博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

2022年6月に読んだ本

2022年07月01日 | 読書メーター
フェミニズムってなんですか? (文春新書 1361)フェミニズムってなんですか? (文春新書 1361)感想
本編でフェミニズムに関連してよく話題になる、結婚、性暴力、教育、ケア労働などの問題に加え、間に挿入される対談でその他の問題、スポーツとジェンダーなどを補足するという構成。「そういう所で引っかかりを覚えるのか」と参考になる。第5章で言及される、同じ女性でも、たとえば白人女性と黒人女性とでは差別の経験は異なるという個別性の問題を指摘している箇所は、SNSでもしばしば議論になっていることもあり、興味深く読んだ。あるいは「弱者男性」の問題もこれと関わってくるだろうか。
読了日:06月01日 著者:清水 晶子
辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿辮髪のシャーロック・ホームズ 神探福邇の事件簿感想
シャーロック・ホームズの舞台を同時代の香港に置き換えたパスティーシュ(あるいはパロディと言ってもいいかも)。実在の人物・団体や事件(清仏戦争など)を織り交ぜたり、武侠要素など中国、あるいは香港ならではの要素をふりかけ、清末を舞台にした歴史エンタメとして読んでも面白い。
読了日:06月04日 著者:莫理斯 (トレヴァー モリス)
イスラムがヨーロッパ世界を創造した 歴史に探る「共存の道」(光文社新書) (光文社新書 1199)イスラムがヨーロッパ世界を創造した 歴史に探る「共存の道」(光文社新書) (光文社新書 1199)感想
ヨーロッパ世界、イスラム世界、ユダヤ人の共存と交流の歴史。扱う時代が幅広く、それがバラバラに触れられるので読みにくいのが難点。個別のエピソードには興味深いものが多い。たとえば病院の制度はもともとムスリムの制度であったのが、十字軍遠征を通じてヨーロッパに取り入れられたのだという。現在の対立、相互不信の状況が歴史的に決して常態ではなかったことを示し、共存の重要性を説く。その認識・姿勢に大いに賛同したい。
読了日:06月07日 著者:宮田 律
新中国論: 台湾・香港と習近平体制 (1005;1005) (平凡社新書 1005)新中国論: 台湾・香港と習近平体制 (1005;1005) (平凡社新書 1005)感想
同じ著者の『台湾とは何か』『香港とは何か』の補編的な内容。納得できる点は多いが、やや煽りすぎかなという点もある。本書に足りない要素があるとすれば、韓国と日本、あるいは中華圏との関係であろう。韓国は著者の専門ではないが、日本の中国に対する印象の悪化は、韓国への印象の悪化と軌を一にしており、無視できる要素ではないだろう(たとえば、本書でも言及されている中国崩壊論とともに韓国崩壊論も語られてきたという流れがある)。次回作があるとすれば、このテーマに期待したい。
読了日:06月10日 著者:野嶋 剛
明治史講義【グローバル研究篇】 (ちくま新書 1657)明治史講義【グローバル研究篇】 (ちくま新書 1657)感想
外国人研究者を中心とする論集。本書の内容は、①同時代の海外の目から見た明治維新、②外国人研究者によるグローバルが絡まない研究、③海外の研究動向に大別され、まとまりに欠ける。元の国際シンポジウムの会議論文集ならそれで良かっただろうが、一般向けの読み物としては①に絞った方が良かったのではないか。内容は、特に第12講で、「親日」と思われてきたオスマン帝国人も、実際のところ明治日本のイメージは否定も含めて多様であったと指摘しているのが興味深い。
読了日:06月19日 著者:瀧井 一博
新疆ウイグル自治区-中国共産党支配の70年 (中公新書 2700)新疆ウイグル自治区-中国共産党支配の70年 (中公新書 2700)感想
当初は連邦制的な枠組みも模索されていたこと、統制には時期によって緩急があったことなどは興味深い。また、大躍進、文革、改革開放、ソ連崩壊、911事件など、自治区の政策の動向は(当たり前のことながら)中国全体の政策や海外の動向と連動していたことがわかる。漢族が相手なら問題になりにくい所、相手が少数民族であったことが「炎上」につながる傾向があったと言えそうである。当局の「脱貧困によって問題が解決される」という考え方は、しばしば日本の保守派が日本の状況について取りがちな発想なのが気になるが…
読了日:06月23日 著者:熊倉 潤
帝国日本のプロパガンダ-「戦争熱」を煽った宣伝と報道 (中公新書 2703)帝国日本のプロパガンダ-「戦争熱」を煽った宣伝と報道 (中公新書 2703)感想
錦絵、絵はがき、写真、活動写真、新聞、グラフ誌等々、戦争をめぐるメディアの歴史。日本と、日本と敵対した国のプロパガンダの状況が対比的に扱われているのが面白い。現在のプロパガンダの諸相は……と、ネットをめぐる状況を連想させる作りになっている。
読了日:06月25日 著者:貴志 俊彦
GHQは日本人の戦争観を変えたか 「ウォー・ギルト」をめぐる攻防 (光文社新書)GHQは日本人の戦争観を変えたか 「ウォー・ギルト」をめぐる攻防 (光文社新書)感想
本書によると、ウォー・ギルト・プログラム(いわゆるWGIP)のプロパガンダとしての効果は限定的で、プログラム自体も尻すぼみで終わったということになりそうである。当時の日本人の反応を見ると、日本自身の戦前・戦中のプロパガンダないしは洗脳の方が余程効果を及ぼし、呪縛力も強かったということになりそうである。著者のスタンスとしては幾分日本人の方に寄り添ってはいるが、当時の我々は戦争の実情を知らされていなかったことを踏まえつつも、ここまでふてぶてしくなれるものかという印象を抱いた。
読了日:06月28日 著者:賀茂 道子

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最近見てるドラマ2022年6月

2022年06月05日 | 中華時代劇
『説英雄誰是英雄』
温瑞安原作。久々の正統派武侠。『四大名捕』と話がつながっているらしく、所々で以前に見た『逆水寒』で目にしたような名前が出てきますw

『夢華録』
劉亦菲の久々のドラマ出演作。舞台は北宋。関漢卿の元曲『趙盼兒風月救風塵』を原案にしているとのこと。意外と武侠要素が多く、才子佳人物と水滸伝のノリが同居している不思議な世界観(褒めてます)。女性監督&女性脚本家ということで色々話題になっているようですが、流行りのアイドル武侠やラブ史劇とは一線を画した雰囲気です。映像も綺麗。まだ出だししか見てませんが、今年の古装ナンバーワンかも。
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2022年5月に読んだ本

2022年06月01日 | 読書メーター

中国共産党 世界最強の組織 1億党員の入党・教育から活動まで (星海社新書)中国共産党 世界最強の組織 1億党員の入党・教育から活動まで (星海社新書)感想
中国共産党の、よくニュースで話題になる中央部以外の、下部組織の構造と実際を解説。こうした下部組織が上意下達だけでなく下意上達、すなわちボトムアップの機能も果たしていること、これにより意外と民主的な面があること、共産党組織が「人の和」を重視しているといった、従来のイメージを覆す特色をまとめている。『人民的名義』『大江大河』といった現代物のドラマを見るうえでの参考資料としても有用。私は本書を読むことで、留学中に中国人学生の話の中で時々出てきた「領導」がどういう存在であるかが具体的にわかった気がする。
読了日:05月01日 著者:西村 晋
上海: 特派員が見た「デジタル都市」の最前線 (998;998) (平凡社新書 998)上海: 特派員が見た「デジタル都市」の最前線 (998;998) (平凡社新書 998)感想
上海を中心とした、ここ3~4年の中国事情。ただ上海のロックダウンで、内容にはや一昔前感が出てしまっている。扱う内容は多岐に渡るが、中国のカレーの普及と近年の野球事情が面白い。また中国の対口支援は日本も見習えるだろう。
読了日:05月04日 著者:工藤 哲
攘夷の幕末史 (講談社学術文庫)攘夷の幕末史 (講談社学術文庫)感想
従来の開国派を即時攘夷に対する「未来攘夷」と読み替え、幕末の政治史を、攘夷実行の時期をめぐる抗争と読み替える。開国派のめざす「華夷帝国」の夜郎自大な理念を見ると、大日本帝国の破滅は成立前にして予定されていたと暗然たる気持ちになるが…
読了日:05月08日 著者:町田 明広
文天祥 (ちくま学芸文庫)文天祥 (ちくま学芸文庫)感想
文天祥の詩と生涯で辿る南宋末期の社会・政治と宋元の攻防。小説のような筆致が気になるが、とにかく面白い。図版に使用されている写真はいつの頃のものだろうか。今となってはこれ自体が資料的価値を帯びている。
読了日:05月14日 著者:梅原 郁
劉裕 江南の英雄 宋の武帝 (法蔵館文庫)劉裕 江南の英雄 宋の武帝 (法蔵館文庫)感想
武力が主役となった時代を切り開いた旗手として、南朝宋の開祖劉裕を描き出す。彼がいかに貴族と対峙したかとともに、その限界も描いている。当時の武人と貴族の関係を日本の武士と公家との関係になぞらえているのが特徴か。最後に『宋書』の編者沈約の独白という形で劉裕の評価と彼の死後の状況を描くという趣向も面白い。
読了日:05月18日 著者:吉川 忠夫
史伝 北条政子: 鎌倉幕府を導いた尼将軍 (NHK出版新書 673)史伝 北条政子: 鎌倉幕府を導いた尼将軍 (NHK出版新書 673)感想
実質上の「四代将軍」として北条政子を再評価。手法としては既出・既存の史料や研究での評価の見直しという側面が強い。関連の文物や発掘の成果などを紹介しているのも面白い。漢の呂后と立場的に似ているなと感じたが、今までもマイナス面も含めてそうした評価がなされてきたようだ。
読了日:05月23日 著者:山本 みなみ
物語 スコットランドの歴史-イギリスのなかにある「誇り高き国」 (中公新書, 2696)物語 スコットランドの歴史-イギリスのなかにある「誇り高き国」 (中公新書, 2696)感想
『物語イングランドの歴史』とどの程度差別化できるのかと思ったが、イングランドとの合併後も宗教改革や清教徒革命・名誉革命などのスコットランド側の動きや事情を解説するなど、しっかり「スコットランドの歴史」としてまとまっている。ウォルター・スコットが歴史小説というジャンルの確立者であるという指摘など、文化・宗教面の記述も興味深いものになっている。
読了日:05月26日 著者:中村 隆文
人種主義の歴史 (岩波新書)人種主義の歴史 (岩波新書)感想
「白人」「黒人」「ユダヤ人」などを例として見せることで、「人種」が科学の形を装いつつも、それぞれの「人種」の定義が、客観性がなく主観的で曖昧で、時に都合に合わせて定義や範囲が変化するものであることがわかる。モンテスキューの奴隷制、あるいはダーウィンの優生思想に関わる認識をめぐって議論があることは本書で初めて知った。本書は欧米での展開が中心だが、それを踏まえて最後に我々日本人の人種主義についても触れている。
読了日:05月29日 著者:平野 千果子

コメント (2)
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最近見てるドラマ2022/5

2022年05月03日 | 中華時代劇
年明けから、リウマチだけでなく重度の座骨神経痛が発症してると判明…(リウマチの症状のひとつだと思い込んでた)本格復帰には年単位の時間がかかりそうです…

『山河月明』
明朝物です。久々の本格歴史物。若き日の永楽帝が主人公ですが、『大明風華』とつながりそうな要素にも注目。陳宝国演じる朱元璋が意外と家庭的な雰囲気ですが、数々の粛清もきっちり描いてますw

『風起隴西』
馬伯庸原作の、三国時代を舞台にしたスパイ・サスペンス。全24話予定と短め。しっかり見ないと話がわからなくなりそう。

『且試天下』
楊洋・趙露思主演のアイドル武侠。最近馬の虐待疑惑とか、妙なスキャンダルが出てきましたが…(どうやらこれはデマらしい)途中からあんまり武侠でなくなってきた…
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2022年4月に読んだ本

2022年05月01日 | 読書メーター
漢とは何か (東方選書 58)漢とは何か (東方選書 58)感想
同時代の前漢から三国・西晋、唐代に至るまでの、官制、五徳の配当、史書編纂、年号、君主の諡号・廟号、祭祀などに現れる各時代の漢王朝観を概観。漢の記憶が薄れるにつれ、懐旧の対象に周王朝が加わるなど、変化が見られるのは面白い。ただ、第六章が本書のテーマとの関わりが薄いのは残念。
読了日:04月02日 著者:
物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国 (中公新書)物語 ウクライナの歴史―ヨーロッパ最後の大国 (中公新書)感想
ウクライナに関わりのある文学者や音楽家が彩りを添える。中世以来のロシア、あるいはポーランドとの複雑な関係がわかる。豊かな農業・工業国であるがゆえに歴史的に多難に見舞われたのだとする。アメリカなどのウクライナ移民の活動、クリミアがウクライナ領となった経緯が興味深い。
読了日:04月07日 著者:黒川 祐次
死と運命 中国中古の思索 (法蔵館文庫)死と運命 中国中古の思索 (法蔵館文庫)感想
古代中国の死生観、運命論、欲望論に関する論考を集めたもの。著者の体験が所々織り込まれているのが面白い。登仙という発想が始皇帝の頃には見られず、武帝の頃にようやくむ出てきたこと、性悪説が『荀子』の中で決して重要ではなかったことといった説が注目される。また昨今の流行とは異なり、現代においても「無欲恬淡」を説いているあたりも要注目。
読了日:04月11日 著者:金谷 治
ハレム: 女官と宦官たちの世界 (新潮選書)ハレム: 女官と宦官たちの世界 (新潮選書)感想
オスマン帝国のハレムを構成する組織、役職、宮殿の構造について。愛妾・夫人は基本的に奴隷出身、王子の鳥籠制度など大きな違いはあるが、官僚組織のようになっている点など、オスマン帝国のハレムは中国歴代王朝の後宮と意外と共通点があるなという印象。後半に出てくる唖者と手話の話が面白い。
読了日:04月15日 著者:小笠原 弘幸
論考 日本中世史: 武士たちの行動・武士たちの思想 (日本史史料研究会ブックス)論考 日本中世史: 武士たちの行動・武士たちの思想 (日本史史料研究会ブックス)感想
初学者向けのコラムあり、古文書や史料の読解あり、替え歌ありと、バラエティに富んだ構成。中世武士の名前に関する解説は参考になる。
読了日:04月17日 著者:細川 重男
漢字の音 東方選書57漢字の音 東方選書57感想
形声文字の声符と上古音・中古音・日本漢字音についての概説。藤堂明保などの語源論的発想を批判した附論が一番の読みどころかも。
読了日:04月18日 著者:落合 淳思
韓国カルチャー 隣人の素顔と現在 (集英社新書)韓国カルチャー 隣人の素顔と現在 (集英社新書)感想
ドラマ、映画、文学作品から読み解く韓国の社会と文化。ドラマが「すぐに過去の物語」になるというあたり、韓国社会の変化の早さが読み取れる。韓国社会への批判もあるが、良い所にも触れているのが好感が持てる。また韓国と比較して日本社会への批判が盛り込まれているのも良い。本書のラストで「韓国について知れば知るほど、日本について何も知らなかったことに気付かされる」とあるが、外国の社会を知ることは日本社会の問題点に気付くことでもあるのだろう。
読了日:04月22日 著者:伊東 順子
思考と行動の中国史思考と行動の中国史感想
これも『古代中国の24時間』などに類する、今流行りの社会生活史の一種ということになるだろうか。著者の意を汲むと、本書は「中国を一例とする前近代人の思考と行動」ということになるか。やはり今の流行りらしく中国と日本との違いを強調しているが、中国との違いを強調することは、残念ながら今の日本では中国への偏見を持たせるだけの結果に終わる可能性がある。日本というより現代人との感覚の違いを強調し、前近代の日本との違いだけでなく共通点も提示した方が良かったように思う。
読了日:04月27日 著者:竹内 康浩

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