いよいよ気ぜわしくなってきたこのごろ、
少しの時間を見つけて、そう、時間を作ってではなく、
こまごまとした用事の合間にロクロに向かっている今、
先日から作り始めた壷の仕上げに取り掛かった。
|
白磁壷用に。 |
凛とした姿に品格を加えるため、耳を取り付けるデザインした。
いつものように、デザインの寸法をしっかり守って作り上げた壷、
その両側に品良く耳を取り付ける作業を始めた。
壷の曲線に沿って耳を作り、その塊をきれいに面取りし、
少しずつ削っては壷に合わせる作業を行った。
|
合わせ |
完全に乾燥している耳に使う土、面取りと同時に壷の丸みに合わせるため、
耳の内側にも鉋(かんな)でそっと溝を彫っていく。
あと少しで壷の胴体と耳の曲線がぴったりと合う、
そう思って耳をなぞって隙間がないかと確認を行った。
あっ!!!
何ということ、耳が折れた!!!
折れないように、そっとなぞっただけなのに!!!
|
耳の形 |
かれこれ一時間以上もかけ、少しずつ削ってきた耳、
折れるのは一瞬。
もうぉ、今までなにをしてきたんだ!!!
憤慨したってどうすることも出来ない。
上手くつながるかと粘土を溶かし、接着剤として折れた耳をくっつけた。
けれど、くっつけた部分が乾燥し始めると、またヒビが入ってきた。
あれほど気をつけて耳を仕上げ、もうちょっとのところでポキン。
ガクっとしてしまったが、デザイン通りに作り上げなければ気が済まない。
雨がやんだし、気を落ち着かせるために外に出てみた。
玄関先の山茶花(さざんか)は、ここ数日のあいだに一気に咲き出してきた。
その奥の、庭木の陰に隠れている侘び助は?
|
侘び助 |
美しい桃色の蕾をいくつも付けている。
山茶花と違って、とても品のいい色合い。
大晦日までに咲いてくれれば嬉しいが。
うつくしい山茶花、そして品のいい侘び助、
何も無かった前庭に冬の使者の花が咲き出した。
すこし気分もよくなり、再び壷の耳つくりを始めた。
今度こそ折れないよう、慎重に!