脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

平安時代のグループホーム

2008年08月24日 | かくしゃくヒント

P1000002 少しずつ、「源氏物語ときがたり」を読み続けています。
源氏物語には多くの美女が登場しますが、唯一の不美人が末摘花(すえつむばな)

詳しくは、クリックして読んでくださればわかりますが、没落して貧乏な暮らしをしている設定で、「ブス」というだけでなく「自主性がない」「引っ込み思案」「センスがない」「当意即妙さがない」「歌が下手」「字が下手」な様子を書き進めています。

けっきょく、光源氏は情にほだされて契るのですが、関係は深くはなりません。経済的な援助をするというところで「末摘花」の巻は終わります。

光源氏はその後須磨に蟄居して後、再び都に帰って昔のように権勢も取り戻し華やかな暮らしを再開しています。

蓬生(よもぎう) 
あるとき、荒れ果てた屋敷に今も変わらず末摘花が源氏を待っていることがわかりました。蓬や雑草がボウボウと伸び、茂みにたまった雨が降りかかるので月夜というのに傘を差して、源氏は屋敷に入り、3年ぶりの再会を果たします。この庭の荒れ果てたさまを「蓬生」と巻名に名づけているのです。
ムクゲP1000021

この末摘花の誠実さ正直さに打たれた源氏は、生涯面倒を見ようと決意しました。
その後二条東院を建てて、関係した姫たちを住まわせるのですが、そこに末摘花も招かれます。

末摘花、花散里、空蝉のほかにも明石の御方なども迎え一緒に住まわせるのです。

                                           ランタナP1000011
その後、栄華の極まりの時に、広壮な屋敷六条院を建てます。
そこでは正妻紫の上をはじめ、ゆかりの女性を全部ひとまとめにして面倒を見ようというのですから、文化が違うといってしまえばそれまでですが、女性達の心理的葛藤はどれほどのものであったと思います。

でも、生活の心配はない!
老後の生活は完璧に保障されていることになります。
後ろ盾になる両親や親族が亡くなると、稼ぐことができない姫様達は夫がいないと生活が成り立たないのです。

そのお屋敷では、それなりにプライバシーも保たれ、時には交流もあり、絵合わせなどのアクティビティーもあって、まるで平安時代のグループホーム(恵まれた女性のための)ですね。

紫式部は、今現実に生きている平安時代という社会の中で女性がどうやって年を重ねていけるのか(どうやって死ねるのか)という老後の問題を考えていたのでしょう。
千年も前に、です。

「見目形がよく、詩歌管弦を始め芸術一般への深い理解を持ち、そして夫たる人の訪れを待つ(ただし拒否権は持っている)」という源氏物語の時代に生きた「魅力的な」女性像を様々に書き分けながら、なおその規範から外れる末摘花を登場させ、その人の幸せな結末を予感させることで、人には多様な生き方が許されていることを語ってくれています。

人間性の理解にしても、単純ではありません。

上野千鶴子「おひとりさまの老後」を、紫式部はどう読むでしょうか?

 


ブログ村

http://health.blogmura.com/bokeboshi/ranking_out.html