博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『否定と肯定』

2017年12月30日 | 映画
『否定と肯定』

アメリカのホロコースト研究者リップシュタットは、ホロコースト否定論を展開するアーヴィングから、自らを侮辱したとしてイギリスで名誉毀損訴訟を起こされ、裁判を受けて立つことにするが…… 

昨日までの上映ということで見てきました。以下、映画を見ての雑感。

図らずも裁判が否定論者アーヴィングの研究の査読というか口頭試問という形になったわけですが、これ、裁判結果の社会的・学術的影響を考えると、司法の側の責任や見識も当然問われることになりますよね……

名目としてはアーヴィングへの名誉毀損に対する訴訟という形になっているのですが、実質的にはホロコースト否定論の是非をめぐる裁判となっているわけで、そういうのを司法の側が担いきれるのかという懸念があるなと思った次第。本作は実際にあった裁判に基づいているということで、本件やこれ以外にもそういう実例があるんでしょうし、歴史学が絡む裁判だけに限った話ではないのでしょうけど。

作中でリップシュタットがホロコーストの生存者を証言台に立たせたいと言うのを、弁護士たちが「結果的に彼らが公開の場でアーヴィングに侮辱されることになる」と必死に引き留めるわけですが、仮に裁判の場で生存者に証言させて「公開晒し上げ」のような状況になったとして、「彼らの戦略がまずかったですね」ということで済ませてしまっていいのかなと思いました。

終盤で裁判官が「アーヴィングが反ユダヤ主義に基づいて自説を信じているのなら、その説が間違っていたとしても必ずしもすべて承知のうえで事実を歪曲していたということにはならないのでは?」という疑問を投げかけます。何やら昨今話題の「エビデンス」と「信念」との関係に絡むような話なのですが、説明としてわかりにくい所で、そこのところをもうちょっと掘り下げて欲しかったと思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『グレートウォール』 「壁の国」の先輩からトランプ大統領へのメッセージ

2017年04月14日 | 映画
『グレートウォール』(原題:『長城』)

※ 最初にお断りしておきますが、ネタバレあります ※

万里の長城は、実は60年に一度中国内地へと襲来する未知の怪物「饕餮」の侵攻を防ぐためのものだった!「ブラック・パウダー」(黒火薬)を求めてはるばる西欧から渡来したマット・デイモン演じる弓の名手ウィリアムと相棒トバールも、「饕餮」との戦いに巻き込まれ、張涵予演じる元帥、景甜演じる女将軍、アンディ・ラウ演じる王軍師らとともに「饕餮」と対峙することに……

張芸謀監督、マット・デイモン主演ということで、「どーせゲーム・オブ・スローンズの中国版みたいなのを作りたかっただけやろ?」(ゲーム・オブ・スローンズでは、やはり万里の長城を模した「壁」が登場し、未知の存在の侵攻を阻むために立てられたという設定になっている)と大して期待もせず見に行ったのですが、正直この作品を舐めすぎでしたね。『グレートウォール』(長城)なんてタイトルを付けておいて、まさか終盤で長城が無用の長物になる展開になるとは……

まじめに、万里の長城を立てた「壁の国」の先輩である中国から、トランプ政権への「一所懸命メキシコとの国境付近に長城なんて作っても無駄やで?m9(^Д^)」というメッセージが込められているのではないかと思ってしまいます。思えば実際の歴史でも、万里の長城があってもモンゴルや清朝の侵攻は阻めなかったわけで……

そして中国人キャストの中で、男性陣はまず張涵予が何だかよくわからない経緯で早々に退場し、アンディ・ラウは長城を守る禁軍の軍師という何だかよくわからない役回り、林更新(ケニー・リン)らイケメンも大して印象に残らない中で、景甜は出番が多く見せ場もあり、女優でありがちなお飾り的な扱いではまったくなく、彼女のハリウッド・デビューを強く印象づける作品になっています。景甜のハリウッド進出を見届けるぐらいの気持ちで見に行けば楽しめるのではないかと思います。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『シン・ゴジラ』

2016年08月16日 | 映画
『シン・ゴジラ』

色々話題で、周りでも薦める声が多かったので見てきました。

ネットで議論されている作品の「政治性」については、「今時はリアルなゴジラ映画を作ろうと思ったら、色々面倒くさいことにこだわらないとアカンのね」と思った程度。また、本作にノリが似ている作品として、過去のゴジラシリーズのほか、『パシフィック・リム』や『マッド・マックス 怒りのデスロード』などが挙げられていますが、個人的に雰囲気が似ていると思ったのはこの2つ。(URLはそれぞれ本ブログでの感想ページ)

『超強台風』(中国映画)
http://blog.goo.ne.jp/xizhou257/e/95d0b8f60703d0e0d45b165eb542a4b8

『グエムル 漢江の怪物』(韓国映画)
http://blog.goo.ne.jp/xizhou257/e/6d463372afed69d06be165b365867ea7


本作で環境省の尾頭ヒロミというキャラクターがネットでもてはやされていますが、『超強台風』に登場する「市長さん」こと主人公の小学校時代の恩師は、本作の尾頭ヒロミと防衛大臣、そして2~3人ほど登場する異端の科学者の性質を兼ね備えたキャラクターとなっています。

それぞれの作品の方向性が、

『シン・ゴジラ』→対米従属からの脱出&日本はまだまだできる!
『グエムル』→政治と社会の闇を暴く。
『超級台風』→市長さんは凄い。とにかく凄い!


というあたり、それぞれの特徴がよく出てるなとw そして『シン・ゴジラ』と『超級台風』がそれぞれある種の理想を描くのに注力する一方で、『グエムル』は現実しか描いておりません。この3つの組み合わせの中で唯一爽快感がない(というより胸糞悪さしか残らない)あたりは、(皮肉ではなく本気で)韓国映画の力を感じます。

本作で深い闇を感じるとしたら、「政治性」よりもやたらと異端の科学者とか異能の集団をプッシュしている所ですかね。君たちはそんなに宗像教授みたいなのが好きなのかと……
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『黒衣の刺客』

2015年09月13日 | 映画
『黒衣の刺客』(原題:刺客聶隠娘)

台湾の侯孝賢監督が唐代伝奇の「聶隠娘」を題材に武侠映画を撮り、カンヌで賞を取ったということで話題になった本作ですが、中身の方は圧倒的な設定過多と圧倒的な説明不足が目立つ作品でした…… 劇中の台詞が少なめの割には人物関係など設定を無駄に盛り込んでいるので、内容がかなりわかりにくくなってます。台詞・映像とも、必要な描写を削って不要な描写を盛り込んでいるという印象です。取り敢えずこれから見に行かれる方は、あらかじめ本作のパンフに載っている人物相関図を頭に入れたうえで見た方が良いでしょう。

台湾の俳優さんに加えて、遣唐使役で妻夫木聡が出演していますが、ぼんやり見ているか、あるいは妻夫木聡の顔を知らないと、彼が日本から来たということもよくわからないままになるのではないでしょうか。彼が日本にいた時の描写は日本公開版のオリジナルシーンのようなので、特に台湾・海外版の視聴者は彼が旅人らしいということしか察せられないと思いますし、それで本作を見るうえで何か不都合があるわけではありません。つまりは彼が遣唐使という設定がそれほど意味がないわけです。本作で盛り込まれている設定は大体がこんな調子で、展開上生きていないものが多いです。

映像の方はCG・ワイヤー頼みの近年の武侠映画とは一線を画しています。BGMも控えめですし、まるで中国の世界遺産とか自然風景の良質なイメージビデオを見ているようです。時代考証もかなり頑張っています。例えば、終盤で妻夫木君演じる遣唐使が新羅経由で帰国したいと言っているのは、当時の状況をふまえたものです。この考証能力をもっと違う方向で生かしてくれればと思いましたが……

原典の「聶隠娘」とはだいぶ趣きが変わっていますが、あらかじめ原典を読んでおくとニヤリとできる要素もあります。

全般的に胡金銓(キン・フー)監督の武侠映画や王家衛(ウォン・カーワイ)の『楽園の瑕』(東邪西毒)のダメな所だけを抽出したような作品です。『英雄(HERO)』以後、映像美を追求した環境ビデオ系の武侠映画が主流となる中で、徐浩峰監督の『刀のアイデンティティ』(倭寇的踪迹)あたりからようやく新しい流れが出てきたなと思っていたところ、有名監督による2000年代に逆戻りした作品が出て来てしまい、とにかく残念です。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『KANO 1931海の向こうの甲子園』

2015年01月30日 | 映画
『KANO 1931海の向こうの甲子園』

今まで他校との試合に勝ったことのない嘉義農林学校(嘉農)の弱小野球部。そんな中、同校の教員濱田の要請により近藤兵太郎が野球部顧問に就任。いきなり部員たちの前で「お前たちを甲子園に連れて行く」と宣言するのだった……

ということで見てきました。『海角七号』『セデック・バレ』と同じく魏徳聖氏の作品とのことですが、私は両作は未見。この作品を見るまで知らなかったのですが、戦前の甲子園には台湾・朝鮮・満洲と外地の出場枠があったんですね。その南方の外地である台湾代表の嘉農に対して、北方の内地の領土としては歴史の浅い北海道代表を対比させているのがミソでしょうか。

普通の野球物・感動スポ根物として見ようと思えば見られるような作りにはなっていますが、それでも時代と地域をひねったことにより、所々で(取り敢えず日本人にとっては)違和感が感じ取られるようになっていますね。(わかりやすい所ではパパイヤの例えとか……)このあたり、同時期に上映されている『バンクーバーの朝日』ではどんな感じになっているんでしょうかね。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『西遊記 ~はじまりのはじまり~』

2014年11月23日 | 映画
周星馳の最新作『西遊記 ~はじまりのはじまり~』(原題『西遊 降魔篇』)を見てきました。最新作と言っても中華圏で上映されたのは随分前(2013年の旧正月映画ではなかったかと)なので、もう日本では公開されないのかと思っていましたが。

主人公は妖怪性善説に沿った妖怪ハンターをめざす若き日のイケメン陳玄奘。そんな彼にやり手の妖怪ハンター兼山賊の女親分段小姐が惚れてしまい…… ということでイケメン玄奘を文章、段小姐を舒淇(スー・チー)が演じ、(彼女がEDスタッフロールの出演者の部のトップにきてます……)監督・プロデュース・脚本の周星馳は今回は少なくともわかりやすい形では出演していないみたいですね。

作品自体は良くも悪くも癖が無い手堅い娯楽大作に仕上がっています。お笑い要素も随所に盛り込まれていますが、パロディは控えめです。しかし中華映像作品も随分CGがリアルになってますね。10年ほど前の張紀中版『天龍八部』では見るからに安いソフトで作った感じのCGの動物が出ていて「あちゃー」と思ったものですが(^^;) しかしこのイケメン玄奘が後年only youを熱唱したりするんでしょうか……
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『47RONIN』

2013年12月14日 | 映画
キアヌ・リーブス主演で忠臣蔵の映画を撮ると最初に聞いた時には「ふーん」という感じでしたが、夏に『風立ちぬ』の上映時に予告編を見た時に、忠臣蔵とはほど遠いファンタジック()な映像の数々に「な、なんやこれはっ!?」と目が釘付けになり、「これは絶対に見なければ!」と決意しました。というわけで見てきましたよ。『47RONIN』を……

舞台は鎖国時代の日本。赤穂に逃れてきた英国人と日本人のハーフの少年カイは、藩主の浅野内匠頭の思し召しで領内で暮らすことを許され、内匠頭とその娘のミカに忠義を尽くすことを心に誓います。それから年月が経ち、赤穂の支配権を奪おうとする長門の藩主吉良の陰謀により内匠頭は切腹に追い込まれ、将軍の命によりミカは吉良との婚姻が決定。カイは奴隷として出島へと追放になります。浪人の身分となった大石は、主君の仇討ちと吉良の陰謀阻止のために元の藩士たちを集め、カイの力も借りようと出島に向かいますが……

ということで、大方の予想というか期待通り架空の日本を舞台とした架空の忠臣蔵に仕上がっています。作品中で出てくる日本の風景、地理関係、内匠頭が吉良に斬りかかる経緯(吉良の部下の女狐の化身に妖術をかけられ、ミカが吉良に襲われていると誤解して斬りかかるという展開……)、浪士たちの中になぜか芭蕉という人物が混じっている点など、すべてが大雑把です。お陰でキアヌ・リーブスが47士の中に入ってることなどささいなことに思えてきます。さてはそれが狙いかと(^^;)

地理については、赤穂の隣国が長門になってたり、大石らが赤穂から羽越(一口に羽越と言っても範囲がすごく広いわけですが)、樹海(富士の樹海なんでしょうね。たぶん)、出島を簡単に行き来する展開で、お察しの状態となっております。出島に地下闘技場があったなんて初めて知りましたよ(真顔)

ラストで「47士の物語は日本で現在でも語り継がれており、彼らの墓には多くの人が参拝に訪れる。この物語が本作のもととなった」というような内容の字幕が表示されますが、さてはそういうことわりをどっかで入れておけば、あとは何をどういじってもいいと思っていますなw

この作品を見ると、現在DVDで鑑賞中のドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』が本格的な歴史大作に思えてきます……
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『忠烈楊家将』

2013年10月05日 | 映画
于仁泰(ロニー・ユー)監督の『忠烈楊家将』を見ました。

時は北宋。遼国の侵攻を知った太宗皇帝は重臣の潘仁美を主将、楊業を先鋒として迎え討たせることにしますが、潘仁美はドラ息子を死に追いやった楊家の人間を陥れる機会を虎視眈々と狙っていたのでした。一方、遼国の主将耶律原も父の仇である楊家の殲滅をはかっており……

本作は楊業を鄭少秋(アダム・チェン)、楊大郎を鄭伊健(イーキン・チェン)、三郎を周渝民(ヴィック・チョウ)、六郎楊延昭を呉尊(ウー・ズン)が演じるといったように、イケメン楊家将となっております。

他の楊家将物では話の展開に合わせて四郎・五郎・六郎・七郎にバリューのある俳優を配し、大郎・二郎・三郎はモブキャラと化すことが多いのですが、今作では兄弟七人それぞれイケメンが配役されているので、大郎や三郎にも見せ場が用意されております。それでもって監督は『SPIRIT』などを制作したロニー・ユーということで、アイドル映画ではなくオーソドックスなアクション歴史大作に仕上がっています。むしろネタ要素やツッコミ要素があんまり無くて不満なほどです(^^;)

ストーリーの方も原典のテーマである忠孝を強調するオーソドックスなものですが、奸臣の潘仁美の処断が字幕でさらっと済まされているあたりは、「本当の敵は前線の遼軍ではなく後方の宋の朝廷だった」という原典の理不尽さを象徴していると言えなくもないかもしれませんw

それとこの作品のBGMがどこかで聞いたような感じだなあと思って確認してみたら、川井憲次さんが担当していました。『セブンソード』以来すっかり中華映画スタッフの常連になっちゃいましたね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『風立ちぬ』【ネタバレあり】

2013年08月16日 | 映画
宮崎駿監督の最新作『風立ちぬ』を見てきました。

色々物議を醸している本作ですが、実際に見てみたところ、イタリアが生んだ偉大な航空技術者カプローニと夢の中で交信する能力を得た堀越二郎青年が、三菱に入社して人類の「呪われた夢」飛行機設計に挑むファンタジー巨編でした(^^;) そしてバッド・エンドのはずなのに、ラストシーンでこみ上げてくる謎の感動……

ジブリ作品で謎の感動と言えば、『もののけ姫』でもヒロインのサンがアシタカらに別離を告げるラストシーンでなぜか未来への希望のようなものを感じましたが(個人的にジブリ作品で一番好きなラストシーンです)、今回のラストシーンはそれに匹敵すると思います。

零戦など戦闘機とか、堀辰雄・トーマス・マンの『魔の山』など文学関係の予備知識については、あれば作品への理解は深まるでしょうけど、必須のものではないでしょう。これは『もののけ姫』を見るのに網野史学の素養が必須というわけではないのと同じですね。作品の背景については、それこそ『もののけ姫』の時みたいに解説本が出るんじゃないかと。さしあたって堀越二郎の設計した戦闘機が戦争に使われ、特攻などで多くの犠牲者を出したことさえ知っていれば充分ではないかと思います。……それでも小学生以下の観客にはかなり厳しい条件ですが。

前作の『ポニョ』を見た時は「宮崎駿は大丈夫なのか?」と思ってしまいましたが、今作に関しては大丈夫です。

堀越二郎と妻菜穂子の結婚生活については、作品中でも夫妻の居候先の黒川課長が言っていたようにエゴイズムには違いないでしょうけど、あれはあれで良かったんじゃないかと。当時の医療状況から考えると、結核の療養とは言っても要するに空気のいい所で日光浴をしながら静養し、栄養の付くものを食べるというだけのものなので、サナトリウムに戻っても回復する確率がどれほどのものだったのか……
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『グランド・マスター』

2013年06月02日 | 映画
『グランド・マスター』(原題:『一代宗師』)

舞台は日中戦争前夜の中国。北方武術界の領袖宮宝森は自らの引退試合のために広東仏山に到来。梁朝偉(トニー・レオン)演じる詠春拳の達人葉問が南方武術界の代表として挑戦を受けて立つことに。葉問との問答でその器量を察した宮宝森は彼に南北武術界統一の夢を託します。

章子怡(チャン・ツィイー)演じる宮の娘若梅は、碌すっぽ腕も交えないうちに父親から大任を託された葉問に反発しますが、彼との手合わせを通じて心を通い合わせるようになります。葉問は今度は自分が東北へと赴くことを若梅に約するも、日中戦争の勃発によってその約束が果たせなくなり、若梅も兄弟子の馬三に殺害された父の仇討ちに専念することになり……

ということで王家衛(ウォン・カーウァイ)監督のカンフー映画ということで話題の本作。王家衛の武侠物と言えば物議を醸した『楽園の瑕』(原題『東邪西毒』)が思い出されるだけに、猛烈にイヤな予感がしつつ見に行きましたが、意外と悪くなかったなというのが正直なところ。(あくまで『楽園の瑕』と比較しての話ですが。)『楽園の瑕』は張芸謀監督の『HERO』などスタイリッシュ系武侠映画(悪く言えば環境ビデオ的武侠映画)の走りですが、本作はその『楽園の瑕』よりは映像性とストーリー性・テーマ性とのバランスが取れていたと思います。ただ、張震演じる一線天は本当に必要だったのかという気もしましたがw

正統派のカンフー物を期待した向きには不満も残るでしょうが、そういうのは同じく葉問を描いた甄子丹(ドニー・イェン)主演の『葉問』『葉問2』を見て補充すればよいのではないかと。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする