博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『興亡の世界史15 東インド会社とアジアの海』

2008年01月30日 | 世界史書籍
羽田正『興亡の世界史15 東インド会社とアジアの海』(講談社、2007年12月)

イギリス東インド会社がテーマなのかと思って読み始めたら、オランダ・フランスの東インド会社もテーマの中に含まれているうえに、それぞれの東インド会社が結成されるまでの背景や、進出先となったインドやペルシア、日本などの状況についても言及するといった、相当にスケールの大きな話になっています。

以前に刊行された『シルクロードと唐帝国』といい、このシリーズ、東西交渉を扱った巻が面白いですね。

個人的に興味深かったのは、ペルシアやインドなどインド洋方面の諸国と、明王朝や徳川政権など東アジア方面の諸国とでは海上交通や交易に関する考え方に相当違いがあり、それが東インド会社などのヨーロッパ勢力との対応や各地域のその後の政治状況に大きな影響を与えたという点です。

インド洋方面のムガル帝国やサファヴィー帝国の為政者は陸地に住む人々の支配には熱心でも海上で活動する人々については無関心で、本国人と外国人との区別にもそれほどこだわりませんでした。結果、東インド会社やそれ以前のポルトガルとの交易を積極的に受け入れ、各地の太守や宮廷の重臣として外国人を積極的に登用する反面、それが後々どういう影響を及ぼすのか熟慮しないままにヨーロッパ側に重要な特権を与えてしまうことがありました。

しかしインドに進出したイギリス東インド会社も当初からインドの植民地化を志向していたわけではなく、(各国の東インド会社はあくまでも民間の商事会社であるという点は本書の中でくどいぐらいに念押しされています。)地方の行政権などを獲得したのも成り行きに近いものであったようで、スタッフに元々行政に関するスキルが無いうえに現地事情の理解にも乏しく、現地民に対する裁判執行に四苦八苦したり(こういうことが積み重なって、会社を貿易業務に専念させるために現地の統治・司法を担う総督職が本国によって設けられることになるわけですが……)、充分な額の徴税ができず、会社の赤字を広げる要因になるといったトホホな状態に陥ります(^^;)

これに対して、東アジアの明王朝や徳川政権、朝鮮王朝などでは陸地の支配者が海上のことにも責任を持つべきだと考え、陸地の政治権力が海禁政策やいわゆる鎖国に代表されるような海上交通・交易の統制を行います。またヨーロッパ側に長崎やマカオなどの居留地の所有権は現地政府が保持したままで、ヨーロッパ人をあくまで「店子」のように扱い、兵士の駐屯も認めないなど、特権の付与について慎重であったとのことです。また、江戸時代の日本の政治体制はヨーロッパの主権国家のそれと似通っており、このことが日本が後にアジア諸国の中では最も早く国民国家へと脱皮できた要因となったのではないかと評価しています。

その他面白かったポイントは以下の通り。

○ヨーロッパで香辛料は生肉の保存のために用いられたのではなく、実際は香辛料自体が医薬品として珍重されたという説が提起されている。
……それこそ東洋における漢方薬みたいな位置づけだったんでしょうか。

○ヒンドゥー教はいわばイギリス人によって「発見」された宗教であり、イスラーム、ジャイナ教、スィク教など以外の宗教的要素をこのように位置づけた。
……ここから考えると、日本人の主要宗教が「日本教」だなどという意見もあながち外れていないのかもしれません。

本題の東インド会社に関してだけではなく、その他の部分についても読みどころが多い本に仕上がっています。
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『太王四神記』第8話 影の軍団 in 高句麗

2008年01月29日 | 韓国歴史ドラマ
今週からNHK-BS2で『インファナル・アフェア』三部作、ドキュメンタリー『香港映画のすべて』全3回、ショウ・ブラザース作品『大酔侠』・『少林寺三十六房』シリーズ、『グリーン・デスティニー』と、トチ狂ったかのように香港映画関係作品が放映されますが、正直言って全部が全部チェック出来ません(^^;) 大体今まで見たことのある作品ですし、取り敢えず『香港映画のすべて』だけを録画しておくことにしました。

で、今週の『太王四神記』であります。

キハの手配によりヨン家に捕らわれていた絶奴部の若者たちとスジニが助け出され、一路談徳が身を潜めている流民たちの集落へ。そしてその後を追う影の軍団、もとい火天会の忍者軍団!

しかし忍者というのは白昼堂々と街中で馬を乗り回すもんなんでしょうか(^^;) あと、今まで手裏剣ばっかり注目していて気がつきませんでしたが、しっかり日本刀も使いこなしていますね。

談徳は流民たちの集落に先回りした影の軍団とのバトルを繰り広げているところをスジニたちに助け出され、絶奴部以外の三部族の軍隊に包囲された故国壌王を救い出すべく再び都へ。何かますますRPGみたいな展開になってきました……
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『絶代双驕』第1巻

2008年01月27日 | 小説
今日は久しぶりに関西幇会に参加してました。記念幇会以来なかなか武侠話ができる機会が無かったので、楽しいひとときになりました。台湾幇会の期日も近づいてますが、私は残念ながら旅行費が工面できないのでパスです…… 参加予定の皆様のご報告を楽しみにしております。

で、帰りの電車の中で『マーベラス・ツインズ』という名の『絶代双驕』を読了。

古龍著・川合章子訳『マーベラス・ツインズ1 謎の宝の地図』(コーエーGAMECITY文庫)

今回は小魚児が江湖に出てから、双子の弟(双方ともまだその事実を知るよしもありませんが)の花無欠と出会うあたりまでの話です。

ここまで読んで、ドラマ版の『プライド』(小魚児与花無欠)の方はかなりアレンジをしていますけど、ショウ・ブラザーズの映画版『絶代双驕』の方は割と忠実に原作の筋を追っていることがわかりました。(ただ、中盤以降の話はかなり端折ってそうな感じですが……)

翻訳者の川合章子氏は過去にコーエー版の『封神演義』の翻訳なんかを手掛けており、訳文の文体も思っていたよりまともなんですが、馮姓に「ひょう」とルビをふったりとベタなミスが見られるあたり、やや不安が募ります……

巻末の広告を見ると第3巻まで予告が出てますけど、今日の幇会で八雲さんに聞いた話によると、『絶代双驕』は古龍作品の中でもっとも長い作品で、文庫版3冊では到底完結するはずのない代物とのこと。アニメ絵の表紙とも長い付き合いになりそうです(^^;)

あれやこれやといちゃもんをつけてますが、文庫版という形で安価で古龍作品の翻訳を提供してくれている点には、川合氏及びコーエーに素直に感謝してますです。
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『浣花洗剣録』その3 ―またこういう展開かッ!―

2008年01月25日 | 武侠ドラマ
『浣花洗剣録』第10~第15話まで見ました。

武当派掌門にして武林盟主の赤鬆道長を敗死させたことで、ますます悪名が高まる大臧。おまけにその後魔教(正式には五行教というらしい)の内部抗争に巻き込まれ、すったもんだの末に白水宮に入信するハメに…… 

白水宮の白水聖母は五行教諸派の再統一と、教主の証である神木令牌の捜索に邁進していますが、その神木令牌をうっかり関外で武功の修練に励んでいた方宝玉が発見してしまいます(^^;)


うっかり神木令牌を発見する宝玉の図……


神木令牌には五行教教主が身につけるべき奥義が隠されており、これをゲットしたことで宝玉は戒日神功と吐姆神功の二つの武功を修得し、内功では一気に武林のトップクラスへと成長。ズブの素人が一気に強くなるというのは金庸作品ではよくある展開なんですが、正直こういうパターンは食傷気味です……

強くなって態度まで何だか大人びてきた宝玉ですが、奔月とともに武林大会に参加するために白雲観へ。今度の武林大会では赤鬆道長にかわる新たな武林盟主が選ばれることになっていました。

一方、某所ではさる黒幕が武林を混乱に陥れるべく王巓らにあれこれ指令を下しておりますが、その黒幕こそ何を隠そう……



大臧に殺されたはずの宝玉の祖父・白三空でありました!

悪役専業の計春華(『天龍八部』や『連城訣』でおなじみですね)が演じているのに、孫思いの爺さんのままで退場するなんておかしいと思っていたら、やっぱりやってくれましたねえ。しかし死んだはずのあの人が生きていたという展開も、このドラマで既に二度目であります。同じ展開を繰り返すのも大概にしていただきたい!(^^;)

で、この白三空、実は以前から朝廷に帰順しており、朝廷の叛徒となりそうな武林諸派を壊滅に追い込むという任務を背負っていたのでありました。それで破壊工作をしやすいように大臧に殺されたふりをして江湖の表舞台から姿を消し、同志の王巓らを使って武林に騒乱のタネをまかせていたという次第。武当派に続いて今度は少林寺に狙いを定めますが……
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『万里の長城の秘密』ほか

2008年01月24日 | TVドキュメンタリー
本日書店で『マーベラス・ツインズ』という名の『絶代双驕』をゲット。

三十路を越えてこういうアニメ絵の表紙の本を買わされるのは、何かの罰ゲームとしか思えません…… 幸い訳文の方はまともっぽいですが、それでも巻末の用語集の「関内・関外」の説明で山海関や万里の長城に言及していないのを見ると、本当に大丈夫なんだろうかと不安になってきます。

で、その万里の長城なんですが、さっきまでNHKハイビジョンのドキュメンタリー『万里の長城の秘密』を見てました。明の戚継光の事績を中心に、明代にレンガ造りの長城が建造されるに至った背景、長城の建造や防衛に駆り出された人々の様子、長城による防衛戦略、そして戚継光の失脚と明の滅亡までを、再現ドラマをまじえて解説していました。

やたら欧米の学者が出て来たりして、いつものNHKのドキュメンタリーと雰囲気が違っているなあと思ってたら、これ、イギリスで制作された番組だったんですね。
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『太王四神記』第7話

2008年01月22日 | 韓国歴史ドラマ
NHK BS-hiで1/24の20:00~21:50に『フロンティア 万里の長城の秘密』というドキュメンタリーが放映されます。戚継光の事績を中心に取り上げるとのことで楽しみであります。

で、今週の 『太王四神記』ですが……

故国壌王は談徳に譲位しようとするが、ヨン家と火天会の策謀により即位式は延期に追い込まれる。事態を打開しようとして宮殿を飛び出した談徳もヨン家の手の者に追い詰められ、あわやという所でキハに救われ、流民たちの集落に身を潜めるのであった……

というわけで、まんま一昔前のRPGな展開になってきましたね(^^;) 前回・今回と火天会の忍者軍団の出番が続いてますが、予告編を見ると次回も活躍してくれるようで楽しみであります。それにしても今回ヨン・ホゲと談徳が同じ日に生まれたという話が出てましたけど、この二人、同じ年だったのかよ!子役の段階では明らかに談徳の方が年下に見えたのですが……
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『大敦煌』第8話

2008年01月20日 | 中国歴史ドラマ
旺栄との政略結婚を迫られながら、密かに方天佑との結婚を望む梅朶公主。しかし肝心の方天佑は敦煌と西夏との友好を重んじ、「自分には都に妻がいる」と嘘をついて(ドラマの中で方天佑の婚姻に関する描写は出て来ていませんが、おそらくはそうなんでしょう。)梅朶との結婚を拒みます。

ショックを受けた梅朶は愛犬の散歩がてら(砂漠の中をリードで犬を引き連れて歩く光景がかなりシュールでした……)西夏の陣営に赴き、旺栄に「方天佑に本当に妻がいるのか、開封に行って確かめてほしい。そうしたら結婚してあげる。」とけしかけます。たまたま主君の李元昊からも使者の役目を仰せつかったので、喜び勇んで開封に向かう旺栄。ロケ地は雄大なのに話の筋は至ってチマチマとしているという、このアンバランスさが何とも言えません(^^;)

梅朶は邪魔者の旺栄は追い払ったとばかりに、莫高窟の壁画模写に出掛ける方天佑のお供をしようとしますが…… このあたりの梅朶の態度を見てると、彼女との結婚に必死な旺栄に思わず同情してしまいます……
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『中国思想史』

2008年01月20日 | 中国学書籍
溝口雄三・池田知久・小島毅『中国思想史』(東京大学出版会、2007年9月)

池田知久「秦漢帝国による天下統一」、小島毅「唐宋の変革」、溝口雄三「転換期としての明末清初期」、同「激動の清末民国初期」の4章構成ですが、特に第2章以降が今までの概説書とはかなり毛色の変わった構成・内容となっています。

池田氏担当の第1章では近年大量に発見されている戦国楚簡についてほとんど言及されていないのが意外でしたが、これらの資料はまだ中国思想史全体の中で位置づけるほどには読み解きが進んでいないということなんでしょうか。それでも近年の発見の成果をふまえて、戦国から前漢までの諸子についてはテクストがまだ編纂途上で構成が流動的であったとしているのは注目されます。

第2章以降では、宋の徽宗を儒・仏・道の三教を一元的にまとめ、国教的なものを構築しようとした皇帝として高く評価している点、黄宗羲の思想などをヨーロッパ的な市民革命の思想と比較するのではなく、あくまでも中国的な枠組みの中で理解しようとしている点、辛亥革命で地方の省が担った役割を高く評価し、更に革命が起こった1911年から中華人民共和国が成立する1949年までの38年間の動乱期を、中国が新しい政治体制を選ぶのに必要だった期間で、唐から宋に移り変わるのに五代十国の53年間を要したのと同じようなものだと評価している点などが注目されるところ。

特に中国思想を中国史の枠組みの中で理解しようとするのは本書全体の方針で、それが必ずしもうまく噛み合っていないんじゃないかと思われるところもありますが、試みとしては面白いと思います。
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『浣花洗剣録』その2

2008年01月18日 | 武侠ドラマ
『浣花洗剣録』第3~9話まで見ました。

方宝玉は祖父の仇討ちを誓ったものの、祖父の方針によりこれまで武術を習ったことがありません。で、武林の大侠と名高い「紫衣侯」に弟子入りするため、幼馴染みで「黄河狂侠」王巓の娘・珠児(ジリアン・チョン)とともに旅に出ます。ところが色々あってこの珠児とはぐれてしまい、宝玉は紫衣侯の養女の奔月と出会いますが、珠児はなぜか大臧とともに旅をするハメに……

「紫衣侯」こと侯風は実は宝玉の父の侯淵の弟で、兄嫁の白艶燭に恋慕して彼女を苦しめ、それが彼女の死の一因となったという暗い過去がありました。それからはや二十年。その間に色々と悔い改めたのか、なよなよした優男から武林の好漢の信望厚い大侠へと不自然なまでに転身を遂げています(^^;) 紫衣侯は正派の剣客たちの求めに応じて大臧を打ち破り、その後で方宝玉の弟子入りを認めますが、双方にわだかまりがあるのかなかなか打ち解けません…… 

一方、大臧は紫衣侯に敗れた後に魔教の一派である白水宮の白水聖母に命を救われますが、この白水聖母こそが死んだはずの母の白艶燭でありました!二十年前に断崖絶壁から飛び降りた後、先代の白水聖母に救われてその後釜になっている模様。しかし彼女は大臧に正体を明かそうとしません。

で、大臧は紫衣侯を国師として迎えるべく中原にやって来た大宛国の王女の脱塵郡主、そしてやはり魔教の一派である青木堡の跡取りの木郎神君と知り合い、それぞれ中原江湖のはぐれ者同士ということで義兄弟の契りを結びます。お互いに惹かれ合っていく大臧と珠児、そして脱塵郡主と木郎神君のカップル。

ということで古龍原作らしく展開が行き当たりばったりのうえに、人間関係が思いっ切り錯綜してます(^^;) 少林・武当を中心とする正派に対し、魔教の方は青木堡・白水宮・火魔神といった勢力に分かれて抗争を繰り広げているようです。

大臧が九つの名剣を探し求めるという話はどうなったのよ!と思いきや、武当派掌門で武林盟主の赤鬆道人の持つ赤霄剣を奪い取るべく決闘を申し込みます。珠児の父親の「黄河狂侠」王巓は正派の領袖ですが、さる黒幕の指令で赤鬆道人に内功を失わせる薬を密かに飲ませるなど、背後で暗躍。この黒幕の正体というのもバレバレなんですが、その辺は次回更新で明らかになると思われ……

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張紀中版『鹿鼎記』に物言い?

2008年01月15日 | ニュース
実質的な放送中止?人気作家・金庸原作のドラマ、700か所の修正求められる!(Record China)

張紀中制作・黄暁明主演の『鹿鼎記』ですが、予告編がアップされてから大分経つのになかなか放映・DVDリリースされないなあと思っていたら、放映審査段階でストップがかかっていた模様。

このニュースソースがどこまで信用できるのか心許ない所もありますが、お下劣な主人公が7人の妻を娶るという設定やラブシーンが問題になっているようです。

しかし大陸でも今まで散々『鹿鼎記』の香港・台湾製ドラマ版や映画版が放映されてきたでしょうに、今になってどうしてこういうことになるのでしょうか(^^;) 「完全に原作に忠実に撮影した」というのがそもそも問題なのかもしれませんが……
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