博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『鬢辺不是海棠紅』その4

2020年11月30日 | 中国近現代ドラマ
『鬢辺不是海棠紅』第19~24話まで見ました。


安貝勒の母親の誕生日の宴で、商細蕊は憧れの名優侯玉魁と共演することに。しかし彼は長年の習慣からアヘン中毒に陥っていたのでした…… 侯玉魁を演じるは古装でお馴染みの沈保平。今回の特別出演その1です。

この安貝勒の母親というのは、今がまだ清朝の世だと信じて生きているということですが、実は大きなトラウマを抱えておりました。清末に光緒帝と珍妃から身ごもった子を密かに皇儲と指名され、その後戊戌の政変によって光緒帝が西太后に幽閉されても、辛亥革命が起こっても、生まれた我が子を皇儲のつもりで養育してきたのですが、辛亥革命勃発後の混乱の中でその子が行方不明となってしまい、以来「光緒帝と珍妃に申し訳ない」という気持ちを抱えて心を病んでしまったのでした。

商細蕊はそこで、彼女の置かれた境遇をモデルにしつつ結末を書き換えた新作を上演しようと思いつき、杜洛城とともに新作『潜龍記』の脚本を練り上げていきます。ついでに安王府の戯楼も水雲楼に払い下げられ、ようやく自らの城を持つことに。しかし今度の新作では商細蕊は皇帝役を演じるため、別途男旦(女形)か女優を探す必要が生じます。


ここで今回の特別出演その2杜淳演じる原小荻が登場。彼の京劇俳優としての引退の宴で、商細蕊は彼の弟子の女優兪青と出会い、彼女を皇妃の役に据えることに。


そして雲喜班の班主四喜児の弟子の小周子。下っ端の弟子ながらもなかなかの素質を持っているということで、四喜児を騙して1ヶ月限りということで引き抜きます。気弱そうな顔をしていますが、雲喜班で思い切り虐待されてます。というか水雲楼でもなかなか馴染めません……

一方、程鳳台の周辺でも動きがあり、姉の夫の曹司令が日本人の女医木村を身辺に侍らせるなど、どうも日本軍に取り込まれているのではという疑惑が生じ、曹貴修と図って曹司令に納入する兵器を密かに曹貴修に接収させるという密約を結びます。そうした動きが疑惑を招いたのか、南京から劉漢雲が視察に到来。その過程で絡子嶺が掃討され、曹貴修の子を孕んだ古大犂が逃亡してくるという一幕も。

曹貴修は事情を劉漢雲に説明しようとするも、彼自身は曹貴修の前になかなか姿を見せず、取り付く島もなし。しかし劉漢雲が実は安王府と縁があり、義子の商細蕊との関係からも王府で上演する『潜龍記』は必ず見に来るだろうということで、程鳳台は2人を対面させようとセッティングします。


ということで皇帝役の商細蕊。公演は成功に終わり、劉漢雲と曹貴修の密談もスムーズに進みましたが、公演を垣間見た安貝勒の母はそのまま息を引き取り、小周子も四喜児によって強引に雲喜班に連れ戻されてしまい……という所で次回へ。
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『鬢辺不是海棠紅』その3

2020年11月24日 | 中国近現代ドラマ
『鬢辺不是海棠紅』第13~18話まで見ました。

舞台勝負に備え、程鳳台は水雲楼を抜け出したベテランの団員に代わる助っ人俳優をスカウト。商細蕊も着々と準備を進めます。


で、蓋を開けてみれば、姜氏家伝の「仙人歩法」で閻惜嬌を演じて勝負に臨む陳紉香に対し、趙飛燕を演じる商細蕊は大きな太鼓の上で「玄女舞」を披露して圧倒。


興行勝負に負けた方は一年間興行停止+丸刈りという条件だったので、渋々つるつる頭にされる陳紉香 (^_^;)

しかしこれで姜栄寿父子が打倒商細蕊を諦めるわけもなく、一門の祖師張北斗の祭祀の場で彼の行状を吊し上げます。商細蕊の方は姜栄寿に無理やり頭を下げさせられそうになる所を、椅子の脚を叩き折って武器代わりにしたりとあらん限りの抵抗をし、無事に姜栄寿から清理門戸されてしまいますw 丸刈りにされた陳紉香も伯父の所業は快く思っていない様子で、「どうせ北平では一年間商売できないのだから」と上海での興行を決めていたところを、商細蕊を上海行きに誘います。

ここで程鳳台のターンへ。ドイツとの合作事業で留仙洞の工事を進め、義弟の范漣に監督をさせていたところ、その范漣が現地の絡子嶺の山賊に捕らえられ、人質となったということで、自ら解放交渉に向かいます。程家と絡子嶺とは一定の通行料を払う代わりに良好な関係を保っていたのですが、内部でクーデターが起こり、頭目の弟古老二が兄を殺害して取って代わったために、状況に変化が生じていたのです。


程鳳台も人質になってしまいますが、そこへ前頭目の娘の古大犂が古老二を襲撃して二人を救出。中の人は久しぶりに見る黄聖依。(と言っても現代物とかにはずっと出てたらしい)

しかし新頭目となった彼女から山道の通行料を2割値上げすると通告され、これを拒絶したことから再び人質生活に…… ここで程鳳台が古大犂から「オレの婿になれ!!」と迫られたり、「それ何て武侠?」と言いたくなる展開が挿入されます (^_^;) で、今度は事態を知った程鳳台の姉の程美心が手を回し、曹貴修によって無事救出。ついでに北平に帰還した際に商細蕊の清理門戸の件を知った程鳳台が、曹貴修に姜家を襲撃させ、処置を取り消したりさせていますw

一方、商細蕊の方は南京で途中下車し、舟遊びで陳紉香に悪い遊びを仕込まれそうになったり、政府の有力者劉漢雲の知遇を得てその義子になったりして、しっかり後ろ盾を得て北平に帰還。劉漢雲の前で崑曲の歌を披露したことがきっかけで、当時衰退していたという崑曲に興味を持ち始め……というあたりで次回へ。

このドラマ、京劇の近代化とか創新を描いているわけですが、日本近代の歌舞伎やら能楽でもこういう試みがあったはずで、これの日本版のようなドラマは撮れないものかなと思ってしまいます。
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『旗袍美探』

2020年11月17日 | 中国近現代ドラマ
『旗袍美探』全34話を鑑賞。


舞台は1930年代の上海。パリ帰りのお嬢様蘇雯麗は、知人の邸宅での殺人事件を解決したのを機に、新たに建てた豪邸で「愛思小姐偵探社」を結成。「愛思」は彼女のイニシャルの「S」を指します。


探偵社のメンバーは、最初の事件が起こった屋敷でメイドをしていた小桃子、やはり最初の事件で知り合った運転士の老宋&小譚のコンビ、そして高級ホテルの料理人からヘッドハンティングした祥叔。


事件現場では上海の中央巡捕房探長の羅秋恒、


そしてその部下の警官沈暁安と時に競い合いつつ、時に協力し合いつつ捜査が進められます。

事件現場はダンスバー、長距離列車の車内、はたまた古書店、崑曲の劇場、雑誌編集部、高級ブティック、紡績工場、サーカス団等々様々。2~3話で1つの事件が解決。その合間に蘇雯麗&羅秋恒、小桃子&沈暁安の恋愛話が進展していきます。そしてその背後では、10年前に蘇雯麗の妹を誘拐・殺害した凶悪犯丁如山の陰謀が着々と進められていきます。

短編連作形式ということで、意外な俳優がゲスト出演していたりします。有名どころでは周星馳映画に出ていた張雨綺(キティ・チャン)、『琅琊榜』の「蒙大統領」こと陳龍が出演しています。

実は「旗袍」と言う割にはヒロインがチャイナドレスを着ていないのが気になります (^_^;)(洋服を着ている方が多い)中身はライトミステリーの佳作といった感じです。日本の刑事ドラマに親しんでる向きには楽しめるんじゃないでしょうか。最後はなぜか伝奇ミステリーみたいなノリになりますが……
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『鬢辺不是海棠紅』その2

2020年11月16日 | 中国近現代ドラマ
『鬢辺不是海棠紅』第7~12話まで見ました。

水雲楼の根城の家賃の支払いが苦しくなっても余裕の態度の商細蕊。いざとなれば先祖代々蓄えた隠し財産を使えばいいという目算だったのですが、これが古株の団員によって密かに使い込まれていたことが発覚して絶望。ふてくされて掘り出した宝箱の中に籠もってしまいます……

にっちもさっちもいかなくなった商細蕊は、北平を引き払って元々活動していた平陽に戻る決心をします。そこへ程鳳台が一座の苦境を知り、水雲楼の株主として支援することになります。ついでに一座の財務管理も担当することになるのですが、団員が使いたい時に使いたいだけお金を引き出していくというガバガバな金の使い方に呆れ返り、財務や団員たちの契約に関して近代的な規約を作ります。


ここらへんで新キャラが登場。金持ちの家の出身で京劇脚本家志望の杜洛城、通称七少爺。自称「文曲星」です (^_^;) 「財神爺」の程鳳台とはパリ留学繋がりで間接的にちょっとした因縁がある模様。水雲楼の面々とは旧知で、商細蕊の芸に惚れ込んで彼のために脚本を書こうとしています。中の人は『月に咲く花の如く』の王世均役李択鋒です。


程鳳台は芸事が嫌いな妻の范湘児に無断で水雲楼への投資を決めたのですが、それがバレて家庭内の空気が微妙に険悪にw 范湘児の中の人は『エイラク』の嫻妃でお馴染み佘詩曼。


ここらへんで程鳳台と曹司令の息子曹貴修との間でいざこざが起こり、サラエボ事件で使用された拳銃を贈って懐柔しようとしたり、頭上のリンゴならぬ頭上のケーキを撃ち落とす勝負に挑むことになったりと面白エピソードが出てくるのですが、本筋に関係ないので委細は省略w


さて、商細蕊を追い落とそうとする姜栄寿は、東北から甥の陳紉香を呼び戻し、商細蕊と対抗させようとします。2人は1年間の営業停止と丸刈りを賭けて興行成績を競うことに。陳紉香は伯父から姜家伝来の「仙人歩法」を授けられて『水滸伝』の閻惜嬌を演じ、商細蕊は杜洛城による新作脚本を引っさげて趙飛燕を演じることになります。商細蕊は更に伝説的な京劇役者寧九郎より授けられた九天玄女の絵巻から示唆を受け、「玄女舞」の修練に励みます。

水雲楼では隠し財産の一件以来団員たちの仲が微妙にギクシャクし始め、1人抜け2人抜けという状況だったのですが、姜栄寿&姜登宝父子は更に古株の団員の引き抜きを図り……というあたりで次回へ。

出だしはややスローペースでしたが、ここに来て新キャラも陸続と登場し、話が盛り上がってきました。
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『鬢辺不是海棠紅』その1

2020年11月10日 | 中国近現代ドラマ
春頃に配信された于正作品ですが、他に見たいものが色々あったりしてようやく手を付けることになりました。ということで『鬢辺不是海棠紅』第1~6話まで鑑賞。全49話です。

ここんところずっと上海が舞台の近代物を見ているのですが、こちらの舞台は1930年代の北平(現在の北京)。


主人公その1となるのが、黄暁明演じる豪商程鳳台。北平の軍権を握る曹司令を後ろ盾とし、単身東北に乗り込んで品物を仕入れてきたりと、アグレッシブな商売に励んでいます。


で、芝居のことなんかとんとわからないという程鳳台が、地元の商人からの接待で京劇の女形商細蕊の舞台を見たことで、彼に興味を抱くようになります。彼が主人公その2となります。


こちらが普段の商細蕊。京劇界の風雲児で芸の実力はピカイチですが、人格に色々と難があり、北平の京劇界で幅を利かせる同門の師叔姜栄寿を敵に回したりしています。

商細蕊が曹司令とかつて諍いを起こしたということで北平中の劇場から出入り禁止となったと聞けば、程鳳台は息子の満一歳の宴で商細蕊を公演させ、曹司令と和解の機会を設けてやったりと、色々世話を焼くようになりますが、その宴の場でたまたま彼の師姐が出席していたばっかりに、師姐夫妻を当てこするような歌をうたったりと、次から次へとトラブルを引き起こします。

商細蕊は師姐の蒋夢萍を母親代わり、姉代わりとして育ちましたが、その彼女が程鳳台の遠戚にあたる常之新と恋愛に末に師門を出てしまうと、2人を深く恨むようになっていたのでした。

曹司令の件も世間的には誤解を抱かれたままで、結局曹司令に睨まれた男ということで、商細蕊は唯一残った劇場での出演の機会も断たれてしまいます。一方、程鳳台はその商細蕊の最後の公演となった「長生殿」で、彼の演じた楊貴妃を目にして心底その芸に惚れ込むようになります。彼のこれまでの身の上を、死を前にした楊貴妃に投影したのです。

今回は、練習場兼宿舎の家賃すら覚束なくなった商細蕊の一座「水雲楼」の面々が、金持ちの程鳳台から支援を引き出せないかとやきもきするあたりまで。于正作品特有のかましやハッタリなどもなく、常にはない于正の意気込みのようなものを感じます。程鳳台と同様に京劇の知識には乏しいので、敷居の高さも感じてしまいますが……
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2020年10月に読んだ本

2020年11月01日 | 読書メーター
震雷の人震雷の人感想
安史の乱を描いた作品で、地方の民や軍人の目から戦乱の様子を描き出している。ヒロイン采春や、彼女が触れ合うことになる架空のキャラクターたちもさることながら、安禄山の子の安慶緒のような実在の人物の置かれた立場、心情も描き方がなかなか面白い。出来れば上下巻ぐらいの分量で読みたかった作品。
読了日:10月01日 著者:千葉 ともこ

番号を創る権力: 日本における番号制度の成立と展開番号を創る権力: 日本における番号制度の成立と展開感想
日本の国民総背番号制「失敗の本質」的な研究。諸外国の事例を参照しつつ、日本の場合は戸籍制度の存在とその強さが大きな壁となっていること、総背番号制を阻む大きな理由として挙げられがちな日本人のプライバシー意識の強さも、単なる反対のための方便にすぎないことなどを指摘している。各国の制度について歴史的な概略をまとめており、参照価値がある。本書の末尾の言を踏まえると、政府が真に福祉国家の質的向上をもたらすために番号制度を導入すれば、こうした構造的問題や国民の反対を乗り越えることができるということになりそうだが…
読了日:10月03日 著者:羅 芝賢

最強の男――三国志を知るために最強の男――三国志を知るために感想
三国志ファンから打ち棄てられてきた演義を読み込む面白さを、呂布をめぐる議論を中心に語っていく。「最強の男」という評価は演義の作為によって結果論的に生じたものであること、李粛との関係から、呂布が物語世界の中で薛仁貴と対になる存在とされていたのではないかという指摘は面白い。呂布の位置づけ、付章で問題にされる「四大奇書」概念や毛本の評価など、「虚偽」が本書を貫くテーマである。
読了日:10月05日 著者:竹内真彦

天才 富永仲基 独創の町人学者 (新潮新書)天才 富永仲基 独創の町人学者 (新潮新書)感想
『出定後語』など富永仲基の著書を読み解き、加上説、大乗非仏説といった彼の学説・思想、特に加上説について詳しく解説するとともに、彼の学説・思想がどう受容されてきたかを振り返る。富永が「発見感」のある人物という評価は面白い。個人的には内藤湖南によって見出され、顧頡剛の所説とも結びつけられたという印象が強かったが、江戸期には「排仏論」と受け取られ、国学者に仏教非難のために持ち上げられたり、学僧から批判されたとのこと。
読了日:10月10日 著者:釈 徹宗

中国の歴史1 神話から歴史へ 神話時代 夏王朝 (講談社学術文庫)中国の歴史1 神話から歴史へ 神話時代 夏王朝 (講談社学術文庫)感想
神話あるいは文献の記述と考古学との関係から始まり、中国発掘史、そして多元的に発生した文化が、地域間交流と社会統合を経て初期国家へと収斂していく過程をまとめており、現在でも参考価値が高い。巻末に注目の石峁遺跡など、近年の主要な発掘・研究成果をまとめてくれている。ハードカバー版を読んだ時にも思ったが、初期国家ということであれば殷の次の西周も扱って貰えるとなお良かった。
読了日:10月11日 著者:宮本 一夫

中国の歴史2 都市国家から中華へ 殷周 春秋戦国 (講談社学術文庫)中国の歴史2 都市国家から中華へ 殷周 春秋戦国 (講談社学術文庫)感想
著者の世界観を受け入れないと引用が難しいという点で汎用性に乏しい概説。本シリーズに求められているのは、どちらかと言うと本書に書かれていることを理解するうえでの前提となる知識ではないだろうか。巻末の文庫版のあとがきも、最新の研究成果一般の紹介というよりは、著者の近年の研究成果の紹介である。これも『繋年』や『楚居』がどういう文献なのかという説明がまず必要なのではないかと思うが…
読了日:10月14日 著者:平勢 隆郎

元号戦記 近代日本、改元の深層 (角川新書)元号戦記 近代日本、改元の深層 (角川新書)感想
宇野哲人以来の宇野家及び宇野家人脈を中心に据えて振り返る元号制定記。お馴染みの名前が多数登場するので、中国学に関心がある読者はそれだけで楽しめる。欧米メディアが「令和」の「令」を「命令」と訳したのは、実は先例に沿っていたと評価できるのではないかなど、面白い指摘も盛り込まれている。ただ、個人的には、元号に関しては(おそらく著者の意図とは逆に)戸川芳郎の考え方に共感を覚えてしまうが……
読了日:10月15日 著者:野口 武則

「民都」大阪対「帝都」東京 思想としての関西私鉄 (講談社学術文庫)「民都」大阪対「帝都」東京 思想としての関西私鉄 (講談社学術文庫)感想
大阪を「帝都」東京に対する「民都」と位置づけて見る近代関西「私鉄王国」史。その大阪も一枚岩ではなく、長らく歴史上の空白地帯であったキタに対し、ミナミは古代以来の王権を中心とする歴史に彩られていた。そしてクロス問題での阪急の敗北と昭和天皇の大阪行幸を機に、大阪は「帝都」の様相に取り込まれていく。その歴史は昨今の大阪都構想でも幾ばくか尾を引いているようである。都構想がキタ中心に展開されているのは歴史の皮肉を感じるが…
読了日:10月17日 著者:原 武史

暴君――シェイクスピアの政治学 (岩波新書)暴君――シェイクスピアの政治学 (岩波新書)感想
『リチャード三世』『マクベス』『リア王』等々シェイクスピアの作品から読み解く暴君論。暴君の作られ方、その内面、末路、更には『コリオレイナス』などから暴君になり損ねた者をも読み解いていく。シェイクスピアの時代のイギリスではさほど馴染みがなかったであろうの選挙の儀式性について描き出しているというのが面白い。
読了日:10月19日 著者:スティーブン・グリーンブラット

民主主義とは何か (講談社現代新書)民主主義とは何か (講談社現代新書)感想
現代の日本人がイメージする民主主義観はどのように形成されてきたのかを古代ギリシアから辿る政治思想史。民主主義と共和政、議会制、自由主義、選挙、官僚制との関係を、対立関係も含めてまとめている。(著者は否定的かもしれないが)中国の特色ある民主も含めて、民主主義には多様なあり方を認めてよいのではないかと感じさせる。
読了日:10月23日 著者:宇野 重規

藤原定家 『明月記』の世界 (岩波新書, 新赤版 1851)藤原定家 『明月記』の世界 (岩波新書, 新赤版 1851)感想
『明月記』から読み解く藤原定家の生涯、日常、人間関係。有名な「紅旗征戎非吾事」が承久の乱の頃の書写である『後撰和歌集』の奥書にもあり、同じ文言でも治承の頃とは異なる感慨があったのではないかという話、当時にあっても違和感があるという庶子光家の扱い、始祖長家の時代の家格復興への願い、意外な所から生じた鎌倉との縁などを面白く読んだ。
読了日:10月24日 著者:村井 康彦

日中の「戦後」とは何であったか-戦後処理、友好と離反、歴史の記憶 (単行本)日中の「戦後」とは何であったか-戦後処理、友好と離反、歴史の記憶 (単行本)感想
日中戦争が終結した1945年から天皇訪中の1992年までの日中関係に関する論集。この時期は日中関係の「黄金期」を含む。戦後処理、人の移動、歴史記憶などのテーマについて日中双方の研究者が寄稿するという構成。日中国交正常化と平和友好条約、そして天皇訪中の際の「お言葉」が、本来は日中和解の起点であったはずが、日本側が終点として扱ったという指摘が印象的。そして当たり前のことながら、日中関係と言っても台湾・米国・ソ連といった他国との関わり抜きにしては論じられないということを認識させられた。
読了日:10月27日 著者:波多野 澄雄,中村 元哉

アメリカの政党政治-建国から250年の軌跡 (中公新書, 2611)アメリカの政党政治-建国から250年の軌跡 (中公新書, 2611)感想
『民主主義とは何か』で共和党・民主党のあり方が気になったので読んでみることに。党派の形成自体に否定的で政党政治を想定していなかった建国当初から、両党の成立、挫折し続ける第三党の形成、そして保守とリベラルによる両党のイデオロギー分極化とその固定までの道のりを辿る。党員制度がなく、党の存在が公式の制度の一部になっているというアメリカの二大政党制、「普通の国」のあり方とは異なるが、それだけに面白い。
読了日:10月28日 著者:岡山 裕
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