博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『倚天屠龍記』その3

2019年03月28日 | 武侠ドラマ
『倚天屠龍記』第11~16話まで見ました。

胡青牛を仇敵視する金花婆婆&殷離と、楊逍に攫われたまま行方知れずとなっていた紀暁芙を追ってきた峨嵋派ご一行様が蝴蝶谷へと押し寄せ、大変な修羅場に…… ここで紀暁芙が滅絶師太から楊逍抹殺を命じられて拒絶し、自らが清理門戸されてしまうのと、張無忌が殷離の手を噛むイベントが挿入されます。


何とか難を逃れ、張無忌が楊不悔を連れて父親を捜し求めるところで楊逍が再登場。このドラマの楊逍は独特の厨二臭さを感じさせる印象的なキャラクターとなっています。


そしてこのあたりで張無忌が子役から曾舜晞に交替。原作通り紅梅山荘の朱九真に拾われて、一家の主の朱九齢の芝居に騙されて寸手の所で逃亡を図り、朱長齢と揉み合って崖下へと落とされますが、崖にぽっかり開いた洞穴の向こうの桃源郷で秘伝書を得て九陽真功をマスター。10年前の張P版では紅梅山荘の前後の描写が雑にすっ飛ばされてたような記憶がありますが……


それと同時進行で子役から交替した周芷若が登場し、峨嵋派で修行して丁敏君にいびられたりする場面が挿入されます。今回のドラマ版は「美女最多」という評価のようですが、後で登場する趙敏のインパクトを食いそうな感じです (^_^;) 

ついでに彼女が峨嵋派に入門した経緯も回想という形で語られます。大人たちがとにかく張無忌をかわいがるのが気にくわない幼少の宋青書が、周芷若も張無忌に好意を持っているのが気に食わず意地悪をし、それを気に掛けた大人たちが相談のすえ、彼女の将来のことも考えて峨嵋派に送ったという顛末。その宋青書も周芷若が美人になったのを見て、彼女本人がすっかり忘れていたというのに、幼少の頃のあれこれについて必死に詫びを入れているのがおかしいですw

で、六大門派の領袖を説き伏せて明教光明頂総攻撃を実行しようとする滅絶師太に、楊逍への恨みがある殷梨亭と周芷若への下心がある宋青書が同行し、紅梅山荘に到来。


一方、洞穴を出た張無忌は大人になった殷離こと蛛児と再会。もっとも彼女に対して咄嗟に「曾阿牛」という偽名を名乗ったので、向こうはこちらが張無忌であるとは気付きません。これが後々厄介なことになってくるのですが…… 今回は無忌と蛛児が峨嵋派ご一行様にとっ捕まって連行され、周芷若と再会するあたりまで。割と微妙な加減で要所要所にオリジナルエピソードを加えてます。



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『倚天屠龍記』その2

2019年03月22日 | 武侠ドラマ
『倚天屠龍記』第5~10話まで見ました。

楊逍に攫われてしまった紀暁芙ですが、楊逍は実のところ明教徒の父母を亡くした雁児の世話係を求めていたようで、1ヶ月という約束で彼女の面倒を見ることになりますが、紀暁芙は次第に楊逍に惹かれていきます。


そして楊逍は紀暁芙の求めに応じ、元軍に奪われていた蛾眉派の宝・倚天剣を取り戻し、こっそり蛾眉山に放置します。そしてそうと知らず倚天剣が戻ってきたと喜ぶ滅絶師太……


一方、氷火島では張翠山&殷素素の子の無忌君がすくすくと成長し、島で父親とスキーに興じたり、義父の謝遜の過去の因縁話におびえたりしてます。この子役、とても愛らしいのですが、おびえたり泣いたりしてる場面が多いんですよね……

で、父母とともにイカダに乗って中土に戻ることになった謝無忌改め張無忌君ですが、途中で遭遇した船上で父の兄弟子の兪蓮舟と母方の伯父殷野王が対立しているところに立ち会います。そして自分は謎の達人に攫われて玄冥神掌を身に受け、長く生きられない身となり、父母は過去の因縁の成算と謝遜をかばうために自害しと、島を出た途端に江湖の恩讐やら悪意を一身に背負うことに…… 不憫な身の上ですが、武当派の面々や母方の祖父の殷天正からは思い切りかわいがられているのが救いです。


武当派の開祖・張三丰とともに内傷を治す旅に出る無忌君。その途中で後にヒロインとなる周芷若(子役)や、後の明朝建国の功臣となる常遇春と出会い、更にはその常遇春の紹介でマッド神医の胡青牛のもとで治療を受けることになります。しかし胡青牛に恨みを持つ金花婆婆の差し金で彼のもとに難病奇病の患者が多数押し寄せ……というあたりで次回へ。

基本的に原作に忠実な作りで、その隙間をオリジナルのエピソードを埋めていくという、脚本的には手堅く丁寧な仕事をしています。非難囂々のスローモーション問題を見てると、このドラマで別にアクションをやりたいわけではないんだろうなという気が何となくしてくるわけですがw
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2019年版『倚天屠龍記』その1

2019年03月14日 | 武侠ドラマ
先月末より配信・放映が開始された新版『倚天屠龍記』の鑑賞を始めました。今回は全50話中の第1~4話まで見ました。

武当派三番弟子の俞岱岩はひょんなことからこれを得た者は天下無敵になるという屠龍刀の争奪戦に巻き込まれ、謎の使い手によって廃人同然の身となります。「武当七侠」の中で俞岱岩と最も仲の良かった張翠山が下手人の手がかりをつかもうと武当山を下りたところ、俞岱岩を武当山まで送らせたという殷素素と出会います。


主人公張無忌の父親となる張翠山を演じるのは、『宮廷の諍い女』の果郡王でお馴染み李東学。


で、こちらが天鷹教教主殷天正の娘の殷素素。


この二人が、屠龍刀を手に入れた「金毛獅王」謝遜に拉致されるような形で中土を発つ船に乗せられ、雪と火山の氷火島に流れ着きます。謝遜を演じるのは、近年金庸物の悪役でよく見る顔になった黒子。

そして氷火島と張翠山と殷素素が夫婦となって赤子が生まれ、その泣き声で狂気から解放された謝遜の義子となって謝無忌と名づけられます。ここまでの展開はほぼ原作通りですが、合間に蛾眉派の滅絶師太と天鷹教との抗争とか、滅絶の愛弟子の紀暁芙が明教の光明左使楊逍に捉えられたりと、オリジナルエピソードや原作の設定を膨らませた話が展開されます。

監督が新版『射鵰英雄伝』と同じ蒋家駿ということで展開は丁寧……と言いたいところですが、アクションシーンにスローモーションが多すぎるということで炎上している模様 (^_^;) 確かにスローモーションが多用されてます。それと近年の金庸ドラマの例に漏れず、OPに94年版『倚天屠龍記』のテーマ曲「刀剣如夢」を使用したり、滅絶師太にその94年版でヒロイン周芷若を演じた周海媚をキャスティングするなど、古いファンの郷愁を誘う仕掛けになってます。
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『大江大河』その8(完)

2019年03月10日 | 中国近現代ドラマ
『大江大河』第43~最終47話まで見ました。

小雷家では糞尿で汚染された養豚場からの排水が下流の村で中毒を引き起こしたということで大きな騒ぎが持ち上がります。環境保護に目を向けて排水設備をちゃんと整備しろという宋運輝の警告がここで生きてくるのか……と思いきや、韋春紅に絡んで雷東宝にぶん殴られた冠亜グループの総帥の韓が一枚噛んでいることが判明。

責任を感じた韋春紅は小雷家の豚肉を大量に買い入れ、東宝とマスコミを自分の食堂に招いて風評被害の払拭に協力します。「おっ、春紅飯店盛況じゃん!」と思ったら、客はすべてサクラとして仕込んだ彼女の親戚縁者で代金は当然奢り。現実には小雷家産の豚肉を仕入れてから客が寄りつかなくなったという悲しい事実が明らかに…… 東宝はその晩酔った勢いで韋春紅と男女の関係になってしまったかもしれないと思い悩みます。電話で相談された小輝は「姉が亡くなってもう五年も経つんだから、大哥の誠意はわかっている。」と慰めますが、以後韋春紅とはあくまで友人として接することに。


そしてその小輝はとある人物と接触。というわけでオレたちの大尋が帰ってキターーーー!!5年ぶりにシャバに戻ってきた尋建祥の仕事探しのために楊巡を紹介します。そして彼と入れ替わるように虞山卿が汚職を摘発されて金州を追われることに。小輝は大尋を出迎えた時と同様に作業服と自転車で三叔を見送ります。

楊巡は雷東宝の協力を得て自分が店を出している電器市場全体を買い取ろうとしますが、楊巡の恋人戴嬌鳳を奪った金持ちの若旦那趙小波が市場を買い取ろうとしているのに張り合っているのを察し、難色を示します。しかし最後には楊巡の熱意に感じ入り、資金や手続きを援助してやることに。その雷東宝自身も、妻の宋運萍の死の遠因となった因縁の江陽電線工場の買収に成功し、設備と人員を接収。

小輝は副工場長の閔忠生のもとで工場の技術改革に励み、技師長への昇格を打診されます。しかしその閔が水書記を退職に追い込み、自らが工場長兼党委書記となることを知ると、憤激して敢えて国家から打診されていた東海化工への異動を受け入れ、現地で工場設立準備に従事することを決意。相変わらず夜の図書館で調べ物に励む水書記に別れを告げ、自動車で現地に向かいます。

【総括】
ということで反革命家庭の出身でありながら大学への進学を勝ち取り、誠実でまじめな人柄と知識でもって大都市の化学工場で出世を重ねる宋運輝、貧村の書記として郷鎮企業を立ち上げ、村の経済発展のために邁進する豪放磊落な雷東宝、そして地位も教育もないがマントウ売りから個人経営の卸売業に転じた口八丁手八丁の楊巡と、立場も性格も異なる3人の人物を通して、文革が終わって間もない1978年から改革開放まっただ中の1988年までの10年間を駆け抜けました。

当時の社会風俗や世相なんかもさりげなく織り込まれていて、現代史物としても充分に楽しめます。たとえばコーラひとつをとっても、小輝が学生時代に梁思申のアメリカ土産ということで珍しそうに飲んでいたのが、それから10年も経たないうちに場末の春紅飯店で気軽に飲めるようになっているさまが描かれています。農村の乗り物も自転車や農耕用トラクターからバイクや自動車に様変わりしています。

大河川の激流をイメージしたタイトルのごとく、大河ドラマと呼ぶにふさわしい作品となっています。(そう言えば本作の尺は日本の大河ドラマと同じく47話×45分です)好評につき第二部の制作も進行中ということで最終話には第二部の予告編が付いているのですが……


人民日報好きすぎやろ (^_^;) 大学進学から始まりこれまで中央の政策方針を足がかりにして危機や難局を乗り越えてきた小輝ですが、第二部ではどうなるのでしょうか?
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『大江大河』その7

2019年03月04日 | 中国近現代ドラマ
『大江大河』第37~42話まで見ました。

楊巡&戴嬌鳳は同じ電器市場で店を構える王叔と取り引きをしていましたが、その王叔が炭鉱に卸した製品に粗悪品が混じっていたことにより爆発事故がおこり、多くの死傷者が出たということで、王叔が警察に連行。更に復讐に燃える炭鉱員が電器市場を襲撃して破壊してまわり、楊巡が腕を負傷骨折、更に彼が取り扱っていた小雷家の電線自体に風評被害が及ぶという事態となります。

小鳳こと戴嬌鳳は自分に好意を寄せる金持ちの若旦那趙小波から当面の資金を借り入れますが、楊巡はこれを雷東宝から開業資金として借りていた金の返済に充てることにし、密かに入院先の病院を抜け出して単身小雷家へと向かいます。小鳳には彼女のアパートにその旨書き置きを残したはずが、それに気付いた趙小波がこっそり隠してしまったので、小鳳は楊巡が自分を見捨てて金を持ち逃げしたと思い込み、傷心のあまり楊巡のもとから姿を消し、趙と一緒になる道を選びます。

事情を知った雷東宝はチーム小雷家の一員老五と村の若者2人を助手に付けて楊巡を金州に戻らせます。楊巡は電器市場での商売を再開しようとしますが、一旦付いた悪いイメージを払拭できず、更には噂を聞きつけた炭鉱員が再度襲撃してくる始末。


そこで楊巡は市場のガラクタをかき集めて街中で焼却し、「杜絶仮貨、仮一賠十!」(粗悪品を根絶し、もし粗悪品があったら10倍にして弁償する)のキャッチフレーズで汚名挽回を図ります。その様子が新聞で報道されたこともあって評判となり、彼の手によって電器市場が再出発することとなります。偽物・粗悪品の追放ももう少し後の時代の課題を先取りしている感がありますが……

さて、金州化工では小輝こと宋運輝が程開顔と結婚し、また新車間の主任として公私ともに充実した生活を送っていますが、その新車間の高燃費が赤字のもとになっているということで、コスト面から燃費を低く調整するよう求める工場長の閔忠生(この人は現場に出ていた頃の小輝の上司でもありました)と、技術面から現状維持を求める小輝とが対立。原因は国家の政策方針により新車間で生産された製品の販路拡大と価格決定が工場側で行えないことにあったのですが、水書記が中央に折衝した結果、製品の海外販売権と価格決定権が認められ、燃費は現状維持でも問題ないということで解決を見ましたが、これにより小輝は閔忠生の恨みを買うこととなります。

で、水書記の思し召しにより、小輝は輸出科の科長と新車間の主任を兼ねることとなり、更に妻の程開顔が懐妊と喜びが重なります。開顔ちゃんは日本語学校に通って勉強しているようだけど、小輝に五十音表を覚えろと言われても「8時から見たいドラマの最終回がある」と言って勉強を後回しにするあたり、かなり性格が出ていますw 開顔が見ていたドラマは当時のヒット作らしい『尋找回来的世界』。

小雷家村では、陳県長改め陳書記(かつての徐書記と同じく県長から県委書紀に昇格)を得つつ村の幹部による汚職防止などを目的として村内の企業のグループ化を進めていきます。雷東宝は更に村の再開発を名目に電線工場拡大のための資金を引き出します。そして借金問題で因縁があった江楊電線工場がライバル企業の冠亜グループに買収されると聞くと、自分が工場設備を買い取ろうと、グループの経営者の韓と接触。


ここでその韓に絡まれていた食堂の女将韋春紅を助け、お礼にと彼女が村まで東宝を尋ねてきたことで、東宝が彼女と再婚するつもりだと東宝の母に誤解されたりします。実は東宝の母親やチーム小雷家の面々も東宝を再婚させようと、再婚相手を見繕ったり裏で動いていたようですが…… 今回は東宝が工場の従業員も村で雇い入れることで江楊電線工場の設備買収に成功したあたりで幕。いつの間にか小輝が業務用にパソコンを使うようになり、東宝の愛車が自転車からバイクに変わっていることで時代の流れを感じます(ただ、東宝クラスだと自動車を持っていて当たり前という時代になっているようですが)。
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2019年2月に読んだ本

2019年03月01日 | 読書メーター
「連動」する世界史――19世紀世界の中の日本 (シリーズ 日本の中の世界史)「連動」する世界史――19世紀世界の中の日本 (シリーズ 日本の中の世界史)感想
開国から日清・日露戦争までの日本史を世界史の中に位置づける試み。1848年革命やクリミア戦争が東アジアに緊張緩和をもたらしたと見るなど、世界の他の地域での戦争や動乱が開国・維新の動きとどう結びついていたかなど、世界各地の動きと日本の動きを有機的に結びつけることに成功している。特に「東アジアのバルカン化」やボスニア・ヘルツェゴヴィナ併合と韓国併合との連動のように、東アジアとバルカンとを対比する視点が独特。
読了日:02月01日 著者:南塚 信吾

縄文時代の歴史 (講談社現代新書)縄文時代の歴史 (講談社現代新書)感想
「縄文時代」の生活・文化には時期差・地域差があり、単一の画一的な文化が長期間にわたって続いたわけではないという視点からの縄文時代史。クリの植栽・管理を農耕と位置づけられるかという話、極点に少ない人口によって担われた文化であるため、ある地域で一旦階層が成立しても階層社会が持続しないといったように、社会の複雑化が一直線に進行していったわけではないという話などを面白く読んだ。
読了日:02月03日 著者:山田 康弘

ファン・ボイ・チャウ: 民族独立を追い求めた開明的志士 (世界史リブレット人)ファン・ボイ・チャウ: 民族独立を追い求めた開明的志士 (世界史リブレット人)感想
日本では20世紀初めの東遊運動の主導者として知られるファン・ボイ・チャウだが、長い「余生」にあたる日本を出てからの動き(没年は1940年とのこと)や、中国の革命運動との関係、社会主義や儒教に対するスタンスといった思想面、についても詳述し、ホー・チ・ミンやヴォー・グエン・ザップら次の「革命世代」への継承を展望している。
読了日:02月04日 著者:今井 昭夫

近現代日本史との対話 【幕末・維新─戦前編】: 【幕末・維新─戦前編】 (集英社新書)近現代日本史との対話 【幕末・維新─戦前編】: 【幕末・維新─戦前編】 (集英社新書)感想
日本近現代史の展開をシステムの交替という視点から読み解く。前編となる今巻は幕末から1930年代までの国民国家の形成、帝国主義化の達成、全体主義化の過程を追う。「万歳」の誕生、文明化と衛生・不潔観との関係など、近代化と身体性を結びつける記述が印象的。
読了日:02月08日 著者:成田 龍一

江戸の思想闘争 (角川選書)江戸の思想闘争 (角川選書)感想
メインの贈与論をかました議論は正直江戸の思想という題材にあまりうまくはまっているように見えないのだが、日本が中国から漢字を借りたということに対して、本居宣長がそれを余計な借りだと考えていたという話は面白い。「漢意」を剥ぎ取っていけば日本固有の文化が見えてくるという宣長に対し、藤貞幹が、それは実は日本固有の文化ではなく韓から伝わった文化であると主張するが、それに対する宣長の反論に、彼の狼狽ぶりや中国と韓に対する異なる態度が見えるという話が、国学の闇の部分を掘り起こしているようで面白い。
読了日:02月10日 著者:山 泰幸

資治通鑑 (ちくま学芸文庫)資治通鑑 (ちくま学芸文庫)感想
『資治通鑑』の中から晋の智氏の滅亡、後漢末の党錮の禁、侯景の乱、安史の乱と、勢力・国家の滅亡や衰退に関係する四部分を講読する。各部分の典拠の問題に加え、随所でそれぞれの時代特有の語彙や語法の問題も指摘しており、『資治通鑑』の面白さとともにこれを読み通すことの難しさを伝える講読ともなっている。
読了日:02月17日 著者:司馬 光

「抗日」中国の起源 (筑摩選書)「抗日」中国の起源 (筑摩選書)感想
タイトルにある「抗日」中国や五四運動を主題とすると見せかけて、最終的には初等教育に力を入れたと日本と高等教育に力を入れた中国という話に収斂していくという、何だかよくわからない構成の日中交流論。「孔子の道」による徳育と目上の人間への服従を説く嘉納治五郎に対する楊度ら中国人留学生の反発など、辛亥革命の前後の日本側と中国人留学生との間のボタンの掛け違いの話を面白く読んだ。
読了日:02月17日 著者:武藤 秀太郎

君が代の歴史 (講談社学術文庫)君が代の歴史 (講談社学術文庫)感想
「君が代」は元来年寿を賀した歌であり、その対象は天皇に限ったものではなく、祝いの場での歌として近世まで連綿と受け継がれ、近代に入って「自然の勢い」により事実上の国歌としての地位を得たという主旨であるが、その主張通り「君が代」が原義をそう外さず伝承されてきたのならば、なぜこのような本が書かれなければならなかったのだろうか?解説で多少フォローはされているが、明治以後の「君が代」の展開にも触れられるべきであっただろう。
読了日:02月20日 著者:山田 孝雄

ナポレオン四代-二人のフランス皇帝と悲運の後継者たちナポレオン四代-二人のフランス皇帝と悲運の後継者たち感想
主人公はナポレオン1世と3世及びその息子たちだが、前史・後史含めて広くボナパルト一族氏となっている。1840年頃のフランス政界にはボナバルティスムは死んだという楽観論が広まっていたが、そこから民衆の大きな支持を得てナポレオン3世の政権が成立したこと、そしてその息子ナポレオン4世在世時まではボナパルト派がフランス政界で一定の勢力を保持していたことを踏まえると、現代史が過去の歴史となるには思いのほか長い時間を要するのだなと感じた。
読了日:02月22日 著者:野村 啓介

はじめての経済思想史 アダム・スミスから現代まで (講談社現代新書)はじめての経済思想史 アダム・スミスから現代まで (講談社現代新書)感想
アダム・スミスからハイエク、フリードマンまで、所有者が経済の主役から退き、新たに冨を託された者が主役となっていくという観点からの経済思想史。「革命家」としてではなく「所有」を問い直した者としてマルクスを積極的に評価し、フリードマンの市場による自由競争が差別問題などあらゆる問題を解決に導くという「市場主義」を厳しく批判しているのが面白い。
読了日:02月25日 著者:中村 隆之

渡来人と帰化人 (角川選書 614)渡来人と帰化人 (角川選書 614)感想
従来の帰化人・渡来人の用語の妥当性をめぐる議論は、いずれも現代人の立場から「われわれの祖先」をめぐるもので、日本への同化を暗黙の前提としてきたと批判。古代にあっては渡来人とは別個に、まず天智・天武の時代に日本型中華思想による世界観の中で、百済・高句麗の遺民として帰化人として位置づけられ、平安期には更に渡来商人が帰化人と位置づけられるようになったと論ずる。著者は更に尊王攘夷論や内地雑居論にまで話を広げるが、それには日本型中華思想の展開を追うことが必要になるだろう。
読了日:02月25日 著者:田中 史生

東アジア仏教史 (岩波新書 新赤版 1758)東アジア仏教史 (岩波新書 新赤版 1758)感想
中国・朝鮮半島・日本・ベトナムといった漢字文化圏での「漢字仏教」の展開の簡潔かつ良いまとめとなっている。全体的に東アジアの中での日本仏教の位置づけを意識した記述となっている。仏教経典の恋愛・性的描写の中国文学に与えた影響、隋の仏教復興と日本での仏教信仰開始の関係などを面白く読んだ。
読了日:02月28日 著者:石井 公成

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