脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

迷子の話

2013年01月04日 | 正常から認知症への移り変わり

穏やかな天気に誘われて散歩をしていました。
よそのお宅の玄関飾りを見ながら歩くのもお正月ならではですね。

P1000017向こうから、毛糸の帽子をかぶった年配の男性の方が歩いてきました。
何となく、「何かお尋ねになりそう」と思いながら私も歩を進めますし、あちらも近づいてこられますから、結局惹かれあうように近づいていきました。

声が届くところまでになりましたら、案の定
「駅へはどう行ったらいいのでしょうか?」

私「この道をまっすぐ行ってから、左に曲がって・・・」と説明を始めます。

相手「あーよかった。助かりました。別荘に来たのですがちょっと散歩と思って出掛けたのです。久しぶりに来たら、道も家も変わってしまっていて。誰かに聞こうにも誰も歩いてないんですよね」と笑顔が返ってきます。

私「ここからだと上り坂ばかりですから、20分くらいかかると思いますよ・・・」

相手「駅さえわかれば大丈夫ですから」

私「お宅は駅からは近いのですか?」などというやり取りをしながら、私は説明するよりも連れて行ってあげようと決めていました。
お歳も80歳は越えているようでしたし、歩き方がそんなにしっかりしているというふうでもありませんでした。それにもう30分以上は歩いているはずです。

車の中では、まずだいたいの家の場所を説明された後、表情豊かにずーとお話が続いています。
「イヤー、参りました。財布も何もないし、とにかく人もいないし。家内が携帯を持っていくように言ったのですが、『遠くに行くわけじゃないし』ということを聞かなかったらこの始末。ほんとに地獄で仏。神様です。」もちろんスムーズに一件落着!

P1000036去年の事件を思い出しました。遊びに来た友人を送って玄関を出ると、80歳前くらいの女の方とちょうど鉢合わせ。身なりは普通でこれといっておかしいところはありません。

「なんだか道がわからなくなったのですが・・・駅にはどう行けばいいのでしょうか?駅からだとタクシーに乗れば帰れます」言葉づかいもちっとも変ではありません。

でも、私のアンテナがぴんと立ちました。
1.困ってる雰囲気が伝わらない。
2.これで助かったという安心感も感じられない。
3.迷子になったという恥じらいがない。

全体的に淡々としているのです。
「これは小ボケだ」

友人の帰る道中に、駅がありますから、当然のこととして送ってあげることになりました。
その時言っておけばよかったのです。
「必ずタクシー会社に落としてあげてタクシーで帰らせること」

かれこれ30分もたったころでしょうか。
友人から電話「家がわからなくて、まだウロウロしているの」
親切な友人ですから、駅まで行った後そのまま
「お送りしましょうか?」と申し出てしまったのです。
駅からなら自分のうち(別荘)への行き方が指示できると思ったのだそうです。

P1000014私「駅に戻ってね。タクシーで帰ってもらわないとだめでしょうから」
そして、あわてて駅に駆けつけました。

友人がタクシー会社の人と一生懸命話しています。
当の本人は、友人の車の中でごく普通に座って待ってます。やっぱり小ボケです。

普通なら、自分が説明するでしょう。
友人にも恐縮するでしょう。
そして、駆けつけた私に対しても何か言葉があるほうが普通ではないでしょうか?

なにもせず、ただ座っています。
ちょっとすったもんだがありましたが、タクシーで無事に家に帰ることができました。

                      伊東市最大の椎の木P1000016

小ボケは、前頭葉の機能低下状態ですから、今ここで何をすべきかという状況の判断や見通しや、困ったときの打開策の模索など何もできないのです。
だから私たちは「小ボケは家の中の家庭生活はこなせるが、社会生活では困難をきたす」と解説します。
絵にかいたような小ボケさんの迷子騒動でした。

前の例と全く印象が違うことがわかりますか?脳が正常老化しているときと、老化の加速された小ボケの状態は全く違うのです。


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