水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

ユーモア推理サスペンス小説 無い地点 <47>

2024年08月04日 00時00分00秒 | #小説

 次の朝が巡った。早朝にもかかわらず麹町署の中はゴッタ返していた。
「やはり、解散か…」
 口橋が鴫田の顔を覗き込んだ。
「紫の袱紗(ふくさ)は出ないでしょうがね…」
「それは衆議院解散だっ!」
「ええ、まあ、そうなんですけど…」
 鴫田は冗談の通じない人だ…と、フロアに視線を落とし、目を逸らした。 口橋が思ったことは図星だった。この朝、緊急に開かれた捜査会議は、捜査本部の解散・・という呆気ない幕切れとなったのである。
「…ということで、[謎のミイラ・捜査本部]は解散いたします…」 鳩村が渋い声をクックと唸らせながら口を開いた。会議に臨んだ関係者一同からザワめきが起きた。
「被害者消滅による解散か…」
「この手の一件は、世界史上、初めてでしょうね…」
「だな…。公安が手を引いてくれるよう署長にネジ込んだらしいぜ」
「消えたミイラは公安絡みでしたか…」
「俺にもよく分からんが、だそうだ…」
「口さんは、その話を誰から?」
「さあ、誰だったか…」
「おいっ! そこの二人っ!!」
 そのとき、ゴチャゴチャ話す二人の姿が目に付いたのか、正面最前列の席で刑事達に対峙する庭取副署長がコケコッコ~~! と声高に一喝した。^^ 二人は軽く頭を下げて悪びれた。


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