三重県津市の西端・青山高原東麓にある榊原温泉は、
かの清少納言が三名泉の一つに挙げたという由緒正しいわりに、
また大きな旅館が複数あるわりに、
通俗的温泉街を形成せず、
かなり素朴な温泉郷を保っている(むしろ温泉街に発展できないのかもしれない)。
なにしろ、土産店はおろか、コンビニすらなく、
訪れた者が足を運ぶ小売店がほとんどない。
だから滞在する時は、必要となるもの(酒・つまみ類)は
すべて持参しなくてはならない(車があれば5キロ先のスーパーに行ける)。
近くにないのは店だけでなく、著名な観光スポットもない。
あえて挙げれば、青山高原上の風車群(写真)だが、一度見れば充分。
名泉とはいうものの、泉質はアルカリ単純泉なので格別な薬効が売りということもなく、
実際客層は、秋田の玉川温泉にみられるような、湯治に来たのが一目でわかる痛々しい姿は見られず、
いたって健康な中京・関西からの中高年たち(若者グループや小さい子がいる家族連れはいない)。
他の客たちが、なぜ何もないここに来るのかわからないが、
私にとっては、半年に一度の頻度で来たい所になっている
(ということは、”数ヶ月に一度”泊まりたいお気に入り第一グループではなく、
第二グループに属する。第三グループはもちろん”年に一度”)。
私が泊まるのは榊原温泉の入口に近い「湯元榊原館」。
ここが第二グループになっているのは、
湯でもロケーションでも、いささか古い宿そのものでもなく、
食事かな。
もちろん従業員の教育も行き届いて、応対・サービスもいい。
宿泊者には抹茶やコーヒーもサービスしてくれる。
1階の川べりにある食事処自体の雰囲気もいいが、
夕食の会席は、天ぷらの代わりに数種類の野菜の蒸しなべなのでヘルシー。
たっぷりな量だが、総カロリーは低めに抑えられる。
それに素材は野菜も米も地産。
三種類ほどのデザートの後の淹れ茶(煎茶・焙じ茶)の自分でお好みブレンドが楽しい。
ここの食事で最後の淹れ茶セットから好みの茶葉をブレンドするたびに、
淹れ茶(煎茶)をもっと勉強したくなる。
夕食にたっぷり時間が使われ、一人客の私でも80分を要した
(私の旅行時夕食標準時間は半分の40分)。
どうせ温泉旅行って風呂と食事以外に用事はないのだがら、
これくらいたっぷり時間をかけるのもいい。
一泊15000円なので、温泉宿としては標準的な価格だが、
より安価な休暇村やグリーンプラザが標準の私にとっては、
半年に一度はリッチなサービスと食事を味わうことになる(部屋はこちらの方が古い)。