話を聞きました。
「ボケ予防教室をやっていてほんとによかったと思いました」
何と、ボケ予防教室をもう10年以上も続けてくれていたというのです。
ボケ予防教室が、一般的な介護予防教室や転倒予防をテーマに据えたものになっているところもありました。このようにそれぞれの町で違いもあるでしょうし、一つの町でも
「一応全地域に教室ができました」
「教室によって温度差はありますが、自主活動が原則で、保健師は手伝いや脳機能検査にいくだけのところもあるのです」
「活動が活発なところは、必ず活動を引っ張るリーダーがいます」
こういう町の震災後の動きは、そうです田野畑村と同じなのです。
大体3カ月目ごろになると、高齢者の方から
「こうして引っこんでるとボケてしまう」
「集まるだけでもいい」
「みんなの顔を見て話すだけでもいいから」と活動が始まったのだそうです。
「会長さんが熱心なところほど早く動き始めました」
「仮設住宅だったのですが、ボランティアさんたちの協力体制も早くに整いました」
「元々、活動が活発なところほど動き始めが早かったです」
10年以上も前にまいた種が、あの宮城県で実をつけています。
予防活動は、どうしてもあとまわしにされる活動です。多忙な保健師さんたちが、「ボケ予防活動」を続けてきてくださったことに、深い感銘を覚えました。
もし先行するこの活動がなかったら、保健師さんも驚くような住民パワーが発現されたでしょうか?
ほんとうにありがとうございました。身体に気をつけて、大変な中にも幸せや楽しさを見つけて頂きたいと思います。