口橋は慌てて窓を開けると、警察手帳を提示しながら着脱式赤色灯を車上に乗せた。
「あっ! すいませんっ! 張り込み中でしたか…」
「ああ…」
口橋は方便で嘘を吐(つ)いた。
「失礼しましたっ!!」
女性警官はアタフタしながらその場を去った。
「こんなことってあるんですね…」
鴫田が眠そうに口を開く。
「俺達が悪いんだ。場所が悪かった…」
「ですよね…」
二人は自分達の迂闊さを恥じた。
「鴫田、もう、いいだろ…。そろそろ、行くか?」
「いいですよ、僕は。いつでも…」
「嘘、言えっ! あと二時間ほどって顔じゃねぇ~か」
「すいません…」
口橋は小さく哂(わら)ってエンジンキーを捻った。
「口さんっ!」
鴫田が車の天井を見ながら、慌てて指さした。
「おっ! いけねぇや…」
口橋は慌てて着脱式赤色灯を外し、車内へ収納した。二人を乗せた覆面パトは一路、奥多摩を目指し、走り出した。
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