博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『天意』その4

2018年06月30日 | 中国科幻ドラマ
『天意』第14~18話まで見ました。

膠陽の地では懐王の孫・熊心を手中に収めようと群雄が集結。その頃、韓信は海が見たいという小芳のリクエストに応えて海辺で舟を出しているうちに嵐に巻き込まれ、無人島に漂着してサバイバルする羽目になったのでした。……色々ツッコんだら負け感が (^_^;)

膠陽では熊心の偽物が出現したりしておりましたが、何だか訳がわからないうちに無人島から戻った韓信たちはその偽物が持っていた楚王の櫃を手がかりに、たまたま行き当たった酒場の老板が懐王の孫であることを突き止め、項梁はこのおっさん(下の画像参照)を祖父と同じ号の懐王として擁立。



韓信は劉邦側の使者としてやはり熊心を捜索していた張良と再会し、自陣で酒を酌み交わしますが、そこへやはり熊心を狙っていた墨舞が潜入。


秘密組織「隠鬼面」の使い手墨舞。これまでも韓信とは因縁がありましたが……

で、夜な夜な墨舞が熊心こと酒場の老板を暗殺。対処に困る項梁&范増ですが、この老板の義子で奴隷として虐待されていた二毛少年(状況を見かねた銭小芳によって保護されていた)の存在を知ると、「義子でもええやろ」ということでこの二毛少年を懐王として擁立。実はこの二毛少年が懐王の孫で、老板はそれを知りつつ隠して自分が王として擁立されたということで叩き出されるというエピソードが挿入されるのかなと思いきや、そういう説明一切抜きで殺されて終わりという展開になったので少々驚いております……

そして虞姫に墨舞との仲を疑われた項羽が、仲直りのために銭小芳からラブソングと振り付けを教わるのですが、そのラブソングというのが本作のEDテーマ「女主角」(ヒロイン)だったりします (^_^;)





そしてこのあたりで張良の主君となった劉邦(イケメン)と呂雉(美女)が登場。このドラマいろんな方向でやりたい放題ですよね……

韓信はと言えば、脳筋ばかりが揃った項羽陣営では自分の献策が受け入れられないことも多く、范増には評価されるようになるも、項羽との間には微妙に溝ができていきます。しかし項羽・韓信らは章邯の軍を追撃した際にその罠にはまって奥深くに誘い込まれたうえ、立てこもった駅亭が包囲されてしまい…… おかしい、このドラマ、ここにきて普通の歴史ドラマのようなノリになってます(困惑)
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『天意』その3

2018年06月25日 | 中国科幻ドラマ
『天意』第9~13話まで見ました。

銭小芳&蕭何はインチキ祈禱師・賈長安と対峙したものの、蕭何は賈長安の手の者に追われて崖落ちし、小芳は囚われの身となりますが、そこへ駆けつけた韓信・張良らによって救出。蕭何も「崖から落ちて死んだ人なんていません!」ということで張良の占いによって生存していることが判明。それで安心したのか、以後の展開には蕭何の「し」の字も出てきません (^_^;)

小芳は韓信・張良・天依と行動をともにすることに。賈長安打倒の後、始皇帝暗殺を謀る張良は小芳を「女神」に仕立ててその噂を広め、始皇帝をおびき出そうとします。ここで小芳が氷の板をレンズがわりにしてスマホの動画を壁面に拡大して投射する幻灯器を自作したり、張良から仕込まれた禹歩に上半身の動きを付けてダンスステップにアレンジしたりしておりますw 折しも不老長寿の仙薬と東海君(=滄海客)を求めて始皇帝が東方への巡幸を決行。現地の役人が噂を聞きつけて小芳らに接触し、始皇帝が彼女に会いに来るということで巡幸ルートを特定。

暗殺計画を知らされた小芳は、初めは歴史の流れとしてこれでいいのだろうかと疑問に思いつつ、「今は始皇29年、三度目の巡幸……始皇帝もぼちぼち死ぬ頃合いだね」ということで何となく納得するんですが、小芳さん、始皇帝が死ぬのは37年、五度目の巡幸の時ですぞ…… で、当初は小芳の指導で火薬(これも当時存在しないはずの技術ですが)を壺に詰めて投げつけるつもりでしたが、夜な夜な密かに張良に接触した神の使者()滄海客は、「こっちの方が確実だぞ?」と「曳影剣」なる兵器を授けます。


平たく言えばバズーカですね。しかも砲弾ではなく波動砲のようなものが発射されるオーパーツ的なアレです。

今のところ未来人・銭小芳と神(=地球外生命体)の使者・滄海客は互いの正体を認知していないんですよね…… ついでに言うと、女羲&滄海客からは自分たちの干渉によって歴史が変わるかもしれないとか、歴史を改変してはいけないという意識がまるで感じられません。どうやら「神」こと女羲も小芳と同様にワームホールに吸い込まれて太古の時代の地球に飛ばされてしまい、元の世界に戻る方法を探っているようなのですが、その目的が達成されるなら歴史が変わろうが変わるまいがおかまいなしという感じです。様々な点でこの世界が違う世界線に見えるのは、太古からの女羲の干渉によって色々おかしくなってしまった結果ということなのかもしれませんね。





そして巡幸の馬車が博浪沙に至り、いよいよ「曳影剣」を使う時がやってきました(; ・`д・´) バズーカもどきから放たれた波動砲的なサムシングが護衛部隊の間を突き抜けていき、爆発。 こ れ が 見 た か っ た 。 まあこの巡幸の一団は護衛役の墨舞の提案により派遣されたおとり部隊で、馬車の中に始皇帝はいなかったというオチなんですけどね。しかし力士の倉海君が鉄槌を投げつけるという話がなぜ神の使者()滄海客から授けられたバズーカで波動砲をぶっ放すという話に変わってしまうのでしょうか(白目)

さて、この時の混乱により韓信&小芳と張良&天依のカップルが離ればなれになり、秦兵の矢が当たって小芳のスマホがお亡くなりに…… 逃亡を続けるうちに、二人は互いに「阿虞」「阿籍」と呼び合って秦兵と戦うバーサーカーカップルと遭遇。





ということで項羽と虞姫の登場です。虞姫も弓の達人という設定で、矢が足らないとなると、項羽がわざと自分の体に敵の矢を射させて引き抜き、虞姫の矢にするという荒技を披露。当然韓信&小芳は二人と意気投合し、めでたく項羽配下の初期メンバーに。小芳は相変わらず韓信に「四次元とは何か」を説明しようとしたり、虞姫の弾く琴を伴奏代わりに「時の流れに身をまかせ」のカラオケを歌ったりとフリーダムに振る舞っています。この間、始皇帝は史実通り五度目の巡幸中に雑にナレ死を遂げます。

項羽一党の知恵袋として項梁・范増にも信頼され、韓信は項氏一族しかなれないという項羽の「執戟親衛」に抜擢。そして楚の懐王の孫・熊心を捜索するべく膠陽へと派遣され、同じく劉邦配下になった張良や秦の手先として働き続ける墨舞も熊心捜索のために同地にやってきていたというあたりで次回へ。
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『天意』その2

2018年06月18日 | 中国科幻ドラマ
『天意』第4~8話まで見ました。

さて、墓泥棒蕭何は申屠の山賊団の一味で、申屠からは恋人のように思われているのですが、それが嫌で山寨から抜け出そうとしておりました。何だかんだと山寨に連れてこられた銭小芳も山寨脱出に協力しようとして、手持ちのスマホで見ていた『ショーシャンクの空に』をヒントにしようとしたり(しかし肖申克だの安迪だのという名称で映画の筋が語られると、漢籍に載ってる故事のように聞こえてくるから不思議ですね)、申屠と配下たちを酒宴で酔いつぶさせて山寨から脱出しようとして、余興で小芳がダンスを披露したらなぜかインド映画のダンスシーンのようになったりと、割とやりたい放題です。



一方、韓信は相変わらず神の使者()滄海客につきまとわれ、「死んだ季姜に会わせてくれるなら取り引きに応じてやるよ」と無理難題をふっかけますが、「季姜は死んでないぞ?」というわけで、季姜こと銭小芳のいる山寨に十二辰(24時間)限定で飛ばされてしまいます。小芳には当然季姜としての記憶が残っておりませんが、韓信は彼女が何らかの事情で記憶を失ってしまったのだろうと解釈します。相手が韓信だと知った小芳は蕭何と三人でやはりスマホで自撮り。

しかし沛県で役人をしているはずの蕭何が墓泥棒で、淮陰でうだつの上がらない人生を送っているはずの韓信が官府の指名手配なのはおかしいのではないかと気付きます。ひょっとして小芳は我々が知っている過去ではなく、違う世界線の過去に飛ばされてしまったというオチになるんでしょうか?はたまたこの世界は我々の世界の遥か未来で、一旦文明が滅亡した後に石器時代からやり直した世界ということだったりするんでしょうか……?

その頃、山寨に近づく怪しげな軍団が…… 申屠の山賊団のライバルにあたる禿鷲団がその正体なのですが、その頭目はこんな人です!!



何となくカリブ海で海賊をやってそうなナリですね。山賊団同士の戦いということで『三国志 趙雲伝』こと『武神趙子龍』を思い出してしまったのは私だけでしょうか…… で、韓信が参謀役に収まり、小芳も持ち前の科学知識で申屠・蕭何らを助けて危機を切り抜け、十二辰の期限がきてしまった韓信は小芳に祖先伝来(晋の韓厥の子孫という設定になっています)の「無影剣」を託して滄海客のもとに戻り、小芳は申屠らから山寨を救った英雄として新たな老大(頭目)に推戴されます。

小芳は申屠と蕭何を何とかカップリングしようとし、「私の時代だとそういうのは普通だからね?」「彩虹(レインボー)って知ってる?」と声をかけたりしています。LGBTのシンボルマークとしてのレインボーは中国でも受け入れられているんですね。 というか申屠がいつも蕭何のことを気に懸けていてどんだけ蕭何のことが好きなんやとなってしまいますが (^_^;) そして勢い余って秦の時代に火鍋を発明してしまう小芳。山寨の食材をあさっててなぜか明代に海外から入ってきたはずの唐辛子があるのを疑問視していますが、このあたりも違う世界線もしくは遥か未来の話かもしれないというのが絡んでいるのでしょうか…… しかし韓信の行方が気になる小芳は山寨を発つことにし、彼女を「女神」と崇める蕭何がお供をすることになります。

で、神の使者()滄海客ののもとに戻された韓信は、同じく神()に選ばれてしまった張良を探すというミッションを授かります。



張良は従妹の天依とともに同志を集めて官府襲撃を計画していましたが、内部から計画が漏れて追われる身となり、天依が秦軍に捕らえられてしまいます。そこを韓信と出会い、協力して彼女を救出し、東方へと逃れます。ここで韓信の謎の師匠の正体が尉繚であること、張良がかつて滄海客から異術を授かり、また彼から授かった医療器具で互いの血を入れ替えることによって奇病に冒されている天依の命が保たれていることなどが明かされます。

咸陽の始皇帝は河南郡の日照りによる災害などを顧みず阿房宮や長城の建設を推し進め、滄海客(始皇帝に対しては東海客と名乗っている模様)・女羲から見放されておりましたが、彼自身は滄海客から不老長寿の秘法を授かるという大望を諦めず、自ら東方に巡幸して滄海客と仙薬を探し求めることに。その情報を得た韓信・張良は、途上で待ち受けて暗殺を決行しようとしますが…… ということで次回以降博浪沙に突入するようですが、韓信が元ネタの力士倉海君の役回りをつとめることになるのか、はたまた倉海君→滄海客が絡んでくることになるのか?
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『天意』その1

2018年06月13日 | 中国科幻ドラマ
YOUKUオリジナルの歴史SFドラマ『天意』を見始めました。今回は第1~3話まで鑑賞。

物語は人類の誕生より始まります。人類は高度な知能と技術を持つ地球外生命体・女羲の支援により文明を発展させていきました。


唐嫣演じる女羲。人類の発展を支援しつつ、ある任務を成し遂げられる英雄を探し求めています。そして贏政すなわち始皇帝こそはその英雄ではないかと見守ってきましたが、日ごとに暴君の度合いを増していき、彼女を失望させます。始皇帝は淮陰から差し出されてきた美少女・季姜を我が物にしようしますが、彼女は幼馴染みの韓信以外には嫁ぐ気はないと宮中で抵抗のすえに自害。始皇帝は彼女を皇妃待遇で自らの陵墓に陪葬させることにします。


この件で始皇帝に名前を覚えられ、ロックオンされた主人公・韓信はお尋ね者に…… クッソ生意気そうな顔をしていますが、謎の師匠に武功を授けられたらしく、やたら強いですw

所変わって現代の上海。SF小説を執筆中の銭小芳は歩きスマホで通話中に車にはねられたと思ったら(このあたり『人民的名義』を思い出してしまいます)、陪葬墓の棺桶の中の季姜に転生してしまいます。『二度目の人生を秦代で』ですね。そしてなぜかスマホも秦の時代にタイムスリップしてしまいますw 

このままでは『妖猫伝』の楊貴妃のように窒息死してしまうところでしたが、タイミング良く墓泥棒が棺桶の蓋を開けたことにより脱出に成功。この墓泥棒、実は後に劉邦を支えることになる蕭何でした(沛県で下級役人をしていたはずではというツッコミは胸の奥にしまっておいて下さい)


「大人物」ということで蕭何と記念の自撮りをする銭小芳……

一方、我らが韓信は地元淮陰の県尉のドラ息子(名前が賈似道……)や官兵を殺害した罪でお尋ね者になりますが、死んだ季姜の仇討ちのために咸陽に潜入したところ、今度は秘密結社の女使い手・墨舞や、女羲にロックオンされてしまいます。


で、女羲の忠実なる下僕・滄海客につきまとわれることに…… このファッションセンスは何となく『太子妃狂想曲』を連想させますね。この滄海客、韓信に対して「神の使者」と称していますが、なかなかそうと信じてもらえずに詐欺師の方士のように扱われ、「何度も言っているが神の使者だ!」「神の使い、神の使い、神の使い!」とブチ切れますw 滄海客は韓信に、12年後に自分の力ではどうにもならない出来事がお前を襲うが、私の御主人との取り引きに応じるなら力を貸してやろうと申し出ますが、韓信はオレの力で何とかするさと拒絶。

今回は張良(イケメン)が地下で秘密結社のメンバーらしき人々に見守られながら何やら亀卜の儀式に励んでいるところで幕。今のところはギャグタッチの歴史物という感じですが、ここからどうなりますか……?
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『三国機密之潜龍在淵』その10(完) 二度目の人生を献帝で

2018年06月08日 | 中国歴史ドラマ
『三国機密之潜龍在淵』第52~最終54話まで見ました。

曹操との間に埋められない溝ができていることを悟った荀彧は自害を選び、孔融は曹操に処刑されます。その曹操は日ごとに持病の頭痛に悩まされるようになるとともに、「郭嘉、荀彧、曹植…… ワシの信頼した者たちはどうしてみなあやつになびいていくのだ!」と劉平への苛立ちを募らせます。許都では劉平と曹操との衝突が不可避と思われましたが、その二人の会話。 劉平「魏公は早く鄴に遷った方がよい。このままでは何がおこるか保証できない。許都を戦場にはしたくない。」 ……これ、控えめに見なくても曹操を脅しにかかってますよね?

そして曹操は曹節と劉平との婚姻を望み、曹節自身も形だけの夫婦でよい、伏寿にかわって自分が父や兄から劉平を守るのだと、皇后への冊封を受け入れることに……

その頃、司馬懿は人里離れた所に建つ屋敷の中で謎の女性と対話していた…… というか彼女の正体はモロバレですね。ということで伏寿は生きてました\(^o^)/ 前回飲まされたのは毒薬ではなく仮死薬だったというオチで、実は事前に劉平と司馬懿とが計画して彼女が毒殺されたように偽装していたのでした。

曹操が魏公国の都・鄴へと遷って6年、許都は劉平の統治のもと平穏を維持し、名君としての劉平の声望は日ごとに高まっていきました。そして劉平はその仁政を慕ってやってきた難民たちも受け入れたのでありました。難民は受け入れるべきであるという規範意識は当然中国にもあるのだなと。

で、曹操の病が重いらしいということで曹節とともに鄴へと見舞いに訪れた劉平でしたが…… 劉平「朕は冷寿光より華佗の『青嚢書』を託されて以来医術の研鑽を積んできた」 曹操「ならワシの頭痛も何とかなりますかな?」 劉平「まず麻沸散で意識を失わせた後に頭を割り、病巣を取り除けば治るだろう」 このネタを劉平でやるのかと (^_^;) 当然ながら曹操は治療を拒み、「もし10年若ければ陛下との同盟を受け入れたでしょうな」という言葉を劉平に言い残して死去。

曹丕が魏王の位を継ぎますが、次弟曹彰と青州黄巾党が不穏な動きをおこします。司馬懿は劉平に密かに青州黄巾党の指導者の名簿を引き渡し、有事の際は彼らを味方に付けよと示唆。司馬懿が何も変わっていないということで笑顔で抱擁する二人。劉平を憎む司馬懿なんておらんかったんや!!しかし劉平は青州兵の動員を拒み、大軍でもって許都に迫った曹丕に対して、「大切なのは統一を果たすことで、天下を得るのは劉氏でも曹氏でもよい」と言い放ち、退位を宣言。ここで劉平に対して曹丕が跪いているので、どちらが勝者なのかわからないという趣向になっています。

曹丕に禅譲して山陽公となり、漢王朝という大きなくびきから解放された劉平は…… 反対に帝位を得た曹丕は、そして司馬懿は……

【総括】
本作の面白いところは、主人公の劉平は陰謀によって皇帝の替え玉に立てられたわけですが、自分自身は徹底的に「綺麗事」にこだわり、幼馴染みの司馬懿の策略も含めて、終始味方の側の陰謀を潰す方向で行動するという点で、歴史の中の陰謀や陰謀論を考えるうえで良い材料になっていると思います。言い換えればこのドラマは「綺麗事」で政治がどこまで動くのかというシミュレーションにもなっています。

また、本作の脚本家・常江氏は、日本語版のリリースが決まった『軍師聯盟』シリーズでも脚本を担当しており(ただし本作の方は小説をドラマ化したもの)、両作で互いに補完し合うような内容になっているのも面白い点です。

昨今日本では『二度目の人生を異世界で』という作品が物議を醸していますが、本作の主人公は18歳までの最初の人生を弘農楊氏の子弟・楊平として温県司馬氏のもとで育ち、それ以後は双子の兄・劉協(献帝)の身代わりとして二度目の人生を生きることになったという設定なので、『二度目の人生を献帝で』というタイトルでも通用してしまうわけです。しかし件の作品と本作に込められた「意識の高さ」の落差を思うと、何とも言えない気分になりますね……


おまけ。本作の番組内CMで大活躍した満寵。
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『三国機密之潜龍在淵』その9

2018年06月04日 | 中国歴史ドラマ
『三国機密之潜龍在淵』第46~51話まで見ました。

劉平の正体を知ってしまった曹操。伏寿は荀彧に真実を明かし、曹操への取りなしを求めるが、当の曹操は「冒牌天子」を擁立する気はないと突っぱねます。ここで荀彧も曹節と同様に劉平と伏寿が「叔嫂関係」にあることを気にしています。礼教的に重要な問題ということなんでしょうけど、そもそも皇帝が替え玉だったという方がよっぽど重大な問題で、「叔嫂関係」は副次的な問題にすぎないんじゃないかなと……

そして楊彪は太尉の職を退く一方で、伏完ら同志たちと語らい、自らの引退式に曹操を招いて暗殺してしまおうと密謀します。その刺客として唐瑛が名乗りを上げます。それを察した劉平が楊府を探訪し、暗殺計画の実行を阻もうとします。自らの退位をもって曹操と交渉考証しようとする劉平でしたが、曹操とともに楊府から退出する間際に刺客が乱入し、すべてが水泡に帰してしまいます。

唐瑛が曹操を襲った刺客だろうということで曹仁は宮中に踏み込み、曹操を守ろうとした曹丕から受けたはずの傷を確かめようと唐瑛の服を裂きますが、案に相違して傷は見つからず、しかも大勢の兵士が控える中で辱められたということで、伏寿や劉平が制止する間もなく唐瑛は自害…… 刺客の正体は女性と思わせといて、実は本作で武功高手としてちょっとだけ登場していた徐庶だった模様。刺客の正体をいぶかる曹操でしたが、荀彧から「事ここに至ってそれは重要な問題ですか?」とツッコまれています (^_^;)

そして劉平と曹操との交渉により、唐瑛を辱めて死に追いやったということで捕縛されていた曹仁の釈放と引き替えに司馬懿の出獄が認められますが、愛する唐瑛の死を知らされ、劉平と伏寿が彼女を守り切れなかったのが許せないと絶縁宣言を突き付け、曹丕の謀士として身を投じることに。曹丕は謎の刺客()にやられて長らく昏倒していましたが、復活してからも妙に咳き込んでるあたり、これが致命傷になって寿命が縮んだというオチになるのかもしれません。

劉平は更に曹操を魏公に冊封し、魏国の都を鄴と定めて許都から移動させることにします。劉平はこれを漢王朝が曹操の掣肘から逃れるための好機と判断しますが、伏完らは逆に漢王朝の危機と見てまたもや曹操暗殺を計画。伏寿は父親を説得し、最悪の事態は避けられたかに見えたのですが、時既に遅く、復讐に狂う司馬懿の画策により謀反の計画は曹操の知るところとなり、伏府に駆けつけた伏寿と劉平は伏完の遺体と対面することに…… 更に謀反人の一族ということで伏寿も冷宮送りとなります。

時に潜龍観での聚儒大会(白虎観会議のようなものを想定しているらしい)の開催が翌日に控えておりましたが、崔琰は大会に集まる儒生たちを観内に閉じ込めて建物ごと焼き殺し、これを曹操の責任として世論を激高させ、伏寿の無罪放免を勝ち取ろうと画策。しかし司馬懿からその陰謀を知らされ、「儒生たちを見捨てて伏寿を助けるか、伏寿を犠牲にして儒生たちを助けるか?」という選択を突き付けられますが、伏寿自身が儒生たちを犠牲にすることを望んでいないと知る劉平は迷わず潜龍観へと赴き、崔琰と、大会に参加していた満寵に儒生たちの解放を命じます。


その処置によって長らく自分を目の敵にしていた満寵を心服させた劉平でしたが、その頃冷宮では司馬懿と曹丕が伏寿に服毒自殺を促しておりました…… そして伏府での家捜しの結果発見された書信により、楊彪と荀彧も罪に問われることに……

ということで最終回が近づいてきましたが、逆境にあっても主人公がどれだけ意識が高く振る舞えるかが終盤のテーマになってますね。
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2018年5月に読んだ本

2018年06月01日 | 読書メーター
姦通裁判 ―18世紀トランシルヴァニアの村の世界― (星海社新書)姦通裁判 ―18世紀トランシルヴァニアの村の世界― (星海社新書)感想
18世紀半ばのトランシルヴァニアの片隅でおこった姦通事件の裁判証人聴取記録を史料として、姦通事件そのものに加えて、その背後に見えてくる当時の身分制・「魔法」・食事の頻度・暦・婚姻・育児等々、様々な情報を読み解いていく。史料講読の面白さを味わえる本となっている。一方で、最後に触れられる「史料が語ること」の逆となる「史料に現れないこと」の話が重い。
読了日:05月02日 著者:秋山 晋吾

天下分け目の関ヶ原の合戦はなかった: 一次史料が伝える“通説を根底から覆す"真実とは天下分け目の関ヶ原の合戦はなかった: 一次史料が伝える“通説を根底から覆す"真実とは感想
石田三成や福島正則・毛利輝元らの従来の人物像と実際のそれとの乖離、直江状の真偽、西軍の首謀者が輝元であり、家康は関ヶ原で指揮を執っていなかったと見られること、光成が小早川秀秋の裏切りを事前に察知していたことなど、注目すべき指摘が多いが、司馬遼太郎『関ヶ原』などを槍玉に挙げている割には、特に乃至氏の執筆部分に小説的な語り口が目に付くのが気になる。
読了日:05月04日 著者:乃至政彦,高橋陽介

後醍醐天皇 (岩波新書)後醍醐天皇 (岩波新書)感想
真言密教への傾倒は父・後宇多法皇の影響であること、文観の人物像の再評価、その「新政」の思想的背景として宋学の受容があったといった指摘を通して、「異形の王権」とされてきた後醍醐天皇のイメージとその政治の評価の修正をはかる。最終章の後醍醐天皇の企てた「新政」が近代日本を呪縛したという発想は面白いが、その詳論をもう少し読みたかった気もする。
読了日:05月07日 著者:兵藤 裕己

B.C.220年 帝国と世界史の誕生 (歴史の転換期)B.C.220年 帝国と世界史の誕生 (歴史の転換期)感想
内容としては地中海世界の話がメインで、中国はその対比のために取り上げられているが、「属州も帝国も後から現実に追いついてきた概念」「帝国が皇帝を生み出した」というあたりで中国の状況とシンクロさせるような内容になっている。ポリュビオスと『歴史』を取り上げるなら、中国の部分で司馬遷と「世界史」としての『史記』を取り上げても良かったのではないかと思うが…
読了日:05月08日 著者:藤井 崇,宮嵜 麻子,宮宅 潔

五日市憲法 (岩波新書)五日市憲法 (岩波新書)感想
五日市憲法の紹介とともに、著者による旧家の土蔵からの発見の経緯、そして起草者千葉卓三郎の人物像の掘り起こし、その千葉の家を受け継いだ子孫との対面の話が面白い。著者の指導教授色川大吉の、千葉の履歴書が発見された際の「それをそのまま鵜呑みにしてよいのか」「この履歴書が出てきたことで君の卒論は砂上の楼閣に終わった」という厳しい指摘や指導も印象に残る。大学四年の夏休みから始まる一人の研究者のライフヒストリーとしても読める内容になっている。
読了日:05月09日 著者:新井 勝紘

中国の世界遺産を旅する - 響き合う歴史と文化 (中公新書ラクレ 623)中国の世界遺産を旅する - 響き合う歴史と文化 (中公新書ラクレ 623)感想
殷墟、曲阜の孔子廟、兵馬俑と始皇帝陵、万里の長城など、著者が探訪した7つの中国の世界遺産を紹介。文化遺産のガイドとともに、関連する出土文献の引用、慕田峪長城の山腹に「大地スローガン」が見えるなど、遺産の「今」についても触れており、面白い読み物となっている。
読了日:05月11日 著者:湯浅 邦弘

初学者のための 中国古典文献入門 (ちくま学芸文庫)初学者のための 中国古典文献入門 (ちくま学芸文庫)感想
版本・目録学、避諱、反切など、漢籍を読み、扱ううえでの基礎的な知識がコンパクトにまとめられている。現代中国の図書分類やヨーロッパでの漢籍目録について触れているのは珍しいように思う。欲を言えば、工具書・入門書については今回の文庫化を機に初版刊行後に出たものも紹介してくれるとなお良かった。偽書の部分の『周礼』については、近現代においても西周金文と相互に参照して西周官制の史料として扱われてきたわけで、偽書という結論に変わりはないとしても、もう少し丁寧な解説が必要ではないか。
読了日:05月15日 著者:坂出 祥伸

大人のための社会科 -- 未来を語るために大人のための社会科 -- 未来を語るために感想
経済学・政治学・社会学・歴史学など、社会科学の諸分野(本書では歴史学も社会科学としてとらえている)の研究者による現代社会の問題を考えるためのテキスト。いろんな方向の話題を詰め込んでいるが、各章の内容の連携が取れていると思う。面白かったのは、多数決で何でも決めてしまうことの問題と、民主主義社会においてこそ、理念と現実とのずれを埋めるために運動が必要であるという指摘。
読了日:05月16日 著者:井手 英策,宇野 重規,坂井 豊貴,松沢 裕作

八九六四 「天安門事件」は再び起きるか八九六四 「天安門事件」は再び起きるか感想
天安門事件の関係者のインタビュー集と見せかけて、そのほかにも中国の「ネットで真実」を知ってしまった人、現在進行形で中国政府と対峙している香港の雨傘運動の関係者や日本のネトウヨと重なる部分が多い香港の親中派、天安門事件の当事者に師事した台湾のヒマワリ学連のメンバーのインタビューも含まれ、天安門事件とは何だったのかを重層的に描き出している。天安門事件そのものはオワコンと化しつつも、天安門事件の反省が台湾で生かされたことが救いになるだろうか…
読了日:05月21日 著者:安田 峰俊

劉備と諸葛亮 カネ勘定の『三国志』 (文春新書)劉備と諸葛亮 カネ勘定の『三国志』 (文春新書)感想
劉備の出自など面白いトピックも盛り込まれているが、「劉備と諸葛亮」の評価の話なのか、「カネ勘定」の話なのか、はたまた今でいう少数民族にズームアップした話なのか、いまいち焦点が定まらなかったのが残念。個人的にはカネ勘定の話が面白かったので、曹操・董卓・袁紹・孫権などほかの群雄のカネ勘定も大きく取り上げた続考に期待したい。
読了日:05月24日 著者:柿沼 陽平

埋葬からみた古墳時代: 女性・親族・王権 (歴史文化ライブラリー)埋葬からみた古墳時代: 女性・親族・王権 (歴史文化ライブラリー)感想
従来古墳の被葬者は一人だとされてきたが、調査・研究の進展にともない、二人以上を埋葬する複数埋葬の方が一般的であることがわかってきたという。その古墳の埋葬原理に注目する。複数埋葬ではきょうだい・親子など血縁者をともに葬ることが多く、配偶者は基本的に出身氏族のもとで葬られたことや、王墓の築造地域の移動は「王朝交替」を示すものではなく、王族内の分派活動による政治変動を示しているのではないかという議論が面白い。
読了日:05月26日 著者:清家 章

台湾の若者を知りたい (岩波ジュニア新書)台湾の若者を知りたい (岩波ジュニア新書)感想
台湾の小学生・高校生・大学生の学校生活が具体的にまとめられている。毎年のように変わるという入試制度、2年→1年→4ヶ月と段階的に短縮され、人によっては「時間の無駄」という兵役、その兵役の影響もあって、日本とかなり様相が異なる就職活動、日本人の曖昧な態度に困惑する台湾人の反応などが印象的。菜食主義への配慮、男女平等志向など、細かな文化・習慣に関する情報も盛り込まれている。
読了日:05月28日 著者:水野 俊平

中国抗日ドラマ読本: 意図せざる反日・愛国コメディ (中国ドラマ読本)中国抗日ドラマ読本: 意図せざる反日・愛国コメディ (中国ドラマ読本)感想
日本でも話題になった『抗日奇侠』をはじめとする抗日ドラマ等21作品のレビューを通して、日本人美女将校、謎の覆面、忍者、時代考証を無視した機器類、さりげなく挿入されるエロスとバイオレンス、BL要素、カルト宗教のような日本軍の儀式等々、日々粗製濫造されている抗日ドラマの魅力を紹介する。ガワを抗日劇にしているだけで話の骨組みや作りの雑さが武侠物に似ているというあたりで何となく抗日物が量産されている事情が見えてくる。抗日物に出演する日本人俳優のインタビューも読み応えあり。
読了日:05月31日 著者:岩田 宇伯

ヴィルヘルム2世 - ドイツ帝国と命運を共にした「国民皇帝」 (中公新書)ヴィルヘルム2世 - ドイツ帝国と命運を共にした「国民皇帝」 (中公新書)感想
ヴィルヘルム2世をドイツが国家連合から統一国民国家へと変わっていく過渡期の「国民皇帝」として位置づけ、大衆政治の時代に絶対君主として振る舞おうとしたその矛盾多き生涯を描く。彼の失言・舌禍のメカニズムや、普段大言壮語をしておきながら肝心なところで優柔不断、呑みこみが速く弁舌も巧みで自らの才を恃むが集中力に欠けるという性格を見ていると、現代の政財界にもミニ・ヴィルヘルム2世と言うべき指導者がたくさんいるのではないかと思えてくる。
読了日:05月31日 著者:竹中 亨

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