博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『江と戦国と大河』

2011年01月31日 | 日本史書籍
小島毅『江と戦国と大河 日本史を「外」から問い直す』(光文社新書、2011年1月)

『義経と東アジア』『義経から一豊へ』に続く小島氏による大河の便乗本……と言いたいところですが、以下に見るような事情で悪ノリ本と言っていいレベルの著作に仕上がってます(^^;)

本書の前半は基本的に近年の大河ドラマに対するツッコミが中心で、家族会議で政策決定するなとか、大河のホームドラマ化はいかがなものかとか、割ともっとも意見が多いのですが、問題なのは「相手は生涯を通じて妻一人という男性が大好きな方は大河を見るのをやめていただきたい。そのせいで近年の大河は極めて偏った人ばかりが主人公になっている」というくだり。(本書37頁あたり)

で、その例として山内一豊や直江兼続らを挙げているのですが、そこで山内一豊は妻の千代以外に「女」はいなかったにしても「男」はいただろうとか、直江兼続も当時の通例で男性関係は豊富だったはずで、初体験はたぶん主君の上杉景勝とか、一体誰に向けて書いてるんやと問い詰めたくなるようなツッコミが…… 小島先生、自重して下さい!!(^^;)

本書後半では著者の現在の専門を生かして江の時代の国際関係の話も出て来ますが、最後の最後で歌舞伎の話題が出たところでまた男色の話題が…… だから小島先生、そんなネタふっても腐女子が喜ぶだけですから!!「山本勘助と高坂弾正は絶対にあやしい」と力説されても困るのですよ(^^;)

というわけでこの本、以前に紹介した同じ著者の『足利義満 消された日本国王』『織田信長 最後の茶会』とはまた別の意味でお薦めです。
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『中国「反日」の源流』

2011年01月30日 | 中国学書籍
岡本隆司『中国「反日」の源流』(講談社選書メチエ、2011年1月)

というわけで『中国「反日」の源流』、読了しました。全体の内容は、前にも書いたように中国での反日の源流を倭寇の時代から日中両国の社会構造の違いに着目して見ていくというものです。で、いくつもの例を挙げて日中双方の政治や社会のあり方を対比していき、日本と中国それぞれが異質な存在であることを浮かび上がらせていくという構造になっているのですが、個人的には日中の対比そのものが面白かったなあと。以下にその例を2、3挙げてみます。

○支配者と民衆との関係:支配者と民衆との距離がとても近いのが日本。はるかに遠いのが中国。
○「西洋の衝撃」に対して:危機感を抱いたのが日本。軽視したのが中国。
○お互いについて:鎖国下にあってもとにかく中国事情を知ろうとしたのが日本。「倭寇」のレッテルを貼ったまま日本の実情を知ろうとしなかったのが中国。

最後の項目に出て来る倭寇についてですが、結局明代に登場した日本=倭寇というイメージが以後も改められることはなく、この倭寇のイメージが登場した時代から現代に至るまで中国は基本的に反日なんだと著者は主張してますが、中国の歴史ドラマで倭寇との戦いが抗日のメタファーとなっている現状を鑑みると、この主張にもうなずけるものがあります。

最後に、本書の「エピローグ」で妙に納得した一節。

○中国の伝統的史学とは、言わば史実を材料としてイデオロギーを表明したものである。で、その時々の政治的な問題が歴史の見方として現れるのであって、決してその逆ではない。

まあ、そうだよな……
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『楊貴妃秘史』その4

2011年01月28日 | 中国歴史ドラマ
『楊貴妃秘史』第19~24話まで見ました。

玉真観で開催される牡丹詩会に出席するため、久々に長安へと戻って来た李白。妻に去られて半狂乱になった寿王や玉環と再会し、あらかたの事情を知りますが、玉環を責めるわけでもなく、ただ彼女を皇帝に寵愛されながら非業の最期を遂げた前漢の趙飛燕姉妹になぞらえる詩を作り、身の処し方を誤るなという注意を与えるのみ。その李白、玄宗に気に入られて供奉としてしばらく宮仕えをすることに。

で、牡丹詩会当日。宴もたけなわという頃になって、父玄宗から玉環を奪い返すと思い詰めた寿王が玉真観へと乱入し、玄宗を刺殺しようとしますが、玉環が彼を庇って替わりに刺されてしまうことに…… 幸い一命を取り留めた玉環ですが、病床で玄宗と愛を確かめ合い、これまで身分を偽っていたのを許すことにしたのでした。

その後で、可毒国(架空の国名)の使者のもたらした蛮書を李白が見事解読し、大唐の面目を施したというエピソードが挿入されますが、これは確か『三言二拍』あたりが元ネタでしたよね?と思ってググったら、『警世通言』が出典とのことです。元の話では渤海国が蛮書を寄こしたことになってますが、架空の国名にされちゃっているのはいつものことですねorz あと、この場面で使者の話している蛮語がどうも日本語っぽいような気がするのですが(^^;)

「これで充分働いたからもういいだろ」ということで、李白は再び旅路へ。玉環は「太真娘子」としてほぼ皇妃としての待遇で後宮に入ることになり、そして玄宗の子を妊娠していることが発覚。……ここまで玉環の身分の転変が物凄いなし崩し的なんですけど、これでいいんでしょうか(^^;) 

これに危機感を抱いたのが後宮の主の梅妃。苦労してゲットしたトップの座を渡すものかと強く決意し、まずは色々小細工して玄宗の同情を買うことにし、10年ぶり(!)に彼と床をともにすることに。しかしそれを知った高力士は、「玄宗の寵愛が玉環から梅妃に移ると、権勢欲の強い梅妃がますます図に乗り、宦官のトップである自分を圧迫してくることは必定」と即座に判断し、床をともにする晩になって、玄宗は華清池でお待ちだと梅妃を騙して移動させ、玉環の妹分で侍女の謝阿蛮を彼女の替わりに玄宗と契らせることに成功。

実はこの阿蛮、密かに武将の高仙芝(このドラマではイケメン)と恋仲であったのですが、玉環のために泣く泣く玄宗に身を捧げることに…… 一方、高仙芝も親交のある忠王李亨(玄宗の三男)から、「阿蛮は仮にも宮女で、父玄宗の女とも言える存在。彼女との仲が父上に知れたらお前の前途も危うくなる」と諭され、彼女のことをスッパリと諦め、皇命により可毒国への遠征へと赴くことになったのでありました。

そして高力士らに謀られたことを知って激怒する梅妃。かくなる上はと玉環の主治医でもある劉太医を抱き込み、玉環に密かに堕胎薬を飲ませようと画策しますが……
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『中国『反日』の源流』を読んで武林のことを考えた

2011年01月24日 | 雑記
現在、岡本隆司『中国『反日』の源流』(講談社選書メチエ)をボチボチと読んでます。中国での反日の源流を、倭寇の時代あたりから日中両国の社会構造の違いに着目して見ていこうという内容なんですが、本筋とはあんまり関係ない所で気になる記述が…… 

本書によると、明清期の幇や会党などは単なる同業者組合・相互扶助組織ではなく、「小さな国家」とも言える存在であり、政府当局が接触するのはこれらの団体の上層部のみで、団体内部のことには一切関与しなかったというようなことが述べられています。

この見方を敷衍すると、武侠物に出て来る華山派とか丐幇とか少林寺等々も単なる武術道場や組合などではなく、小規模な国家と見てよいということになります。ということは、各門派が覇権を争う「争覇武林」なんてのは正しく小規模国家同士の戦争ということになるわけですね。更にはそれらの門派が相応の武力を持っているにも関わらず、朝廷があんまりそれを気にしていないのは、歴史的に見てある意味正しい描写なのではないでしょうか。

つまりは、武侠小説からも現実の「中国」を見出すことは充分に可能であるということです。そう考えると、現実の「中国」の政治闘争を「争覇武林」に置き換えて描いてみせた金庸の『笑傲江湖』は秀逸ですよね。
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『楊貴妃秘史』その3

2011年01月20日 | 中国歴史ドラマ
『楊貴妃秘史』第13~18話まで見ました。

寿王は朝見の場で玄宗に、玉環を宮廷楽団に出仕させる命令を取り消すよう要求しますが、怒った玄宗はこの要求を退けて寿王を棒打ちの刑に処します。しかし寿王の母親武恵妃は却ってこの事態を奇貨とし、宰相李林甫と謀って自分達が玄宗への不満から謀反を企んでいると見せかけて皇太子一派を陽動し、破滅に追い込もうと計画。そしてマンマと罠にはまった皇太子李瑛は玄宗より謀反を疑われて死を賜ることに。

これでもう太子の地位は我が子の手に入ったも同然と我が世の春を謳歌する武恵妃ですが、以後皇太子の亡霊に悩まされるようになり、怪死を遂げてしまいます。武恵妃のライバル梅妃はこれで後宮の主の座は自分のものとやっぱり我が世の春を謳歌しますが、当の玄宗は梅妃と会っていても心の中は玉環のことばかり。しまいには武恵妃を弔うためと称し、玉環を出家させて女道士とし、彼女と密会できる環境を作ることに…… ダメだこの親父、本当に誰か早く何とかしないと(^^;)

寿王は当然その命令に精一杯抵抗しようとしますが、結局玉環は玉真観で出家。宮廷楽団大師傅李三郎に扮した玄宗に元宮廷楽師の実父のことを打ち明けたり、ともに「霓裳羽衣曲」を完成させたり、はたまたその褒美として華清池の温泉につかったりします。で、玄宗はいよいよ玉環に李三郎の正体が自分であることを明かしますが、玉環はその事実が受け入れられずに玉真観に引きこもってしまいます。

一方、玉環の母親の仇である李静忠はその後皇太子の馬屋番に収まっていましたが、李林甫の意を承けて皇太子の陽動に協力した功績により、皇帝の馬屋番へと出世。しかし玉環が楊玄珪と楽奴との娘であることを知ると彼女を排斥する決意を固め、玄宗が彼女を寵愛することを快く思わない梅妃と結託。この李静忠、架空の人物だとばかり思っていたら、肅宗の腹心の宦官李輔国の元の名前がこの李静忠ではありませんか。こんなところにきっちり実在の人物を持って来るとは……
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『五千年前の日常』/『街場の大学論』等

2011年01月17日 | 世界史書籍
小林登志子『五千年前の日常 シュメル人たちの物語』(新潮選書、2007年)

同じ作者が中公新書で出した『シュメル 人類最古の文明』が面白かったので、こちらも読んでみることに。こちらも前著と同様、シュメル人の生活や信仰などについてまとめているのですが、個人的にウケたのが、人類最古の女王の可能性があるクババ女王の話。彼女の名は出土資料である『シュメル王名表』の中に見えるのですが、作者はそれだけでは実在したとは確定できず、実在を証明するには彼女が実際に使用した印章などが発見される必要があるとしています。

で、翻って私の専門である中国先秦史に思いを致すと、その手の王名表に名前が見えると言うだけで、余裕で実在していたことにされると思います。というか、実際にされてきました(^^;) そう考えると、中国史での人物の実在認定はかなりいい加減ですよね……

内田樹『街場の大学論』(角川文庫、2010年12月)

作者の主に大学教育に関するエッセーなどを集めた本ですが、第7章の「研究者に仲間入りするためには」にかなり励まされた。いや、これで励まされてはいかんのではないかという気もするのですが(^^;)

そして同章では何のために論文を書くのかという話がまとめられているのですが…… 「他の人の話を読んだり聞いたりして感じた『なんか足りない』『どこか違う』という感覚を時間をかけてていねいに観察してみてください。そこからオリジナルな研究が始まります。そこからしか始まりません。」(本書206~207頁)これは全くその通りですね。

菊池良生『警察の誕生』(集英社新書、2010年12月)

日本の江戸時代の目明かしといい、イギリスのシーフ・テイカーといい、犯罪捜査要員の末端が実は犯罪者と紙一重というのはどこでも一緒なんだなあと。そういや前に読んだ『清国作法指南』でも、夜警や捕頭も泥棒の一味という話が出てましたね。

吉川忠夫『王羲之 六朝貴族の世界』(岩波現代文庫、2010年10月)

王羲之の伝記本ですが、作者の専門柄、王羲之と道教との関わりについて割と紙幅を割いてます。実は私が知りたかったのもその点なので、個人的なニーズには合ってたわけですが。
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『楊貴妃秘史』その2

2011年01月16日 | 中国歴史ドラマ
『楊貴妃秘史』第7~12話まで見ました。

丞相李林甫も寿王と玉環との婚姻に乗り気と知るや、「楊玄璬を救うにはお前が寿王に嫁ぐしかないんだっ!」と説得にかかる楊。しかし李白を想い続ける玉環は首を縦にふらず。そこで玉環に李白のことを諦めさせようと、「お前は知らんだろうが、実は李白には2人の妻がいるんだ」と、衝撃の告白。李白、ニート詩人のくせに2人も妻がいたのかよ(^^;) この告白が原因で李白と楊とがつかみ合いの大喧嘩をしたりと色々ありましたが、結局玉環は寿王との結婚を承諾し、楊玄璬とついでに李静忠も無罪放免。傷心の李白は再び旅路へ。

で、無事婚礼が執り行われ、寿王と玉環が2人で玄宗とお目見えという段となりますが、息子の嫁がかつて自分の見初めた女性であると知って動揺を隠せず、思わずその場から退席してしまう玄宗。その後も悶々と面白くない日々を過ごしますが、玉環がまだ自分の正体に気付いていないと知るや、玉環を宮廷楽団の琵琶の教習役に任命し、自らは楽団総指揮者の李三郎ということにして、毎日楽団の教習にかこつけて彼女とイチャつこうと計画。……ダメだこの親父、誰か早く何とかしないと(^^;)

しかしこのことは寿王や、その母である武恵妃に漏れ伝わることに。特に寿王は玄宗に事の次第をはっきりさせるよう直接訴えかけますが、適当にはぐらかされ、おまけに「お前の李清という名前だけどさ、兄貴達の名前に合わせて玉偏のつく李瑁という名前に変えちゃいなよ」とか言われ、玄宗の思いつきで改名させられることに。(玄宗の息子たちは皇太子の李瑛をはじめ、名前に玉偏が付く者が多い。)一方、玉環は李三郎の正体が玄宗ではないかと一度は気付きかけますが、宦官高力士の機転により「やっぱり別人だ」と勘違いし続けることに……

その改名の祝宴が寿王府にて開かれることになりますが、その頃には寿王の玉環への愛がすっかり冷め切っちゃってます。おまけに宮廷楽団での玉環の一件が寿王の政敵である皇太子にも知られてしまい、太子李瑛は寿王に「李瑁」の名に引っかけて嫌がらせで緑帽子をプレゼント。これにブチ切れた寿王は太子に殴りかかり、そのまま遁走した挙げ句にヤケ酒をかっくらって妓楼で一夜を明かし、翌朝の朝見に出頭。彼は群臣や諸王の面前で玄宗に玉環への処遇を問い質そうとしますが……

ということで着々とメロドラマな展開になっていってます(^^;) 最後に出て来た「緑帽子」の意味についてはここでは敢えて触れませんが、興味のある方は中国語の辞書で調べてみてくださいw
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『楊貴妃秘史』その1

2011年01月13日 | 中国歴史ドラマ
ほぼ黄秋生(アンソニー・ウォン)が玄宗皇帝をやっているというだけで興味を持って見始めてしまいました(^^;)



今回はこの『楊貴妃秘史』を第1~6話まで鑑賞。

後の楊貴妃こと玥児は元宮廷樂師の楊玄珪と、現役の梨園宮伎である楽奴との間に生まれますが、梨園の雑役李静忠が母の楽奴に横恋慕したことからこれまでの生活が急転。李静忠に手籠めにされた母は自尽し、同じく李静忠の密告により楊玄珪は官憲に追われる身となり、玥児とともに放浪生活へ。しかし楊玄珪は旅の途中で力尽きてしまい、たまたま出会った李白と楊(後の楊国忠)に玥児を託して息を引き取ります。一方の李静忠は、事情を知って激怒した李白に股間を刺され、宦官として生きるほかない状態に……

暮らしをともにするうちに李白を兄と慕うようになる玥児ですが、自分が旅にしか生きられない李白の足手まといとなることを恐れ、泣く泣く伯父の楊玄璬のもとに引き取られることを選択。楊玄璬の妻や3人の従姉妹たちは彼女を召し使いのように扱いますが、黙ってそれに耐える玥児。……何だかシンデレラみたいな展開になってきましたね(^^;) 玥児はこの伯父の家で玉環という名前を与えられます。

そして6年後。玉環は歌舞に秀でた美少女に育ちます。時に長安では玄宗の誕生日を記念して玄宗の十四男寿王の屋敷で祝宴が催されることになり、楊玄璬の一家も祝宴に招待されますが、玉環はお留守番。しかし街中で幼馴染みの謝阿蛮と駄弁っていたところ、身分を隠して街中をうろついていた玄宗に見初められ、綺麗な衣装をプレゼントされて寿王府の祝宴に出席できることに。うーん、ますますシンデレラな展開です。

喜び勇んで寿王府の舞台で踊りを披露する玉環と阿蛮。しかし踊りの衝撃で舞台が崩壊し、2人は行方不明に。実はこれ、玄宗が寿王ばかりをかわいがるのに嫉妬した皇太子が嫌がらせのために仕組んだことでありました。で、実際に寿王府に潜り込んで舞台に細工したのは、いつの間にか皇太子の配下となっていた李静忠です。

玄宗は事の次第を知ると真相の究明を命じ、舞台工事の責任者であった楊玄璬が逮捕されることに。崩壊した舞台の跡から李白に救い出された玉環は何とか養父の楊玄璬を助けようとしますが…… 一方、寿王はと言えば、祝宴で踊りを披露した玉環に一目惚れしてしまい、彼女が残した腕輪を手掛かりに彼女の捜索させます。すなわちこの腕輪がぴったり合う女性こそ捜し求める女性ということですが、どこまでシンデレラな展開にすれば気が済むのかと…… シンデレラ・ストーリーって、シンデレラの筋書きをそのまんまなぞることじゃないと思うのですが。

ということで今回のツッコミ所。

○玥児と楊が屋台で肉夹馍(中華風バーガー)を食べている場面が出て来ますが、肉夹馍は唐代に既に存在したのでしょうか。第二次大戦後にハンバーガーチェーンが中華圏に進出して来てから発明されたものなんじゃないかと思うのですが……

【追記】肉夹馍ですが、取り敢えず唐代はともかく戦前には存在していた模様。詳しくはコメント欄を参照のこと。

○李白の馴染みの妓女の名前が楚留香。……普通、有名作品の登場人物とかぶるようなネーミングは避けるもんじゃないかと(^^;)
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柳生一族は朝鮮妖術の夢を見るか?

2011年01月10日 | 小説
正月からこの三連休にかけて、前々から気になってた荒山徹の小説を三作ぶっ続けで読んでみました。

荒山徹『柳生薔薇剣』(朝日文庫、2008年9月)

豊臣秀吉の朝鮮出兵時に日本人の夫と出会い、永住を決意して日本に渡った妓生のうね。しかし朝鮮から派遣された使節団はそんな彼女をも見逃さず、強制帰国を迫ります。うねは故国朝鮮との縁を切るために縁切寺として名高い鎌倉・東慶寺へと逃亡。このうねの扱いをめぐって幕論は二分されることに。柳生宗矩は将軍家光の内意を承け、うねを守るために長女矩香(のりか)を東慶寺へと派遣しますが……

秀吉の朝鮮出兵を契機に日本に渡来したり連行されたりした人々を捜索し、帰国を求める刷還事業に対してやや不穏な見解が見られるものの、四捨五入すればまあ普通の時代小説かなあと思って読み進めましたが…… 柳生の血を引く陰陽師幸徳井友景とか、朝鮮妖術師が出て来たあたりで一気に話が怪しくなってきた(^^;)

荒山徹『柳生百合剣』(朝日文庫、2010年10月)

ともに将軍家兵法師範役である一刀流の小野忠明を尻目に将軍家光の寵愛を得て出世を重ねる柳生宗矩。しかしそこへ一刀流の開祖伊藤一刀斎を名乗る老人が出現。朝鮮妖術「断脈ノ術」で柳生新陰流を消滅させ、宗矩以下柳生新陰流の門徒はみな剣術が使えなくなってしまいます。ただ一人柳生十兵衛のみが「断脈ノ術」の影響が及ばず、単身伊藤一刀斎の一味と対峙することになりますが……

『柳生薔薇剣』の直接の続編。冒頭での姉・矩香に恋い焦がれる十兵衛の描写とか、敵方の剣士ウラギリジョーというネーミングとか、百済王松平忠輝という設定とか、前作より十倍増しぐらいで反応に困る要素が盛り込まれており、作者の本気を垣間見た気にさせられます。こういう作品の解説を無難に仕上げられる菊池仁氏は大変大人だなあと思いました。

荒山徹『柳生大戦争』(講談社文庫、2010年12月)

「檀君神話は高麗の高僧晦然による捏造だった!」柳生家に代々伝わるこの衝撃的な事実を記した「一然書翰」を利用して朝鮮王朝との外交を有利に進めようとする柳生宗矩。そんな最中、将軍家光の寵童であった宗矩の次男友矩が父の足を斬って朝鮮へと出奔。朝鮮側がこの友矩の存在を利用して宗矩と対抗する姿勢を示したので、宗矩は長男十兵衛と三男宗冬に友矩抹殺を命じ、朝鮮へと密航させることに。しかし当時の朝鮮はこれまで通り明王朝を宗主国とするか、新たに勃興した後金(清)帝国に従うかで揺れ動いており……

今回読んだ三作の中では最もスケールが大きく、最も面白いと思ったのが本書。檀君神話をめぐる設定については、踏み越えてはいけない一線を空気でも吸うように平気で踏み越えるなあという印象を抱きました。

それに関しては本書の細谷正充氏の解説で「伝奇的手法で日韓の歴史を弄(いじく)る作風から誤解されがちだが、作者は日韓友好という願いを作品に込めている。それを阻む偏ったナショナリズムの源泉を考えたとき“捏造”に行きついたのではなかろうか。捏造の過程を捏造することで、捏造の持つ危うさを、警告しているのである。」とまとめていますが、発想の根本からしておかしいと思うのは私だけでしょうか(^^;)
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『包青天之七侠五義』その7(完)

2011年01月09日 | 中国古典小説ドラマ
『包青天之七侠五義』第35~最終40話まで見ました。

塩幇では先代の総舵主が何者かに殺害され、左護法の鉄栄が先代の娘朱瑛を新総舵主として擁立。そして鉄栄と対立する右護法の肖鋒が梓州で役人と結託し、官塩の密売を行っているらしいという情報を入手。朱瑛は旧知の艾虎に捜査を依頼します。

一方、朝廷でも梓州での官塩密売が問題となりますが、その容疑者として他ならぬ包拯の甥包勉の名前が浮上。包拯は両親が年を取ってから生まれたので、兄嫁にあたるこの包勉の母に養育され、彼女を実の母同様に慕っていたのであります。そういう事情があって積極的に捜査に乗り出しづらい包拯。しかしかつて息子を殺されたことを根に持っている龐太師は(その1を参照)、敢えて今回の事件の取り調べを包拯に任せるよう要求。審問に手心を加えたり罪を見逃すようなら、当然激しく弾劾する構えですが……

ということで最終シリーズは「鍘包勉」です。自分の身内が悪事を犯した(と疑われた)時に名裁判官はどう動くか?という割と衝撃的なテーマのはずなんですが、同様のテーマを扱った『大宋提刑官』での神展開(『大宋提刑官』その8その9を参照)と比べると、かなり見劣りするなあというのが正直なところ。塩幇が私塩を精製して密売するのはオーケーで、役人と結託して官塩を密売するのはNGという倫理観もよく分かりません……

【総括】

というわけで、今回は『三侠五義』をドラマ化しているっぽいということで本作を見てみたわけですが、フタを開けてみると七侠(小諸葛の沈仲元を除く)と五義が登場したというだけで、ストーリーは『三侠五義』と全然違ってましたねえ(^^;) ただ、ストーリー展開自体は最初と最後のエピソード以外は大体満足できるもので、1エピソードが3話~5話程度と、ほぼ旧版と同様のスピード感を保っているのも良かったかなあと。

で、新版『包青天』は今後もシリーズ化されるようですが…… 続編『包青天之碧血丹心』の紹介文を読むと、日本の天皇のお姫様が和親にやって来るとか、藤原氏が大宋の江山を乗っ取ろうとしているとか、なかなか楽しそうなことを書いてますね。こっちもやっぱり見るしかないのか(^^;)
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