事件の容疑者が宗教団体への恨みからの犯行であると供述したという報道で、いろいろと取り沙汰されている。この件は、韓国の政治状況の歴史を知らないとわかりにくい。韓国では1963年から79年にわたって長期の大統領を努めた朴正煕(近年の大統領の朴槿恵の父)の時代、強烈な反共政策が行われた。当時の日本・米国も同じで、その流れの中で、
統一教会の創立者であった文鮮明や、日本の右翼勢力が1968年に設立した反共団体が、
勝共連合である。当時の自民党政権も当然のことながらこれを援助していた。安倍の祖父の岸信介はこの設立に強く関与したと知られている。韓国では、その後、北朝鮮の共産主義に融和政策をとる左翼系の大統領も次々と生まれ、また反日政策をかかげることも多く、表面上は、日韓の政権の間に反目があるように見えるが、自民党としては、「反共」という党是から、この勝共連合や韓国保守勢力との協力関係は強く維持してきていると思われる。これはごく自然なことだろう。その繋がりを保持しているのが、岸の孫であることも自然である。日本の右翼勢力・有名保守インフルエンサーなども、韓国の左翼政権の「反日」に反対しつつ、底流にある「反共」には協力するというややねじれた関係を持っているので、そこのところがわかりにくい。「反韓・嫌韓」というキーワードが最近よく聞かれるが、それは本当の実状を反映していないものである。その上、この政治団体と宗教団体が表裏一体であるので、今回のようなことが発生する契機があるわけなのだ。