博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

最近見てるドラマ(2023年11月)

2023年11月04日 | 中華時代劇
『田耕紀』
学費に困っている女子学生がバイト代目当てにVRゲームのテストプレーに応募し、南宋時代の富農の家の三男の娘・連蔓児に転生。一千金を稼ぐというミッションを課せられるが、祖父母以下一癖も二癖もある同居の家族に振り回され、郷紳の家の息子との婚約と見せかけて人身御供にさせられそうになったり、カネと食いもんをめぐってみみっちい争いを繰り広げたりします (^_^;;) そして水害の被災民と称する青年・沈諾と出会い、彼も連家で暮らすことになりますが、これがどう見てもカタギの者ではなく…… 

ということで、最初の印象は中華版サンシャイン牧場みたいなほのぼの田園ライフを描くのかな?と思わせておいて、実は光栄のSLG『水滸伝』に雰囲気が近いという作品です。ほのぼのどころか下手したら殺伐としてますw アイドルドラマなのに非常にみみっちい話が出て来くるのも珍しいですね。

『繁城之下』
テンセントのサスペンス枠で配信されている古装怪奇ミステリー。60分×12話という構成です。明代万暦年間を舞台として、地方の街の連続殺人事件が描かれます。最初の被害者は役所の捕頭。その部下だった曲三更が捜査を行うことになりますが、被害者の同僚の易捕頭の圧迫に四苦八苦したり、被害者である上司の隠し財産の存在を知ってしまったりして捜査は難航。そして第二、第三の殺人が発生しますが、事件の被害者が20年前に陸家で発生した火災事件に関係していことが判明し…… 

という展開で、万暦37年の曲三更たちの話と万暦17年の陸家の話がともに展開していきます。映像に最近の作品には珍しい独特の味わいがあります。アイドル俳優が出ているわけではないですが、日本でも是非放映・配信してほしい作品です。
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2023年10月に読んだ本

2023年11月01日 | 読書メーター
インド―グローバル・サウスの超大国 (中公新書 2770)インド―グローバル・サウスの超大国 (中公新書 2770)感想
インドの国政、地方政治、産業と経済、財閥、人口問題、カーストや宗教とも関係する貧困や格差の問題、環境問題、外交、日本との関係等々、思いつく限りの話題が取り上げられている。足りない部分といえば、近年注目されている映画など文化面ぐらいか。地方で地域政党が強いことや、ロシアとの歴史的な結びつき、ITなど中国と比較する形での産業の特徴と限界については勉強になった。
読了日:10月03日 著者:近藤 正規

トランスジェンダー入門 (集英社新書)トランスジェンダー入門 (集英社新書)感想
学校、就職など、人生の様々な場面トランスジェンダーの置かれた現状、医療や貧困など、彼ら/彼女たちの抱える困難、法的な扱いとその問題点、フェミニズムや男性学との関わりなど、トランスジェンダーに関する基礎知識を一通り得られるようになっている。本書を読んで、「心の性と身体の性が一致しない人」というよく使われる説明など、その定義からして問題があったことを知った。性的マイノリティに限らず、日本ではマイノリティ集団への差別を禁止する法律が存在しないというのには唖然としてしまったが……
読了日:10月08日 著者:周司 あきら,高井 ゆと里

体育がきらい (ちくまプリマー新書 437)体育がきらい (ちくまプリマー新書 437)感想
体育ぎらいの理由と背景を様々な角度から考察。体育の授業の淵源と歴史、運動部との関わりの話は面白い。結論としては「体育の授業はきらいになっても、自分のからだはきらいにならないでください」といったところだろうか。しかし体育ぎらいのかなりの部分は実のところ、学校、あるいは学校の授業がきらいというのと通底するのではないかと感じた。
読了日:10月10日 著者:坂本 拓弥

王朝貴族と外交: 国際社会のなかの平安日本 (567) (歴史文化ライブラリー 567)王朝貴族と外交: 国際社会のなかの平安日本 (567) (歴史文化ライブラリー 567)感想
894年から蒙古襲来までの王朝を中心とする外交を概観。半島諸国との外交が神功皇后による三韓征伐伝説を基調としたこと、白村江の戦い以後、対外的な武力を持たなくなった朝廷が「積極的孤立主義」を志向したことなど、注目すべき論点が多い。清盛の日宋貿易についても従来とは異なる評価が提示されている。そして蒙古襲来に際して日本がなぜあのような対応を取ったのかも、外交についての歴史的な展開を辿ると「さもありなん」と思えてくる。対外的な武力を持たなくなった政権の外交という点に着目すると、現代でも学びがありそうである。
読了日:10月12日 著者:渡邊 誠

昭和ブギウギ: 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲 (NHK出版新書 703)昭和ブギウギ: 笠置シヅ子と服部良一のリズム音曲 (NHK出版新書 703)感想
思ったよりガッツリと音楽論が続き、2人の生涯の詳細については控えめ。「男装の麗人」が宝塚ではなく松竹から生まれていること、お笑い芸人、特に吉本興業の動きとの関係、戦時中の軽音楽と戦後の歌謡との連続性、笠置シヅ子が夜の街の女性たちのアイドルだったことなどが読みどころか。私の現住地に関わる記述があったのも個人的なツボ。
読了日:10月15日 著者:輪島 裕介

龍の世界 (講談社学術文庫)龍の世界 (講談社学術文庫)感想
龍の起源や殷周青銅器など古代の美術における龍の造型、西洋のドラゴンなどとの比較が話の中心かと思いきや、それらに加えて「登竜門」「逆鱗」など関係の故事や民話伝説、甲骨文で知られる龍骨、龍門など「龍」のつく地名とその地形といった具合に、龍にちょっとでも関係する話題を盛り込んだ本となっている。本書初刊時のタイトルである『龍の百科』が本書の内容を最も的確に示している。ただ、本書で挙げられている甲骨文字の「龍」に「龍」字でないものも混ざっているなど、所々アラが見られるのが残念。
読了日:10月17日 著者:池上 正治

戦争と人類 (ハヤカワ新書)戦争と人類 (ハヤカワ新書)感想
有史以前から21世紀まで戦争の歴史を、軍事学的視点のみならず広い視野から概観しているが、読みどころとなるのは近世以後の部分から。近世の西欧において、三十年戦争、七年戦争など既に世界大戦と言えるものが登場していたということ、中東で大規模な戦争が起こらないという構図(これは最近のガザでの紛争で理論の当否が試されそうである)、農村ゲリラは自国民に支持された政府には通用しないというセオリーを打破した毛沢東等々、個別の項目の解説に注目すべき指摘が多い。
読了日:10月20日 著者:グウィン・ダイヤー,Gwynne Dyer

亀甲獣骨 蒼天有眼 雲ぞ見ゆ亀甲獣骨 蒼天有眼 雲ぞ見ゆ感想
甲骨文発見の物語かと見せかけて、タイムスリップ物にして西泠印社創設の物語だった。(丁仁も実際に甲骨文に興味を持っていたようだが)全体の半ばで「秘術」という言葉が出た時にはジャンルが変わったのかと思ってしまったが、伝奇小説ではなくギリギリ歴史小説の範囲内で軟着陸した感じ。中国史物は初めてのせいか、所々アラが見えるのは残念だが。
読了日:10月22日 著者:山本 一力

世界史の中の戦国大名 (講談社現代新書)世界史の中の戦国大名 (講談社現代新書)感想
大友義鎮をはじめとする西国大名による中国などとの外交や貿易をグローバル・ヒストリーの観点から位置づけ直す試み。西国大名が「地域国家」として二国間外交を進めてきたのを、家康による統一政権が外交の一元化を図ったという見取り図を提示する。その間の秀吉政権は冊封体制による伝統的・中華的な外交思想から抜け出せなかったと評価している。従来の陸域中心、あるいは「暴力」で語られる戦国時代観とは違う視点を提示しようという試みは評価できるが、それを思想的に幕末の外交までつなげようとするのはどうだろう?
読了日:10月28日 著者:鹿毛 敏夫

神武天皇伝承の古代史 (志学社選書 009)神武天皇伝承の古代史 (志学社選書 009)感想
神武伝承に関係する氏族の動向を中心に、伝承の形成時期や背景を探る連作論文集。伝承の形成時期を4世紀・5世紀の交と見積もり、神武天皇との婚姻など、ヤマト王権と隼人系集団との結びつきが窺える点を重視する。また、八咫烏伝承から、前著『雄略天皇の古代史』でも扱われていた賀茂氏の動向や、渡来系の神と位置づけるアヂスキタカヒコネ神の信仰との関係も議論している。門外漢には少し理解が難しい所もあったが、次回作も既に用意しているということで楽しみである。

読了日:10月30日 著者:平林章仁

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