博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『宮廷画師郎世寧』その1

2007年05月30日 | 中国歴史ドラマ
このドラマは以前に取り上げた中野美代子『乾隆帝』の中で紹介されていた作品ですが、何となく某ショップのサイトで検索してみたところ、安売りしていたのでついつい購入……

『乾隆帝』によると、このドラマは蘇立群の小説『郎世寧伝』(『宮廷画師郎世寧』)を原作としたもので、主役の郎世寧(カスティリオーネ)を演じるのはカナダ人の俳優大山(マーク・ロズウェル)。北京大学に留学して中国文学を専攻し、師匠について相声(漫才)の修行をしているとのことです。

全24話構成で、DVDパッケージではどういうわけか『康乾盛世秘史』というインチキくさいタイトルになっています。確かに話の都合上康熙帝・雍正帝・乾隆帝といった清朝皇帝の出番が多くなっているわけですが、日本の大河ドラマ『利家とまつ』や『功名が辻』を『太閤記』と称するようなもんで、いくらなんでもこれはないんじゃないかと…… というわけで以下、このドラマを原名の『宮廷画師郎世寧』のままで呼ぶことにします。

で、今回は第1~7話までを鑑賞。

康熙年間の末期に中国に渡り、画師として康熙帝に仕えることになった郎世寧ですが、康熙帝への献上品を盗賊に奪われたり、銀子をスリの少年に盗まれてしまい、おまけになぜか官憲に捕らえられてスリの少年ともども投獄されたりと、しょっぱなからトラブル続きです。しかしこの事件がきっかけでスリの少年は郎世寧ら宣教師とともに教会で暮らすことになります。この少年、以後ドラマのメインキャラになっていくようなんですが、どういうわけかちゃんとした名前が付けられておらず、郎世寧らは彼を単に「小弟」と呼んでます。エンディングのキャスト一覧でも役名は「小弟」となっていますね。

また主役の郎世寧がやたらと陽気なのが気になるところです(^^;) 彼はイタリアのミラノ出身ということですが、イタリア人→ラテン系→陽気という連想でこんなキャラにされてしまったんでしょうか。相棒の英国人宣教師で医術を身に付けている羅懐中の性格が暗めなので、余計に郎世寧の陽気さが引き立ってますね。

この郎世寧、写実性を重視する西洋絵画とはまるで異なる中国絵画に魅せられ、八大山人に流れをくむと思しき老画家に弟子入りしようとしますが……
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上海新天地リニューアル

2007年05月29日 | ニュース
昨日上海新天地から『CHAI』という雑誌が送られてきまして、この雑誌によりますと、難波の上海新天地がまたもやリニューアルしたようです。今まで7階にあった書籍・CD・DVD売り場が1階に移ったとのことですが、開店以来これが何回目のリニューアルなんでしょうか。最早年中行事と化した感がありますね(^^;)

DVD売り場は移転するたびに売り場が狭くなっているのですが、売り場面積と反比例して品揃えは逆に良くなっているような気がします。今回も品揃えがどう変わっているのか楽しみであります。また大阪に出た時にでものぞいてみますか。
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『大漢風』第34話

2007年05月27日 | ドラマ『大漢風』
劉邦一行は項羽側の追っ手から逃れる途中で戚姫と遭遇。後に劉邦の寵姫となり、呂雉に人彘にされちゃう人ですね。取り敢えずその日は彼女の実家に泊めてもらうことに。この戚姫にどういうわけか盧綰が一目惚れしてしまい、告白しようと彼女の部屋を訪ねてみると、既に劉邦と彼女が致している最中ではありませんか!あんた、どんだけ手が早いんですかっ!!

翌朝、一行は戚姫父娘と別れを告げて再び逃亡生活へ。劉邦は別れ際に戚姫と「必ずお前を迎えに来る」なんて約束をしてますが、その後の惨状を知る我々からすれば、このまま忘れてくれれば良かったのにと思うわけなんですけど(-_-;) 

そしてその後に車で逃亡中の劉邦が走行速度を上げるために二人の子供を捨ててしまおうとする鬼畜イベントが…… こうやって改めて映像で見てみるとやっぱり酷い話ですよね……
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『中原の虹』第三巻

2007年05月26日 | 小説
浅田次郎『中原の虹』第三巻(講談社、2007年5月)

四巻構成で第三巻に至ってもいまいち話の方向が見えてきませんねえ。
春児やトーマス・バートンら前作以来のキャラクターの出番を多くしたり、明末清初の話を盛り込んだりして話の焦点が定まらないのが原因なんでしょうけど。個人的には春児らの出番が削られてもいいので、張作霖一党の活躍をもっと読みたいところです。

話の方は袁世凱が死に、張作霖が奉天軍閥を確立するあたりで終わりそうですね。

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『包青天之八 狄青』

2007年05月23日 | 中国古典小説ドラマ
「狄青」(全5話)を鑑賞。

西夏との戦争で勲功を揚げた大元帥狄青は、仁宗の肝煎りで刑部尚書の娘の金蓮と結婚することになる。しかし新婚初夜に花嫁は何者かによって殺されてしまい、また狄青が西夏と通謀していたというダイイングメッセージを残していたため、狄青は花嫁の殺人犯・謀反人として捕らえられることになる。

これは実は西夏の刺客である霍天鵬・霍天雁の兄妹の仕業であった。西夏は強敵の狄青を失脚させたうえで、西夏の将軍として迎え入れようとしていたのである。狄青と旧知の包拯は彼を救おうと尽力するが、その間に霍兄妹は狄青の叔母である狄娘娘(八賢王の妃)を誘拐してしまう。このことを知った狄青は天牢から脱獄し、叔母を救出するために西夏へと向かう……

このエピソードの主役となる狄青は実在の人物で、やはり西夏との戦争に従事しております。今回戦闘シーンではこの狄青と、彼と行動をともにする十四娘がおいしい所を取っちゃっているため、展昭の見せ場はほとんどありません。というか展昭の出番自体がそんなにありません(^^;) 狄青の裁判も前半は娘を殺された刑部尚書と龐大師、王丞相の三人が裁判官を務めるため、我らが包大人も何だか影が薄いです。

西夏が舞台になっていることもあってかなり異色のエピソードなんですが、惜しいことに私の見たDVD版では字幕が付いていませんでした…… いきなり画面がワイドサイズになったり(といっても、もともと4:3の画面サイズだったものを、上下両端を切り取ってワイドらしく見せかけているだけっぽいですが)、今回のように字幕がなくなったり、不審な所が多いシリーズです(-_-;)

仕方がないので今回の鑑賞にあたっては、中文のあらすじサイトを参照させていただきました。なお、『包青天之八』ではあとひとつ「画中話」というエピソードが残っていますが、こちらはDVDが私のパソコンでは読み込んでくれないうえに(ただし家族のパソコンで試してみたところ、ちゃんと読み込めました)、やっぱり字幕がないので、またの機会に鑑賞ということにしたいと思います。
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『漢字テキストとしての古事記』

2007年05月22日 | 日本史書籍
神野志隆光『漢字テキストとしての古事記』(東京大学出版会、2007年2月)

『古事記』は単純に古い伝承や古語を伝えた書として見ることは出来ない。読者の側が漢字によって書き起こされたテキストを読解することで、現在の我々が何となく抱いているような神話の世界観が形成されてきた。……そういった主旨の本です。

その前提として『古事記』が書かれる前後の日本では漢字や漢籍がどの程度、あるいはどのように受容されていたかということをかなり詳しく追っていますが、漢文の訓読が日本語の語彙や文体の形成に大きな影響を与えたという指摘があったりして、このあたりの話が結構面白いですね。

『古事記』の中のエピソードの新解釈としては、従来同母妹の軽大郎女との恋愛が露見したことによって太子の地位を追われ、伊予に流されたとされてきた軽太子の話を、軽太子はあくまでも穴穂御子(安康天皇)との権力闘争に敗れたことによって太子の地位を追われたのであり、軽大郎女との恋愛はこのこととは無関係で、また同母兄妹同士の恋愛は最後まで露見しなかったとする読み方を提示しています。

語り口がやわらかい割には内容が込み入ってますが、『古事記』に興味のある人にとっては何かしら得るところのある本だと思います。
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『大漢風』第33話

2007年05月20日 | ドラマ『大漢風』
劉邦が彭城を奪い取ったと知るや、斉へと遠征していた項羽が三万の軍勢を率いて彭城へと帰還し、たちまち城を取り戻します。虞姫も呂雉に追われたり、盧綰に捕らえられて劉邦のもとに連れて行かれたりと散々な目に遭いましたが、何とか項羽と再会を果たします。

虞姫は自分が二度と子供の産めない体になってしまったと知り、衝撃を受けますが、そんな中君児が劉邦の子供を出産。よりによって男児です。しかも項羽はその子を自分と虞姫とで引き取って育てることに…… ホントにこんな展開にしてしまって後々どうするつもりなんですかっ!?(^^;)
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『包青天之八 烏盆記』

2007年05月19日 | 中国古典小説ドラマ
『烏盆記』(全3話)を鑑賞。

行商人の李浩は妻子のもとへと戻る途中で、積み荷に目のくらんだ陶工の丁千に殺されてしまいます。李浩の遺体は燃やされて灰となり、更に陶土と混ぜ合わされて烏盆(黒い鉢)にされてしまいますが、彼の魂はこの烏盆に乗り移り、たまたま烏盆を買い求めた王進に自分を殺した犯人を処罰するよう包拯に訴え出て欲しいと要求します。

王進は烏盆を抱えて開封府にやって来ますが、包拯は王進の話を信じずに訴えを取り下げさせてしまいます。一方、李浩の妻子も彼が何者かに殺されてしまったことを察して開封府に訴え出ますが、殺人の証拠がないということでやはり訴えを取り上げてくれません。しかし犯人の丁千の方は李浩の家族や王進をも始末してしまおうと魔の手を伸ばし……

このエピソードは『三侠五義』に元ネタがありますね。(あるいは更にさかのぼって『包公案』がネタの源流なのかもしれませんが。)

李浩は殺された後も割合自由に人々の前に姿を現すことができますが、門神に邪魔されて開封府に入れないとか、陽の気が強すぎて自分の陰気が削がれてしまうので幼い息子や包拯には触れられないとか、難儀なことこの上ない幽霊です(^^;) この李浩がどのようにして家族や王進を悪漢から守り、包拯と対面を果たすのでしょうか。
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『パッチギ』

2007年05月19日 | 映画
昨晩は日テレ系で放映の『パッチギ』を見てました。

メインの日本人高校生と在日朝鮮人の女の子との恋愛もさることながら、脇役たちの行動も60年代の空気を映し出しているようで面白かったですね。

軟派な男子高校生だったのが世界情勢に興味を持つようになり、ベトナム反戦活動に関わるようになった主人公のツレ。世界中を旅してヒッピーになってしまったオダギリジョー演じる大学生。「地上の楽園」と宣伝されている祖国北朝鮮への帰還を夢見る朝鮮学校の番長。『毛語録』を片手に左翼的な理想を生徒に熱く語る主人公の担任教師…… 最後の担任教師は監督一流のギャグだと信じたいですが(^^;)

在日朝鮮人問題については、「結局拳を交えるか××を交えないと互いにわかりあうもクソもないんじゃ!」と言いたかったんでしょうなあ。
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『天皇たちの孤独』

2007年05月17日 | 日本史書籍
繁田信一『天皇たちの孤独』(角川選書、2006年12月)

摂関政治の全盛期を、藤原氏ではなく天皇を中心に見ていこうという主旨の本です。

実力者の藤原兼家と対立し、一人息子の一条天皇に生涯で数えるほどしか会わせてもらえなかった円融天皇。その妃で兼家の娘でありながら(というよりは兼家の娘であったがために)円融天皇に疎まれて皇后になれなかった東三条院(藤原詮子)。藤原兼家らの姦計にはまって若くして出家・退位させられ、憂さ晴らしに猟色に耽った花山天皇。藤原道隆・伊周父子や藤原道長に振り回され、愛妃・藤原定子と悲しい別離をすることになった一条天皇。その一条天皇の妃で、藤原道長の娘でありながら父親に従順ではなく、「賢后」と称えられた上東門院(藤原彰子)。道長にいいようにされる先代一条天皇の姿を見せつけられつつも、道長との対立の道を選んだ三条天皇。

彼ら彼女らの事績を辿っていくことで、名目的には最高権力者でありながら実際にはその権威・権力は藤原兼家・道長ら「奸臣」に踏みにじられ、更には信頼できる側近がおらず、愛する妃や子供を思うように処遇できずに寂しく短い生涯を送らざるを得なかったという当時の天皇の実像が見えてきます。「政治の道具」とはこういうことをいうのかと実感できる本です……
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