博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

最近見てるドラマ(2024年10月)

2024年10月04日 | 中華時代劇
『SHOGUN 将軍』
エミー賞を獲得した話題作で、中国時代劇ではよくある架空歴史物。関ヶ原前夜、五大老の最有力者で太閤の後釜を狙う吉井虎永が按針と出会う所から物語が始まります。按針はプロテスタントを敵視するカトリックの宣教師やキリシタン大名の木山らに白眼視されつつ、細川ガラシャに相当する通詞の鞠子、正室としてあてがわれた藤らのサポートを得て虎永に旗本として取り立てられることになるが…… 真田広之やアンナ・サワイが注目されていますが、私のお気に入りは浅野忠信演じる反復常無き姦雄・樫木藪重です (^_^;) 日本人・日系俳優の起用とともに日本語台詞の多さも話題ですが、実際のところは王一博主演映画『無名』程度の割合でしょうか。あとは地震を演出に取り入れているの特徴のひとつ。

『春家小姐是訟師』
軍戸の家のお嬢様・春荼蘼が無実の罪に陥れられた父親を救うため、母の形見の法律書を片手に訟師となって裁判に乗り込むという所から話がはじまり、正体を隠して汴州に視察にやって来た王世子の韓無畏や大理寺丞の康正源、更には謎の侠客・夜叉の知遇を得て世直し旅に出ることに……という筋。夫馬進の『訟師の中国史』を読んで以来何となく気になってた作品ですが、もちろん現実の歴史の訟師の活動はあまり踏まえておりませんw 全20話しかないのに中盤に入ってダレ気味になるのが残念。

『南来北往』
1978年。若手の鉄道警察員汪新は車内で警察に護送されてきた逃亡犯を捕捉しようとして逃げられてしまうが、その逃亡犯馬魁と自分の師父として再会することになる。馬魁はまた中学の同級生だった馬燕の父親で…… たまにはハートウォーミングなやつが見たいということで見始めましたが、見事当たりです!脇役に劉冠麟が出てくる所も個人的にポイントが高いです (^_^;) 日本で放映されたら、80年代~90年代の中国鉄道旅をしのぶ人も多いんでじゃないでしょうか。
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2024年9月に読んだ本

2024年10月01日 | 読書メーター
安田峰俊『中国ぎらいのための中国史』についてはこちらにレビューを書きました。

紫禁城の至宝を救え: 日中戦争惨禍から美術品を守った学芸員たち紫禁城の至宝を救え: 日中戦争惨禍から美術品を守った学芸員たち感想日中戦争を承けての北京から上海、そこから更に武漢、重慶、楽山、宝鶏などへの故宮の文物の疎開作業と関係者について。特に当時の故宮博物院院長にして古文字学者としても著名な馬衡や、後に台湾に渡ることになる荘厳、那志良らの生涯について詳述している。日本軍の爆撃以外にも現地での思わぬトラブル、船や自動車などの運搬上の問題、関係人員や文物を避難させた土地の地元民による問題、避難所での湿気や害虫の存在、火災の危険性、日本軍に見つかりやすい目立つ屋根といった、関係者が見舞われた様々な苦難を描き出す。読了日:09月01日 著者:アダム・ブルックス

出世と恋愛 近代文学で読む男と女 (講談社現代新書)出世と恋愛 近代文学で読む男と女 (講談社現代新書)感想日本近代文学に見える男と女のすれ違い。『三四郎』『金色夜叉』『友情』『野菊の墓』『不如帰』『真珠夫人』など有名作品が中心。印象づけられるのは身勝手さや鈍感さにより、女性と向き合わない近代の男たちの姿、そしてそんな男たちと作者の都合により翻弄される女性たちの姿である。山本有三は時代が変わったということで戦後は『路傍の石』の続きを書こうとしなかったということだが、こちらも取り上げられてる小説の男たちには感情移入できそうにない。と言いつつ『真珠夫人』など、読んでみたい気にさせられる作品もあったが。読了日:09月02日 著者:斎藤 美奈子

笑いで歴史学を変える方法 歴史初心者からアカデミアまで (星海社新書 306)笑いで歴史学を変える方法 歴史初心者からアカデミアまで (星海社新書 306)感想「笑い」を基調とした歴史学雑誌で有名になった著者による歴史学本。タイトルにある「笑い」による歴史学よりは、大学教員の仕事、学会の業務、学会誌の査読など、その前提となるアカデミズムとしての歴史学回りの話が読みどころ。アマチュアが歴史家として活動する方法も紹介されているので、歴史学に限らず人文系の分野で何かしら学術に関することで関わりたいアマチュアは参考になることが多いのではないかと思う。「笑い」については、決して賛同はしないが、著者の「やじ」に対する偏愛ぶりは伝わる。読了日:09月04日 著者:池田 さなえ

成瀬は信じた道をいく成瀬は信じた道をいく感想大学生となり、地元の観光大使にもなった成瀬。ノリは前作と変わらず楽しいが、前作の登場人物が島崎以外はあまり絡んでこず、寂しい気も。観光大使の相方篠原は母世代と同じく成瀬と長い付き合いになるんだろうか?成瀬の話は今回でひとまず幕ということになりそうだが、彼女が就職(あるいは進学後)どうマイペースを保ちながら地元愛を貫徹していくのか気になる。読了日:09月05日 著者:宮島 未奈

増補 日本霊異記の世界 (角川ソフィア文庫)増補 日本霊異記の世界 (角川ソフィア文庫)感想記紀神話と『今昔物語集』など中世説話をつなぐ存在として『日本霊異記』を読み解く。一連の動物報恩譚から、動物の恩返しを語る説話が日本人の心の優しさを示すというような言説を否定し、そういったものが現れてくるのは仏教の伝来や流布によるものであると再三にわたって論じている。また、討債鬼説話など、中国の説話の影響を受けたものも結構存在するようだ。『今昔物語集』なんかと比べると影が薄い文献だが、手軽な形での訳本が読みたくなってくる。読了日:09月07日 著者:三浦 佑之

ことばの危機 大学入試改革・教育政策を問う (集英社新書)ことばの危機 大学入試改革・教育政策を問う (集英社新書)感想特に国語科の学習指導要領の改定と大学入試改革を承けての東大文学部の教員による議論。ネットでもよく取り沙汰される読解力の定義の問題、『論語』から孔子の対人配慮が読み取れるという議論、昨今流行りの古典の複合問題が、複合的な材料を用いるということ自体が目的化しているという批判、文学とそうでないものとを区別したがる人は文学が怖いのではないかという指摘など、話題は多岐に渡っている。一時期話題になった古典不要論とも通じそうな議論もある。論理や実用にこだわる向きには一読されたい。読了日:09月08日 著者:阿部 公彦,沼野 充義,納富 信留,大西 克也,安藤 宏,東京大学文学部広報委員会

沖縄について私たちが知っておきたいこと (ちくまプリマー新書 457)沖縄について私たちが知っておきたいこと (ちくまプリマー新書 457)感想沖縄の近現代史や基地問題など、「構造的差別」につながるトピックをわかりやすく簡潔にまとめている。沖縄が米軍基地に経済的に依存しているといったよまあるデマについても反論がなされている。明治期には尖閣諸島も含めた宮古・八重島が切り離し可能な領土とされていたこと、終戦交渉時には沖縄全体が日本の「固有本土」とされていなかったことについてや、最後の対談では沖縄好きの本土人によるコロニアリズムの問題についても言及されている。読了日:09月09日 著者:高橋 哲哉

歴史学はこう考える (ちくま新書 1815)歴史学はこう考える (ちくま新書 1815)感想著者の専門である日本近代史を中心として、著者の論文、あるいは政治史・経済史・社会史の一定の定評のある論文を素材に、論文の書かれ方、読み方を解説することで、歴史研究とはどういう営みなのかを説く。それに付随して史料批判の実際、時代区分の問題などについても言及している。とにかく具体的なので、従来の歴史学入門や史学概論が雲を掴むような話でよくわからないという人にも有用かもしれない。歴史はともすると「使えてしまう」危険な存在、文書館を利用するのは研究者だけではないという話が印象に残った。読了日:09月12日 著者:松沢 裕作

中国文学の歴史 元明清の白話文学 (東方選書63)中国文学の歴史 元明清の白話文学 (東方選書63)感想金元の曲や元の雑劇から元明の白話小説が生まれ、四大奇書が白話を用いつつも知識人によって洗練され、『紅楼夢』の段階で近代文学を受け入れる素地が整うまでの展開を描く。小説などの文章の引用を織り交ぜつつ、四大奇書をはじめとする当時の代表的な作品の新しさと魅力、そしてその時々の出版文化などについても解説している。『三国』『水滸伝』や『金瓶梅』の背景にある政治性の話が面白い。読了日:09月15日 著者:小松謙

張騫 シルクロードの開拓者 (講談社学術文庫)張騫 シルクロードの開拓者 (講談社学術文庫)感想張騫の生涯だけでなく、広くその後人たちの事跡や漢の西域経営についてまとめる。著者がNHKの『シルクロード』のチーフディレクターということで、所々で現地の体験についても触れられるが、本編よりそちらの方がおもしろい。後人たちについては烏孫公主、解憂公主など女性たちの活躍についても紹介されている。
読了日:09月20日 著者:田川 純三

『韓非子』入門『韓非子』入門感想入門書として面白みもないかわりにそう変なことも書いていない。割とオーソドックスな概説だと思う。著者の特色が現れているのは終章の秦以後の法思想の展開、中国の律令が儒家思想を法源とするに至るまでを述べた部分ということになるか。読了日:09月21日 著者:渡邉義浩

レコンキスタ―「スペイン」を生んだ中世800年の戦争と平和 (中公新書, 2820)レコンキスタ―「スペイン」を生んだ中世800年の戦争と平和 (中公新書, 2820)感想実は19世紀にスペインの国民統合のために創られた神話だというレコンキスタ。その実情はといえば、キリスト教徒、ムスリムといった宗教勢力ごとにまとまっているわけでもなく、それぞれ内部で対立を繰り返し、ムスリム勢力がキリスト教勢力と同盟を結び、エル・シッドのようにキリスト教徒がムスリム勢力に仕えるというのもしばしば見られた。よく言われるこの地域での信仰の寛容さはといえば、これも寛容とも言えるし不寛容とも言えるといった具合。期待した大航海時代に絡めた記述はないこともないという程度。読了日:09月23日 著者:黒田 祐我

女の氏名誕生 ――人名へのこだわりはいかにして生まれたのか (ちくま新書 1818)女の氏名誕生 ――人名へのこだわりはいかにして生まれたのか (ちくま新書 1818)感想『氏名の誕生』の姉妹編で、前著で描ききれなかった女性の氏名について。「お」のつく名前と近代の「~子」との関係、表記の揺れ社会的身分の変化に伴う改名、苗字をつけないものとされていた女性の名前、そして近代以後の氏名政策と氏名の混乱のはじまりといった話題を扱う。しかし実際のところ、本書は女性の氏名にとどまらず、男性の氏名も含めた印鑑の問題、近代以後の漢字表記の問題、姓名判断の流行など、幅広い内容を扱っている。漢字表記の問題に関心のある向きも読んで損はないだろう。読了日:09月28日 著者:尾脇 秀和
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最近見てるドラマ(2024年9月)

2024年09月05日 | 中華時代劇
『不完美受害人』
大成グループの会長秘書趙尋は会長成功から性加害を受けるが、何者かがそれを警察に通報し、マスコミにもタレコミする。彼女は警察の取り調べにも頑なに性加害であることを否定するが、事件を担当する女刑事晏明や成功の女弁護士林闞、男性同僚で彼女に好意を抱く陳黙らに励まされ、告発を決意する。現代版『九義人』というか、『夢華録』の監督楊陽による社会派ドラマ。趙尋役の林允、陳黙役の管雲鵬など、キャスティングにも『夢華録』でお馴染みの顔が揃ってます。事件は更に周迅演じる林闞や通報者の元カノの過去の性加害事件とも重なり合っていき……

『四方館』
大雍国の都・長楽の外国人を管轄する四方館。その四方館の顧問元莫は身元不明の女性阿術につきまとわれ、彼女を奴婢にするが、どちらが主人かわからない始末で…… 檀健次・周依然主演の古装推理物。杜淳も出てます。外国人に関する事務を扱う役所を舞台にした推理物ということで設定がちょっと変わってるので見てみることにしたのですが、6話を見たあたりで飽きましたw コンセプトも『唐朝詭事録之西行』とかぶってる気も。

『九部的検察官』
刑事事件の捜査で問題を起こした検察官・雷旭は、未成年の事件を扱う新設の第九検察部に主任として異動することになるが、そこは都子瑜@秦嵐が取り仕切る女ばかりの職場で…… ということで捜査の必要に応じて巧みに変装する「百変検察官」の雷旭を『狂飆』の張訳が演じてます。変装して容疑者宅を訪ねたり地域の校区を見回りしたりと、中国の検察官って警察みたいな仕事をするのかと思いつつ見てます (^_^;)

『度華年』
元夫婦ながらお互い政敵として殺し合う中となった長公主李蓉と丞相裴文宣。同日に相手に殺害された2人は、2人が出会って結婚する直前の20年前に生まれ変わる。前世の知識を生かして今度こそ思うような人生を生きられるか?趙今麦初の古装として評判も上々の本作。8月の河南旅行でテレビで目にして気になったので見てみることに。よくあるリプレイ物といえばそうなんですが、因縁のある相手も同時にリプレイするというのがちょっと新しいかなと。今の所飽きずに見れてますw
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2024年8月に読んだ本

2024年09月01日 | 読書メーター
その悩み、古典が解決します。その悩み、古典が解決します。感想
自己啓発本の体裁をとった古典入門(でいいんですよね?)参照されている古典は江戸時代のものというのが珍しいかもしれない。西鶴、近松、『雨月物語』といったメジャー名作品もあるかと思えば本草書もあり。作品は時によって作者の意図を超えた所に面白さがあるだとか、古典の世界は先行作品を踏まえてなんぼだとか、文学・古典理解に資するような解説もある。
読了日:08月01日 著者:菱岡憲司

日ソ戦争-帝国日本最後の戦い (中公新書 2798)日ソ戦争-帝国日本最後の戦い (中公新書 2798)感想
8/8のソ連参戦から9月上旬までのソ連との戦争について。満洲の状況だけでなく南樺太や千島列島の状況にも紙幅を割いている。日本側の満洲からの引き上げの苦労ばかり語られがちだが、ソ連軍は軍紀は緩かったが情報業務を重視したとか、日本側が中国人に対しては身に覚えがあったので報復を警戒していたが、ソ連に対しては全く警戒していなかったこと、満洲国の崩壊が日本の敗北と直結していたことが国家としての本質を示しているという指摘、シベリア抑留でのソ連兵の「恩義」を感じさせる話などを面白く読んだ。
読了日:08月03日 著者:麻田 雅文

読めない文字に挑んだ人々: ヒエログリフ解読1600年史読めない文字に挑んだ人々: ヒエログリフ解読1600年史感想
前半がヒエログリフなど古代エジプト文字の基礎知識、後半が古代ギリシア・ローマから現代までの研究者列伝という構成。シャンポリオン以前の古代・中世の学者もコプト語との関係に注目するなど、後につながる研究をしていたりしてなかなかバカにしたものではないと感じる。また近世以後の西欧の学者に中国語の研究もしている人が目立つ(ほかならぬシャンポリオンもそうである)。ギーニュは中国文明起源説で知られるが、フン=匈奴同一説も提唱していたことは本書によってはじめて知った。
読了日:08月05日 著者:宮川 創

講義 宗教の「戦争」論: 不殺生と殺人肯定の論理講義 宗教の「戦争」論: 不殺生と殺人肯定の論理感想
世界の宗教は戦争、そしてその前提となる不殺生戒についてどのように議論してきたかをそれぞれの専門家が講義する。総じて当初教義レベルでは殺人を禁じ、戦争には否定的だが、国家とつながりを持つことで戦争を正当化するようになるという流れはおおむね共通しているようだ。徹底的な不殺生を説くジャイナ教が戦争については微妙な態度を採っていること、正教会の教権と俗権の一致の伝統がウクライナ戦争での教会の態度に影響を及ぼしていること、儒教の正戦論が戦前・戦中の日本の戦争観に大きな影響を与えているといったあたりが注目ポイント。
読了日:08月07日 著者:

成瀬は天下を取りにいく成瀬は天下を取りにいく感想
変人優等生・成瀬と凡人の島崎、あるいはぬっきーとの友情物語プラスアルファという感じ。取り敢えず予想とは少し違う話だった。タクローをめぐる話など、成瀬たちの親世代の大人の物語も盛り込まれてるのもよい。個人的に私もその世代なんで、むしろそっちの方に感情移入したぐらい。氷河期世代の読者だとそういう人も多いのではないか?
読了日:08月08日 著者:宮島 未奈

中国共産党vsフェミニズム (ちくま新書 1812)中国共産党vsフェミニズム (ちくま新書 1812)感想
一読して、中国共産党がフェミニズムを槍玉に挙げているというより、習近平政権が社会運動全体を警戒しており、その中にフェミニズムも含まれているだけのことではないかという印象を抱いた(無論それはそれで問題なのだが)。最後の天安門事件の指導者王丹が性加害で告発されたことを取り上げ、彼を含む民連が家父長制的な感覚を持っているということでは共産党と何ら変わりないという指摘は興味深く読んだ。近年中国ドラマでは現代劇も時代劇もフェミニズムが底流にある作品が主流となっているが、それについて全く言及されていないのも不満。
読了日:08月09日 著者:中澤 穣

ヨーロッパ近世史 (ちくま新書 1811)ヨーロッパ近世史 (ちくま新書 1811)感想
複合国家論(あるいは複合君主政論)から見るヨーロッパ近世史。従来中央集権敵性格が強いとされてきたスペインやフランスも実は複合国家としての性質を備えていたこと、複合国家が王権や議会を統合の紐帯とし、その過程で各国でユダヤ人やカトリック教徒などの異分子を排除してきたこと、アメリカ合衆国も州を単位とした複合国家であるといった指摘が面白い。そして各国とも複合国家としての性質を現在も引き継いでおり、それがEUをめぐる問題など現在の欧州地域の問題にも影響しているのである。
読了日:08月12日 著者:岩井 淳

モノからみた中国古代文化 衣食住行から科学芸術まで (東方学術翻訳叢書)モノからみた中国古代文化 衣食住行から科学芸術まで (東方学術翻訳叢書)感想
先秦時代から明清時代までの中国社会生活史、工業史のよい概説。農業、食、服装、建築、家具等々の各方面についての知識と考古学的発見がまとめられている。古文字の解説など所々にアラが見えるものの、春秋時代の餛飩の出土例が存在するとか、胡服の実際、東西の古代の車馬には繋駕法に大きな違いがあること、中国で船の舵が発意されたのは漢代であること、金縷玉衣はあくまで棺の一種であって衣服ではないといった知識が得られる。
読了日:08月19日 著者:孫機

世界の歴史〈10〉フランス革命とナポレオン (中公文庫)世界の歴史〈10〉フランス革命とナポレオン (中公文庫)感想
革命の前段階から革命の展開、そしてナポレオンの登場から退場までをバランスよくまとめている。フランス革命が世界に与えた影響、日本への影響についても紙幅を割いている。革命にはフランス革命的要素とナポレオン的要素とがあり、日本の場合は明治維新以来ナポレオン的要素が先行し、フランス革命的要素は後から着いてくる形になったという。新中国に対する展望があるのも面白い。
読了日:08月20日 著者:桑原 武夫

アメリカ革命-独立戦争から憲法制定、民主主義の拡大まで (中公新書 2817)アメリカ革命-独立戦争から憲法制定、民主主義の拡大まで (中公新書 2817)感想
独立革命時に13州側にも英国王に愛着を抱く人が大半であったこと、「代表なくして課税なし」の実相、異論百出して「妥協の産物」として制定された連邦憲法、それが一旦世に出ると制定会議で異論を唱えた者も憲法を擁護したり拠り所としたこと、建国初期から「帝国」の様相を呈していた合衆国など、最新の研究に沿って独立の前後から南北戦争の頃までのアメリカについて新しい気付きを与えてくれる。
読了日:08月22日 著者:上村 剛

妖怪を名づける: 鬼魅の名は (607) (歴史文化ライブラリー 607)妖怪を名づける: 鬼魅の名は (607) (歴史文化ライブラリー 607)感想
江戸時代の妖怪の(認知と命名の)急増は、江戸幕府がそれまでの政府と違って危機管理としての怪異には関知しないという方針を採ったことや怪異が知的好奇心の対象となったことが影響し、とりわけ俳人が大きな役割を担ったことを指摘する。松尾芭蕉や西鶴、蕪村ら著名な俳人も妖怪の命名に関わり、芭蕉をモデルとしたと見られる妖怪も存在するという。怪異論として意外背生のある議論になっているが、俳諧論としても意外であることだろう。江戸時代の俳諧を研究している人の評価も聞きたいところ。
読了日:08月24日 著者:香川 雅信

物語フランス革命: バスチ-ユ陥落からナポレオン戴冠まで (中公新書 1963)物語フランス革命: バスチ-ユ陥落からナポレオン戴冠まで (中公新書 1963)感想
フランス革命の背景、展開、ポイントなどを要領よくまとめている。改革派の国王だったルイ16世、「合法性の人」ロベスピエールといった革命の主役たちに新たな光を当て、特にルイ16世に対しては肯定的再評価を行っている。テロワーニュ・ド・メリクール、ロラン夫人、王妹エリザベトといった、今まで知られていなかった人々も含めて女性たちの動きや役割を重点的に紹介しているのも特徴。もちろん日本の明治維新との対比や、革命の日本への影響についても触れられている。
読了日:08月26日 著者:安達 正勝

王の逃亡:フランス革命を変えた夏王の逃亡:フランス革命を変えた夏感想
フランス革命の展開に決定的な影響を与えたヴァレンヌ逃亡事件の経過と、関係者の述懐、諸派の議員たちや国民の反応、その後の展開を追う。逃亡の失敗により、国王に対する国民の敬愛や信頼が失われ、また国王の存在を前提としていた革命後の政治体制や憲法のあり方に疑念が突き付けられ、フランスは君主制から共和制へと向かうことになる。その様子も丁寧に描き出している。真に問うべきは国王がなぜ逃亡に失敗したかではなく、なぜあわや成功しそうになったかであるという視点が面白い。
読了日:08月29日 著者:ティモシー・タケット

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最近見てるドラマ(2024年8月)

2024年08月03日 | 中華時代劇
『唐朝詭事録之西行』
壁画に描かれた魔王が抜け出して殺人を行うという怪事件を捜査しているうちに行方不明になった盧凌風。蘇無名を捜査を引き継いで彼を捜索。そして無事事件は解決したものの、盧凌風が実は公主の子であることが、その政敵である新帝の耳に入ってしまい…… ということで最初の事件の後は蘇無名は免官処分となって長安所払い、盧凌風も地方に左遷されてチーム蘇無名は二手に分かれて西へと旅立ち、更なる怪事件に巻き込まれます。前作と同様に『神探狄仁傑』風味のいい伝奇に仕上がってます。中盤近くまで見た感想ですが、前作より面白くなってると思います。前作に引き続きクリーチャーというかUMAも登場しますしw

『少年白馬酔春風』
こちらは『少年歌行』の前伝。前作の親世代の若い頃の活躍を描きます。今回の主人公は前作でいい酒飲みっぶりを見せた百里東君。意外にも?名門のお坊ちゃんだったようで、冒頭で酒場を開くも客が寄りつかないというのは前作の出だしを思わせます。今作もCGを駆使していい夢のある武侠に仕上がっています。誰が前作の誰の親や師父なのかがわからなくなるので、人物対照表は必須です (^_^;) 
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