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博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『琅琊榜』その4

2015年12月28日 | 中国歴史ドラマ
『琅琊榜』第19~24話まで見ました。

新邸に靖王府への秘密通路を設けて以来、お互い行き来し合い、梅長蘇はすっかり帝位を狙う決意を固めた靖王の軍師ポジに収まってます。ただ、梅長蘇と靖王との関係は秘密にされ、梅長蘇は世間的には誉王の軍師の一人と見なされています。

そんな中、南楚国からの使者御一行様が梁国に到来。南楚皇族の宇文暄・宇文寧の従兄妹に、宇文寧の武術の師岳秀沢の三人組です。遏雲派の岳秀沢は天泉山荘荘主で蕭景睿の父の一人卓鼎風とライバル同士の模様。

そしてその蕭景睿の誕生会ということで、梅長蘇は寧国侯府にお呼ばれされますが、この誕生会がとんだ鴻門宴に…… 蕭景睿の保護者である謝家・卓家をはじめ、親友言豫津、蒙摯、懸鏡司(梁帝の特務機関)の女掌鏡司夏冬、妓楼・妙音坊の名妓宮羽(実は江左盟の一員)といった面子が集い、和やかな雰囲気の宴の中に、南楚の使者三人組が乱入。岳秀沢と卓鼎風とが以前からの決闘の約束を果たすべく、剣を交えることに。

で、宇文寧が、蕭景睿が実は自分の兄であると爆弾発言。要するに景睿の母莅陽長公主が謝玉と結婚する前に、人質として梁に滞在していた宇文寧の父・南楚の晟王宇文霖と恋仲に→宇文霖との仲を危ぶんだ皇太后(故人)の後押しで、謝玉が長公主に怪しげな薬を一服盛ってムリヤリ結婚→謝玉は生まれた男児(すなわち蕭景睿)が宇文霖の種と察しているので、寺院での出産時に、宮羽の父に赤子の殺害を命じる→しかしたまたま寺院に居合わせた卓鼎風夫妻の子しか殺せないという結果に→口封じに宮羽の父を殺害→その後、蕭景睿が謝家・卓家共同の子ということで卓家とのつながりができたので、事実を隠して天泉山荘を手駒として使うことに…… という流れになった次第。


思わぬ出生の秘密が明かされてしまった景睿。古装のイケメン枠でお馴染み程皓楓が演じてます。


そしてこちらが寧国侯謝玉。

取り敢えず今夜の一件の口封じを図ろうと、寧国侯府の私兵や自らが管轄する巡防営を動員する謝玉ですが、そこは梅長蘇が事前に手を回し、誉王の軍隊が寧国侯府を包囲。というか、南楚国の三人組の乱入などもすべて梅長蘇が仕組んだことなのですが (^_^;) そして侯府での攻防の末に一同は無事に侯府を脱出。

これまでの悪事が露見したということで投獄された謝玉ですが、本人は新任の戸部尚書沈追暗殺未遂の一件しか罪状を認めず、後はすべて否認。そこへ懸鏡司の首尊(ボス)で夏冬の師父・上司にあたる夏江が都に帰還。この夏江が謝玉とつながりがあると睨んだ梅長蘇は、二人の離間を謀り、牢内の謝玉から、夏江が梅長蘇自身と父母郎党を破滅に追い込んだ「赤焔案」に関与していたとの発言を引き出します。

まず13年前の当時、謝玉が夏江に赤焔軍の部将聶鋒(夏冬の亡夫でもある)の書簡を入手させる→李重心に聶鋒の筆跡で、林燮(赤焔軍の総大将・梅長蘇の父)が謀反をおこそうとしているという告発文を偽造させる→夏冬に届けさせ、赤焔軍謀反を信じさせ、梁帝に上奏させる→謝玉が聶鋒を殺害、口封じに李重心も、夏江を通じて卓鼎風に殺害させる→謀反人ということで赤焔軍を討伐→母が林家出身の祁王も謀反を疑われ自害という流れだった模様。梅長蘇の手配で、自分と夫が利用された形になる夏冬と、祁王を慕っていた靖王も牢内壁越しでその発言を傍聴。しかし謝玉の発言はあくまでその場限りのオフレコという扱いです。

結局謝玉は本来なら斬罪のところ、太皇太后が亡くなり、その恩赦ということで流罪に減刑。流刑地へと赴く前に、「赤焔案」についての一切合切を記した密書を妻の長公主に託します。そして靖王は、梅長蘇の前で赤焔軍と祁王の名誉回復をはかると宣言し……

ということで寧国侯府の攻防戦、「赤焔案」に関する告白と、全54話中のまだ半分にも達していないのに、ストーリーの核心部分に関わる大きな見せ場が到来。しかし卓鼎風と岳秀沢との絡みなんかを見ていると、やはりこのドラマは武侠物なのではないかという疑惑がw
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『琅琊榜』その3

2015年12月22日 | 中国歴史ドラマ
『琅琊榜』第13~18話まで見ました。

除夕(年越し)の祭礼を控えての皇后の急病は、毒を一服盛られたせいであることが判明。梅長蘇は、皇后の急病も、また少し前から懸案になっていた、闇取引の火薬が何者かに奪われた件も、犯人は蕭景睿の親友言豫津の父親言侯であると当たりを付け、当人と密談。

言侯は、梁帝・林燮(梅長蘇の亡父)の幼馴染みで、梁帝を皇帝に押し上げた功の一人臣なのですが、林燮が謀反の罪を着せられて族滅し、初恋の人で梁帝に嫁いだ宸妃や彼女の生んだ祁王も死に追い込まれたことで梁帝の暗愚っぷりに絶望し、年越しの儀式に用いる祭台に爆薬を仕掛けて梁帝の爆殺をはかり、その際に実妹の言皇后を爆殺から免れさせようと、儀式に出席できないように毒を盛ったという次第。しかし梅長蘇の説得を受け、爆殺を思いとどまります。

そして大晦日の晩。梁帝は各王侯の邸宅に儀式で用意された配膳を送付させますが、その使者が何者かに斬殺されるという事件が発生し、使者の護衛を担っていた禁軍大統領(近衛隊長)の蒙摯が責任を問われます。実はこれ、禁軍大統領の地位を狙い、蒙摯の失脚を図った寧国侯謝玉が、姻戚の天泉山荘の卓父子に命じておこさせた事件で、他にも内宮で放火事件をおこさせ、内宮を統括する言皇后の権威失墜を図ったり、新任の戸部尚書沈追の暗殺を図ったりと、事ごとに暗躍します。

これに胸を痛めたのが、寧国侯府・天泉山荘共同の子である蕭景睿。彼は、謝玉に嫁いだ母親の莅陽長公主が出産時に寺院に控えていたのが、たまたま卓家の妊婦と一緒になり、ともに男児を出産したところ、寺院に侵入した賊により片方の赤子が殺害され、更に生き残った方の蕭景睿が謝家・卓家どちらの赤子かわからなくなったので、梁帝の裁定により謝家・卓家共同の子となり、国姓と梁帝の皇子の輩行の「景」字が与えられたという複雑な生い立ちを背負っています。

当然謝玉は、自らが推す太子と対立する誉王派の排除も図り、誉王派の吏部尚書が、殺人罪で捕まった息子を助けるために、同じく誉王派の刑部尚書と結んで、容貌の似た別の囚人とすり替えて死罪を免れさせようとしたのを察し、(実はその情報を謝玉の身辺にリークしたのは梅長蘇なのですが…)それを明るみにして吏部・刑部尚書を失脚に追い込みます。一方の誉王の方も、太子が火薬の闇取引に手を出していたと知るや、太子派の火薬庫を爆破させ、事を大事にしてイヤでも父帝の耳に入るようにして太子を謹慎に追い込んだりと、負けてはいません。

しかし新任の刑部尚書に靖王が推薦した人物が抜擢され、政府高官にはじめて靖王派の人物が入ったというあたりで次回へ。
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『琅琊榜』その2

2015年12月14日 | 中国歴史ドラマ
『琅琊榜』第7~12話まで見ました。

梁国の六部のトップや、寧国侯など軍功により爵位を得た家は、すべて太子派でなければ誉王派ということで、靖王のために、彼らを一人ずつ失脚させていこうと図る梅長蘇。なぜ靖王に肩入れするかと言うと、梅長蘇すなわちかつての赤焔軍の若元帥・林殊の親友だからなんですね…… ただ、靖王は梅長蘇が林殊であることに気付きません。現時点で宮廷で彼の正体を知る者は、彼の兄貴分の軍人蒙摯のみ。


これまた武侠物でお馴染み陳龍が演じてます。

そんな中、居候先の寧国侯府から引っ越しのため、あちこち物件を当たっていた梅長蘇らは、かつての豪商張晋の屋敷跡の枯れ井戸から、十数名の女性の白骨死体を発見。この「蘭園案」により、張晋の後ろ盾となっていた太子派の戸部尚書・楼之敬が失脚。

かと思えば、誉王派の慶国公が領民の土地の兼併を強引に進め、告発された「浜州案」では、梅長蘇はもっともらしい理屈を並べて誉王に慶国公を見捨てるよう助言。この「浜州案」の捜査を梁帝に命じられたのが靖王なのですが、梅長蘇の裏工作も知らず、「無辜の民の土地を奪うなどけしからん」と、ありのままに慶国公を処断。この人、もしかしたら融通が利かないとか頑固を通り越して、相当アカン人なのではないかという疑惑が……

慶国公の処断は梁帝の心にも叶う措置だったのですが、なぜか靖王ではなく、弟をバックアップしだけの誉王にお褒めの言葉と褒美が。靖王の置かれた境遇はこの世の理不尽の縮図みたいになってますね……

この間に梅長蘇が靖王府の隣の屋敷に引っ越しを完了し、江左盟のスタッフを呼び寄せます。で、そうこうしているうちに年末となり、毎年恒例の宮廷の年越しの祭礼で、太子が父帝と母妃とともに儀式を執り行うのに、生母の越氏が出席できないのでは具合が悪いと、太子派の礼部を中心に越氏の復権を画策。これに対し、梅長蘇は祭礼に出席すべきなのは太子の嫡母たる皇后であり、生母の越氏ではないと難癖をつけろと誉王側に入れ知恵します。

蒙摯「いや、しかし今まで毎年祭礼には越氏が出席してたし(困惑)」
梅長蘇「それは今まで越氏が皇后に並ぶ地位にあったからだろう?今年に関してはそうじゃない。だからこれが礼部の落ち度ということになる。」

いまひとつ事情が飲み込めないのですが、去年までは越氏が出席しても礼制上文句のつけようがなかったようです。それで太子派・誉王派双方が御用学者を招聘し、越氏の出席を認めるか否か公開の場で議論することになるのですが、梅長蘇が林殊時代の恩師の縁を頼って隠居していた大学者の周玄清を呼び寄せたことから、論争は誉王派の勝利、太子派の礼部の力を削ぐことに成功します。こういうささいな礼制上の問題が政治問題に発展するのは王朝時代の中国っぽくていいですね。このドラマはこういう所がよくできています。

ここで霓凰郡主が、梅長蘇の正体がかつての恋人林殊であることに気付いてしまい、さすがに隠し通せないと、梅長蘇もそのことを認めます。序盤であっさり元カノに正体がバレるあたり、名探偵コナンとは違いますね (^_^;) これで話が一区切りつくのかと思いきや、大晦日の祭礼に出席予定だった皇后が急病に倒れたという情報が……
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『琅琊榜』その1

2015年12月03日 | 中国歴史ドラマ
中国で今年一番の話題作となった『琅琊榜』を見始めました。今回は第1~6話を鑑賞。

舞台となるのは架空の南朝・梁。実在の王朝名で架空というのもおかしな話ですが、梁の武帝蕭衍に相当する人物が蕭選と仮名になっていたり、周辺の諸国や勢力が仮名になっていたりするんですね。

本作の主人公となるのは、すぐれた人物をランキングする「琅琊榜」でトップにランクインしている、江左盟の宗主梅長蘇。しかしてその正体は、12年前の「赤焔の案」で父親ともども梁帝から謀反の罪に問われ、崖から落ちて死んだはずの林殊なのでした。いきなり崖落ちから始まるということで不安が隠せません (^_^;)


梅長蘇を演じるのは、古装劇ではお馴染みの胡歌。天下一の知謀の持ち主という設定。

その梅長蘇が更に蘇哲という偽名を用い、たまたま知り合いとなった寧国侯府の蕭景睿を頼って都・金陵へと入ります。時に宮廷では越貴妃の所生の太子と、言皇后に養育された誉王とが蕭選の後継の座をめぐって暗闘を繰り広げておりました。そして雲南穆王府の小王爺の姉で、実質的な当主の霓凰郡主の夫を選ぶ比武招親が開催されることに。


本作のヒロイン霓凰を演じるのは、これまた古装劇ではお馴染みの劉涛。武勇にすぐれ、梁国の南方の防衛を担っており、彼女の夫は穆王府の強大な兵力を入手することになるので、その夫の選定に梁帝も気を揉んでいます。林殊とは許嫁同士でしたが、梅長蘇は「赤焔の案」以来整形を施して容貌が一変したようで、彼がかつての許嫁とは気付きません。

その比武招親で北燕国が雇った勇士百里奇が勝ち進み、「このままでは霓凰→穆王府の兵力が北燕のものになる!」と焦る梁帝ですが、そこで梅長蘇がの子三人に「凌虚剣陣」を指導し、見事百里奇を撃破。霓凰の「でもあんな子供たちが歴戦の勇士に勝てたのが信じられない」というツッコミに対して、「ああ、百里奇は江左盟のメンバーなんですよ」と、さらりと百里奇の存在自体が「仕込み」であることをばらす梅長蘇。これからこういうきたないなさすがな展開が繰り広げられることになるんでしょうか (^_^;)

この間に太子と誉王がそれぞれ梅長蘇を幕僚にしようと画策しますが、梅長蘇が目を付けたのは、母の身分が低く、梁帝からも疎んじられている靖王。


今の時点では梁帝から疎んじられている事情は明らかにされていませんが、「赤焔の案」の一件で死に追い込まれた異母兄の祁王と仲が良かったことが関係している模様。

そして穆王府の兵力を狙う越貴妃が、霓凰を招待して怪しげな薬を盛り、自派の司馬雷とムリヤリ男女の関係にさせてしまおうとしますが、陰謀を察知した莅陽長公主から梅長蘇に伝えられ、彼の差配で阻止され、梁帝の裁定に持ち込まれることに。結局越貴妃が嬪へと格下げされ、太子にもお咎めが降ります。莅陽長公主は梁帝の妹で重臣の寧国侯謝玉の妻、梅長蘇を客分として遇する蕭景睿の実母にあたりますが、この過程でかつて夫の寧国侯と出会った際にも同じ薬を盛られたと気付いてしまいます。また、蕭景睿の出生にも複雑な事情があるようですが……?

ということで、序盤から伏線が張り巡らされた重厚な歴史大作として高い評価を得ている本作ですが、崖から落ちて死んだ人はいませんの場面から始まり、比武招親、剣陣で勇士を撃破する場面、怪しげな薬を盛られるヒロイン、はたまた黒覆面の集団による襲撃の場面ありと、各話に盛り込まれた要素を拾い出していくと、実は武侠ドラマなのではないかという疑惑が捨てきれませんw
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2015年11月に読んだ本

2015年12月01日 | 読書メーター
東南アジア 多文明世界の発見 (興亡の世界史)東南アジア 多文明世界の発見 (興亡の世界史)感想Nスペ『アジア巨大遺跡』を見て興味が出てきたので、種本のひとつと思しき本書を読む。番組では食料に恵まれ、宗教的に徳の深い王が治める地上の楽園のように描かれていたアンコール王朝だが、実際は王位の世襲が確立されていないので、王の代替わりごとに政争がおこり、血縁の力に頼れない新王は都城・王宮・寺院の建造によって王としての徳を演出し、うっかりライバルの新王候補を支援してしまった世襲の王師がその職権を取り上げられるという状況だった模様。その他アンコール・ワットを見た江戸初期の日本人森本右近太夫の話題もあり。読了日:11月1日 著者:石澤良昭

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政治のことば――意味の歴史をめぐって (講談社学術文庫)政治のことば――意味の歴史をめぐって (講談社学術文庫)感想古代の「ヲサム」「マツリゴト」から近現代の「統治」「権利」まで、日本語の政治に関する語彙を追うことによって、日本の為政者の政治に対する意識を探っていく。保立道久氏の解説にある通り、日本では「権利」という言葉に恣意的な利益の主張という悪いニュアンスが込められ、それと対になる「義務」が正しい務めというニュアンスが込められ、現代でも「権利には義務が伴う」などという言葉が一種の脅し文句として通用している状況からすると、政治に対する意識の変革はまず「名を正す」ところから始めるべきなのかもしれない。読了日:11月7日 著者:成沢光

封建制の文明史観 (PHP新書)封建制の文明史観 (PHP新書)感想日本での「封建制」という用語やその位置づけ、評価の変遷を簡潔によくまとめていると思うが、「封建」の語の由来となった中国の封建制や郡県制との比較に関してはあまり言及されていないのが残念読了日:11月9日 著者:今谷明

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世界の辺境とハードボイルド室町時代世界の辺境とハードボイルド室町時代感想『謎の独立国家ソマリランド』の高野秀行氏と『喧嘩両成敗の誕生』の清水克行氏による対談集。高野氏の方も歴史学の素養があるということで、歴史学とはどういう営みかということがいろんな角度から語られている。カーの『歴史とは何か』もヘロドトスの『歴史』も出てこないが、良質の史学概論という趣きがある。読了日:11月28日 著者:高野秀行,清水克行
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