いつものように起き、トラに朝食与え新聞を取り入れ、一日が始まった。
「 早起きは三文の徳 」といわれているが、朝はできるだけゆっくりと過ごしている私。
コーヒーを飲みながら新聞に目を通していると、どこからかトラの声。
耳をすませていると、よそのネコとケンカしているような声の感じもする。
何気なく聴いていたが、ケンカの声とはどうも違う。
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隣の垣根の下 古びたシート |
急いで玄関に飛び出し、「 トラ!トラちゃん! 」と呼びかけた。
明らかに尋常でない鳴き声が垣根付近から聞こえてきた。
垣根の向こうは空き地。 町内の人がその一角で野菜を育てている場所。
垣根の下から向こうをのぞきながら再び呼びかけた。
「 ニャーン、ニャーン、ニャーン 」。
姿は見えないけれど、何とも表現できない叫び声にも聴こえるトラの声。
あわてて長靴に履き替え、隣の畑にいってみた。
先ほど覗いていた辺りに行ってみると、シートの上にトラが横たわっていた。
苦しげな声でしきりに鳴いていたトラ、「 どうしたトラ!」と呼びかけても鳴くだけ。
一秒間に5回くらい、ハァーハァーと激しい速度で息をしていた。
トラの目を見ると、瞳孔が半分開き、苦しげに鳴き声を上げていた。
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噛まれた |
困った、どうしよう・・・。
何とかしなければと、トラを抱き上げようとすると、物凄い威嚇をしてきた。
これでは私も傷ついてしまう、そう思い、
工房に戻り、厚手の皮手袋をはめ再びトラのところへ行った。
苦しみながらも威嚇をしてくるトラ。
何とか背中の下に手を入れた、その途端、
ジーパンの上からこれでもか、と思う力でガブリと噛まれた。
離そうとしても物凄い力で噛んだままのトラ。
近くにあった小枝を折ってトラの口の間に小枝を入れ、何とか口をこじあけた。
やっと噛むのをやめてくれたが、威嚇だけは続けてきたトラ。
どうしよう、どうしようと焦っていたら、トラが急に起き出して我が家の方へ走って行った。
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玄関先 |
私もトラを追いかけるように我が家の敷地に戻ってみたが、トラの姿が見えなかった。
「 トラ!トラ!」と呼んでも、どこにもトラの姿が無い。 いったいどうしたというのだ!
その日は月曜日の朝、あたたかい朝日が照っていた。
垣根の向こうは草が生えないようにと、使わなくなったシートで覆ってある場所。
もしかしたらマムシに噛まれたか? もしそうなら生きてはいけない。
でも起き上がって飛び跳ねるようにどこかに行ってしまったトラ、
半分開いていた瞳孔と激しい息遣いはなんだったのだろう。
ムカデに噛まれたか?
無事に帰ってきてくれることを願い、噛まれた傷跡の手当てをした。
かなり深く噛まれた足、アルコールで消毒をし抗生剤を塗りこんだ。
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庭で |
翌朝、何事も無かったようにトラが戻ってきていた。
表情も普段どおり。
「 トラ、どうしたんだ? 何があったんだ?」と声をかけても「 ニャ~ン 」。
焦ってしまった二日間だったが、トラも無事に戻ってきたし、一安心。
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アイコ |
再び釉薬作りを始めたが、なんとなくトラのことが気がかり。
手を休めて外に出てみると、庭先でトラが座っていた。
隣の敷地には枯れ草、そして庭木を剪定した枝物が沢山積んである。
草が生えないようにあちこちに古びたシートが被せてある。
トラにとっては日向ぼっこには最適だろうが、危険がいっぱいの場所でもある。
今回で懲りてくれればよいが、なにぶんにもネコのこと、
再び寝心地のいいところで昼寝をするだろう。
我が家のアイコもそろそろ片付け時となってきた。
まだ実がなっているが、果たして何時まで収穫できるやら。