博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『清平楽』その14(完)

2020年06月30日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第66~最終70話まで見ました。

徽柔の生母苗心禾と太監の任守忠は窮余の策として、降格人事で李瑋を都から出してしばらく徽柔と顔を合わさせないようにするという方策を採らせようとしますが、諫官の司馬光による弾劾の矛先が徽柔、そして彼女を宮廷に戻した梁懐吉にも及びます。徽柔は懐吉を守るため、泣く泣く李家に戻ると仁宗に告げます。

梁懐吉は李家での上司だった梁全一が責任を問われて左遷されることになったと知り、跪いて詫びますが、梁全一の方は我らの役目は公主を守ることだった、自分たちのやったことは間違っていなかった、それより今は自分の身を守ることを考えよとやさしい言葉をかけます。このドラマ、宦官の描写も丁寧で、宦官ドラマとしても出色の出来となっています。今までの作品にありがちだった、忠実な従僕でも大悪人でもない等身大の宦官を描けていると思います。『蒼穹の昴』のドラマ版?何ですかねそれは?

こうして李家に戻った徽柔ですが、彼女による失火から公主宅が全焼、やけくそになった姑の楊氏は火災の中で焼身自殺を図りますが、間一髪で懐吉によって救出されます。これにより李瑋は懐吉に対する印象を改めます。そして徽柔との夫婦生活を諦め、彼女の侍女として宮廷から李家に着いてきた嘉慶子を妾として納めます。

この間、懐吉は西京(洛陽)に左遷されたり、徽柔の要望に根負けして重陽節に合わせて都に呼び戻したりと色々あったのですが、火災の一件以後なし崩し的に再び宮廷で仕えるようになります。そして其れを嗅ぎつけた司馬光はまたもや懐吉を弾劾、彼を「妖物」「奸佞」と罵り、公主のわがままを許す仁宗自身にも批判が及びます。


上元節の夜の司馬光のお茶目カット。新版『水滸伝』でも問題になった宋代男子の頭に花挿しですが、司馬光に関しては若年の頃、進士に及第した際の祝賀の式典でしきたりとして花を挿すことを求められ、嫌がったという話が残っているとのよし。

ここでいきさつを知る韓琦と張茂則から、仁宗は懐吉がかつての梁家果子店の次男坊であることを知らされ、衝撃を受けます。朝堂で懐吉の誅殺を求める司馬光らに対し、仁宗は彼が宦官になった経緯を話して聞かせ、「宦官も汝らの言う百姓(万民)のひとりなのだ」と諭します。そして仁宗の思し召しにより懐吉は「梁元亨」の名を取り戻すことに。


事態を知った徽柔は操り人形を手に朝堂に入り、「自分たち皇室はお前たちの操り人形なのだ、そしてこの人形のように白骨化しても顧みられない」と訴えます。

結局李瑋の要望もあって徽柔との離縁が認められますが、懐吉改め元亨は張茂則によって宮廷を連れ出され、兄元生の庇護のもと、郊外の学校で子供たちに勉学を教えつつ生きることになります。嘉祐8年(1063年)、最後まで心労続きだった仁宗が没しますが、徽柔は……

【総括】
「狸猫換太子」が起こらなかった世界線(つまり史実ベース)の仁宗朝を追ってきたドラマですが、実母との対面がかなわなかったことが仁宗の実母への思慕につながり、これが更に母の思い出の味と関わる梁家の兄弟、ことに次男の元亨(懐吉)の運命を変えてしまうことになり、そして仁宗の愛娘の徽柔も李家との関わりの中で人生を左右されることに……と、因果によって展開される宮廷絵巻に仕上がっていました。当時の北宋の文化や学術もうまく話に織り込んであり、日本で平安時代を舞台にしたドラマ、たとえば菅原道真や『源氏物語』を題材にした大河が制作されるなら、本作がよい手本になると思います。日本でも多くの人に見られるべき作品です。
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『伝聞中的陳芊芊』

2020年06月28日 | 中華時代劇
『清平楽』の裏でテンセントオリジナルドラマ『伝聞中的陳芊芊』第1~最終24話まで見てました。

内容はタイムスリップ物というか異世界転生物なんですが、ヒロインはドラマの脚本家で、自分の創作したドラマの世界に転生してしまうというのが設定として新しいです。ヒロインはその世界で起こったこと、これから起こることを何でも知っているという世界の創造者、言うなれば神の立場にあるわけです。


ヒロイン陳小千が転生した「三公主」陳芊芊。花垣城の城主の三女。本来はドラマの第3話で死ぬ脇役だったはずが、生き延びてしまったことから話が大きく変わっていくことになります。


そしてこちらが本来ドラマのヒロインとなるはずだった城主の二女、芊芊の姉の陳楚楚。彼女の運命も大きく変わることに……


こちらは相手役となるイケメン韓爍。花垣城と長年対立する玄虎城の跡取り息子です。本来楚楚と婚約するはずが、芊芊と恋仲に。中の人は2018年版『笑傲江湖』の東方不敗の丁禹兮。芊芊は当初何とかに彼と楚楚をカップリングし、脚本通りに話を展開させようとしますが……

ヒロインの暮らす花垣城は女性が城主やその他の要職を占める女性優位の国、これに対して韓爍の玄虎城は通常の男性優位の国ということで、ジェンダー物の作品でもあります。

韓爍は花垣城を内部から切り崩して攻め取る任務を託されており、本来芊芊を毒殺し、七夕の夜の祭りの日に花垣城の城主も爆殺、その後に楚楚と不倶戴天の敵同士となって非業の死を遂げるはずが、芊芊とのふれあいによってその行動や性格が大きく変化していきます。芊芊も韓爍と添い遂げる道を選び、これでめでたしめでたしとなるかと思いきや、タイムスリップ物の定石通りに歴史の流れには逆らえず、芊芊は何とか韓爍を死の運命から逃れさせようと四苦八苦するように。

終盤で芊芊が異世界からやって来て、自分たちの世界が芊芊によって作られたものと知った韓爍の言葉「君の世界も誰か脚本家が創造したものかもしれないね」という台詞が印象的です。もうひとのテーマのジェンダーと相まって、「世界は変えられる」というメッセージを感じる作品です。
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『清平楽』その13

2020年06月25日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第61~65話まで見ました。


いよいよ李家に嫁いだ徽柔ですが、新婚初夜の晩に李瑋とは同衾せず。李瑋の母の楊氏はそれを知ると、何のために公主を娶ったのだ、我が家は子孫を残せないのかと息子を罵倒します。楊氏は良く言えば庶民気質に溢れた飾らない性格のおばさんなんですが、そういう所が徽柔に嫌悪されているわけですね……

楊氏はいっそ息子に妾を入れて子を産ませようとしますが、李瑋はそれも拒否。一方徽柔の方は宮中に里帰りした際に、楊氏から曹丹姝・苗心禾に夫と同衾していないことをバラされても悪びれることなく「子供が欲しかったら妾を入れたらいい。子供ができたら認知してあげるから」と宣言。それをうっかり耳にした仁宗はショックを受けます。

元々仁宗が徽柔とプレーボーイの曹評との結婚に反対し、誠実そうな李瑋と結婚させたのも、女性皇族の筆頭格の魏国長公主が夫の女性問題に苦労させられ、夫が他の女に産ませた子を複数認知して養育していると知り、我が子にはそんな目に遭わせたくないと思ったからなのでした。しかし徽柔はそんな親心を打ち砕くような発言を堂々としているわけです。


徽柔の降嫁にともない、梁懐吉や嘉慶子といった侍女たちも公主お付きとして李家に同行し、引き続き彼女に仕えることになります。そしてこのあたりで梁元生は懐吉が自分の弟元亨であることを知り、彼が使いに出たところを無理やり捕捉して兄弟の名乗りを挙げております。宮中で兄の名を耳にしても「誰ですかそれ?」という態度を取っていた懐吉ですが、兄との再会はまんざらでもなかった様子。

さて、思いあまった楊氏は徽柔の酒に一服怪しげな薬を盛り、抵抗できなくしたうえで息子に事に及ばせようとします。しかしこれはさすがに懐吉らの反発を買い、「男のよさを知れば夫婦生活をすんなり受け入れるようになるかもしれない」という楊氏に対して、上司の宦官とともに「行為を強要すれば公主は自害の恐れがあります」と厳重に抗議します。

以後も李瑋は徽柔が四六時中懐吉と一緒なのに嫉妬し、楊氏の方も徽柔が懐吉と淫らな行為に耽っていると邪推して二人を引き離そうとしますが、これに徽柔が抵抗。李家に耐えられなくなった彼女は、懐吉に馬車を走らせて宮廷へと戻ります。しかし曹丹姝は事情を知っても彼女を李家に戻そうとします。仁宗も言官による弾劾や群臣の反応を憂慮し、李瑋の謝罪を真に受けて結婚生活を続けさせようとしますが、生母の苗心禾は離縁を認めて娘を宮中に置いてやって欲しいと訴え……

ということで、男は見た目が冴えなくても人柄が誠実そうなら幸せな結婚生活が送れるというファンタジーを容赦なくてぶっ壊しにきてます (^_^;) そもそもこの結婚自体、亡き生母に対する埋め合わせということで仁宗の自己満足にすぎないわけですが……
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『清平楽』その12

2020年06月19日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第56~60話まで見ました。

王則の乱が鎮圧された貝州で張茂則と碧桃が子供たちのための学校を立ちあげるのを見届けると、范仲淹は病没。そして宮中では張妼晗も31年の短い生涯を閉じ、皇后の位が追贈されます。


ぼちぼちと徽柔と李瑋の結婚が近づいてきますが、彼女は義母となる楊氏への嫌悪を隠せません。そして密かに曹丹姝の甥の曹評と思い合う仲となります。徽柔は仁宗にせがんで国の学校にあたる国子監の見学に同行しますが、曹評がその学生であることに気付き、座を外して二人で密会。しかしその様子が仁宗に見られてしまいます。

この国子監の場面で講師の胡瑗が『易経』の「元亨利貞」という文句を口にして堂々と仁宗の諱「禎」を犯すさまを目の当たりにし、かつてその文句を口にして処刑されそうになった梁懐吉(元の名は梁元亨)が微妙な顔をしております (^_^;) あの時の彼が「臨文不諱」という言葉を知っておれば……

激怒した仁宗は徽柔を謹慎処分にして曹評を呼び出し、「お前は地位や身分を擲ってでも徽柔と結婚するつもりがあるのか?」と圧迫気味に問いただし、恐れをなした曹評は「公主と結婚するなんてとんでもない!」と土下座モードで詫びを入れて退出。こうして徽柔の初恋と青春は終わったのです…… 事の次第を知らされ、失意の徽柔の唯一の慰めは梁懐吉です。彼女は懐吉に、いつまでも自分に影のように付き従うよう求め、懐吉もそれを承諾しますが……

前々から心臓を患っていた仁宗は、遂に心労から昏倒。しかしそんな姿を目にしても可哀想とも思えないのがヤバいですw 曹丹姝の英断により、脳天に鍼治療を施して意識を取り戻しますが、被害妄想から彼女と張茂則が彼を亡き者にしようとしたのではないかと疑います。後で誤解は解けて曹丹姝への愛と張茂則への信頼は以前より深まるのですが……


この前後にゲスト的に若き日の蘇軾・蘇轍兄弟が登場。無名の存在ながら科挙で榜眼として登第したことで、本人や試験官の欧陽修に対して物議が醸されます。蘇軾は欧陽修から文章中に用いた故事(っぽく見せかけたもの)の出典を問われて「何須出処」と堂々と答えられる強い性格の持ち主ですw そして徽柔への冊封が行われ、いよいよ降嫁することに……というあたりで次回へ。
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『清平楽』その11

2020年06月14日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第51~55話まで見ました。

以前から夏竦・賈玉蘭一派の動きを追っていた張茂則は、彼らが西夏産の塩を密売していた件で追い詰めようとしますが、決定的な証拠は得られず、結局夏竦が地方に左遷される程度で片が付きます。一方、四公主急逝の件では張妼晗の教坊時代の同僚でその侍女となっていた許蘭苕を罠に掛け、その死因がやはり花粉に関わるものであったことと、彼女の関与を示す証言を取りつけます。


許蘭苕はまた仁宗のお手つきとなり、その子を宿していましたが、四公主の死の真相を知った賈玉蘭は彼女をお腹の子ごと毒殺し、自らも服毒して張妼晗に詫びます。四公主の花粉アレルギー発症が許蘭苕の仕業と知りながら、それを見て見ぬ振りをして更なる惨劇を招いたことに責任を感じていたのです。彼女の遺体は張茂則のはからいにより、長年の恋人であった夏竦のもとへ。

賈玉蘭の死によって一人になってしまった張妼晗。仁宗は彼女を哀れみ、いずれも死没したといっても三人の子を産んだ功績があるということで、彼女の妃への昇格を決定。しかしそれで満足するようなタマでもなく、仁宗の前で「貴妃への昇格ありがとうございます」と礼を言い、本当に妃から更に貴妃への昇格が実現してしまいます。そして御禁制の定州窯の磁器を贈答品として受け取ったり、伯母に頼み込まれたということで伯父の昇格を仁宗におねだりしたりとやりたい放題。これまでは単に仁宗の愛を独占したいだけのわがままっ子だった張妼晗が、後宮物のベタな悪役のようになってきました…… 


その頃、契丹の太子耶律洪基(後の道宗)が身分を隠して宋にやって来ているという情報をキャッチした仁宗は、曹丹姝や欧陽修らとともに、やはりお忍びという形で出迎えて君子の交わりを結びます。


その晩、張妼晗のおねだりに負けてとうとうその伯父張堯佐を宣徽使に任じますが、「外戚ということしか取り柄のないようなやつにそんな高位を与えるなんてとんでもない!」と群臣が猛烈な反対運動をおこします。その先頭に立ったのが包拯。包青天こと包拯がいつ出てくるのかと楽しみにしていたのですが、こういうシチュエーションでで登場ですw 仁宗も彼の熱の入った抗議に困惑というか辟易してます (^_^;)
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『清平楽』その10

2020年06月09日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第46~50話まで見ました。


徽柔の婚約相手の選定が話題となる中で、仁宗は当の徽柔が曹丹姝の甥の曹評と擅撃丸に興じているのを険しい目つきで見つめます。このゴルフのような擅撃丸という球技、一般的には「捶丸」と呼ばれていたようです。


で、徽柔が打った球が仁宗の母方の従弟李瑋の頭に直撃。仁宗は文武に秀でてイケメンではあるが、それなりに浮き名を流している曹評より、何の取り柄もないけれども善良っぽい李瑋に徽柔を託すことを決意。曹評に好意を寄せる徽柔は当然不満顔ですが、2人の婚約が発表されると、新政をめぐっていがみ合っていた群臣も諸手を挙げて賛同。「曹丹姝を皇后に建てた時もこんな感じだった」と仁宗は述懐していますが、それってあかんフラグなのでは……

仁宗が珍しく曹丹姝と同衾した夜、宮中で侍衛の顔秀・王勝らによる謀反がおこり、後宮の各所で火災が発生。仁宗を差し置いて対応を宦官たちにテキパキと指示するあたり、やはり曹丹姝の能力の高さがうかがえます。

叛徒の数が小規模だったこともあり、謀反はあっさり制圧。しかし曹丹姝の侍女袁彩綾が顔秀と密通していたことが明らかとなり、彼女の処分をめぐって仁宗と曹丹姝の心はまたもやすれ違ってしまいます。そして当日の夜に危険を顧みず仁宗のもとに駆けつけたということで、夏竦ら群臣は張妼晗の昇格を求めます。彼女は基本的に何かあったら仁宗が側にいないと不安になるというだけなのですが……

その頃、貝州でも王則の乱が発生。反乱の鎮圧を命じられた文彦博と仁宗との会話の中で、顔秀の謀反が王則の反乱と呼応したものではという話が出てきたのですが、王則の乱といえば『平妖伝』ですよ皆さん!!(; ・`д・´) そして顔秀の件と王則の件で夏竦が一枚噛んでいるらしいことが示されますが、仁宗は敢えて「アーアー聞こえない」とスルーします。


更に顔秀と袁彩綾の密通が波紋を呼び、他にも皇后の侍女で外臣と密通していた者がいるのではないかという噂が立ちます。皇后お付きの侍女となっていた董秋和は、以前に画師の崔白に心を寄せていたことがあり、そのことを摘発される前に先手を打って仁宗に告白し、崔白と曹丹姝に累を及ぼさないように取り計らいます。その一方で徽柔が曹評に思いを寄せていることが仁宗に知られてしまい……というあたりで次回へ。
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『清平楽』その9

2020年06月04日 | 中国歴史ドラマ
『清平楽』第41~45話まで見ました。

八大王は病を押して宮中に参内し、相も変わらず仁宗の不孝を責め、亡き劉太后を罵ります。そして二皇子最興来は看病の甲斐もなく病没。実母李宸妃が不孝の埋め合わせに二皇子を連れ去ったと信じる仁宗は、群臣の批判を承知しつつも母方の親族を厚遇するしか為す術がありません。李宸妃の弟の李用和は重用に傲ることなく、却って恐縮しますが、その次男で仁宗の従弟にあたる李瑋は、空気を読まずアホぼんぶりを発揮していますw

かつて宮学で教鞭を執っていた石介は、富弼とともに謀反を企んでいるというデマを流され、皇城司(宋の特務機関)にこれ見よがしに尾行されるようになりますが、これが実は夏竦が裏から手を引いて放った偽物であることが判明。その政敵となる新政派に対する嫌がらせということのようです。


汚名が晴らされたかと思ったのもつかの間で、その後間もなく石介は病没。その無念を晴らすべく直訴を敢行する欧陽修でしたが、逆に夏竦から自身の姪に関わるスキャンダルを告発されてしまいます。証拠不十分ということもあって欧陽修は罪には問われませんでしたが、岳父晏殊の計らいにより地方に出ることとなり、晏殊自身も地方へ。晏殊はナレ死ならぬキャプション死ということで、出番はここまでということになるようです。

そして参内したまま宮中で養生を許されていた八大王が、仁宗に呪いを植え付けるだけ植え付けて八大王が病没。同時に二皇子の死も公表され、皇嗣問題が再燃します。しかし普通の宮廷物だと、これだけ立て続けに皇子女が死んだら何らかの陰謀が疑われるという展開になるはず (^_^;) 実際作中の描写でも四公主の死は謀殺と言っていいと思いますが。このあたりで張茂則が四公主の急死の現場に居合わせてそのまま宮中から逃亡したお付きの侍女を捕捉していますが、有耶無耶のままとなっています。

新政派の蘇舜欽らが今話題の接待を伴う店で高歌放吟して時政批判に及んだところ、夏竦の密告網に引っかかって弾劾されてしまいます。夏竦は宦官の楊懐敏を介して皇城司を抑えるとともに、開封府も抑えてるようなんですが、包青天物とはかなりイメージが違ってきますね。新政派で唯一残った韓琦も仁宗の計らいで地方に出ることとなります。


夏竦は『古文四声韻』など金石学での業績でも知られていますが、本作でも青銅器なんかを手に取っている場面が時々出てきます。しかし1899年の発見とされている甲骨文にまで手を出しているのはさすがにやりすぎですねw


慶暦七年、仁宗の養子宗実が、幼馴染みで曹皇后の養女の高滔滔と結婚。成長した徽柔も結婚相手の選別が問題となります。ということでいよいよ徽柔がヒロイン格となって後半戦に突入のようです。
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2020年5月に読んだ本

2020年06月01日 | 読書メーター
レイシズム (講談社学術文庫)レイシズム (講談社学術文庫)感想
人種と言語の混同、純粋な人種など存在せず、人種の定義も政治的に動かされてきたこと、人種の優劣を示すとされてきたことは実は社会状況のハンディキャップを示していたということなど、レイシズムの陥りやすい論点への反駁とレイシズムの歴史的展開を簡潔にまとめる。原著が書かれた80年前にアメリカやドイツを席巻していた「似非人類学」への反論は、現在の日本を席巻する「日本スゴイ」論や反中嫌韓論への反論としても生きそうである。
読了日:05月01日 著者:ルース・ベネディクト

奴隷のしつけ方 (ちくま文庫)奴隷のしつけ方 (ちくま文庫)感想
古代ローマ人の書の翻訳という体裁の古代ローマ奴隷入門。奴隷というのは我々の想像からかけ離れたものではなく、今の日本の社会でも似たような人々は存在しそうである。ことによるとそれは自分自身であるかもしれないという気付きを与えてくれる。各章末の本来の著者による解説は奴隷制に否定的な論調である一方で、奴隷制に肯定的な名目上の著者マルクスの主張をすんなり受け入れそうになるのが怖い。
読了日:05月04日 著者:マルクス・シドニウス・ファルクス,ジェリー・トナー

五・一五事件-海軍青年将校たちの「昭和維新」 (中公新書 (2587))五・一五事件-海軍青年将校たちの「昭和維新」 (中公新書 (2587))感想
事件に関する著者の設定する「謎」をめぐって議論が展開される。事件を広く国家改造運動の一環として位置づけ、犬養毅襲撃は海軍将校たちの目的のひとつにすぎなかったこと、犬養死後の後任擁立をめぐる動きと当時の政党政治の評価、襲撃に関与した海軍将校たちに対して国民は同情的だったが、血盟団事件に関与した民間の右翼に対しては関心が薄かったこと、在郷軍人による政治団体の影響力に関する話などを面白く読んだ
読了日:05月07日 著者:小山 俊樹

論点・西洋史学論点・西洋史学感想
西洋史の用語というよりは、「ブラック・アテナ論争」「大分岐」「世界システム論」「オリエンタリズムとポストコロニアリズム」など、学界に大きな影響を与えた主張や議論、思潮を中心に項目を立てている。大学のゼミなどでの討論、プレゼンテーション、レポート用の教科書という側面が強いが、西洋史学研究に関する読む辞典という使い方もできるだろう。
読了日:05月12日 著者:

俠の歴史 東洋編 上俠の歴史 東洋編 上感想
個々の人物伝としては面白いが、彼らの事績が「侠」として語られるべきものなのか?「義」や「忠」など他の徳目で説明すべきものではないのかと思う項目が多い。渡邉義浩の「関羽」の項目で、関羽の「侠」の精神を「利他の義」と位置づけているが、総論部でこのようなそもそも「侠」とは何かという議論をもっと丁寧にやるべきだったのではないかと思う。
読了日:05月15日 著者:鶴間 和幸

ルポ 技能実習生 (ちくま新書 1496)ルポ 技能実習生 (ちくま新書 1496)感想
技能実習生について、現在最多を占めるベトナム人の事例を中心に、制度の概要や問題点を解説。技能実習生=奴隷に等しい存在というわけでもなく、実習生制度が大金を得られる出稼ぎ手段としてある程度成立していること、実習生の失踪の原因は基本的に低賃金の問題であり、失踪者が発生しやすいのは建設業や農業など業種がある程度固まっていることなど、その実態が日本で持たれている印象とはズレがあることを示している。韓国の雇用許可制との比較があるのも有用。
読了日:05月20日 著者:澤田 晃宏

中国人の機智 『世説新語』の世界 (講談社学術文庫)中国人の機智 『世説新語』の世界 (講談社学術文庫)感想
相手をやりこめるための高度な言語テクニックとしての「機智」を『世説新語』から読み取る。相手の論拠を逆手にとる、誰もが知ってる典故を織り込んで自分の主張を普遍的なものであるかのように見せかけるなどの基本テクニックは、TwitterなどのSNSでの論戦で活用できそうである。現代に生きておれば間違いなくSNS強者になったであろう毛沢東や魯迅との比較も、その意味では極めて的確である。原著刊行から40年近く経過し、新たな意義を獲得した書と言えよう。
読了日:05月23日 著者:井波律子

陸海の交錯 明朝の興亡 (シリーズ 中国の歴史)陸海の交錯 明朝の興亡 (シリーズ 中国の歴史)感想
シリーズ全体の小結として、モンゴル帝国崩壊後に成立した諸帝国が柔構造の統治組織であったのに対し、社会の隅々まで統制を加える固い体制で出発した明朝の達成と矛盾を描く。その「固い体制」が中華世界システムを生み出し、それが朝鮮、ベトナム、そして我々日本といった周辺諸国の世界観をも規定することになる。明朝の歴史は我々日本人の歴史でもあり、日本国の抱える問題を振り返るうえでの起点となることを示唆してくれる書となっている。
読了日:05月25日 著者:檀上 寛

漢方医学 「同病異治」の哲学 (講談社学術文庫)漢方医学 「同病異治」の哲学 (講談社学術文庫)感想
漢方の基本的な考え方や、中医・韓方との違い、漢方の限界や問題点などがコンパクトにまとめられている。漢方医学と西洋医学とは二項対立的なものではなく、漢方では癌は治せないが抗癌剤の副作用を抑制する効果があるなど、共存・併用できるものしされている。また両者の共存・併用のあり方も日中韓で違いがあるようだ。感染症に関する話題もある。新型コロナウイルスに漢方がどのように対応できるかという話が紹介されるのはこれからだろうか。
読了日:05月27日 著者:渡辺 賢治

マックス・ウェーバー-近代と格闘した思想家 (中公新書)マックス・ウェーバー-近代と格闘した思想家 (中公新書)感想
ウェーバーの思想と著書について、日本での受容も含めて彼の死後にどう読まれてきたかをまとめているのと、「客観性」論、資本主義・デモクラシー・自由の不一致、比較宗教社会学のような形での「対比すること」の意味、文書公開に対する考え方など、随所でウェーバーの思想の細かなポイントについて現代的意義を問うているのが特徴。私自身の抱えている問題意識とも重なる所が多そうだ。
読了日:05月29日 著者:野口 雅弘

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