夢逢人かりそめ草紙          

定年退職後、身過ぎ世過ぎの年金生活。
過ぎし年の心の宝物、或いは日常生活のあふれる思いを
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西原理恵子・著の『この世でいちばん大事な「カネ」の話』、感銘させられ・・。【下】

2009-03-06 14:45:17 | 読書、小説・随筆
私が西原理恵子・著の『この世でいちばん大事な「カネ」の話』の本を手にした時は、
驚いたのである・・。

著作者自身が、装画、挿画をされ、そして書き文字までされ、
このような本もあったのか、としばらく眺めたりしていたのである。

http://www.rironsha.co.jp/special/kane/index.html


そして、この出版社に於ける紹介として、

【 西原理恵子さんによる、
        活字一本勝負の画期的な一冊  】

【 なぜわれわれは、子どもに「金」の教育ができないのだろう!? 
  カネがなければ一家離散、カネがなければ一家心中。
  カネがなければ人生、貧しい。これは真実だ、ああそれなのに。

  経済学者やカネの地獄を見ないものにはけっして語れない、
  そんな、カネと労働のリアルをみつめ、人生の根本を哲学する書。 】

このように明示され、私は目次をめくり、動顚したのである。

第一章  どん底で息でし、
      どん底で眠っていた。
      「カネ」がないって、
      つまりは そういう
      ことだった。

と著作者自身の独自の書き文字が踊っていたのである。
著作者はもとより漫画家であったのは改めて解かったが、
何よりも著作者の気持ちを素直に発露させる字体であり、思わず本編を読みたくなるのである。

本編に関しては、書評家・吉田伸子氏が綴られた記事、
前回に私は転記させて頂ただいたのが大半であるので、省略はするが、
これ以外に私は思わず目が止まり、しばらく考えされられたことを記載する。

作者が幼児に育った貧困の生活が綴られ、そして少女期にすさんだ街全体の中、
小学校四年生の時、同級生に誘われ、『真夜中のカウボーイ』と『イージーライダー』の二本立てを観た時、
少女にしては社会に対する感覚が鋭いのである。

【・・
社会の中に自分の居場所がうまくみつけられない人たちの話だった。
彼らなりに夢はあるんだけれど、
その夢も、ことごとく、うまくいかない。
両方とも最後は主人公は死んじゃっていう、どうしようもない話、
それなのに、そのときのわたしの心にはすごくしっくりきた。
そんなことは初めてだった。

「そうだよ! これが現実だよ!」
小学校四年生にして、わたしたちは、
どうしようもない彼らに心から共感して、興奮していた。
・・】
注)22、23ページより引用。
  原文をあえて改行を多くした。


作者は昨今、《 世界の裏側を知りたい》と思い、カンボジアの首都プノンペンに於いて,
【・・
ここの郊外は・・あらゆる種類のごみが一緒に捨てられている・・
生ゴミだろうがプラスチックだろうが、アスベストのような有害物質だろうが、
一緒くたにぶちまけられ、うずたかく積み上げられ、山のようになっている。

「スモーキーマウンテン」という名前の由来は、
文字通り、その山から煙が立っているからなの。
ごみの発生するメタンガスで自然発火して、あちらこちらから煙が上がっている「煙の山」・・

そんなごみの山の中から、リサイクルするペットボトルと鉄をより分けて
集める仕事をしている女の子・・

もくもくと立ち上がる有毒の煙。
ツンと鼻をつく異臭。
視界はさえぎられて、ちょっと先でも、ほとんど見えない。

スモーキーマウンテンは、不衛生で危険なごみの山・・
だから、本当は、そんな小さな女の子がそこにいること自体がおかしい。

わたしも、こわかった。
・・
アスベストを防ぐためのマスクもない・・
子どもたちは何ひとつしらされないまま、裸同然の姿で、ひたすらごみを拾っていた。
だから、この子たちは長く生きられない・・
・・
ごみ拾いの仕事をするのは夜中。
昼間は暑いし、日に照りつけられたごみからの悪臭がひどくて・・
それで、その子たちは、夜中じゅう徹夜でごみを拾い集めて、
その賃金がたったの二百円。
・・】
注)206~208ページより引用。
  原文をあえて改行を多くした。


作者はこのようなことを実感した後、
日本の子どもは恵まれ過ぎて、
【自分のやりたいことがわからない】って困惑する日本の子どもに戸惑いを感じる・・。

そして、作者は日本の現状にふれて、
【自分のやりたいことがわからない】ことが日本の一部に蔓延している状況の中、
【人はなぜに働くのか。どうして働かないといけないのか】の悩まれる方々で明示されたりしている。

本書は、書評家・吉田伸子氏が明記されたとおり、
泥臭くて力強くて、何より生身の言葉で説かれるその哲学である。

そして私は更に、本書には人生の教科書のように、作者自身の自己格闘の上に基づいた経験をされた結果、
人は生きていく為に『お金』に纏(まつわ)る殆どすべてが適言されいる。

私は齢を重ねた64歳の身でありが、改めて数多くを学んだひとりであり、
若い20、30代の方達はもとより、多くのお方に読んで頂きたい、
稀(ま)な人生の哲学書でもある。



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西原理恵子・著の『この世でいちばん大事な「カネ」の話』、感銘させられ・・。【上】

2009-03-06 09:36:57 | 読書、小説・随筆
一昨夜、読売新聞の夕刊を読んでいたら、思わず精読させられた記事があった。
【ベストセラー怪読】の連載の記事である。

私にとっては未知の書評家・吉田伸子氏が綴られた記事であるが、
このように批評されると、体力の衰えた年金生活の私さえ、読んでみたくなるのである。

無断であるが、転記をさせて頂く。

【・・
”高校出てから8年、負けっぱしの人生であった”と掲示板に書き込んだ男は、
秋葉原で無差別に人を殺傷した。
男に同情する気持ちは全くないが、
”負のループ”は、誰でも陥る可能性のある、
人生の落とし穴のようなものだと思う。

本書は、そんな”負のループ”を断ち切った作者が、
自らの半生を織り込みつつ「カネ」について語った一冊だ。


実の父はアルコール依存症で作者が3歳の時に亡くなり、
義父は義父で、作者が美大を受験する前の日に自ら命を絶つ。

義父の弔問客は、口々に借金の返済を迫り、
義父からの暴力で、喪服の母は顔はぼこぼこに腫れ、
頭も髪の毛も血だらけだった・・という。

故郷での壮絶な過去を振り払い、
母親から渡たされたなけなしのお金を手に上京。
美術専門の予備校へ通い、出版社への売り込みやアルバイトをしながら、
必死で自分の道を模索する。
けれど、予備校時代に作者は、
自分の絵の実力が最下位なことに気付かされる。

作者が凄(すご)いのは、ここからである。
最下位の自分が勝ち目のないと思うのは、
トップの人間に勝とうと思うからで、
トップと自分の順位に比べて卑屈になるのではなく、
最下位は最下位なりの戦い方をすればいいのだ、と。

「どこがどう最下位なのか、自分のことをちゃんとよくわかれば、
勝ち目は必ず見えてくるはず」と。
そうやって、作者は自分を励ましながら、必死にイラストを描き続ける。
そんな作者の言葉だからこそ、ズシリと腹に響く。

「カネ」を稼ぐこと、「カネ」を失うこと、
その両方を身を以て経験した作者が到達した「カネ哲学」。

泥臭くて力強くて、何より生身の言葉で説かれるその哲学こそ、
ともすれば閉塞しがちな現在の状況を打ち破るものである。
・・】

注)以上、書評家・吉田伸子氏が綴られた原文を全文を転記をさせて頂いたが、
あえて改行を多くし、表示した。

この記事の下には、著作者の紹介があり、
【・・
さいばら・りえこ
1964年、高知県生まれ。
漫画家。
強烈なギャグあり、内省的な作品あり、著書多数。
『上京ものがたり』『毎日かあさん』など
・・】
と簡略に明記されていた。


私は年金生活5年生の64歳の身であり、
漫画に関しては、ここ40年ばかりは読んでいないので、
著作された漫画家の西原理恵子氏に関しては、全くの未知の人であり、
書評家・吉田伸子氏の上記の批評に導かれて、
昨日の日中のひととき、駅前の本屋に25分ばかり歩いて行き、買い求めたのである。

そして、深夜の2時過ぎに読了し、
玄関庭の軒下で煙草を喫いながら、そして少しため息をしたのである。
私も私なりに屈折の多い人生の半生でもあったが、
何より著作者のこれまで歩んできた軌跡を思い馳せると、
涙を浮かべたりしたのである・・。

                               《つづく》



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