水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

暮らしのユーモア短編集-68- 糸車(いとぐるま)

2018年07月22日 00時00分00秒 | #小説

 電子ゲーム機器で遊べるようになった今日(こんにち)では、[糸車(いとぐるま)]で遊ぶ・・などと言えば、子供達に、? と訝(いぶか)しがられるか小馬鹿にされるのが落ちだが、売られた遊び道具がなかった時代は、それぞれ工夫して遊び道具を作っていたのである。五寸釘(ごすんくぎ)があれば土に突き刺し、[線切り]という遊びが出来た。空き缶(かん)があれば[缶蹴(かんけ)り]、石ころ一つあれば土の上へ線を引き[ケンパ]、女子(おなご)竹を切って[吹き玉・杉の実鉄砲]、竹で[紙鉄砲]・[竹馬]、自転車の車輪があれば転(ころ)がして[シャーリング]となる。輪ゴムがあれば[ゴム飛び]だが、[糸車]もその輪ゴムを使った遊びの一つだ。市販の糸巻の糸が使われて無くなれば、あとには巻かれていた木製あるいは強化プラスチック製の小物(こもの)が残る。それに輪ゴム、ボタン、割り箸(ばし)などで作るのが[糸車]である。
  朝から月川(つきかわ)は、あ~でもない、こ~でもない…と、輪ゴム、割り箸を弄(いじ)くっていた。ふと、遠い昔を思い出し、[糸車]を作ってみようと思い立ったからである。というのも、市販の糸が巻かれていた使用後の小物があったからだ。輪ゴムは多くあったから、容易(ようい)に作れそうに思えた。月川は最初、輪ゴムを小物へ通し、マッチ棒を両側へ付けて転がしてみた。  「? 妙だなぁ~~」   [糸車]は少しも動く気配を見せなかった。そして、月川の壮絶(そうぜつ)な格闘(かくとう)が始まったのである。 
 「簡単なようで…」
 月川は独(ひと)りごちた。コトは実に簡単だ…と思えたが、それは甘く、なかなか侮(あなど)れなかったのである。恰(あたか)も、関ヶ原の戦いで上田攻めに手古摺(てこず)り、とうとう関ヶ原には間に合わなかった史実とよく似通(にかよ)っていた。
  その後、どうなったのか? むろん、転がるようになった・・とだけは言っておきたい。これも、歴史ずきのお方ならよくご存知の、大津城・謁見(えっけん)が叶(かな)った史実に似通っている。読者諸氏は当然、お知りになりたいだろうから、詳細を掻(か)い摘(つま)んで申し添(そ)えれぱ、ボタン、割り箸がバレーボールの選手のように交代して付けられた・・とだけご報告させて戴(いただ)きたい。^^

                                 


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