博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『大明風華』その2

2020年02月29日 | 中国歴史ドラマ
『大明風華』第5~10話まで見ました。

「黄大人」こと朱瞻基の協力により、孫若微は前回の永楽帝暗殺未遂事件で捉えられた聶興と再会し、更には聶興らを牢内から救出します。朱瞻基の方は、若微らの頭目「皇爺」が実は死んだはずの建文帝ではないかと睨み、彼女から皇爺の情報を聞き出したいようです。靖難の変から10年が過ぎ、瞻基の祖父永楽帝は、建文帝が生きているなら和解したいと願っていたのでした。


この前後で若微の兄貴分として登場する徐浜。喬振宇が演じています。彼も皇爺の配下なのですが……

朱瞻基は若微を永楽帝一家の顧問格の名僧姚広孝と引きあわせます。姚広孝は実在の人物で、靖難の変に際して永楽帝の軍師を務めたことで知られています。彼は若微の人相から「そなたは皇帝になることができる」と予言。彼女が景清の遺児であることも見破ります。その後、姚広孝は永楽帝にも「お前だけでなく子も孫も一族の者を殺すことになるぞ」と予言。


それを気に病んだ永楽帝は、3人の息子たち、太子・漢王・趙王と太孫の瞻基を呼び出し、なぜかスクラムを組んでお互いに殺し合いをしないという誓いを立てさせます。

段々仲良くなっていくように見えた若微と瞻基でしたが、若微は彼が油断した隙を突いて皇爺のアジトに拉致……したと見せかけて、実はそれが瞻基の作戦で、自ら人質となってアジトを突きとめるのが彼の狙いなのでした。アジトを錦衣衛に囲まれて焦る若微や孫愚たち。一方で皇爺が自分たちを使い捨ての手駒としか思っていないこともお見通しで、思い切って瞻基を釈放して投降することに。


錦衣衛にあと一歩まで追い詰められながら逃亡を果たした皇爺の正体は、死んだはずの建文帝……ではなく兪灝明演じる漢王なのでした。どうやら若微ら「靖難遺児」を自らの皇位継承権掌握の尖兵として利用したかったようですが……?

投降後は若微は瞻基の客人として皇宮に連れ込まれ、父母や祖父も含めて彼女を自らの妃候補と認識させます。


その皇宮で生き別れとなっていた実の妹の胡善祥こと蔓茵とすれ違いますが、子供の時以来とあってお互いに姉妹と認識できません。そして彼女もまた瞻基の妃の座を狙っているのですが……

時に鄭和が三度目の航海より帰還し、彼が連れ帰った外国の使者をねぎらうために宴が開かれることになります。瞻基はその宴で若微を永楽帝と対面させることに。若微にとっては両親の仇のはずの永楽帝ですが、その永楽帝がモンゴル兀良衛の使者に射殺されそうになると、身を挺して彼を庇い、矢を胸に受けて重態となり……というところで次回へ。このドラマ、物凄く面白いわけじゃないし見所らしきものもないのですが、やめる踏ん切りもつかないんですよね……
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『大明風華』その1

2020年02月20日 | 中国歴史ドラマ
見たいドラマが山積みの中、明王朝物ということでちょっと気になった『大明風華』に手を付けてみることに。今回は第1~4話まで鑑賞。

ヒロイン若微は明の建文帝に仕える御史大夫景清の長女として生まれましたが、永楽帝によるクーデター靖難の変により、両親は非業の死を遂げ、妹とは生き別れになり、自分はその昔景清に恩を受けたという武官孫愚に引き取られ、その一人娘孫若微として生きることに。妹の方は宮廷女官胡尚儀に引き取られ、その養女胡善祥として生きることになります。


そして10年後。『ラスト、コーション』以来となる湯唯演じる孫若微は、義父や仲間たちとともに反政府組織に身を投じ、永楽帝暗殺のために日夜力を尽くしておりましたが、計画はダダ漏れで暗殺は失敗、孫愚とともに商売人の親子ということで捜索を逃れようとします。


そこへ永楽帝の愛孫で後の宣徳帝朱瞻基が錦衣衛に扮して捜査に訪れます。もちろん周囲には身分を隠し、「黄大人」と名乗っています。特務の一員と暗殺未遂事件の重要容疑者として出会った朱瞻基と孫若微ですが、朱瞻基の方は若微が気になるようで……?


宮廷では病弱で頼りない太子朱高熾(後の洪熙帝)をその次弟漢王がちくちくと追い詰め、太子の地位を返上させようとせっせと頑張っておりますが、どことなく星野仙一を思わせる面立ちの永楽帝↑はそんな魂胆などお見通しで、太子はあくまで朱高熾であると重臣たちの前で宣言し、漢王の野心を挫きます。


で、今回は永楽帝の夢の中で朱元璋が登場したあたりまで。この朱元璋の顔、本放送時に物議を醸したということですが、CGで作り込んでいるようです。特殊メイクの模様。

ヒロイン姉妹は後に2人とも宣徳帝の后妃となるということで(一応お断りしておくと2人が姉妹で景清の娘というのはこのドラマの創作です)、このドラマ要するに明王朝版『宮廷の泪・山河の恋』ということなんでは……とイヤな予感がするのですが、終盤の土木の変を楽しみにもう少し見続けてみることにします。
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『風雲戦国之列国』

2020年02月16日 | 中国歴史ドラマ
テンセントオリジナル企画『風雲戦国之列国』を鑑賞。1話1時間強の尺で、1話につき戦国七雄を1カ国ずつ取り上げていくという作品です。歴史ドラマというより歴史ドキュメンタリーの再現ドラマをつなぎ合わせたような作品ですが(戦争の場面をナレーションだけで済ませたりして室内劇中心の展開にしているのがそれっぽい)、以下に触れるようにちょいちょいお馴染みの俳優さんが出てきます。


第1話燕国篇「燕過無痕」。七雄の中で最も古い歴史を持つ燕国は、燕王噲から子之への禅譲が引き金となり、斉国に国都を蹂躙される。「隗より始めよ」で国の立て直しを図る燕の昭王を演じるのは、『琅琊榜』の言侯役が印象的な王頸松。復讐のため、蘇秦をスパイとして斉国に送り込むという話は『戦国縦横家書』からの分析に基づいたものになっています。最後のあたりで荊軻も登場。


第2話趙国篇「烈乱之国」。趙人の性格は「任性而暴烈」ってバーサーカーかと言いたくなりますw 今回のキーマン武霊王を演じるのは『慶余年』にも出演した于栄光。その後は長平の戦いでの大敗を経て李牧が粛清されるあたりまで触れられます。長平の戦いは結果だけナレーションで伝えるという演出ですが、まあそういうドラマだと思って見てください……

第3話楚国篇「貴族之殤」。呉起の粛清に示されるように、最後まで抵抗勢力としての貴族を排除できなかった楚国。先君の葬儀の場でおもむろに弩を取り出して呉起を射殺しようとする楚の高位高官が描かれますが、あの話は別に至近距離から弩で射殺しようとしたわけではないと思うんですが…… 中盤以降はお馴染みの懐王と屈原も登場(例によって水死する場面はあっさりナレーションで済まされます)。終盤では春申君が李園の妹との間の子を楚王にしようとした話も割と尺がを割かれています。ラスト付近でみんな大好き項燕も登場。

第4話韓国篇「権術的代価」。六国の中で最初に滅ぼされる韓。もともと実直な性格だった韓人は、申不害以後権謀術数を弄するようになり、術治に服するようになる。しかしそれが滅亡への道につながっていた……と、権謀術数に対して否定的な評価を下しています。まあぶっちゃけ『韓非子』に載ってるようなことを本当にやられてもドン引きなんですが。あとは「趙氏孤児」の話も趙国篇ではなくこちらで出てきます。終盤で韓非や鄭国渠の鄭国のほか、張良の父親張平も登場。

第5話魏国篇「士人的魔呪」。もちろん三国の魏じゃありませんw 戦国最初の覇主となり、初代の文侯は孔子の弟子子夏に師事。しかしその後は能力があっても卑賤な士人を冷遇し、王族など身内を重用し、没落していきます。呉起、商鞅、孫臏、范雎と逃亡した士人が他国で大物になっていくさまは、球団を放出された選手が他球団で活躍する阪神タイガースを見ているようです……エンタメ作品で前404年の三晋と斉の長城の戦いに触れてくるのはなかなか珍しい。これが翌年の周王朝による三晋の諸侯承認に結びいたというのは楊寛の説に拠るものでしょうか。


第6話斉国篇「靖綏之謎」。七雄の中で商工業が最も栄えた斉国。田氏のおこりというこで陳から斉の桓公のもとに公子完が亡命してきたところから話が始まります。今回のキーマン斉の湣王は、『大秦帝国』では魏の恵王を演じていた李立群。どっちも似たような演技です (^_^;) あとは孟嘗君やら孟子やら、斉と言えば稷下の学ということで学長を務めた荀子も出てきます。カメオ出演程度にしか女性が登場しない作品ですが、最後の斉王建の母にあたる君王后は、襄王との出会いから比較的丁寧に描かれます。


『風雲戦国之列国』大結局「為什麼是秦国」。今回のキーマン、戦国の阪神タイガースもとい魏から移籍してきた商鞅を演じるは、『大秦帝国』では張儀を演じていた喩恩泰。『ミーユエ伝』などでお馴染み羋八子も登場します。中国で最初に太后と称した人物ということですが…… その後は呂不韋やら嫪毐やらとお馴染みの話が続き、最後はもちろん始皇帝による統一で締めです。「為什麼是秦国」なのかはこれまでの回で既に語られているというか、逆に今回だけ見てもよくわからないかもしれません…… 結局は自国に多々問題があっても他国がもっとアレなら総合力で勝てるというプロ野球みたいな話になるのかもしれません。

ということでさほど予算を掛けていない割には戦国時代の主要なエピソードや人物を(あるいはそれ以前の時代の話も)手堅く押さえてテーマ別にうまく構成してあるので、Eテレの海外ドキュメンタリー枠かネット配信かどういう形であれ日本語版を出してもいい作品なんではないかと思います。考証面も一部「あれ?」と思うところもありますが(上記の呉起が射殺される場面とか、蘇秦の活躍した年代が新資料に拠っているのに対し、張儀の年代がそれと帳尻が合ってない点など)、日本の大河ドラマなんかと比べてもまあ許容範囲かなと。機械仕掛けのミニチュアで七カ国の都城を巡っていくOPは、七王国を舞台とする『ゲーム・オブ・スローンズ』へのオマージュなのかなと。
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『慶余年』その8(完)

2020年02月08日 | 中華時代劇
『慶余年』第43~最終46話まで見ました。

自分の人生の目標というか野望のために着々と動き出す范閑。皇太后への誕生日プレゼントがわりに、皇帝派だった上杉虎を皇太后派に鞍替えさせ、そして皇太后の信任が厚かった沈重が、密かに南慶の長公主と結託して内庫の上がりを南慶に送金していた件を持ち出し、彼女に不信の種を植え付けます。范閑の母葉軽眉は北斉に店舗を構えており、彼女の死後、その店舗ごと北斉に接収されたということのようです。

范閑は司理理に思いを寄せられる一方で、次第に北斉の聖女海棠朵朵と惹かれ合うようになります。皇太后の誕生宴では2人で剣の勝負をしているつもりが2人の世界に入り込み、武侠物でよくある愛のメリーゴーラウンド状態となって北斉の高官にツッコまれてます (^_^;;)(その高官は食膳の料理を顔にぶちまけられる意趣返しを受ける)


この場面で出てくるこの構図も毎回OPで目にしているのですが、なかなかカッコイイ。


その誕生宴で皇太后に植え付けた不信の種が発芽し、沈重は失脚。内庫の管理権も取り上げられ、范閑は南慶に帰国した後も北斉から内庫の上がりを受け取れるようになります。これでようやく帰国となるわけですが、沈重もやられっぱなしで済ませてくれるはずもなく、范閑に一矢報いようと帰途に就く一行を襲撃。范閑はそこで沈重の口から、実は南慶の二皇子が密かに長公主と結託しており、滕梓荊の死のきっかけとなった程巨樹の襲撃などの黒幕も彼であることを知らされるのでした……

このままでは済ますまいと決意する范閑でしたが、野営中に二皇子の使者が到来。滕梓荊の遺児や弟の思轍らを人質に取っていることをほのめかし、今までのことを水に流して改めて彼と手を握ることを要求されますが……?

【総括】
ということで「そんな締め方ありか!?」となったところで第一季完です。范閑が古今の名詩を暗誦しまくって文才を謳われたりと、どことなくタイムスリップ物という設定を茶化すような場面もまま見受けられ、結末も含めて最後まで人を食ったようなノリが続きました。このあたり同じ原作者のドラマ化でも、厨二的なノリを全面的に押し出してきた『将夜』とは雰囲気が違いますね。第二季は、さすがにこのドラマでは『ゲーム・オブ・スローンズ』のようにザオラル使いは出てこないと思いますが、肝心なところでまたも五竹が出てこなかった件も含めてどうするつもりなのか気になりますw
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『慶余年』その7

2020年02月03日 | 中華時代劇
『慶余年』第37~42話まで見ました。


北斉の「小皇帝」と対面する范閑で。どう見ても男装の女帝なのですが、誰も何もツッコミません…… 戦豆豆という名前のようです。彼女は皇太后と暗闘を繰り広げているらしく、前回出てきた海棠朵朵も皇太后派と見せかけて皇帝派の模様。

沈重は皇太后の誕生宴にも出席して欲しいと露骨に范閑を引き留めにかかり、なかなか言氷雲を引き渡そうとしません。京都の慶帝も相手の思惑を知りつつ、范閑に北斉滞在延長の許可を出します。どうやら「これしきのことで任務を果たせないようなら将来重職なんて任せられないゾ?」と、范閑にもっと試練を与えたいらしい……


ここらへんで北斉の九品高手何道人が范閑の味方となります。陳萍萍から期間限定で范閑を手助けするよう依頼があった模様。彼は弟子の程巨樹を倒されたことで范閑に恨み骨髄……のはずなんですが、「弟子は他にもたくさんいる。」さようでございますか……


そして范閑は実は沈重の妹が言氷雲と恋仲だった(というか言氷雲が彼女を利用して情報収集していた)という情報をキャッチし、彼女の協力で遂に言氷雲を救出。言氷雲を演じるのは旬のイケメン蕭戦(肖战)。しかし長期に渡って沈重に監禁・拷問されたせいか、疑心暗鬼がなかなか解けません。おまけに元々職務に対して何かと融通が利かない性格のようです (^_^;) 

ついで范閑は上杉虎&その部将譚武による蕭恩救出計画を側面支援。しかし沈重の手下の狼桃&手下のふりをしている何道人の追跡から逃れられず、蕭恩とともに崖落ちしたかと思われましたが、崖から落ちて死んだ人なんていませんw しかし逃亡中に狼桃に受けた傷から蕭恩は自らの死期を悟り、范閑に「お前はワシの孫なのだ」と告白。これは陳萍萍の策略というか情報操作によってそう思い込まされているということのようです。


で、蕭恩の回想の中で登場した范閑の母親葉軽眉。若き日の蕭恩は「四大宗師」のひとり苦荷とともに、北斉の先帝の命により神廟捜索の旅に出たところ、神廟の中~出てきた彼女と出会います。彼女はその後世に出て数々の伝説を残し、最後は慶帝の妃となって子を産んだというところで、范閑は慶帝こそが自分の実の父親であると察知します。

陳萍萍が蕭恩に范閑が自分の孫であると思い込ませたのは、范閑を通じて彼の口から神廟に関する情報を得るため。また、范閑が儋州で育てられたのも、その儋州を出ることになったのも、滕梓荊を護衛とすることになったのも、すべて陳萍萍&慶帝の意図によるものなのでした。自分が彼らの駒にすぎないのだと悟った范閑は、反撃を決意。言氷雲を同志に引き入れて自分たちで鑑査院を掌握し、南慶の「第一重臣」となること、そして南慶の宮廷で何者かに殺害されたと思しき母の死の真相を知ることを目標に掲げます。

なぜ、言氷雲かというと、実は蕭恩の孫が生き残って南慶で育てられたというのは完全な嘘ではなく、言氷雲こそがその蕭恩の孫であると確信したからなのですが……
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2020年1月に読んだ本

2020年02月03日 | 読書メーター
「王」と呼ばれた皇族「王」と呼ばれた皇族感想
倉本一宏『公家源氏』と補い合う内容で、こちらは主に賜姓されない王を扱う。系統不明とされてきた興世王の系統の推測、伊勢奉幣の使王代の河越家が擬製的に王を作名し、王氏への改姓を願い出たという話が面白い。源氏と同じく天皇の孫あたりから露骨に没落していくさまが描かれているが、中国の各王朝の皇族でももう少し扱いが丁寧なのではないかと思ってしまう。
読了日:01月01日 著者:赤坂 恒明

天皇陵 「聖域」の歴史学 (講談社学術文庫)天皇陵 「聖域」の歴史学 (講談社学術文庫)感想
近現代における天皇陵の位置づけをめぐる話。一部の古墳が文久の修陵の際に大幅に手を入れられているという話は、史跡の外観が不変ではないというのは海外だけでなく日本でも同じという気付きを与えてくれる。また、天皇陵と天皇による祭祀との関係について紙幅を割いているのも本書の特色である。中国とは異なり、被葬者を示すような文字資料が副葬されていないということが、天皇陵や陵墓参考地の扱いに関して宮内庁側が政治的に付け入る隙のようなものになっているのではないかと考えさせる。
読了日:01月04日 著者:外池 昇

明智光秀の生涯 (歴史文化ライブラリー)明智光秀の生涯 (歴史文化ライブラリー)感想
早島本とは違ってオーソドックスな構成・議論となっている。関係の史料を着実に押さえ、信長の有能な家臣、歌や茶の湯に通じた文化人としての姿を描き出していく。本能寺の変の動機や背景に深く切り込んでいるのも早島本との違いだが、普段の光秀に似合わぬ計画性のなさ、織田政権下で進められていた家臣粛清という背景、そして黒幕など存在しないことを丁寧に議論している。
読了日:01月07日 著者:諏訪 勝則

「鎖国」を見直す (岩波現代文庫)「鎖国」を見直す (岩波現代文庫)感想
日本は鎖国をしているという言説がどのような背景のもとで語られるようになったのか、それはどう評価されていたのか、その評価はどう変わったのか、日本の国際関係の実態はどのようなものだったのか、鎖国が実態に合わないとしたら開国とは一体何なのかといった、鎖国をめぐるねじれを丁寧に解きほぐす。学習指導要領での「鎖国」の扱いをめぐる変化を見ると、政治と切り離された歴史学研究はどこまで可能なのかということも考えさせられる。
読了日:01月08日 著者:荒野 泰典

世界哲学史1: 古代I 知恵から愛知へ;古代I (ちくま新書 1460)世界哲学史1: 古代I 知恵から愛知へ;古代I (ちくま新書 1460)感想
世界各地の哲学の萌芽を、「魂」をどうとらえるかを軸に概観する。「世界」とある通り、西欧の哲学を中心にしないという点が特色のはずが、古代ギリシア哲学のとらえ直しの部分を最も面白く読んだ。ソクラテスの敵役にされてしまったソフィストたちには哲学はなかったのか?という話、数学と哲学との関係について、古代ギリシア以外の地域の数学には証明という営みが存在しなかったという話、コラムの「黒いアテナ」論争の展開などが印象に残る。「知を希(のぞ)んだ者」たちの歩みを描くはずの続刊にも期待したい。
読了日:01月10日 著者:

近世史講義 (ちくま新書)近世史講義 (ちくま新書)感想
女性史からのアプローチをメインとするが、近世史の概説としても読めるような構成となっている。第7講での、功績ある奥女中が自らを始祖とする家を立てることが認められていたという話が面白い。武家社会、朝廷、村落、アイヌ、信仰、流通など、同じ江戸期を舞台としていても女性史への切り口に様々な可能性があることを教えてくれる。
読了日:01月13日 著者:

日本のイスラーム 歴史・宗教・文化を読み解く (朝日選書)日本のイスラーム 歴史・宗教・文化を読み解く (朝日選書)感想
日本人とムスリムとの交流史にいてもまとめられているが、メインは90年代以降の日本にやって来たムスリムと日本人女性との結婚や日本人の入信者の事例紹介と、ハラール・ビジネスの問題。後者はともかく、前者については、ビザ目当ての男性側の態度など生々しさはうかがえるが、それだけで終わってしまっていてケーススタディと言えるほどでもないような気もする。
読了日:01月15日 著者:小村 明子

室町の覇者 足利義満: 朝廷と幕府はいかに統一されたか (ちくま新書 1471)室町の覇者 足利義満: 朝廷と幕府はいかに統一されたか (ちくま新書 1471)感想
足利義満の評伝というよりは、広く観応の擾乱から足利義教の死までの時代を対象とし、「室町殿」という地位の再評価を行った書。足利義嗣を親王とすることで鎌倉幕府以来の親王将軍の復活を図ったのではないかという話、北山文化の評価、義教と後花園の関係の話などが面白い。近年否定的に扱われている今谷明『室町の王権』のグレードアップ版という印象。
読了日:01月19日 著者:桃崎 有一郎

現代中国 都市と農村の70年 (放送大学叢書)現代中国 都市と農村の70年 (放送大学叢書)感想
包産到戸(農家生産請負制)が大躍進の頃から地方で個別的・実験的に導入され、改革開放期にも中央からの大動員ではなく、地方で自発的に導入され、そうした実践を通じて中央が認識を改めたというのは、「中国は一党独裁だから経済成長できた」という俗論の強い反証になるかもしれない。また反右派闘争は、毛沢東が民主党派に率直な意見・批判を求め、彼らが十二分にそれに応えてしまったところから始まったというのは、逆に建国当初は民主党派の役割が定まらない部分があったことを示していよう。
読了日:01月21日 著者:浜口 允子

戦争とは何か-国際政治学の挑戦 (中公新書 (2574))戦争とは何か-国際政治学の挑戦 (中公新書 (2574))感想
民主的平和論、安全保障のジレンマといった国際政治学の基本的な考え方をコンパクトにまとめている。第5~6章でサーベイ実験、データ分析の成果を示し、巻末の補遺で代表的なデータセットを紹介するなど、理論とともにデータの扱い方も示してやり、国際政治学とはどういう営みなのかが概観できるようになっている。
読了日:01月22日 著者:多湖 淳

江南の発展: 南宋まで (岩波新書)江南の発展: 南宋まで (岩波新書)感想
前巻で展開された渡辺信一郎氏の「古典国制」からの視点と、最終巻で展開されるであろう岡本隆司氏の「専制と放任が併存する」という国家・社会観とで江南を挟み撃ちにしたらこうなったというような内容。扱う時代は先秦から南宋までと幅広いが、宋代の比重がやや大きい。
読了日:01月23日 著者:丸橋 充拓

移民の経済学-雇用、経済成長から治安まで、日本は変わるか (中公新書)移民の経済学-雇用、経済成長から治安まで、日本は変わるか (中公新書)感想
移民の受け入れ、増加によって経済は、社会はどう変化するのかをトピックごとに検討。あるひとつの結論に導くというよりは、ある結論に対する批判や、別の視点からの分析を提示することで、移民をテーマに経済学的な研究とはどういうものかを示す書となっている。1章でキューバ移民の出身でありながら移民慎重派のボージャスなど、研究者のスタンスを問題にしている点も面白い。
読了日:01月26日 著者:友原 章典

建国神話の社会史-虚偽と史実の境界 (中公選書)建国神話の社会史-虚偽と史実の境界 (中公選書)感想
歴史教育として扱われる神代史が、戦前・戦中の小学生の目から見ても史実性が疑われるようなものであったこと、これに対し教師は児童に史実性を疑わせないように教育することが求められたが、指導書などでは教員自身が疑念を持たないようにし、信念を持って教育することを求めながら、その具体策は示されず、まじめな教師ほど深く悩むことになったという話が印象的。教育に関して、方法論や環境の面で無理があることを教師に求めつつも具体策が示されないというのは、今でもある問題かもしれない。
読了日:01月30日 著者:古川 隆久

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