水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

暮らしのユーモア短編集-53- 童謡(どうよう)

2018年07月07日 00時00分00秒 | #小説

 文明が進み、世の中が科学一辺倒となった今の時代、なぜか童謡(どうよう)が心を擽(くすぐ)るのは何故(なぜ)だろうか。それは、長閑(のどか)でゆったりとした時の流れがあったよきあの頃を、想い出すからではないのだろうか。
 二人の老人が閑静(かんせい)に流れる川の土手道を歩いている。
「あの頃はようございましたな、曽根崎さん」
「ええええ…あの頃はようございました。今の候(こう)ですと♪蛍の宿♪ですかな?」
「そうそう…♪ほぉ~たるぅ~のぉやどはぁ~ かわばたぁ~やなぎぃ~♪でしたか」
「はい、そうでしたな…」
 聴くに堪(た)えない音痴な声で歌い出した峯尾(みねお)を、歌うなっ! とも言えず、曽根崎は我慢して思うに留(とど)めた。
「曽根崎さんも一曲、いかがですかな?」
「はあ…。ではっ! ♪なのはぁ~なぁ ばたけぇにぃ~ いぃりぃひぃうすれぇ~~♪」
 歌い出した曽根崎の自分以上に音痴な声に、峯尾は上には上がいるものだ…と思いながら、我慢して聴いた。
 しかし、童謡はいいものである。^^

                                 


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