水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

助かるユーモア短編集 (78)意固地(いこじ)

2019年09月04日 00時00分00秒 | #小説

 他のユーモア集でも取り上げたとは思うが、ここでは別の観点から起こしてみよう。
 意固地(いこじ)とは、なにがなんでもっ! と拘(こだわ)ってやり遂(と)げよう! とする気分である。やり遂げられるならいいが、やり遂げられない場合、意固地になれば時間が経(た)つだけで、いっこう捗(はかど)らず、挙句(あげく)の果てにはダメになったりボツになったりするから、助かるものも助からなくなる。^^ 例(たと)えば、ギャンブルで負けている時などがそうで、意固地になって勝とう! と意気込んだのはいいが、スッカラカンに負け、萎(な)えたように肩を落として帰る・・という場合だ。意固地にならず、今日はダメだな…と諦(あきら)め気分でやめれば、スッカラカンにはならず、帰りの駅で立ち食い蕎麦(そば)の二杯くらいは食べられたかも知れない訳だ。それも、掛(か)けではなく天麩羅蕎麦をっ! ^^
 とある家庭の日曜日である。朝からアチラコチラと、夫が探し物をしている。かれこれ小一時間になるから、かなり意固地になっていると言わざるを得ない。
「ここに置いといた二千円札、知らないかっ!?」
「知らないわよ…どこか他に置き忘れたんじゃないっ!? 先に食べるわよっ!」
「ああ…妙だなぁ~。確か、ここに置いたんだがなぁ~」
「ふふふ…あなたに付き合ってらんないって、どこかに散歩にいったんじゃないっ!」
「上手(うま)いっ! お足だけに歩くか…」
 妻のひと言が効(き)いたのか、少し頭が冷えた夫は意固地になるのをやめ、キッチンへと向かった。すると、視線に入った棚(たな)の隅(すみ)に二千円札が、『私は余り使われてませんから…』とでも言うかのように、隠れるように楚々(そそ)と置かれていた。
「ははは…そうそう! 置いた置いたっ! 確かに置いたっ!!」
「あら、あったのっ? 散歩から帰ってきたのねっ!」
「上手いっ!」
 夫はふたたび妻を褒(ほ)めながらテーブル椅子に座った。
 意固地にならなければ、案外と物事はスムースに進行して助かる・・というお話である。^^

                                


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