博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2018年版『笑傲江湖』その1

2018年03月28日 | 武侠ドラマ
ただいま配信中の2018年版『笑傲江湖』を見始めました。全37話(予定)中、今回は第1~3話まで鑑賞。

福威鏢局の林震南は嵩山派の丁勉より先祖伝来の『辟邪剣譜』を譲るよう求められ、旧知の華山派の岳不群に助けを求め、令狐冲・労徳諾・岳霊珊の三人が助っ人として福威鏢局に赴くことになります。


ということでのっけからアレンジ込みの展開ですが、今回の令狐冲はこちら。ネットでは令狐冲にしては幼い、かわいすぎると散々ですが、確かに大師兄というよりは小師弟みたいな雰囲気です (^_^;) 年下のはずの霊珊と同じ年頃のように見えます。


そしてこちらが林平之。パッと見、こちらが主役でもいいぐらいですよね……

しかし福威鏢局は謎の刺客集団の標的となり、林震南夫妻も刺客の手にかかり、その場に居合わせた令狐冲に『辟邪剣譜』の隠し場所を平之に伝えるよう託して息絶えます。刺客の正体は原作通り余滄海率いる青城派なのですが、林震南の背に令狐冲の剣が刺さっていたことから、やはり助っ人に駆けつけた丁勉は令狐冲が下手人だと断定、平之もそれを信じます。

当の令狐冲は余滄海に口封じに殺されそうになったところを、五毒教の藍鳳凰に拉致され、その藍鳳凰のペットの大蛇「黒王」を殺したことにより、青城派に加えて五毒教からも追われる身に。「黒王」の猛毒に冒されて昏倒しているところを緑竹翁に拾われ、「姑姑」こと任盈盈や桃谷四仙(六仙じゃない……)の治療を受けます。


ということで任盈盈も早々と登場。展開を先取りしているというか、原作を換骨奪胎している感じですね。

一方、平之のもとには外祖父の「金刀王家」の王元覇が駆けつけますが、彼が平之を自分のもとに引き取ると言い出すと、ともに『辟邪剣譜』を狙う丁勉と余滄海はこれでは剣譜が奪えないと、示し合わせて五毒教が襲撃をかけた際に王元覇を謀殺するのでした。武林怖い(確信) ここで林平之が「どうしてこんな…… お爺様の武功で五毒教にやられるはずがない!」と言い出すと、余滄海が「東方不敗のしわざだろう」と、めちゃくちゃ雑な嘘をついたのに草w

身寄りがなくなった平之は丁勉の言われるままに嵩山派に弟子入りすることになりますが、彼の狙いが『辟邪剣譜』の奪取にあることに気づくと、隙を突いて逃走し、武林の人士が劉正風の引退式のために集まる衡山を目指します。時を同じくしてやはり衡山をめざす令狐冲は、途中で色魔田伯光に襲われそうになっている儀琳を見かけ……というところで次回へ。

今回令狐冲が「いわゆる正邪とは人間がつけた符号にすぎない。何人の人がこの二文字にとらわれてきたのだろう」という台詞を発していたところを見ると、今回のドラマ版は原作のテーマに向かい合う気があるのかなと期待してしまいます。しかし原作者の金庸先生も、昨今のように「中立」とか「右でも左でもなく」と称しつつ思い切り右に寄るような政治的態度が大手を振るうとは予想できなかったのだろうなと何となく思ってしまいましたが……
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『琅琊榜之風起長林』その9(完)

2018年03月25日 | 中華時代劇
『琅琊榜之風起長林』第47~最終50話まで見ました。

蕭元啓配下の何成・狄明によって掌握された巡防営と東湖羽林営によって金陵城が制圧され、新帝や幼い弟たちの身柄が押さえられます。荀太后は狄明によっていつぞやの疫病の一件に関与していたことを告発され、自害を促され、剣で腹を刺して自ら命を絶ちます。この人、やっぱり綺麗なクイーン・サーセイだなあと……

新帝は退位の式典に引き出され、元啓に皇位を譲ることになりますが、その頃、琅琊山を下りた平旌と荀飛盞は各地で長林軍の旧部を吸収して勤王の軍を組織し、新帝から玉璽を託されて密かに金陵城を脱出した岳銀川と合流。元啓への譲位の直前に金陵城下へと迫ります。

ひとまず退位の式典を中止し、平旌らの潜入に備えて夜半自ら新帝を見張る元啓ですが、夫の所行に絶望した安如が宮城より飛び降り自殺。その混乱の最中に平旌と荀飛盞は新帝を救出して元の長林王府へと逃れますが、巡防営に包囲され、邸宅内で昔平旌が偶然に発見して父より酷く叱られたという抜け穴から逃亡。その後を追う元啓が見たものは……


「梅長蘇」

平旌と元啓との戦いの行方は?そして平旌が最後に下した決断は……

【総括】
ということで明日より日本語版の放映を控えておりますので、結末は省略(あんまり省略してないとか言わないで下さい)。手堅くまとまってはいるし作りは丁寧だし前作へのリスペクトもあるが、何かが足りない、全体的に綺麗な『ゲーム・オブ・スローンズ』だな、前作が90点だとすれば今作は75点ぐらいかと思いつつ見ていましたが、中盤あたりから「スリーパー・セルなんてこういうフィクションの中の存在ですよ?」と言いたげな描写が出てきたり、公文書の役割を見せつけられるような展開が出てきたりと、中国ドラマで時々見られるなぜか放映・配信当時の日本の政治や社会とシンクロしてしまうという謎現象を発生させたことにより、一気に本作の評価が高まりました (^_^;) 何だかんだと言いつつ前作と同様に「持ってる作品」ということになるでしょうか。
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『中国古代史研究の最前線』

2018年03月23日 | 学術
星海社新書より『中国古代史研究の最前線』を出版しました。来週ぐらいには全国の書店の店頭に並ぶようです。



出版社HPより、第1章第1節までの試し読みができるようになっております。
http://ji-sedai.jp/book/publication/kodaishi.html

試し読みで詳細な目次が確認できるようになっていますが、こちらでも揚げておきます。

序章
……甲骨は龍骨だったか/本書の目的と構成/出土文献と伝世文献/歴史学と考古学

第1章 幻の王朝を求めて
第1節 殷墟の発見と甲骨学の発展
……甲骨文発見の反響/殷王の系譜/王国維の二重証拠法/信古・疑古・釈古/殷墟発掘/甲骨文とは/甲骨文の五期区分/日本での懐疑論/奴隷制をめぐる議論/軍隊を率いた王妃/歴組卜辞と分組分類
第2節 夏王朝の探究
……夏墟を求めて/偃師商城の発見/夏商周断代工程/王権の成立/中国考古学の文献史学指向
第3節 古蜀王国としての三星堆
……三星堆遺跡の概要/縦目仮面と蜀王蚕叢/神樹と十日神話/文献の奴隷・脚注としないために/共通性から見る/「中華文明」の源のひとつとして

第2章 西周王朝と青銅器
第1節 西周紀年の復原
……西周青銅器と窖蔵/金文とは/武王克殷の年代/夏商周断代工程の西周紀年/矛盾を来した年代
第2節 非発掘器銘をどう扱うか
……豳公盨への疑念/あの器もこの器も/非発掘器は資料として使うな?/晋侯蘇鐘は発掘器か非発掘器か
第3節 周は郁郁乎として文なるか?
……孔子の理想/用鼎制度と礼崩楽壊/五等爵制は存在したか/西周の官制と『周礼』

第3章 春秋史を「再開発」するには
第1節 『左伝』が頼りの春秋史研究
……春秋史研究の苦境/『左伝』とはどのような文献か/『左伝』の腑分け/『左伝』の魅力に取り憑かれる研究者
第2節 東遷は紀元前七七〇年か
……清華簡『繋年』の出現/東遷の認識① 『史記』と『左伝』から/東遷の認識② 『竹書紀年』から/東遷の認識③ 清華簡『繋年』から/東遷の年代/真説・夏姫春秋① 『左伝』と『国語』から/真説・夏姫春秋② 清華簡『繋年』から
第3節 盟誓の現場から
……盟書の発見/侯馬盟書の内容/侯馬盟書と范氏・中行氏の乱
第4節 春秋諸侯のアイデンティティ
……曾侯と天命/虚構性が問われなかった始祖伝承/呉は太伯・仲雍の子孫か

第4章 統一帝国へ
第1節 陵墓と死生観の変化
……文革中の大発見/死者の宮殿として/兵馬俑に課せられた使命/天上世界と地下世界/様々な死生観
第2節 竹簡インパクト
……竹簡とは/簡帛発見の歴史① 前近代/簡帛発見の歴史② 清末・民国期/簡帛発見の歴史③ 一九七〇年代/簡帛発見の歴史④ 一九八〇年代以後/非発掘簡の流通と偽作説/「骨董簡」問題
第3節 竹簡から何が見えるか
……甲骨卜辞から卜筮祭禱簡へ/庶民のものとなった占い/国家の歴史と個人の歴史/四面楚歌の裏側で/「歴史記憶」の戦争

終章
……嫌われ劉賀の一生/本当に疑古時代を抜け出すべきか?

あとがき
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『琅琊榜之風起長林』その8 公文書とトカゲの尻尾切りと

2018年03月19日 | 読書メーター
『琅琊榜之風起長林』第41~46話まで見ました。

元啓が墨淄侯と結託していることを知ってしまった佩児は、主従で沈香湖に外遊した際にこのことを思い切って荀安如に告白しますが、そこへ事態を察した元啓が出現。 元啓「(剣の柄に手をやり)ここで始末させて貰おう」 安如「やめて!せめて血を見ないで済むように湖に沈めてあげて!」 何となく大阪の南港に沈める的なサムシングを連想してしまいますが、元啓のおかんの死に際といい、元啓関係者が死ぬ時はノリがヤクザ物っぽくなるんですよね……

しかし東海国の生まれで水泳が得意な佩児は密かに生き延びて、近辺に来ていた岳銀川主従に保護されます。彼女が水泳が達者なことは荀家の者なら承知していることのようなので、おそらく安如もそれを知ってて湖に沈めるよう望んだということですよね。

その岳銀川は軍功に対する褒美として新帝への謁見が叶い、「東境10州の陥落は何者かが機密を流出させたのが原因ではないか」「元啓が取り戻した7州は残りの3州と違い、敵軍に戦意がないようだった」と、荀白水や元啓の前で空気を読まず思ったことをありのままに口にしてしまいます。

岳銀川は更に東境各州の軍報の写しを取り寄せて東海国との戦いの状況を知ろうとしますが、佩児から元啓と墨淄侯との結託の一件を知らされ、思い切って荀白水に元啓を告発することに。一方、琅琊閣に引きこもっている平旌らも東境10州の陥落と元啓の軍功を不審に思っており、墨淄侯の淮東3州占拠の狙いは「水深船塢」(具体的にどういうものを指すのかよくわからないのですが、軍艦ドックのようなもの?)の建造にあると見抜き、書信でそのことを荀白水に注進していたのでした。

そういうことで荀白水は岳銀川の意見をすんなり受け入れ、まずは墨淄侯に対抗するために、前朝の衛将軍が築いた「水深船塢」の設計図を文書庫から取り寄せようとしたところ、墨淄侯の依頼を受けた元啓が既に持ち去っていたことが判明。疑惑が完全にクロになったところで荀白水は自ら新帝に元啓を告発しようとしますが、やはり事態を察した元啓が手を回し、墨淄侯の間諜戚夫人が登城中の荀白水の輿を襲撃して暗殺し、彼の手から告発の文書を奪い去ったのでした…… 


佩児、そして叔父荀白水の死によって完全に表情が消えてしまった元啓の妻・荀安如。「あなたが叔父を殺させたんでしょう!」と詰め寄る彼女に対し、直接の下手人である戚夫人を衛将軍の設計図とともに櫃に閉じ込め、墨淄侯に引き渡すべく自ら東海国へと送り出すと見せかけて、途中で文書ごと焼き殺すさまを見せつけ、「どうだ、叔父の敵をとってやったぞ?」と声をかける元啓。いま日本で話題のトカゲの尻尾切りですね(白目)

そして元啓は毎年恒例九安山での三月春猟をクーデターの好機と定め、準備を進めます。九安山、三月春猟、皇族によるクーデター…… うっ頭が…… しかし兄が死んだのにそんな気分になれないという荀太后の意見が通って春猟が中止になると、今更次のチャンスなど待てないとクーデターに踏み切る元啓。このあたりのグダグダさ具合は何となく前作の誉王を彷彿とさせますね。

荀白水の死によって寄る辺を失った岳銀川、そして荀飛盞の要請を受けて再び金陵に戻る決意をした平旌の運命は……?

ということで前回あたりから皇后の密詔・軍報・「水深船塢」の設計図・奪われた荀白水の告発と、各種の文書類が物語の中で重要な役割を果たしていますね。このドラマはもうすぐ日本語版の放映が開始されるのですが、いま行政文書の扱いや管理が問題になっているだけに、こういう文書類が話にどう絡むかにも注目して見て欲しいところです。実は今回平旌と林奚との関係にも大きな進展があったのですが、こういう展開を見てしまうとそんなのどうでもよくなってきますw
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『琅琊榜之風起長林』その7

2018年03月14日 | 中華時代劇
『琅琊榜之風起長林』第35~40話まで見ました。

大渝国の康王率いる皇属軍に大勝した平旌ですが、勅命を無視して戦いを仕掛けたということで、金陵の新帝のもとには彼に対する弾劾の嵐が…… 平旌は宮廷に出頭し、新帝・父親の庭生・荀白水ら群臣の前で審問を受けることになります。重い病を押して息子を弁護していた庭生ですが、新帝に語りかけている最中に昏倒。審問は中断され、庭生は長林王府へと搬送され、そのまま帰らぬ人となります。

葬儀が執り行われた後、新帝は自ら平旌の懐化将軍免官と長林軍解体を決断し、それ以上の処分を求める動きを封じようとします。長林王府も閉鎖されることになり、平旌は父親の遺体を因縁の地梅嶺へと葬り、兄嫁蒙浅雪・幼い甥っ子の策児とともに喪に服し、俗世間との交わりを絶つことに。長林王府と関係が良好だった荀飛盞も禁軍大統領を辞任し、江湖での生活に入ります。この人の処世を見てると、本当に綺麗なジェイミーだなあと……

それから二年。東海国の実権を握った墨淄侯が大梁との東境10州を陥落させ、出征した元啓がそのうちの7州を取り戻すという大功を立てますが、実はこれ、墨淄侯と元啓が示し合わせてやったことなのでした。墨淄侯が本当に欲しいのは10州のうち3州で、残りの7州はどのみち東海国の国力では長く維持できないし、八百長で元啓に取り戻させてやるから、それで手柄を挙げろという話ですね。

その功績により、元啓は荀白水の姪で太后のお気に入りでもある荀安如との婚姻を望み、更に莱陽侯から莱陽王への昇爵も認められます。その婚礼の日に、墨淄侯は半分嫌がらせのように元啓に密使の戚夫人を派遣し、婚礼の祝いとして烏晶剣を贈ります。台詞からこの戚夫人がたびたび密使を務め、元啓といい仲だったらしいことが臭わされますが、これ、墨淄侯もわかってやってますね……


烏晶剣の処分に困った元啓は配下に夜な夜な剣を邸宅の池に捨てさせますが、それを安如の侍女佩児が目撃してしまい…… ということで番組内CMのメインキャラクター佩児がようやく登場ですw つーかここで剣を捨てたら捨てたで後々墨淄侯が「そう言えばあの剣はどうした?」みたいなことを言い出して面倒なことになるのでは……

一方、琅琊閣に引きこもっていた平旌は荀飛盞から東境のことを知らされ、元啓に疑惑を抱くようになります。そして芡州の守将で東海国との戦いで大功を挙げた岳銀川も、敵の陣営で大梁から流出させたと思しき自国の地図を発見してしまい、同様に疑惑を抱くことに…… 


ということでこれまた番組内CMのメインキャラだった岳銀川がようやく本編でも登場しました。というよりは話は逆で、番組内CMで目立ってたのは本編での登場が遅い埋め合わせでしょうね。

元啓はと言えば、同じく軍功を揚げた狄明に接近。この狄明、いつぞやの金陵一帯での疫病で家族・一族をすべて亡くしているのですが、荀太后の密詔を見せて疫病の一件に隠された陰謀を明かして味方につけ、最終目標の皇位簒奪を目指して邁進することに……
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『琅琊榜之風起長林』その6

2018年03月08日 | 中華時代劇
『琅琊榜之風起長林』第29~34話まで見ました。

新帝即位を承けて任地の甘州から都金陵へと戻る平旌。皇子時代から仲が良かったということで新帝元時はウキウキ顔で平旌と対面し、それを苦い顔で見つめる荀太后と内閣首輔荀白水…… そして庭生は微妙に体調がすぐれず、死期を悟ったのか、残った息子の平旌に長林軍の牌令を託します。一方、平旌に着いて甘州に着任した元啓は、彼が留守の間に潜入してきた墨淄侯と良からぬ相談……

そしてまだ幼い新帝が自分たちの意のままに出来ると踏んだ荀白水と荀太后は、長林王府の影響力を排除するために、皇帝直属という位置づけながら長林王府の影響が強い羽林営の解体・再編に乗り出し、庭生も受け入れざるを得ないことに。そして荀氏の一族ながらも長林王府と関係が良好な荀飛盞は、叔父・叔母の動きに憂慮が隠せません。

甘州に戻った平旌ですが、大渝国の康王に捕虜の交換を求められ、ひょっとして和平の談判ができるかもと国境まで出向き、捕虜となっていた彼の甥を釈放したところ、康王は即刻射殺し、平旌に向かって兄の平章や父の庭生ならともかくお前では話にならんと甘州衛に宣戦布告。どうやら煽りに来ただけのようです。

戦いは避けられないと判断した平旌は、自ら大渝兵に扮して康王率いる皇属軍の陣営に潜り込んで偵察に励みます。その際に大渝領内の磐城で医療活動をしていた林奚と再会。兄の死以来彼女にわだかまりがあった平旌ですが、それも段々と解けてきたようです。

偵察の甲斐あって康王撃破に自信を深める平旌ですが、不安なのは現在先帝の服喪中で、こちらから大規模な戦闘を仕掛けたり派手に戦勝すると物言いがつく可能性があること。そこで腹に一物抱えているのも知らずに元啓を使者として金陵に派遣し、父王にお伺いを立てます。庭生は当然康王と決戦をするという平旌の方針に賛意を示しますが、元啓は荀白水に接近。濮陽纓から託されたいつぞやの疫病の折りの荀太后の密詔を提示して脅しをかけつつ、荀氏一族との結託を図ります。

平旌が康王との戦端を開くつもりだと元啓より知らされた荀白水は、何となく腑に落ちない顔の新帝から先帝の服喪中に防禦以外の戦闘行為はまかりならんという勅書を得て、自ら使者となって甘州に赴きます。それを察した平旌は「こんな辺境だと道がよくないから、馬車の車軸が断裂するだろうなあ(チラッチラッ」と、配下にそれとなく工作を示唆して前線に赴く時間を稼ぎます。この手の使者が到着するまでに事を済ましてしまえばいいという発想は中国時代劇でお馴染みですねw

結局甘州に戻った元啓がそれとなくサポートしたこともあって荀白水は戦端を開くギリギリのタイミングで平旌の前に到来。しかし平旌は勅書の読み上げを拒否し、「軍功を揚げることが自分の目的ではない。すべての責任は戦後に自分が取る。」と宣言し、荀白水を置いて出征したのでありました。

ということで詳細は省略しますが、庭生絡みで今回も前作の回想シーンが盛り込まれています。それを見ながら、今作に足りてないのは飛流みたいな存在ではないかと何となく……
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2018年2月に読んだ本

2018年03月01日 | 読書メーター
オッペケペー節と明治 (文春新書)オッペケペー節と明治 (文春新書)感想
自由民権運動へのノスタルジーが込められているという時代背景と政治的なメッセージ性の強さ、「声の文化」と「文字の文化」をつなぐ存在として、蓄音機や鉄道といった新しい事物との関わり、そして反政府的な内容から日清戦争賛美へといった内容や世相の変化など、多角的にオッペケペー節について分析している。オビにもある通り「明治150年」を意識しているようだが、こういう明治の掘り起こしもアリだろう。
読了日:02月02日 著者:永嶺 重敏

トラクターの世界史 - 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たちトラクターの世界史 - 人類の歴史を変えた「鉄の馬」たち感想
科学技術史的な内容に終始するのかと思ったら、資料としてトラクターに関連する小説(『怒りのぶどう』など)や小林旭の歌などの歌詞を引用したりと、取っつきやすい構成となっている。20世紀前半にトラクターを導入しようとした世界各地の農民たちが、トラクターを馬などの農作業用家畜の延長としてとらえていたという話が印象的。
読了日:02月04日 著者:藤原 辰史

イスラーム主義――もう一つの近代を構想する (岩波新書)イスラーム主義――もう一つの近代を構想する (岩波新書)感想
現在まで続くオスマン帝国崩壊後の中東の「あるべき秩序」の模索を、イスラーム主義を軸に描き出すという内容。イラン革命後の同国の体制をイスラーム共和制と評価したり、イスラーム法ではムスリム同士の争いや自死が禁じられているところを解釈の転換が図られたこと、そして「対テロ戦争」において誰が「テロリスト」なのかという問題が恣意的に曖昧にされているという問題提起などを面白く読んだ。
読了日:02月06日 著者:末近 浩太

古代中国の社: 土地神信仰成立史 (東洋文庫)古代中国の社: 土地神信仰成立史 (東洋文庫)感想
シャヴァンヌの古典的研究の翻訳だが、本文やその研究手法自体はやはりその時代のもの。本書の読みどころは、シャヴァンヌの経歴や、本書以後の「社」研究の流れをまとめた訳者菊池章太氏による解説かもしれない。
読了日:02月11日 著者:E. シャヴァンヌ

顔氏家訓 (講談社学術文庫)顔氏家訓 (講談社学術文庫)感想
抄訳ながら読みやすく読みどころを押さえたものになっていると思う。語釈・訳注はできるだけ訳文中に盛り込むようにしたとのことだが、別に訳注を付けた方が良かったのではないかと思う部分がちらほら。巻末の評伝は最初に読んだ方がよいだろう。
読了日:02月13日 著者:顔之推

渤海国とは何か (歴史文化ライブラリー)渤海国とは何か (歴史文化ライブラリー)感想
渤海国に絡んで現代の中国と韓国による「歴史の争奪」の問題、「冊封体制論」の批判、近年流行の「東部ユーラシア世界」論から見た渤海国、後身となる東丹国の評価など、議論が広範にわたっていて、かつどれも興味深い。著者自身は渤海国と統一新羅によって東北アジアは南北に分割され、それぞれ朝鮮世界と満洲世界の別々の道を歩むようになり、満洲世界は中国世界の一員となっていくという理解を取るが、それを著者が吐露するように、当時の「思い」や立場とどう併存させていくかは、重い課題となっていくだろう。
読了日:02月15日 著者:古畑 徹

専制国家史論 (ちくま学芸文庫)専制国家史論 (ちくま学芸文庫)感想
メインは中国と日本との国家形成の比較だが、「中国史から世界史へ」という副題通り西欧の古典古代が参照されたり、話がボノボまで遡ったりする。日本が中国の後追い国家として数百年単位で発展に要する期間を圧縮させた点、日本も中国も戦国時代が社会再編の時代となったこと、そして中国共産党の支配について「社会は一見すると高い操作性を示した」としつつも、「しかし、政策を受け入れ、自ら具体化すべき自律的社会の無いがゆえに、政策は安定的に実質化されなかった」とする評価が印象的。
読了日:02月18日 著者:足立 啓二

儒教が支えた明治維新 (犀の教室 Liberal Arts Lab)儒教が支えた明治維新 (犀の教室 Liberal Arts Lab)感想
「儒教が支えた明治維新」とあるが、そのテーマに即しているのは全3章中第1章のみで、全体は「儒教が支えた日本の歴史」と言った方がふさわしいと思う。内容はこれまでの著者の論著や、著者が深く関わった「にんぷろ」の成果のエッセンス的なもの。あとがきに『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』を意識した一言があるが、本当に悲劇なのは「儒教に支えられた」日本のことを自覚せずに中国・韓国をあげつらうことなのかもしれない。
読了日:02月19日 著者:小島 毅

日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)日本軍兵士―アジア・太平洋戦争の現実 (中公新書)感想
日本軍兵士の置かれていた環境、特に心身の疾患や医療状況に着目する。兵士の虫歯や水虫などがクローズアップされていると言えば本書のスタンスが伝わるだろうか。「産児報国」を唱えながらも政府や軍部が戦争未亡人の再婚に否定的だったり、女性の動員を未婚女性に限定したりと、戦争遂行のための合理性より「家」制度に女性を縛り付ける方が優先されたという指摘も興味深い。
読了日:02月25日 著者:吉田 裕

ナポレオン――最後の専制君主,最初の近代政治家 (岩波新書)ナポレオン――最後の専制君主,最初の近代政治家 (岩波新書)感想
回想録など後の時期に成立した資料について、逐一正確性を検討しているのが面白い。個別の議論については、現代フランスの国内のムスリムへの対応の起点をエジプト遠征に求める点、夫婦間の権利の不平等などナポレオン法典が成立時に既に「時代に遅れている」部分を内包していたという点、百日天下の際に仲違いしていた弟ルシアンが再び兄ナポレオンに協力的になった事情などが印象的。
読了日:02月26日 著者:杉本 淑彦

文字講話 甲骨文・金文篇 (平凡社ライブラリー)文字講話 甲骨文・金文篇 (平凡社ライブラリー)感想
文字講話シリーズの総論的な位置づけ。特に金文に関して、講演当時(2005年)頃の著作集別巻本『金文通釈』の刊行を踏まえ、当時の新出金文をふんだんに取り上げたり、それらを資料として加えつつ西周紀年の暦譜再現の話を展開しているのが印象的。
読了日:02月27日 著者:白川 静

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