水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

ユーモア推理サスペンス小説 無い地点 <20>

2024年07月08日 00時00分00秒 | #小説

 口橋は慌てて窓を開けると、警察手帳を提示しながら着脱式赤色灯を車上に乗せた。
「あっ! すいませんっ! 張り込み中でしたか…」
「ああ…」
 口橋は方便で嘘を吐(つ)いた。
「失礼しましたっ!!」
 女性警官はアタフタしながらその場を去った。
「こんなことってあるんですね…」
 鴫田が眠そうに口を開く。
「俺達が悪いんだ。場所が悪かった…」
「ですよね…」
 二人は自分達の迂闊さを恥じた。
「鴫田、もう、いいだろ…。そろそろ、行くか?」
「いいですよ、僕は。いつでも…」
「嘘、言えっ! あと二時間ほどって顔じゃねぇ~か」
「すいません…」
 口橋は小さく哂(わら)ってエンジンキーを捻った。
「口さんっ!」
 鴫田が車の天井を見ながら、慌てて指さした。
「おっ! いけねぇや…」
 口橋は慌てて着脱式赤色灯を外し、車内へ収納した。二人を乗せた覆面パトは一路、奥多摩を目指し、走り出した。


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