幽霊パッション 第二章 水本爽涼
第百七回
上山は号外を手に左右を見回し、人の気配がないことを確認して普通の声量で語り出した。
「これ見ると、効果はあったようだな…」
『そのようですね!』
幽霊平林としては、まんざらでもなく、得意げな、したり顔で云った。
「見出しだと超常現象か? と、あるな…」
『世界各地の紛争や戦いがすべてなくなったんでしょうから、僕でもそう書きますよ』
「…だな。まずはOKか」
『これで、ひとまず争いごとは世界から消えたんでしょうね』
「…そうなのかなあ? いや! そうじゃないぞ! 問題は、武器を売る利権目当ての国家じゃないか? その発想をなくさにゃなあ~。また、起こるぜ」
『そうですね。僕の念力の継続性までは分かりませんから。一過性なら、確かにまた争いが始まりますね』
「そういうことだ…」
二人がベンチ話していると、ホームへ電車が入ってきた。上山は徐(おもむろ)に立つと、鞄(かばん)を手に速度を落として止まろうとする電車へ近づいた。幽霊平林はというと、どういう訳かいつになく積極的で、上山の前方をスゥ~っと流れるように進み、電車のドアが開く前に透過して乗り込んだ。上山は一瞬、これが出来れば便利なんだがなあ~と思った。ドアが開いて上山も乗り込むと、幽霊平林が話しかけてきた。いつやらも、こうした状況はあったが、あの時はゴーステンの影響のせいか、上山は人間界と霊界の間(はざま)に迷い込み、人の姿が見えなくなっていたのだ。当然、電車の中は上山一人で、幽霊平林以外の存在はなかった。それが今は、人々の姿が周囲にあった。だから、安易に幽霊平林との会話は出来ない。
『先ほどの続きですが…』
「… …」
上山は顎(あご)で周りに人がいることを幽霊平林にジェスチャーした。
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