原左都子エッセイ集

時事等の社会問題から何気ない日常の出来事まで幅広くテーマを取り上げ、自己のオピニオンを綴り公開します。

医師の卒業後9年間地域枠締め付け、そもそも労働基準法違反じゃないの??

2021年12月28日 | 医学・医療・介護
 冒頭から、朝日新聞2021.12.27付記事「医学部の地域枠締め付け『厳しすぎる』」の一部を、以下に要約引用しよう。


 卒業後に一定期間(通常は9年)、特定の地域で働くことを前提にした医学部の入試枠。 入学しやすかったり、奨学金が支給されたりする。
 地方の医師不足を解消する狙いで、自治体と大学医学部が協力して設ける。文科省によると、昨年3月時点で、全国の80大学の医学部のうち70が設け、定員は総定員数の18%にあたる計1679人。

 この医学部の「地域枠制度」に関するアンケート結果によると、大学の説明が「十分あった」と回答する医学生は46%。
 一般枠学生のうち3割は地域枠を検討したことがあった。
 それら学生も含めて聞いたところ、自治体からの説明があったとする学生は34%しかなく、うち10%はあっても不十分だったと答えた。 大学からの説明が無かったとする答えは34%で、十分な説明があったのは、46%と半数未満だった。

 この制度には罰則があるらしい。
 山梨大学医学部の地域枠学生が、医師免許取得後に県内で9年間働くとの約束を守らない場合、その時期に応じて最大約842万円の違約金を求められる。
 地域枠の学生は月額13万円の奨学金を受け取ることも入学の条件だが、約束が守れないと年10%の利息をつけて返さねばならない。 これに違約金が加わると、最大2340万円を一括で払うことになるという。

 この制度を利用すると、入試では一般枠より優遇される。 
 にもかかわらず離脱者も出たため、それを防ぐために違約金を導入したと、県医務課は説明する。

 (以下略すが、以上、朝日新聞記事より一部を引用したもの。)



 原左都子の私事及び私論に入ろう。

 私も国立大学医学部出身者だが、私の場合は医師になるコースではなくパラメディカルコースだったため、特段のそのような例外措置は無かった。 (現に私は卒業後上京して、民間医学関係企業に入社している。)
 おそらく医師コースに於いても、当時(数十年前になるが)はそのような制度は無かったのではあるまいか?
 ただ、当時は(今もか?)特に過疎地の国立大学医学部出身者は、地元に残る人が圧倒的に多かったような記憶がある。 他県出身者も自身の出身県へ戻って、そこで病院勤務医師になったり開業医師になったりしていると理解している。

 上記引用文を読んで、私が首をかしげるのは。
 「地域枠」入学者は奨学金がもらえるのはともかく、“入学し易い”との表現がある点だ。
 何?? 入試の際に得点加算でもするのか???
 これ、直接人命を預かる職種である医師において、あり得ない話ではないのか!?! いやまあ、医師になる場合必ず国家試験に合格せねばならない故に、そこで整合性がとれるという判断か??

 それにしても、「地域枠」にて入学した学生が約束を守らなかった場合の「違約金」の高額な事実に驚かされる。😱 
 最大824万円の違約金。 それから、奨学金返金最大2340万円を一括にて返済。
 これ、職種が医師だからこそ成り立つ金額なのかもしれないが。
 約束を守らないと言ったところで、職場選択は本来自由意志であるべきなのに、医師を選択したがばかりに、大変な金銭負担を強いられるものと驚くばかりである。😫 

 加えて、それ程過酷な制度であるにもかかわらず、大学の説明が不十分だったと回答する学生が多い事実だ。
 せめてその制度を積極的に利用せんと志す医学生には、自治体も大学もその説明責任を入学前の時点でとことんきちんと果たすべきだ!


 医学経験がある身として、我が更なる経験を語ると。
 
 医学部医師進学過程(要するに「医師」になるべく学業や実習に励む過程)の学生の中には、「臨床医」ではなく、最初から「基礎研究医」を目指す学生も(特に近年に於いては)少なからず存在すると認識している。
 もしも入学当初は「臨床医」を目指していたとしても、途中から「基礎研究医」に鞍替えする人材は、今となっては少なくないのではなかろうか?
 (失礼ながら我が経験から物申すに)、「基礎研究医」の給料とは「臨床医」よりも格段に少ないと把握しているのだが…
 その種の人物に対しても、医学部「地域枠」制度は高額の「違約金」を要求するのであろうか?!?

 このように考察してくるとこの制度、何とも窮屈でしかなく、医学関係者である私としては「厳しすぎる」以外の何物でもないとの結論に達しそうだ。



 話題が変わるが。
 
 今季春夏時の菅政権下でのコロナワクチン失敗騒動の時に、ニュース報道等にて見聞したのだが。

 ワクチンを打てる人材を国が募集した事実をニュース報道で垣間見たところ。
 自由人の立場(要するに所属病院等が無く日雇い状態)で医師をやっている人物がこの世にはある程度存在して、その人物らが突発的にワクチンを打つ作業を受け持ったと記憶している。
 その日当が、10万円を超えていたはずだ。
 
 過疎地の医師不足対策に、そのような人材を何らかの形で有効活用してはどうか?
 と、原左都子など考えつくのだが。
 
 その方がよほど、医学部を卒業したばかりの新人医師を「地域枠」としていたぶるより、効果が高いように考察する。