水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

暮らしのユーモア短編集-52- いい風

2018年07月06日 00時00分00秒 | #小説

 心地(ここち)よく風が頬(ほお)を撫(な)でれば、誰しも気分いいものだが、いい風は、なにも気候に限って吹くものではない。
 とある商店街の二人の店主が自然公園で話している。
「どうですか? 最近はっ」
「どうもこうもありません。鳴かず飛ばずで…」
「ははは…枝で止まって、ジィ~~っとしている訳ですなっ?」
「ははは…そのとおりです」
「私とこもそうです。なかなか、いい風が吹いてくれません」
「今日はいい風が吹いとるんですがな」
「確かに…。なにか吹くようないい手はないもんですかな?」
「ははは…。あれば、国がやっとるでしょう」
「それもそうです…。薬剤を空から撒(ま)いて雨は降らせられるんでしょ?」
「ああ、そのようですな。人口雲・・とかでしょ?」
「ええ。ははは…風は流石(さすが)に無理ですか?」
「ははは…でしょうなっ!」
 今ひとつの二人は思わず微(かす)かに揺れる木々の梢(こずえ)を見上げた。そのとき、いい風が二人の頬を擽(くすぐ)った。
 いい風が吹くタイミングは誰にも分からない。^^

                                 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする