博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『那年花開月正圓』その6

2017年10月31日 | 中国近現代ドラマ
『那年花開月正圓』第31~36話まで見ました。

周瑩は二叔・四叔と共同出資して土布(昔ながらの手機織りの綿布)販売店を立ち上げ、沈家の方でも土布販売で呉家を叩き潰そうと画策しますが、胡詠梅は起死回生で新たに洋布(西洋式の機械織りの綿布)の販売店を立ち上げ、涇陽の綿布市場を席巻します。

杜明礼は沈家の株権を所有しておりであり、かつまた主人の載漪が沈家に出資していることもあって、胡詠梅を説得して洋布販売から手を引かせようとしますが、逆に胡家洋布店の株権2割を贈与され、彼女の商売を黙認することに。杜明礼の相棒査坤は「これは貝勒爺への裏切りだ!このことは報告させて頂きますよ?」と詰め寄りますが、杜明礼から株権を折半され、こちらもあっさり黙認。どうせ載漪に尽くしても大した褒賞があるわけでもないと割り切り、これからは自分たちの財産を作っていこうということになります。このドラマ、杜明礼の立場からは奴隷が私有財産権というか蓄財権のような権利意識に目覚めるドラマとしても見ることができるかもしれません。

さて大量の在庫を抱えてしまった周瑩は、涇陽ではもう土布で商売するのは無理だと見切りをつけ、まだ洋布が入ってきていない迪化(現在のウルムチ)に行商に趣くことにします。彼女のアイデアを知った沈星移も競うかのように迪化へ。しかし途中で前回呉家を襲撃した土匪「三寿幇」が、リベンジだとばかりに周瑩一行と、ついでに星移一行を捕らえて身代金を涇陽に請求します。

「三寿幇」の副頭目牛寿娃は査坤と知り合いということで、杜明礼は彼を介して星移を解放させ、周瑩を始末させようとしますが、そうこうしているうちに趙白石が手勢を率いて王世均らと救出に駆けつけ、頭目の韓三春が周瑩による投降の呼びかけ応じたことで、一件落着となります。ここで頭目の配下や妻として、序盤で少しだけ出てきた二虎と千紅が再登場します。このドラマ、こうした脇役でも割と扱いが丁寧なんですよね。


人質から解放された周瑩と星移は再び迪化への旅を再開。周瑩は二叔の配下が経営する薬局「盛隆全」の厄介になりますが、ここで呉家の店で偽薬をつかまされたと、迪化一の富豪図爾丹が怒鳴り込んできます。


で、周瑩はペルシアからやって来た貴婦人に扮して呉家を騙る偽薬商人を誘き出そうとしますが、三叔の子で、前回両親が死んでから涇陽を去った呉遇が黒幕と判明し…… ここでももう二度と登場しなさそうだった雰囲気のキャラが再登場してますね (^_^;)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『那年花開月正圓』その5

2017年10月25日 | 中国近現代ドラマ
『那年花開月正圓』第25~30話まで見ました。

これまでの悪事は誤魔化せないと観念し、三原典当行に放火して逃亡した孫掌櫃ですが、あっさり周老四と学徒房の有志により捕捉され、趙白石のもとに出頭して洗いざらい自白。更に三叔の誕生会に集う呉氏一同の前で、三原典当行の不正経理の摘発を阻止するために、柳氏が呉聘の毒殺と周瑩の密通疑惑のでっち上げを画策し、罪を宝来になすりつけたことを告白します。その告白に衝撃を受けた三叔は衝撃のあまり、一同の前で柳氏を刺殺し、自分も自殺してしまいます。このドラマでもお誕生会が地獄展開の場となってしまいましたね。

一方、軍需膏薬の不正の一件で刑部の査察を受けることになった沈家ですが、沈星移の機転で危機を乗り越え、杜明礼の画策もあって査察を請うた趙白石が四品官の西安知府から、もとの七品官の涇陽県令に降格。星移は父親にこれを機に杜明礼と手を切るよう釘を刺しますが、そう簡単に手を切らしてもらえるはずもなく、ますます深みにはまっていくことに……

さて、周瑩は呉家東院再建のため、義母の虎の子の二千両を勝手に持ち出して、収穫を目前にした綿花を大量に買い付けて売りさばこうと目論みます。下積みから家業に励んでようやく父親から認められるようになり、沈家の綿花行を任された星移と商売で競合しますが、周瑩は買い付けた綿花をすべて星移に売りさばき、星移は更にそれを転売することで、お互い大儲けをします。更に綿織物の仕立て場を抱える二叔、そして織物の店舗を構える四叔と、共同出資で綿花の買い付け・織物の製造・販売を一括して進めようと提案します。

胡家では、呉蔚文を陥れるために嘘の告発をした胡志存がようやく解放されて帰宅。呉蔚文が自分をかばって弁護までしてくれたということで自責の念に駆られ、また周瑩に軍需膏薬の一件で真相を話して欲しいと詰め寄られたこともあり、折角生きてシャバに出られたのに自殺。


これまでも周瑩を敵視していた胡詠梅ですが、父の死は彼女のせいと、父の仇と見なすようになります。そんな彼女の面倒を何くれとなく見ていた杜明礼ですが、実は浮浪児だった少年の自分がたまたま空腹で胡家の軒先に転がり込んだところ、少女時代の彼女が差し出した饅頭によって救われたのだと、「あの時あなたに助けて頂いた鶴です」みたいな告白をします。(当然のごとく胡詠梅はそのことをすっかり忘れてます)

そして父の仇を討ちたいという彼女の要望に応えるため、土匪を雇って周瑩がここのところ詰めているという呉家の仕立て場を襲撃しますが、折り悪く彼女は不在、二叔の娘で彼女と仲の良い呉漪を周瑩と勘違いして攫ってしまいます。


知らせを聞いた趙白石に救出される呉漪。趙白石は「管轄内で土匪の侵入を許すとは怪しからん」と上官から叱責されてしまいます……

その頃、周瑩は呉聘の死因について疑問を持ち始めます。柳氏の画策で宝来が呉聘愛用の茶碗に毒を塗りつけて茶を飲ませようとしたということだったのですが、死の直前に呉聘が茶碗に口を付けようとして、結局茶を飲まないままになっていたことを思い出したのです。果たして呉聘の死の真相は……?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『那年花開月正圓』その4

2017年10月19日 | 中国近現代ドラマ
『那年花開月正圓』第19~24話まで見ました。

呉家東院に戻った周瑩は、義母の鄭氏から、呉蔚文が獄中で病死したこと、東院の幹部連もお縄となり、従業員の多くが四散したことを知らされます。そして学徒房の同窓王世均から、呉蔚文からの預かり物として、呉家の大当家(当主)の証である「式易堂大印」を託され、また自分が呉聘の遺児を懐妊していることを知らされます。

しかし呉蔚文の弟たちが彼女を大当家と認めるはずもなく、周瑩の東院再建計画は難航。そこで東院からの借金を免除するということで二叔(呉蔚文の二弟)と四叔(同じく四弟)を味方につけ、三叔(同じく三弟)が持つ三原典当行の権利を取り戻そうとしたところ、典当行の不正経理によって利益を得ていた三叔夫人柳氏と、彼女の従兄の孫掌櫃が動きだし、王世均に媚薬を盛って周瑩と密通していたとでっちあげます。更に呉家の私設裁判により、周瑩が呉聘の毒殺犯に仕立て上げられ、呉家の当主の印も王世均が盗んで不正に入手ということにされてしまい、おまけに周瑩のお腹の子も流産。そして周瑩は縛られた状態で池に投げ込まれてしまい、王世均は陝西所払いに……

溺死させられるところを父親と沈星移に救われた周瑩ですが、このままでは済ませられないと再び呉家東院に舞い戻り、呉家の面々の前で柳氏と孫掌櫃の協力者だった、元呉聘の付き人の宝来に自白をさせ、自分の無実を証します。呉家の私刑を快く思っていなかった趙白石も乗り込んできましたが、三叔と柳氏は気が触れてしまった宝来に罪を押っ付けて釈放。周瑩と王世均の密通や、周瑩による呉聘の毒殺疑惑に関しては冤罪が晴れたものの、呉聘毒殺の真犯人はわかりません。

また、三原典当行の経営権も三叔一家の手に渡ったままとなってしまいますが、生前の呉聘が典当行の経営の調査を行っていたのではないかと思い当たった周瑩は、二叔を動かして典当行の帳簿の査察を行わせます。長年の不正経理と蓄財が明るみに出ることを恐れる孫掌櫃は、三叔との結婚前から好き合っていたらしい柳氏とともに呉家から逃亡しようと提案しますが……

一方、沈家は呉家に替わって軍需膏薬の納入を一手に請け負うことになりますが、沈星移は父親が杜明礼の口車に乗せられ、軍需用の膏薬の材料を誤魔化していることを知ってしまいます。薬剤の不正が呉家没落の原因となったということで不安を隠せない星移。そしてなぜか黒覆面で沈家に潜入した趙白石も不正を察知してしまい…… ということでこのドラマ、周瑩の凋落と復活の間があっという間だったりととにかく展開がスピーディーなんですが、画面の雰囲気からは手堅さを感じるあたり、洗練された于正ドラマみたいな位置づけなんじゃないかという気がしてきました (^_^;)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『那年花開月正圓』その3

2017年10月13日 | 中国近現代ドラマ
『那年花開月正圓』第13~18話まで見ました。

沈星移は事情を知らない周老四を利用して周瑩を取り戻そうとしますが、周瑩が承知するはずもなく、海千山千の周老四に金をふんだくられる結果に終わります(星移に「周瑩を連れてくると言ったじゃないか」と迫られたら、適当に人買いから女の子を引き取って周瑩と名づけて星移に引き渡そうとするとか、滅茶苦茶やってますw)しかしこの二人、なぜか意気投合していい飲み友達になります (^_^;)

周瑩はと言えば、呉聘の推しもあり、呉家の幹部連の会議「六椽庁晨会」への出席を認められます。呉聘は以前から父親の命で、不正経理が疑われる三原典当行の調査を進めていて、店を任されている孫掌櫃が怪しいと目星をつけており、いずれ彼をクビにして周瑩を後釜に据えようと計画していたのでした。一方の孫掌櫃も疑われていることを察知し、不正経理の片棒を担いでいた従妹の三太太(呉蔚文の三弟の妻)とともに「呉聘さえいなくなれば秘密を知る者は存在しなくなる」と良からぬことを考え始めます。

そんな中、すっぱいものが食べたいという周瑩のために、庭木に登って棗の実を落としていた呉聘が、負傷の後遺症なのか、また昏倒して落下。今度は宣教師に貰った薬の効き目もなく、そのまま死んでしまいます…… 呉家では粛々と葬儀が行われ、遺恨のあった沈家では「お互い息子が死んだわけだからこれで恨みっこなしにしよう」と考えますが、杜明礼は「もう貝勒爺は呉家取り潰しに動き始めている。今更手を引くなんてなしだ。」と沈四海を脅しつけます。杜明礼の主の貝勒爺とは、惇親王の次男の載漪のようですね。

お互いの子供同士の婚約破棄以来呉家と遺恨が積み重ねられていた胡志存の方は、もとよりそれで手を緩めるつもりはなく、杜明礼の指導により、軍需用の膏薬受注の件で呉家が不正を行っていたということで告発することを決意。そのためにまず自分が告発されて官憲に捕縛・連行されることも厭いません。


この呉蔚文の方も、胡志存の連行から事態を察知。バックに付いている左大人(大方の予想通り左宗棠のことなんでしょう)も、今回ばかりは頼りにできないということで覚悟を決めます。彼の唯一の希望は、周瑩が呉聘の遺児を懐妊したことです(しかし彼女にはまだそのことが知らされていません)。

呉蔚文は罪が及ぶ範囲を少しでも縮めようと、タイミングを見計らって三人の弟たちや周瑩に次々と義絶・離縁を言い渡します。そして官憲が呉家東院に到来し、呉蔚文やその妻、管家(執事)、東院の管轄下にあった店舗の掌櫃たちが連行されていきます。学徒房の同窓だった王世均の薦めで、父親とともに呉聘の百日忌が済むまでは涇陽に止まることにした周瑩ですが、街中で呉蔚文が死んだという噂を耳にし……

現在放映中の朝ドラ『わろてんか』も近代の商家が舞台で、大店が一気に傾くという展開になっていますが、こっちの方が更にハードになってますね……
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『那年花開月正圓』その2

2017年10月06日 | 中国近現代ドラマ
『那年花開月正圓』第7~12話まで見ました。


一夜明けて呉家東院の若奥様になってしまった周瑩。ということで髪型と服装もそれらしくなっています。あくまで儀式的な代理の嫁ということで放り出すかと思ったら、ちゃんと呉聘の正妻として認めるあたり呉家東院は誠実です。

しかし次期当主の正妻となったことで呉聘の母からはみっちり礼儀作法を仕込まれることになり、使用人のための東院内の学校にも通えなくなります。若奥様の立場になかなか馴染めず、舅の呉蔚文に叱られても「イヤだったら離縁すれば?私気にしないし」と暴言を吐いてしまう始末。

一方、呉聘襲撃の件で投獄されたままの沈星移ですが、杜明礼が県令・趙白石の師に当たる張大人と結託し、彼の指導により趙白石は星移を釈放せざるを得なくなります。沈家は杜明礼を恩人と仰ぎ、彼の力で月生の復讐を図ります。しかしその月生の死は、実は杜明礼の配下の仕業によるものでした。呉家東院の倉庫に不正な薬剤による膏薬を放置しようとしたところ、たまたま駆けつけた月生に目撃され、刺殺したという次第。


イヤな顔がよく似合う杜明礼。何かと呉家を目の敵にして色々画策しますが、その理由は不明。淳親王府の御用商人と言いつつも、主の貝勒からは奴隷同然の扱いのようですが?

呉聘は周瑩と連れだってお忍びで視察に出掛けます。その途中で宣教師が急病人を治療している所に出くわし、昏倒から復帰した後も後遺症に悩まされる呉聘のために、教会で西洋の薬を求めます。その間に呉聘は元の婚約者胡詠梅と密会し、彼女から復縁を迫られますが、もうそんなつもりはないと拒絶。しかし周瑩は密会の様子を見ていたことで、呉聘は彼女が教会に出入りしていたことで相手に対して不満を抱き、帰宅後に喧嘩となります。

そこで頭に血が上った呉聘が負傷の後遺症で再び昏倒。周瑩の西洋薬のお陰で事なきを得ますが、互いに相手の思いを知り、周瑩はようやく呉聘の妻としてふさわしい女性になることを決意したのでした。

そんな折り、呉聘と沈星移は趙白石の求めに応じて貧民街に流入した被災民のために炊き出しを行うことにしますが、そこで星移と周瑩が鉢合わせ。彼女の身売り契約書を盾に、趙白石のお裁きで彼女を自分のもとに取り戻そうとしますが、「呉聘は沈家に身売り金15両払い戻してやって、この件はそれで終わりにしなさい」と判決を下し、星移の思い通りにはなりません。


清官かつ硬骨漢の県令趙白石。

そんな星移のもとに、娘がまだ沈家で働いていると思った周老四が駆けつけ……というところで次回へ。毎回話がテンポよく進み、かつ内容が濃いです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2017年9月に読んだ本

2017年10月01日 | 読書メーター
儒教 怨念と復讐の宗教 (講談社学術文庫)儒教 怨念と復讐の宗教 (講談社学術文庫)感想
旧版に新出資料に基づいた加筆があったので購入。本当に歴代の儒者が自ら王者たらんとして挫折した祖師の怨念を晴らすべく、孔子を王者であると偽る運動を続けたのだとしたら、キリスト教と同様にその意図を特段隠す必要がなかったのではないだろうか、また孔子素王説や康有為の孔教運動などは果たして一連のものとしてつなげてしまってよいのだろうか、あくまでもその時代の文脈の中で現れてきたものではないだろうかという、旧版を読んだ時の疑問は今回の新版でも晴れなかった。
読了日:09月01日 著者:浅野 裕一

文明に抗した弥生の人びと (歴史文化ライブラリー)文明に抗した弥生の人びと (歴史文化ライブラリー)感想
縄文文化と弥生文化について、従来のような在地系の文化と渡来系の文化の対立という構図には敢えて落とし込まず、金属器の導入などで、実用的な武器と階層社会の導入を拒絶し、非実用的な銅鐸を偏愛して平等社会を保とうとしたりと、人々が消極的な形で新しい文化の受け入れを進めていったという方向で議論を展開する。また、考古学の研究がどのような手順で進められるのかということや、考古学の議論も時代の影響を受けているということに触れている点も評価できる。
読了日:09月02日 著者:寺前 直人

海賊の世界史 - 古代ギリシアから大航海時代、現代ソマリアまで (中公新書)海賊の世界史 - 古代ギリシアから大航海時代、現代ソマリアまで (中公新書)感想
個々の海賊のエピソードよりも、中近世の地中海の海賊がキリスト教勢力とイスラーム勢力との対立を背景に生まれてきたとか、主権国家体制の成立に伴う各国での国軍の編制や海洋をめぐる規範の形成により、海賊や私掠船の存在が容認されなくなっていったこと、近年のソマリアの海賊はソマリアが「破綻国家」となったことを背景に出現した点など、海賊をめぐる歴史的文脈の話が面白い。
読了日:09月05日 著者:桃井 治郎

魏晋南北朝史のいま (アジア遊学 213)魏晋南北朝史のいま (アジア遊学 213)感想
北周の武帝の「戦う鮮卑皇帝」としての実像と「天下統一をめざした英主」としての虚像を問題にした「北周武帝の華北統一」、北魏などの墓誌銘で、書丹された筆跡と石刻された筆跡とが一致しないという問題を扱った「書法史における刻法・刻派という新たな視座」が印象に残った。経済史関係の項目を設けなかったという編集方針に、研究者の関心の変化を感じる。
読了日:09月07日 著者:

儒教の歴史 (宗教の世界史)儒教の歴史 (宗教の世界史)感想
日本や朝鮮での展開、現代社会での展開も視野に収め、配分としてはバランスの取れた儒教史になっていると思う。ただ、本書が「宗教の世界史」の一冊として刊行されたことを思うと、「儒教」で良いのか(=儒学、儒家思想と位置づけるべきではないのか)という疑問はやはり拭えないが……
読了日:09月10日 著者:小島 毅

中国史書入門 現代語訳 隋書中国史書入門 現代語訳 隋書感想
抄訳だし、「志」の部分がない『隋書』の翻訳なんて…と思いながら読み進めたが、本紀を中心に主要な人物の列伝を配して隋室の興亡を追えるようにし、必要な情報はコラムで補足しと、構成に工夫が見られた。次は五代史を期待したい。
読了日:09月13日 著者:

中国史談集 (ちくま学芸文庫)中国史談集 (ちくま学芸文庫)感想
中国の風俗習慣や民間信仰の研究で知られる著者による、近世中国の史談。偽皇族・刺青・駙馬と公主の悲惨な結婚生活・男色・宗教結社など話題は多岐にわたるが、中国人倭寇を「にせ倭寇」と断じているあたりは時代的な限界を感じる。研究の細分化によってこの手の史談も粗が目立つようになってきているのかもしれない。
読了日:09月21日 著者:澤田 瑞穂

牛車で行こう!: 平安貴族と乗り物文化牛車で行こう!: 平安貴族と乗り物文化感想
牛車そのものだけでなく、そこから見えてくる平安時代の生活、身分、人間関係、更に徒歩や騎馬といった牛車以外の交通手段との使い分け、平安時代以後の展開など、乗り物そのものだけの話に終わってないのが面白い。文化史研究の見本になる書だと思う。
読了日:09月23日 著者:京樂 真帆子

斎宮―伊勢斎王たちの生きた古代史斎宮―伊勢斎王たちの生きた古代史感想
伊勢斎宮が「都市」と言えるほどの規模と区画を持ち、専門の行政機関としてやはり相応の規模を誇る斎宮寮が置かれたことや、また斎宮が、大中臣氏による宮司や禰宜が統括する伊勢神宮とは別個の組織であったことなどの制度面と、鎌倉後期から南北朝期にかけて斎宮というシステムが「賞味期限切れ」を迎える過程を面白く読んだ。
読了日:09月27日 著者:榎村 寛之

叢書 東アジアの近現代史 第2巻 対立と共存の日中関係史――共和国としての中国 (叢書東アジアの近現代史)叢書 東アジアの近現代史 第2巻 対立と共存の日中関係史――共和国としての中国 (叢書東アジアの近現代史)感想
「憲政への夢」を軸に描く中国近現代史。民国期に美濃部達吉の学説が高く評価されるなど、この方面で意外に日本の影響が強かったことや、「思想統制」が取り沙汰されがちな人民共和国の時期も含めて、憲政に関して様々な方向性が模索されていたことをまとめる。終盤に中国と台湾に挟まれた第三極としての香港の役割について触れられていたが、そのような役割は中国の改革開放と台湾の民主化によって希薄化しつつあるのではないかと思った。続編として現代台湾での憲政の展開、あるいは日本も含めた東アジア全体の憲政史が望まれる。
読了日:09月30日 著者:中村 元哉

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする