真実を知りたい-NO2                  林 俊嶺

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アメリカが主導する西側諸国のプロパガンダ

2023年07月12日 | 国際・政治

 ウクライナ戦争が始まって以降の日本では、ロシア側の主張や情報が遠ざけられて、ほとんど知ることができなくなっています。
 そして日本では、ロシア国民は、プーチン大統領の意向に沿うプロパガンダにさらされており、戦争に関する客観的な事実が知らされていないと受け止めている人が多いのではないかと思います。
 確かに、プーチン大統領が軍に関する「虚偽情報」を広めた者に禁錮刑を科す法案に署名したり、一部の海外メディアやSNSへのアクセスを遮断し、情報統制を強化したのは事実かも知れません。
 でも、それはロシア国民が、客観的事実に反するプロパガンダを信じ込まされ、逆に、西側諸国の国民が検閲のない報道によって、客観的事実を知らされているということではない、と私は思います。

 日々、ロシアを中心とする親露的な国からの情報を日本に流している人のツイートに対し、厳しい批判が続いているのですが、その中に
ブチャの虐殺やミサイルによる民間人への攻撃、数十万とも言われる子供の拉致、ダム破壊による大洪水等、このおばさんが批判したのを聞いた事が無い 本当はどうでもいいのだろう 都合よく人権などと言わないでもらいたい!
 などというのがありました。
 また、西側諸国にはいろいろな考えの人がおり、報道もさまざまなので、ロシアによるウクライナの都市爆撃や、民間人の虐殺、子どもたちの拉致報道がプロパガンダであり、嘘であるはずがないというような主張をしている人もいました。
 でも、アメリカの情報戦略は、きわめて巧みであり、長い歴史があることを見逃してはならないと思います。西側諸国を主導するアメリカのプロパガンダがどんなものであるかを知らなければ、真実は知りえない、と私は思っています。

 先日取り上げましたが、イラン政府報道官・バハードリー・ジャフロミー氏が、「アメリカ は善悪を逆さに見せることにおいて先端を走っている」と語り、「アメリカが見せるやり口のうち、最も得意とする強力なもののひとつに、虚言がある。この国は、嘘を真実に、真実を嘘に見せかけるのである」というようなことを言ったといいます。そして、「言動・行動の両方において善悪を逆さに見せることはアメリカのお家芸である」とし、「アメリカは、様々な時代において真実を実際とは間逆に見せて、直接・間接的に戦争の中心的存在となってきた」と述べたということです(https://parstoday.ir/ja/news/iran)。
 この イラン政府報道官の主張には、それなりの根拠があり、無視してはならないものがある、と私は思います。

 そこで今回は、イラン政府報道官の主張を裏付けるような、湾岸戦争の際の「ナイラ証言」を巡るアメリカの情報戦略に関する記述を「CIAとアメリカ 世界最大のスパイ組織の行方」矢部武(廣済堂出版)から抜萃しました。
 アメリカのプロパガンダが、どんなものであるかを知る手掛かりがつかめるのではないかと思います。

 Wikipedia(ウィキペディア)によると、当時、「ナイラ証言」は裏付けの取れたものと国際的に認識されていたといいます。でも、クウェート解放以後マスコミが同国内に入り取材が許された結果、虚偽の「証言」であった事が発覚したのです。
 「ナイラ証言」はアメリカ政府が目的としていた湾岸戦争の「火付け役」となり、女性や子どもの証言、特に、現地で現場を見た被害者は嘘をつかないとの人々の思い込みを巧みに利用して、反イラク世論を高めたのです。そして、アメリカが参戦し、敵対国イラクが壊滅する結果となりました。子どもを利用したプロパガンダとして大成功だったということです。
 アメリカが利用した虚偽の「証言」で、甚大な被害を蒙ったイラクの現実を 私たちは忘れてはならないと思います。
 そして、同じようなことがウクライナでくり返されているのではないかという疑いを持って、歴史に学び、事実を直視して、自ら情報を集めないと真実は知り得ないと思います。日本の主要メディアが、真実を報道していると信じることは、大本営発表の時代の過ちを繰り返すことにつながる、と私は思います。

 アメリカのプロパガンダは、重層的であり、複合的であり、総合的です。でも、注意深く事実を見つめ、情報を集めれば、真実に近づけると思います。ブチャの虐殺については、すでに取り上げましたが、私は、いくつかの客観的事実から、ロシア兵によるものではないと思っています。そして、ミサイルによる民間施設の爆撃も、数十万とも言われる子どもの拉致も、ダム破壊による大洪水も、西側の報道が真実であるという確定的な証拠はないと思っています。 
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                    第二章 アメリカ全土に張りめぐらされたCIA網
  
(二)PR会社とCIAの関係
 暴力よりPRが効く
 1930年代、米国の「PRの父」と呼ばれたエドワード・バーネイ氏は、「暴力ではなくPRテクニックを使って人々の考えを変えることができる」と米国企業の経営者たちを納得させた。同氏は当時、米国企業を深刻に悩ませていた社会主義運動や労働組合運動を鎮めるためには、暴漢を使って労働者を棍棒で殴るより、PRテクニックを使った方がはるかに有効であると主張し、それを見事に実践したのである。
 その後米国のPR業界は大きく成長し、現在では一国の政府よりも強い国際的影響力を持つPR会社がある。SWAT(Special Weapons And Tactics:特殊装備戦術部隊)のようなダメージコントロールチームを持ち、クライアントに何か問題が起こると、海外でもどこでも素早く飛んでいって見事な火消しを行う。米国の大手PR会社は莫大な報酬を支払うクライアントに対しては”芸術的”とも思えるPR活動を展開する。そんなPR会社をCIAが放っておくはずはないが、ここではそのPR会社とCIAの関係を明らかにする。
 95年2月、フランス政府からスパイ容疑で国外退去命令を受けた5人の米国人のうち4人は米大使館職員を装ったCIA諜報員で、1人はテキサス州に本支社を持つPR会社の幹部だった。このようにCIAの海外での秘密活動にPR会社が関わっているケースは珍しくない。
 CIAと米大手PR会社との協力関係については古くから言われていた。例えば「大手PR会社の海外事務所はCIA諜報員にとって絶好のカバーとなる」と元CIA局員は言う。
 CIAはPR会社のコネクション(海外事務所)を使って情報収集を行い、それをPR会社のニュースリリースとして作成し、米国メディアに配布することも可能だ。一方、PR会社もCIAとの関係をクライアントのために最大限に利用し、CIAとの”持ちつ持たれつ”の関係を維持している。

 露呈した湾岸戦争時のPRキャンペーン
 大手PR会社は米国の政府、情報機関、さらにマスコミなどの強力なコネクションを利用して、CIA顔負けの大胆なPR活動を展開する。象徴的なケースは湾岸戦争のPRキャンペーン(イラクとクウェートのイメージ作戦)だが、これを担当したのが米大手PR会社のA社だった。
 90年10月、ブッシュ政権(当時)はクウェートに侵攻したイラクに対する戦争準備態勢に入っていた。そんななかで在米クウェート大使の娘(当時15歳)が連邦議会の人権委員会で証言し、イラク軍がいかにクウェートの一般市民に極悪非道な残虐行為をやっているかを、目にいっぱい涙を浮かべながら訴えた。
「私はアル・アダン病院でボランティアをしていたんですが、そこで恐ろしい光景を目にしました。銃を手にした何人かのイラク兵士が病院に入って来て、保育室にいた赤ん坊から保育器を取り上げて冷たいフロアにそのまま放置し、赤ん坊を次々に殺したのです……」(『CAQ』誌93年春季号)
 しかし、後になって彼女の証言はA社による米国内の湾岸戦争フィーバーを喚起するためのPRキャンペーンの一環だったことがわかった。
実際、イラクを悪役に仕立て上げて米国人の反イラク感情に火をつけるのに、これ以上効果的な演出はなかった。
 A社は米国政府、クウェート政府、クウェートの市民団体『CFK』(クウェートを解放する市民連合)などと協力して、このキャンペーンを張った。 『CAQ』誌(93年春季号)によれば、CFKはイラクがクウェートに侵攻した日(91年8月2日)に結成され、その一週間後にA社にPRを依頼した。CFKは米国人とカナダ人から1万7860ドルの個人献金を、クウェート政府から1180万ドルの財政支援を受け、その大部分の1080万ドルをA社のPR活動に使ったという。A社のクライアントはいちおうCFKになっているが、実質的にはクウェート政府がCFKを通してA社にPRを依頼したという形だ。 

A社のキャンペーンは大きな効果を上げ、米国内の反イラク感情はどんどん高まり、同時にクウェートへの支援運動が盛り上がった。全米の20の大学キャンパスでクウェートを支援する学生ネットワークが組織され、また全米各地の教会ではクウェート市民に祈りを捧げる行事が行われた。A社は数万枚のクウェート解放のステッカーやTシャツを配布すると同時に、クウェート市民の美徳と社会・歴史を賞賛するプレスキット数千部をマスコミ関係者に配布した。
 A社はまた”イラク人に足蹴りにされるクウェート人の悲惨な生活”を描いたビデオ・ニュースリリースを制作し、三大テレビネットワークを含む映像メディアに配布した。A社はかつて大手テレビ局のニュース制作室で働いていた社員を何人か抱えており、テレビ局に強力なコネクションを持つと同時に、ニュース制作の質の面でもテレビ局にけっして引けをとらない。
 A社は外部の専門調査機関を使って湾岸戦争におけるブッシュ大統領とイラク政府高官(フセイン大統領を含めた)の発言をテレビで見た米国人の反応を詳しく調査し、その結果をPR活動に反映させた。
 米国人のクウェートに対するイメージはどんどんよくなった(実際はひどい人権侵害と女性蔑視の歴史を持つ国であると言われているが)。A社のキャンペーンの目的は「クウェートはイラクに占領されるまでは平和で暮らしやすいオアシスのような国で、それを奪ったのが極悪非道なイラクであるということを一般の米国人に植え付ける」ことだったが、それは同時にブッシュ政権の政治的な・外交的な思惑でもあった。こうしてみると、米国の外交において大手PR会社の果たす役割はいかに大きいかがよくわかる。

 ”反対分子”はこうして洗脳される
 大きなPRキャンペーンを張る時に障害となる活動家や団体にいかに対応するかは、PR会社にとって重要な問題だ。最も手っとり早い方法は買収だが、それがうまくいかない場合はどうするか。
 ある大手PR会社の戦略はこうだ。まず活動家を急進主義者、日和見主義者、理想主義者、現実主義者の四つのカテゴリーに分け、個々の活動家を中立化させる方法を考える。たとえば急進主義者なら孤立化させ、理想主義者なら現実主義者になるように教化し、日和見主義者や現実主義者は企業との共通点を見つけさせて仲間意識を持たせるようにする。
「急進主義者は『多国籍企業は本来悪である』というような考え方をしがちで、独自の社会的・政治的動機付けに基づいて既存の社会システムを変革しようとする。彼らは『政府は人々の利益よりも企業の利益を優先している』と固く信じ切っているので対応は最も難しい。次に難しいのは理想主義者だ。彼らは完全な世界を求めすぎるあまり、他のものすべてを『邪魔モノ』として扱う傾向がある。でも、企業や商品などに反対することによって他の人間を傷つけていることがわかると、自らの排他主義ゆえに悩み始め、結局立場を変えざるをえなくなる。だから、理想主義者を教育して現実主義者に変えるのはそれほど難しいことではない。でも教育の方法を誤ると頑固に理想主義を維持することになるので、あくまで慎重に行わなければならない。現実主義者というのはどんな相手にもつねに妥協の接点を見つけようとする傾向があり、対処はそれほど難しくない。また日和見主義者は権力を持ちたい、目立ちたいなどの願望が多く、要求を満たしてやれば妥協してくるケースが多い」(『CAQ』誌96年冬季号)
 PR会社は巧みなメディアキャンペーン、議会公聴会での効果的な演出、政治家への強力なロビー活動などで国民の世論形成や政府の政策づくりに影響を与える。同時に優れた調査能力、豊富な資金力、広範なネットワークを駆使してクライアントの政策決定に役立つ秘密(内部)情報を入手する。また独自の政治的コネクションを使って、クライアントにさまざまな政治的便宜を図る。このなかには政治的情報機関へのアクセスも含まれるが、大手PR会社は「重役が元CIA長官と長い間親しい関係にある」というように、CIAコネクションをしっかりキープしているのである。

 新聞記事の40パーセントはPR会社提供?
 このような方法に加えて、PR会社には新聞社やテレビ局に配布するプレスリリースという強力な武器がある。ある米国の大学の調査によると、「米国の新聞社が毎日発表する記事の約40パーセントは、PR会社が作成したプレスリリース、メモ、提案書などが主な情報源となっている」という。
 つまり、PR会社のニュースリリースを、追加取材もほとんど行わずに文章だけを少し変えてそのまま発表する記者が少なくないということだ。逆に言えば、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどのニュースのなかで、PR会社の影響を全く受けていないものを探すのは難しい。
 メディアの影響力について詳しいスーザン・トレント氏は
「優れたPR活動とは、PR会社があれこれ活動・演出していることを人々に悟られることなく、その出来事をまるでニュースのように人々に受け入れさせることです。そして人々はPR会社の意図した方向にゆっくり考え方を変えていくのです」と指摘する(『CAQ』誌96年冬季号)PR会社がクライアントにとって都合の悪い事実を巧妙に隠すことは、ある面で人々から正しい判断をする機会を奪っていることでもあるのだ。
 PR会社の人間はマスコミ関係者の心理構造や物の考え方を理解し、マスコミが興味を引きそうなプレスリリースの書き方や記者会見の演出方法をよく知っている。
 PR会社はニュースリリースの他に大量のビデオリリースも独自に撮影・制作し、テレビ局に配布している。こうしてPR会社のビデオリリースがテレビでニュースとして流されるようになり、PR会社のクライアントにとっては最高のPRとなる。ちなみにPR会社のビデオ専門家によると、ビデオリリースがニュースとして流される可能性は大手より中小のテレビ局のほうが大きいという。中小テレビ局はおそらくニュース制作の予算が少ないからだろう。
 このように、PR会社は豊富な資金力とアイデアを使って次々に新しいPR手法を考え出す。最近は衛星装置やインターネットなど、高度情報システムを使った電脳空間PRが大きな注目を集めている。情報スーパーハイウェイを使ったPRシステムが完成すれば、大量の国際情報がデータライブラリーから低価格で入手できるようになる。
 PR会社は中央処理コンピュータ直結のオンラインを使って世界的な情報ネットワークを作り上げ、クライアントのための情報収集と同時にマスコミ戦略やマーケティング戦略に生かしていく。このような巨大な力を持つPR会社がCIAというクライアントを持ったら、一体どんなことになるのか。


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