「突然、徘徊はしません」と昨日のブログで強調しました。「所の見当識」に関しても、当然ごく軽い症状から徐々に進行していくのです。
天城のわさび畑(4月7日)
テレビでは不思議なことを言っていました
1.「ほんとに突然徘徊を始めたんです」と家族が言う。
あり得るかどうか、今日のブログを読んで判断してください。
2.徘徊を始める前のサインとして食欲不振・感情が不安定。
このサインでは「徘徊」にだけつなげるのは難しいと思うのですが。
次に挙げられたサインは、「同じ言葉を繰り返す」と「同じものを大量に買う」でした。
この症状は、実は小ボケで始まる症状ですから前駆症状ではありますが、そこから「徘徊」に到達するには、数年以上かかります。
さあ、正常老化ではないことが起きた時(認知症が始まった時)、「所の見当識」に関してどんなことが起きるのか話していきましょう。
慣れているところに行くときに失敗がある。
例えば、隣町に嫁に行った娘のところに行くのに、
午前中に着くはずなのに昼過ぎになってしまう。
理由を尋ねると
「ちょっとお土産を買うのに戸惑って」のような言い訳をするけれども、特別目新しい品物を買った様子はないのです。
電車やバスに乗るときに
「出発しそうだったから、行き先をよく確かめずに飛び乗ったら、行先が違っていた」ということもよく耳にします。
それならなぜ終点まで気づかずに乗っているのでしょうか?
すぐに降りて乗り換えたら、こんなに時間はかからなかったでしょうに・・・
もちろん、例えば便数の少ない電車やバスに乗り遅れたりするような理由もあるでしょうが、小ボケになっている人の場合だと、びっくりするほど同じような失敗を繰り返すのです。
普通だと、失敗したら「今度こそ気をつけよう」と失敗を繰り返さないように気を付けるものですね。(これはまさに前頭葉の働きです)
次のステップとしては、帰宅するときにも同じような失敗を起こすようになります。
我が家ですから文字通り慣れたところですよね。
この時も説明というか言い訳はスムーズで、それを聞いているとついうなずいてしまうほどです。
このような失敗を繰り返すうちにだんだん外出そのものが減っていきます。
さらに次の段階になると、失敗した時に、自力でリカバリーできなくなります。
上に挙げた例は、間違えながらも、どうにか目的は達することができますが、次の段階ではパニックになってしまって大騒ぎを引き起こします。
正常レベルであっても、間違えたり、迷子になったらパニックになってしまいますが、そこで前頭葉の出番。
もう一度初めからやり直したり、人に尋ねたり、とにかく落ち着こうとしますね。
認知症が中ボケに入ったこの段階になると(まだまだ、正常といわれていることすらあります)本格的に外出してトラブルことはほとんどありません。
一つは本人は出たがらなくなることと、家族も心配で独りで外出させないようにするからです。家族のことばによると「幼稚園の子をひとりで電車やバスに乗せないのとおんなじです」
だからこのトラブルの舞台は、近所のスーパーのようなところになります。
あるいは、親戚の家やその近所の本来ならよく知っているはずの場所で起こすのです。
自分の家を正確に伝えられない。
こういう出来事と並行かちょっと先行して、自宅の説明ができなくなります。
誰かに車で自宅まで送ってもらうときに、的確に説明できなくなります。普通の大人は
「あの木のところまではまっすぐですが、次の信号を左折。4軒目の赤い屋根の家」のように言えるものなのです。
次の段階に入ると、家の近所で迷子になって通りがかった人から連れてきてもらうようなことも起こします。
「東府や」足湯
いよいよ大ボケレベルです。
夕方になるとそわそわと落ち着かなくなったり、逆にボーと外を眺め続けていたりします。
人によっては、荷物を作ったり(それも、下着やなぜこのようなものが必要なのかよくわからないようなボロ布)ほどいたりすることもあります。
これはおばあさんに起きることです。
どうもここは自分の居場所ではないと感じているらしく、落ち着いていられません。例えば実家などイメージしているのでしょう。
その時には、本人に年齢を尋ねると必ず若くなっていて、20歳などと結婚前の年齢をこたえることもあります。
家人が仕事から帰ると、「(実家に)帰らせていただきます」と言い張るために、「まず車に乗せて近所を一回りドライブして落ち着かせないと家事ができない」と訴えるお嫁さんもいました。
二人分。でもちょっと食べ過ぎ!
こういう「事件」が何度も繰り返されて、その挙句、帰ってこない!どこに行ったのかわからない!という「徘徊」デビューの日を迎えることになります。
確かに、初めて「徘徊」を始める日はあります。
でもその前に、普通に元気にイキイキとした生活を送っていた人が、突然「徘徊」することはありません。
警察に届けて、田舎なら消防団に依頼して山狩り・・・
それを繰り返すと、警察からは注意を受ける(叱られる)し、ご近所にも迷惑をかけるし・・・
「寝たきりになって、楽になりました」という言葉もよく聞きますね。
どうしてここまで待ってから、施策を考えるのでしょうか?
それぞれの段階で、なすべきことがありますし、早いほど効率もいい。
何よりも脳の老化を早めないということを納得してもらうことが、一番の予防策です。
ふろく
正常から認知症への移り変わりとして、認知症になりかけていくときに具体的なみられる例をテーマ別に話してきました。結構面白いですよ。興味がある人はチェックしてみてください。
「ちっとも顔を見せないんだから」ー人の見当識
http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/d/20080429
「今日もコロッケ明日もコロッケ」ー料理作り
http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/d/20080517
「部屋で鶏でも飼わなくっちゃ」ー食作法
http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/d/20080522
「スピードが遅すぎて怖いんです」ー車の運転
http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/d/20080606
「おしゃれだった人が」ー着衣
http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/d/20080610
「時の見当識から見る認知症の重症度」ー時の見当識http://blog.goo.ne.jp/ageinglife/d/20080619