博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『精忠岳飛』その7

2014年02月24日 | 中国古典小説ドラマ
『精忠岳飛』第34~39話まで見ました。

兀朮が建康に入城すると杜充はさっさと金に降伏。臨安の高宗も臨安から更に明州へと退避します。ということで行き場も食糧も無くなってしまった岳飛たちですが、忠義社の紅一点素素が実父の素封家張大年を説得し、張大年の地元の宜興に岳家軍が迎え入れられることに。ここで昵懇だった上官の杜充に置いてけぼりにされた王燮も後輩の岳飛の部将となります。しかし配下になったのはいいとして、「故郷に帰りたい」と泣いていた兵卒が、除隊を許されて岳飛から別れの印に酒を振る舞われると感激して除隊をとりやめ、みんなで「不取中原、誓不還郷!」(中原を取り戻さないと故郷には帰らないぞ!)と掛け声を揚げる岳家軍のブラックなノリに着いていけるのでしょうか(^^;)

そして宜興に落ち着いたと思ったら、ここで凄腕の槍の使い手高寵が登場。彼は盲目の妻楊氏(『ジャクギ』でおなじみ劉詩詩が演じてます)と多くの流民たちを養っており、岳家軍から兵糧を強奪したり、それでも足りないと岳飛に食糧を借りに行ったりしてます。で、食糧のお返しというわけか、「その5」で山賊曹成の手の者に捕らえられた後、紆余曲折を経て金軍の捕虜になっていた岳飛の妻李孝娥と安娘を救出。


この高寵、戦争となるとなぜか画像のごとく仮面を身につけるのですが、中国歴史物で仮面の将軍と言えば……うっ頭が……

金に降った後、兀朮の嫌がらせで辮髪にさせられてしまった杜充ですが、岳飛のスポンサー張大年を捕らえて人質にし、岳飛らをおびき寄せます。そしてその間に宜興では杜充に呼応して王燮が本陣を制圧。やはり岳家軍のノリに馴染めなかったようですw

しかし状況を知った高寵が援軍を差し向けて事なきを得ます。ここで高寵一党が岳家軍の一員となりますが、岳飛の留守を守っていた副将の王貴が金側の計略に引っかかって軽挙妄動し、王燮の謀反を許したということで、岳飛が斬首を命じたり、周囲の取りなしでようやく棒叩き百回に刑が軽減されたりする様子を目の当たりにしてドン引きしております。こういう展開を見てると、岳飛が意識の高いブラック企業の経営者に見えてきてしかたがないんですが……

しかしその高寵も岳家軍に加入した途端に金軍との戦いであっさり戦死。高寵夫妻はどうも特別出演的な扱いみたいですね。そして時は流れて建炎四年、岳飛は朝廷より宜興方面の統帥に任じられ、次々と軍功を挙げていきますが……

韓世忠ら他の有力武官が敢えて本心ではしたくもない派手な贅沢をして高宗の警戒心を和らげる努力をする一方で、岳飛一人が空気を読まずに倹約に励んで声望を高めていっているあたり、順調に自分で自分の死亡フラグを立てていっているなと。
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『精忠岳飛』その6

2014年02月16日 | 中国古典小説ドラマ
『精忠岳飛』第28~33話まで見ました。

岳家軍が兀朮の鉄浮屠部隊を撃退すれば黄河の堤防は決壊させないという杜充の言葉を信じ、金軍と激戦を繰り広げる岳飛ですが、合戦の最中に杜充が無慈悲に決壊を指令。宋軍も金軍も黄河の水に飲み込まれ、周辺に暮らす人民にも甚大な被害が及びます。

しかし金軍は態勢を整え直し、なおも南下を図ります。それを知った高宗は建康から臨安へと退避を決意。それに合わせて杜充も駐留地の汴京を金軍に明け渡して建康の守備にまわることになり、岳飛も渋々付き従うことに。ここで建康からの退避時に秦檜の馬車が事態の説明を求める民衆に取り囲まれ、「あっ!あっちに汪伯彦の馬車が!」と、説明責任を師匠の汪伯彦に押っつけたりしておりますw そして妻に「自分の先生なのにあんなことしていいの?」と問われると、「汪先生は三代の皇帝に仕えた元老だからな。こういう時に責任を取る義務があるのだよ。(キリッ 」などと答える始末…… そしてそれが原因で汪伯彦は民衆に囲まれたまま臨安への退避がかなわず、高宗からも罷免されてしまいます(^^;)

しかし高宗の方も、日頃の近臣の優遇や臨安への退避に不満な武官の苗傅・劉正彦によって監禁され、退位を迫られます。苗・劉の2人は梁紅玉を通じて戦地にいる韓世忠を味方に引き入れようとしますが、韓世忠は謀反に同調すると見せかけて各地の主だった武将に勤王を呼びかけます。岳飛も杜充の名代としてその呼びかけに応じ、韓世忠と連繋して高宗の救出に成功。韓世忠夫妻と岳飛の忠節を称える高宗ですが、心の中では武官への深刻な不信感が芽生えていたのでした。そしてその不信感を煽り、金との和議へと持ち込もうとする秦檜。知勇に富んだ不遇の皇子という序盤の描写は一体何だったのか……

そして建康への進軍を控えた金軍では、兀朮が宋の捕虜の中から宇文虚中を見出します。兀朮夫妻の家庭教師となって漢語や象棋を教えたりしていますが、兀朮に惹かれつつも宋への望郷心や忠誠心から「べ、別にあんたたちが好きってわけじゃないんだからね!」という態度を採ってしまうツンデレキャラの模様。

一方、金軍の侵攻を察知した杜充は建康を明け渡そうと画策しますが……
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『精忠岳飛』その5

2014年02月08日 | 中国古典小説ドラマ
『精忠岳飛』第22~27話まで見ました。

金国では粘罕を総大将として南進を開始。高宗は恐れをなして帰徳から建康へと遷ります。我らが岳飛は激戦のすえ水関に攻め寄せる粘罕の軍を打ち破り、敵軍の撃退に成功。このあたりのアクションシーンはそこそこ見応えのある出来に仕上がっていますが、一方でなぜ圧倒的劣勢の岳家軍が金軍を打ち破ることができたのかイマイチよくわからんのですよね。これはこの場面に限った話ではないのですが……

金国では水関の戦いで負傷した粘罕にかわり、四太子兀朮が総大将に。後年岳飛の好敵手となる(はずの)彼ですが、劇中の台詞でも岳飛をライバル認定しております(^^;)



で、その岳飛は戦いの後に皇陵の守備と功臣たちを称えるための凌煙閣の造営に当たることに。そして金との前線に近い湯陰の地で暮らす家族を皇陵に呼び寄せます。ここで楊再興が岳飛一家の世話役となりますが、かつて山賊曹成の先鋒であった楊再興が岳飛の弟岳翔を死に追いやったという因縁があるので、岳飛の母はなかなか楊再興に心を開きません……

その間に兀朮は胙城を攻め、宗沢を援軍としておびき寄せ、更に岳飛に敗れた後に金国に逃亡していた曹成に皇陵を奇襲させます。宗沢からの支援要請と皇陵奇襲の報を受けた岳飛は、取り敢えず自らは宗沢救援のために胙城へと向かうこととし、皇陵にいる家族の保護は楊再興に一任します。が、岳飛が駆けつけた時には宗沢は既に敵襲により重傷を負って虫の息。楊再興の方も旧主の曹成を誅殺して岳母らの救出に成功するも、岳飛夫人の李孝娥と娘の安娘は曹成の残党に捕らえられ、金国へと護送されてしまいます。

そして救出された宗沢も「過河!」(黄河を渡れ)という言葉を残して陣没。かつての都の汴梁で葬儀が営まれます。その葬儀の場で高宗皇帝は宗沢の副将杜充を新たな元帥に任命。かねてから杜充とは距離のあった岳飛は前線から外されてしまいますが、その間に澶州も金軍によって陥落。焦った高宗は建康から臨安への遷都を検討する一方で、兀朮率いる「鉄浮屠」を沈めるために黄河の堤の決壊させようという杜充の献策を受け入れることにしますが……

ということで尊敬する上官の死、家族との離散と、岳飛にとっては辛い展開が続きます……
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2014年1月に読んだ本

2014年02月03日 | 読書メーター
年明けから試験的に読書メーターを導入してみました。ということで先月(2014年1月)読んだ本。今後もこんな感じで月1ペースでまとめてみることにします。

2014年1月の読書メーター読んだ本の数:6冊読んだページ数:1445ページナイス数:4ナイス

戦国大名: 政策・統治・戦争 (平凡社新書)
戦国大名: 政策・統治・戦争 (平凡社新書)感想戦国大名の家臣団・行政機構・流通政策等々を、織豊期以後の近世大名との連続性を念頭に置いた上で解説する。戦国大名と近世大名の研究はこれまで分離して行われてきており、今なおその影響が強く残っているとのこと。戦国大名のあり方を仔細に検討すると、信長や秀吉の政策が画期的・先進的なものであったとは言えないということになるようだ。読了日:1月27日 著者:黒田基樹

渡来の古代史  国のかたちをつくったのは誰か (角川選書)
渡来の古代史 国のかたちをつくったのは誰か (角川選書)感想同じ著者が中公新書で刊行した『帰化人』の続編というか補編。秦氏や漢氏などの渡来氏族と、漢字文化や儒教・仏教・道教など彼らのもたらした文化について述べる。「帰化人」という言葉を用いないのは、帰化という言葉が中華思想の産物であることや、そもそも特に古い時期には帰化すべき統一国家が存在しない(=戸籍が無い)からであると言う。 メモ:『張先生文集』巻12及び『全唐文』巻287に、天平5年に遣唐副使中臣子代に与えられた唐帝の勅書が収録され、「勅日本国王主明楽美御徳」の句が見える。読了日:1月24日 著者:上田正昭

藤原道長「御堂関白記」を読む (講談社選書メチエ)
藤原道長「御堂関白記」を読む (講談社選書メチエ)感想『御堂関白記』を自筆本・古写本の図版と照らし合わせて読んでみようという主旨の本。執筆時のスペースの取り方や裏書の方針などについても触れており、単に活字の翻刻・訳本を読むのとは違った面白さがある。しかし自筆本の紙背の一部に後世の別の日記の抜書があるという指摘には驚いたが…読了日:1月19日 著者:倉本一宏

勝海舟が絶賛し、福沢諭吉も憧れた  幕末の知られざる巨人 江川英龍 (角川SSC新書)
勝海舟が絶賛し、福沢諭吉も憧れた 幕末の知られざる巨人 江川英龍 (角川SSC新書)感想基本的に顕彰目的の著述になってしまっているのが残念。江川氏の系譜を源満仲から辿る必要は無いだろうと…読了日:1月19日 著者:江川文庫/橋本敬之

ニクソンとキッシンジャー - 現実主義外交とは何か (中公新書)
ニクソンとキッシンジャー - 現実主義外交とは何か (中公新書)感想ニクソン&キッシンジャー外交のうち、ソ連とのSALT締結・ニクソン訪中・ベトナム撤退を中心に扱う。実はニクソンはもちろんキッシンジャーも、毛沢東と周恩来・林彪らの確執など当時の中国の内情に対しては理解が不足しており、訪中成功は結果オーライ的なものであったこと、そして「現実主義」外交と言われつつも発想が冷戦の枠組みにとらわれていたことなど、その限界についても論じる。読了日:1月19日 著者:大嶽秀夫

黒船来航 日本語が動く (そうだったんだ!日本語)
黒船来航 日本語が動く (そうだったんだ!日本語)感想幕末の諸外国との条約の作成・翻訳を通じて日本語の文体が変化していくことを論じる。その過程で用いられる文体が「候文」から次第に「べし文」へと移行していくということだが、この「べし文」というのは要するに漢文訓読調の文体ということでは?読了日:1月19日 著者:清水康行
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