水本爽涼 歳時記

日本の四季を織り交ぜて描くエッセイ、詩、作詞、創作台本、シナリオ、小説などの小部屋です。

暮らしのユーモア短編集-57- 都会化

2018年07月11日 00時00分00秒 | #小説

 都会化するのは、なにも悪いことではないが、長閑(のど)な自然が消え、人の動きが殺伐(さつばつ)とするのは考えものである。殺伐・・実に上手(うま)く出来た言葉で、征伐(せいばつ)して殺すのだから、なるほど長閑さが消え、人の心もギスギスする訳である。まあ、そういった意味で、自然を甚振(いたぶ)る今の人々は、馬鹿を通り越してアホなのかも知れない。^^
 鎮守(ちんじゅ)の森の木々が生い茂る神社を、二人のご老人がお参りしようとしている。
「いいお天気ですなぁ~!」
 皺(しわ)の多い老人が頭髪(とうはつ)の残り少ない老人に声を投げた。
「はいっ! 暑(あつ)からず寒(さむ)からず…でいいですな。境内(けいだい)へ入ると、ムッ! とする熱気が消えるのは何故(なぜ)なんですかな?」
 頭髪の残り少ない老人が皺の多い老人に訊(たず)ねた。
「おそらくは、この茂る森のお蔭(かげ)なのでは?」
 皺の多い老人は皺枯(しわが)れた声で朴訥(ぼくとつ)に返した。
「ああ、なるほど…。そうかも知れませんなっ! 都会化すると木々が減り、滅法(めっぽう)、暑くなるそうですぞ」
「そうそう! ヒート・アイランド現象とか申しておりましたな…」
「それそれっ!!」
「その点、神社、仏閣(ぶっかく)は都会化しておりませんからな」
「…ですなっ!!」
「このいい風はビル街(がい)では無理ですぞ、絶対っ!」
「そうそう!」
 二人は散々(さんざん)、都会化を扱(こ)き下(お)ろしたあと、都会のチェーン店が開店しているレストランで美味(うま)い料理に舌鼓(したづつみ)を打った。
 都会化は木々を美味い料理に変えるようだ。^^

                                 


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