本日3日(土)、「安全学」という防災の授業の最終回を遠隔で担当した。
そのさなか(後で知った)、静岡県熱海市伊豆山(いずさん)で、すさまじい土砂災害が発生した(20名ほどが安否不明)。
毎年、梅雨末期と台風上陸時には死者が出る災害が発生しているが、今年も例外ではなかったか。
現場住民による投稿動画をリンクする(リンクはじきに切れる)。
目の前で車や家が土石流に呑み込まれていく。
これが住宅地を襲う土石流のリアルな姿だ。
動画1:走湯山般若院付近
動画2:1の別アングル(赤いビルの裏から)
動画3:下流のコマツ屋製麺所付近の別の土石流(音声なし)
伊豆山は(地名に反して顕著な山ではなく、むしろ谷)、箱根火山外郭の岩戸山(734m)山麓の斜面上ながら温泉(=地下水)も湧出する所で(元は修験道の拠点)、熱海駅から路線バスもあり、それなりに住宅や宿が集まっている。
そしてその中央に、「土石流危険渓流」(右図※のオレンジの帯)が流れていて、まさにこの渓(たに)が流路となって今回の土石流が流れた。
※:アプリ「スーパー地形」からコピー
動画1・2と3は同じ「渓流」のもの(右図の中央にある左上→右下の帯)。
今日だけでも土石流は繰り返して発生している。
そしてこの「渓流」沿いに道路が走っているので、土石流は道路上を流れた(車と遭遇)。
しかもその「渓流」内になんと住宅などの建物もある。
だから住宅が破壊されて被害者が出た。
なんでこんな危険な所に住むのか、と訝(いぶか)しむなかれ。
日本の75%は山地で、25%しかない平野の居住者以外の日本国中の人たちは、このような”土砂災害危険箇所”※に居を構えなくてはならないのだ。
※:「土砂災害危険箇所」として土石流危険渓流・地すべり危険箇所・急傾斜地崩壊危険箇所のいずれかに指定されていた所は、現在、表現がより穏やかな(危機感がゆるい)「土砂災害警戒区域」に置き換えられつつある。
もちろん(上の”区域”は公開されており)住民はそれを承知の上で居住しているはずなので、今回のような総雨量が多い雨の時は、まずは土石流・地滑りの警戒(=避難の一択)を最優先すべきだった(総雨量は多くない短時間強雨の場合は、土石流ではなく崖崩れに警戒)。
言い換えれば、災害リスクの観点から「私だったら、ここには住まない」と判断せざるをえない居住地は、日本のあちこち(都内も含む)に存在する。
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7月4日 追記:地質図や土地条件図で調べてみたら、”伊豆山”地区である舌状の谷全体は、土石流によって形成された扇状地で、この地は本来的に土石流の通路だったことがわかる。
だから、もしこの谷に人工の手を加えるなら、当然治山事業であるべきだが、現実には、流路となる谷は宅地開発で人が住み、そして土石流の川の源頭には産廃場があり、周囲にはメガソーラーなどが造られ、産廃場は残土(土石流の材料)の捨て場(盛土)となっていた。
結果的に、人の手によって土石流災害の発生を促進していたのだ。
今回の長雨自体が記録的だったが、それに加えてこの盛土が土石流を起こしやすくしていた(複数ある「渓流」の中で、この渓流だけに土石流が発生した理由)。
災害被害は、自然的要因と人的要因の相互作用で発生することが如実に示された。