水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

ユーモア推理サスペンス小説 無い地点 <4>

2024年06月22日 00時00分00秒 | #小説

 一喝されては、どうもすいません…と頭を下げるしかない。口橋(くちはし)が、まずペコリ! と無言で軽く頭を下げ、鴫田(しぎた)、鵙川(もずかわ)がそれに続いた。庭取副署長は一瞬、三人を見据えたが、まあ、いいか…と机の書類に視線を戻した。なにが、いいのかは、よく分からない。^^
「では、本件の概要を口橋さん!」
 鳩村に名指しで呼ばれた口橋は、想定外だったのか最初、アタフタとしたが、そこはベテラン刑事だけのことはあり、椅子から立ち上がるとスタスタと前方に歩いて刑事達に向きを変え、話し始めた。
「奥多摩の森林地帯に乗り捨てられた車中から発見された五体のミイラの身元は今のところ掴めておらず、鑑定の結果、事件性を臭わせるこれといった外傷もないことから、未だ死因は判明していないっ!」
 そこまで話すと、口橋は立ち位置を鳩村、手羽崎、庭取が座る方向へ向きを変え、話を続けた。
「ただ、五体のミイラの頭部には一致した星印の痣(あざ)があり、それが死因ではないものの、この一件と関わりがあるのか? を科捜研に依頼しているところであります」
 口橋が科捜研の研究所員、関礼子の方向へ視線を投げた。礼子は無言で直立すると軽く一礼し、着席した。

「そうですか…。どうされます、署長?」
 手羽崎管理官が小声で隣の鳩村に呟く。
「えっ!? ああ…まず、事件か? 事故か? の確証がいる以上、科捜研の鑑定結果を待つ以外にはないでしょう。それまでは身辺捜査の継続を続けて下さいっ!」
 平和的な語り口調の鳩村の判断を受け、刑事一同は黙諾すると各自、席を立った。^^


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