原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

iPS細胞で腸管のミニチュア版(ミニ腸)をつくることに成功

2022年07月05日 | 医学・医療・介護
 (冒頭写真は、朝日新聞2022.07.04付記事「iPS細胞1センチの『ミニ腸』 免疫機能も病原解明に期待」より転載したもの。)


          



 早速当該記事の内容を、以下に要約引用しよう。

 iPS細胞を使って、免疫機能をもった腸管のミニチュア版(ミニ腸)を作ることに成功したと、国立成育医療研究センターなどの研究チームが発表した。 病気の原因を探ったり創薬に使ったりできるという。
 腸管は、食べ物から栄養や水分を吸収するだけでは無く、病原体をみつけて排除する免疫のしくみも備えている。 クローン病や潰瘍性大腸炎などの腸管の病気の発症には、この免疫異常が関わるとされている。
 研究チームは2017年、iPS細胞などから大きさ1センチ程の「ミニ腸」をつくることに成功。 一方、免疫細胞を含むものはできておらず、より本物に近い条件での研究はできていかなった。
 研究チームは今回、「ミニ腸」に、免疫細胞の一種マクロファージを生着させようと考えた。 マクロファージは病原体をのみ込んで殺し、ほかの免疫細胞を活性化させる役割がある。 
 まず。従来の方法でiPS細胞から「ミニ腸」をつくるとともに、同じiPS細胞から、マクロファージの前段階の細胞を「ミニ腸」のなかに注入して、内部でマクロファージのような細胞へと成長させた。 形状や動き方が、本物の腸管内マクロファージと同様なことや、ほかの免疫細胞を活性化させる成分を分泌することを確認した。
 さらに、大腸菌をのみ込んで殺す機能があることも、実験的に示した。
 センターの部長氏は、「免疫細胞が入ったことで、『ミニ腸2.0』になった。病気の診断や治療には、その病気への深い理解が必要。 より生体の腸に近いミニ腸は、その理解に役立つ」と話す。 チームは今後、原因不明の子どもや乳児の腸疾患の病態解明や、創薬研究に応用していくという。

 (以上、朝日新聞記事より要約引用したもの。)


 
 原左都子の私事と私見に入ろう。

 我が20代の医学専門業務がまさに、T細胞、B細胞、そのサブクラス、及びマクロファージ等々の免疫細胞を扱う「細胞性免疫」分野だった。 
 当時としてはそれが至って斬新な時代であり、日本国内でも先駆けとしてその実験研究を執り行う企業部署に私は所属していた。

 その頃、健常人は元より各種疾患者の血液や骨髄等々から免疫細胞を取り出し、顕微鏡等を用いた実験研究にて日々どれ程の免疫細胞を観察したことだろう。
 当時は未だ、再生医療の時代ではなかったものの。
 各種免疫細胞の数的・質的特質を様々な手段・方法にて実験研究を試行錯誤することにより。
 その結果を見極め、ゆくゆくは臨床診断につなげることをあの頃の時代背景の下で精一杯志したものである。


 その後、医療・免疫学分野は大いに移ろいだ。

 世はまさに「遺伝子解析」「再生医療」へと、時代が移り変わっている。

 そんな中、特に国内では再生細胞である「ES細胞」と「iPS細胞」の発展力が際立っている印象がある。

 今回のテーマである「ミニ腸」は、元々ヒトES細胞とiPS細胞よりつくられたようだが。
 その2017年頃の成果がその後も引き継がれ、今に至って「ミニ腸」と進展している事実が素晴らしい!!

 今後共、現役再生医療研究者皆様の研究の発展を願いたいものだ!