脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

かくしゃくヒント18ー楽しみの見つけ方

2013年01月16日 | かくしゃくヒント

古くからの友人のお宅にお邪魔しました。
今年93歳になられるお母さんと同居です。彼女は定年まで勤め上げて、退職後今も嘱託でお勤めを続けています。お母さんが基本的に主婦をやってくださったのですね。

U川H代さん92歳
P1000008あまりにもかくしゃくとしていらっしゃるので、いろいろお話を伺いました。そしてブログ掲載の許可もいただきました。

かくしゃくな方には、脳をかくしゃくと維持するだけの生活のやり方が必ずあります。
それを教えていただこうと思ったのは、前夜遅く友人のうちに着いた時からでした。

もう休まれていましたが、玄関もホールも、もちろん居間もすべてがすっきりときちんと掃除が行き届いています。
暖かく整えられたお部屋には、新聞がきちんとたたまれて置いてありました。そして家のところどころにかわいい置物がさりげなく飾られて・・・
すぐに友人に聞きました。
「お掃除はどなたが?」
「母よ」あまりにも当然のように答えてくれました。
「かわいいものたちは?」
「母の好み。自分で買いに行くもの、銀座まで。欲しいものははっきりしてるの」
「これはすごい!お元気なのねえ」と歓声をあげてしまいました。
今年のお気に入りカレンダー                    東北の秘湯青根温泉から持ち帰った明かり
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翌朝、伺ったお話の楽しかったこと。
「私、生まれが銀座なのですよ。だから今でも銀座が好きなんです。ひいきの店もあって季節の飾りものを買いに行くのも楽しみで。もちろん一人でも行きますとも」

「イメージぴったり」とせがまれて友人が持ち帰った焼き物(結構大変だったそうですが)
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火災で生家が焼けたので荻窪に転居したこと(これは関東大震災!)
2.26事件の日に天窓から雪が落ちてきたこと
長唄を習い始めたら筋がよくてどんどん上達したこと
名取だったので70過ぎまで、頼まれて舞台に出ていたこと

などなどを、実に手際よく短い時間で説明してくださいました。

P1000010「私のところは現地集合なんですよ」
都内のどこかへ出かけるときには、都営バスや都営地下鉄などシルバーパスを使って、時間はかかっても”無料”で行くのだそうです。
友人は、普通のルートで行って現地集合。

こんなエピソードも。
先日友人の職場に大きな熊手が飾られたそうです。
携帯で写した写真を見せてあげたら
「現物が見たい。現物の前で写真を撮りたい」ということになりました。

友人のお昼休みに合わせた時間に「地下鉄の駅を出たところに、係員用の小さな詰所があるのでそこで待ち合わせ」ということにしたそうです。
その時の顛末が面白いのです。
あまりにも小さな建物だったためにスイスイと通り過ぎて、階段も上がって・・・
「アレッ詰所がない。
これはいくら何でも駅を出てから遠すぎる。迷子になった」

あわてず騒がず、まず公衆電話を見つけ出しました。
ところが、カード式!通りかかった男性に
「お金でかけられる公衆電話はどこにあるでしょうか?」と尋ねます。
「いいですよ。このカードを使ってください」
そこで友人の職場に電話します。友人はすでに約束場所に出かけていて留守でした。
「と、言うことはもう迎えに来てくれている。じゃあ、今度は携帯だ」

「携帯のやり取りで『絶対そこにいてね』と言われてそこにいたら、見つけてくれて、熊手の前で写真を撮って、一人で帰りました」

最近のお気に入り あっぱれウサギ
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このウサギは特別待遇で食卓にいました。
向こうに見える本は友人が図書館から借りてきたものですが、
「気に入った本だと一日で読んでしまいます。娘とその本の話をするのも楽しみ」

どうですか?楽しいでしょ?イキイキと生活が営まれていることがわかりますね。前頭葉全開です。花丸!

それではいよいよ肝心要の点です。
「なぜ、このような脳機能レベルが保てているか」
「どのような生活のやり方が、これほどの脳機能を維持させているのか」

デイケアにしろ、何か社会とつながりのある状況が必ずあると思ったのですが、まったくない。
昼間はほとんど一人・・・普通では考えられません・・・
いろいろ伺って、友人の意見も聞き、だいたいこれだろうということになりました。

P1000015筆頭は、主婦業をプライドを持ってこなしている。
任されている実感と、きちんとこなそうというプライド。家族のために役立っている自信はきっとおありでしょう。

次が興味深い。
テレビや、雑誌など、高く高くアンテナを上げて
「行きたいところ。やってみたいこと」をメモしては友人と一緒に行く。
多いのは温泉のようですが、行き方が半端じゃないのです。

例えば「箱根17湯」と聞くと全部行きたい。(もちろん全部廻ったそうです)
東北の秘湯といわれるところにも行きたい。(気に入った行燈があれば、友人が持ち帰ることになります)
イルミネーションも新しい情報を聞くと「そこに行きたい」(今年の初顔はシオサイト)

友人が定年退職したことで、かなり自由に母娘旅行ができるようになった。
情報収集さえすれば、行きたい旅につながるという、目的がはっきりしたテレビの見方は「居眠りしながら水戸黄門」の対極にあると思います。その時前頭葉はフル回転。

ちなみに、次の目的地を尋ねてみたら
「御殿場高原時之栖」
「ああ、あそこのイルミネーションもきれいですね」と応じたら
「イルミネーションはもう行きました。今行きたいのは茶目湯殿。18歳未満はお断り、富士山独り占め、源泉なんですよ」

あっぱれなのは、ウサギだけではありません!

 


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