水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

助かるユーモア短編集 (77)残り物

2019年09月03日 00時00分00秒 | #小説

 人間とは妙なもので、極端にお腹が空(す)くと、好き嫌いに関係なく食べられるから助かる。要は、嫌いだっ! などと贅沢(ぜいたく)を言ってられなくなり、生理的に食べられる訳だ。^^ 一般家庭で昭和20、30年代に育った世代だと、好き嫌いを言ってる場合ではなかったから、残り物も当然、ガッつくことになった。上流家庭は別として、一般家庭では残り物も有りがたく食さねば生きていけなかったのである。さて、最近の飽食の時代は? と問えば、生ゴミでポイ捨て処分される場合も結構、あるようだ。それだけ食べ物が軽ぅ~~く見られている訳だが、一度、何も食べ物が無い、残り物の生活を捨てる方々に味わっていただくのもいいアイデアでは…と思える。^^
 とある繁華街に新しく開店した奇妙な定食屋がある。この店は、お客が持ち込んだ残り物を調理して、美味(おい)しく食べられるよう作り直した料理で食べてもらう店・・として売り出した風変わりな店だ。もちろん、店主が持ち込んだ残り物を見て、OKした物しか調理し直されないが、これがどうして、なかなか好評で、噂が噂を呼び、開店一年で、押すな押すなの盛況を見るまでになっていた。
「へい、いらっしゃい!」
「コレ、なんだがね。どうだろう? 家(うち)のカカアが味付け、失敗しちまったカレイの残り物なんだがねっ!」
「おねがいします…」
「コレですかい? …ようがすっ! 美味(うま)い一品(いっぴん)に、しちまいまさぁ~~!」
 それから一時間後、夫婦で来た客は美味(おい)しく味付けし直されたカレイの煮付定食で夕食を食べていた。
「美味かったよっ! また、頼みますっ!」
「ありがとやしたっ!!」
 こんな都合のいい店があれば助かるなぁ…という馬鹿げたお話である。^^

                                


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