博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『武媚娘伝奇』その13 ラスボス誕生

2015年08月27日 | 中国歴史ドラマ
『武媚娘伝奇』第71~76話まで見ました。

長孫無忌は、実の甥の高宗が呉王とともに自分の排除を謀っていると知って絶望し、自ら引退を申し出ます。


太宗の腹心にして亡き皇后の兄、関隴門閥の領袖として、これまで媚娘や高宗の前に立ちふさがってきた長孫無忌。

高陽公主は、愛人弁機和尚を死に追いやった彼をすんなり引退させてたまるかとばかりに、呉王と夫の房遺愛を嗾けて長孫無忌打倒の兵を挙げさせます。しかし呉王の兵は高宗側に着いた李勣によりあっさり鎮圧。呉王と房遺愛は謀反人として挙兵のすべての責任を押っつけられて処刑されてしまいます。

首謀者高陽公主は高宗の思し召しで死罪を免れますが、彼女の陰謀で最初の子を流産し、安定公主を殺された媚娘がそれを座視するはずもなく、高陽公主は密かに縊死させられることに。この時に、公主「私は皇帝になりたかったのよ!!」 媚娘「皇帝だからって何でも思うままにできるわけではないし、女は皇帝になれないのよ!!」 というやりとりがなされているのですが、媚娘に「女は皇帝になれない」なんて言わせて、このドラマの制作者はこの後の展開をどうするつもりなんでしょうか……

そしてその間に王皇后と蕭淑妃がさっくり毒殺され、遂に媚娘が皇后に。


皇后の冊封の式典で向かい合う二人。何か皇后冊封が人生のクライマックスみたいな扱いになっているんですが、媚娘の人生これで上がりじゃないはずですよね?(困惑)

媚娘は持病の頭痛がますます激しくなる夫を気遣い、高宗にかわって政務を執ろうとしますが、そこに立ちはだかる関隴門閥の壁。また、成長した太子李忠は、生母と義母王皇后の仇が媚娘であると信じ、蕭淑妃が死ぬ直前に「来世では猫に生まれ変わり、鼠に生まれ変わったお前を食い殺してやる」と捨て台詞を吐いたのを踏まえ、夜な夜な媚娘の寝室に黒猫を放ったりと、チマい嫌がらせを繰り返しております。

で、黒猫の一件が李忠のしわざと察知した媚娘が、西域諸国の使者を迎えた酒宴の場で迷い込んだ(というかわざと迷い込ませた)黒猫を抱いて見せ、「そんなもん怖がるわけねーよ!」とアピールしたりしております。その酒宴の場で、媚娘排除のため、父皇の酒杯に毒を混入させたことを媚娘に咎められ、李忠は太子から梁王に降格。かわって媚娘の実施代王李弘が太子となります。

高宗と媚娘は関隴門閥の地位の引き下げと、許敬宗・李義府ら寒門の士の地位向上をはかり、『姓氏録』の編纂を進めます。危機感を抱いた関隴門閥の面々は廃太子李忠をもり立て、泰山での封禅の儀式に媚娘を出席させ、暗殺しようと企てますが、事前に密告が寄せられ、しかも暗殺者の弩に細工が施されており、暗殺は失敗。


封禅の儀式の場で余裕綽々と暗殺者の矢を受け止める媚娘。この場面で媚娘は、往時の小林幸子を思わせる孔雀の羽根みたいな、まさにラスボスとしか言いようのない衣装を身につけております。

その後、暗殺の首謀者が引退した長孫無忌であることが発覚しますが、媚娘との対面で、唐王朝と皇帝を支える立場のはずの関隴門閥の面々が、いつの間にか自分たちの立場や利権を守ることを第一として高宗の政治を阻害する存在になっていたこと、そして廃太子李忠が高宗の毒殺も辞さなかったことに絶望し、敢えて彼らの暗殺計画の首謀者となって、かつその計画を失敗させることにより、彼らを破滅に追い込もうとしたのだと心情を告白。媚娘は長孫無忌の意図を汲み、敢えて実情を高宗には明かさず、長孫無忌ら関隴門閥に厳しい処分が下るようにします。

ということで、次回完結です。長孫無忌にその手腕を認めさせたことで、媚娘は衣装だけではなくポジション的にもラスボスと言っていい立場にたったわけですが、このドラマは則天武后が小娘からラスボスに成り上がる物語だったということなのでしょうか……
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『武媚娘伝奇』その12

2015年08月20日 | 中国歴史ドラマ
『武媚娘伝奇』第65~70話まで見ました。

呉王との密会の件から、媚娘に不信感をぶつける高宗。しかしその場で媚娘が昏倒してしまい、太医の診察により懐妊が発覚。そして一年が過ぎ、媚娘は代王李弘を出産。この頃から高宗の持病の頭痛が次第に悪化しています。この頭痛は彼の皇子時代に、媚娘の入れ知恵で大雨の中を押して兄の李承乾の助命嘆願した時以来生じたものなのですが……

さて、高宗は長孫無忌牽制と媚娘の宸妃冊立のために連携を取ろうと呉王府を訪れますが、そこで何を思ったのか、呉王の侍女青玄が高宗毒殺を図り、それが失敗すると刺殺を図ります。身を以て高宗を庇ったことで呉王の嫌疑はすぐに晴れましたが、青玄は高宗の侍衛によってその場で殺害。これで呉王府は女っ気ほぼゼロに……


呉王李恪を演じるのは、張紀中版『笑傲江湖』の林平之役が印象的だった李解。『笑傲江湖』の時と比べて顔つきがゴツくなった感じが……

一方で王皇后への忌避感が強まり、褚遂良ら群臣の反対を退け、廃后の意志を固める高宗。媚娘は媚娘で、王皇后とその背後にいる長孫無忌を排斥するため、新たな貴族のランキングを定めた『氏族志』と、後宮の妃嬪の心構えを説いた『内訓』の編纂を進めます。そんな中、媚娘が二人目の子の安定公主を出産。

日に日に廃后への危機感を募らせていく王皇后は、かつての仇敵蕭淑妃とも連携するようになり、彼女の薦める腕利き道士明崇儼を近づけ、媚娘への厭勝を図ります。厭勝というのは、呪いの藁人形に五寸釘を打つ的なアレです。(本作のような中国の宮廷物だとそこまで派手なことをせず、針を刺す程度のものですが……)で、王皇后が藁人形を前に夜な夜な呪文を唱えているタイミングで、高宗に添い寝していた媚娘が昏倒。厭勝って本当に効果あるんですね……と思ってたら、昏倒も道士の明崇儼も媚娘の仕込みでした。

早速王皇后の宮殿に捜索の手が入りますが、証拠品の藁人形を密かに蕭淑妃の宮殿周辺に投棄させていたお陰で、蕭淑妃が下手人として掖庭送りに。王皇后はこれでまずは一安心と油断していたところ、何者かに媚娘の宮殿へとおびき出されて赤子の安定公主と二人きりにさせられ、罠と察して宮殿を立ち去った後で安定公主が急死。最後に彼女に接した王皇后が下手人として捕らえられ、廃后処分の後にやはり掖庭送りに。

媚娘が自ら王皇后を陥れるために密かに我が子を殺したエピソードとして知られていますが、このドラマでは殺害したのは媚娘ではなく高陽公主という設定。そして状況証拠から媚娘は安定公主殺害のみならず、最初の子の流産の黒幕も高陽公主であることに気付いてしまったというあたりで次回へ。


本作後半部の媚娘の良き相談役という役回りだった高陽公主。地獄展開てんこ盛りになりがちな後宮物でも、「情同姐妹」という言葉がここまで空しく響くドラマは珍しいかもしれません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『武媚娘伝奇』その11

2015年08月12日 | 中国歴史ドラマ
『武媚娘伝奇』第59~64話まで見ました。

出産の日が近づく媚娘ですが、工作員を侍女として忍ばせての流産の陰謀が発覚。その侍女を排除してようやく一安心と、高陽公主の誕生祝いの席で祝杯として茶を飲んだところ、にわかに異変が生じてお腹の子を流産。やはりこのドラマでも妊娠は地獄展開の始まりということになるのですか……

流産によって宮廷に留める理由が無くなったと、媚娘を寺に戻すよう高宗に要請する長孫無忌。一方、高陽公主は流産によって媚娘が先帝の太妃という立場からフリーになったのだから、いっそ自分の側室として迎え入れてはどうかと高宗に提案。

一方、高陽公主は流産によって悲嘆に暮れる媚娘には、黒幕は王皇后であると思い込ませ、それとなく皇后への復讐心を煽ります。そして公主から媚娘が懐妊したら男であっても女であっても赤子を殺せという遺詔を太宗が残していたことを知らされた媚娘は、闇落ちして高宗の側室となることを決意。遂に主役が闇落ち\(^o^)/ 流産の黒幕は実のところ王皇后でも蕭淑妃でもないことが視聴者にはわかるようになっていますが、ここまでの展開を見てると真の黒幕は誰かもう何となくわかってきますよね……

で、高宗は長孫無忌ら群臣の反対を押し切り、媚娘を自らの昭儀として迎えることに。ここで呉王が太宗の太妃からその子高宗の昭儀へと転じた彼女を「あなたは父皇への愛情などどうでもよいのか」と詰りますが、すかさず「真情(本当の愛情)は一時のこと、権力は一世のこと」と切り返します。このドラマにもようやく『宮廷の諍い女』ばりの名台詞が出てきましたね。

媚娘に対抗するため、長孫無忌らは未だ子供のいない王皇后に、生母劉氏の身分が低い陳王李忠を継子として迎え入れ、太子の座に即かせるよう提案。宮中で母一人子一人で暮らしてきた李忠母子はそれに難色を示しますが、ならば王皇后一派は劉氏の毒殺を図るに違いないと読み、敢えて毒殺を行わせてそれを高宗に暴露し、王皇后を追い落とそうと画策。段々発想が黒くなってきた媚娘ですが、一瞬良心を取り戻し、やはり皇后の手が回る前に李忠母子を自分のもとで保護しようと思い立った所、タイミングが一瞬遅く、劉氏は毒を盛られて余命七日の状態に。正確には皇后が毒殺を命じたわけではなく、その配下の侍女たちの画策のようですが……

今まで高宗の側室としての身分が与えられなかったことで、皇后に含むところがある劉氏は、媚娘と相談のうえ敢えて服毒して皇后と李忠との対面式に臨みます。そして与えられた茶を飲んで毒死したところ、タイミングを見計らってやって来た媚娘と高宗がそれを目撃。たちまち皇后が劉氏の毒殺を図ったに違いないということになりますが、ここで李忠が、母親が服毒していたことをバラしてしまい、皇后の嫌疑が晴れます。そして皇后は目算通りに李忠を継子として引き取ることに。

一方、皇后一派の陰謀により媚娘が呉王と密会しているらしいという噂を耳にした高宗。実のところ不倫とかそういう話ではなく、媚娘が呉王を自派に取り込もうと接触しているだけなのですが…… ともかく夜な夜な媚娘の跡を付けてみたところ、承慶殿内で、かつて太宗とともに社交ダンスを踊ったことを思い出し(その1を参照)、呉王と踊ってる媚娘の姿を目撃してしまい…… 呉王の媚娘に対するぎこちない態度が何だか童貞臭いのですが、ここまで呉王の妻妾や子らしき人々は登場せず、常に身辺にいるのは亡き母親に仕えていた侍女の青玄のみ(それも煬帝の外孫にあたる呉王を隋朝復興の旗頭に仕立て上げようという目論みあり)という状態なので、そのあたりは(察し)というやつかもしれません……
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『武媚娘伝奇』その10

2015年08月04日 | 中国歴史ドラマ
『武媚娘伝奇』第53~58話まで見ました。

遂に太宗が崩御。その最後の思し召しにより、媚娘は長孫無忌による監禁状態から解放されて宮廷を出、感業寺で出家することに。その前に媚娘は監禁状態の徐慧と最後の対面を果たしております。しれっと仲直りを申し出る徐慧ですが、媚娘の方がそれを拒絶。絶望した徐慧はその夜のうちに自ら縊死してしまいます。



頭を剃って尼さんになった媚娘あらため明空。その頃、房遺愛との結婚前からの恋人だった弁機和尚を処刑されてしまった高陽公主は、処刑を推進した長孫無忌への復讐を誓って夜な夜な一人復讐を誓っておりました。徐慧が退場して闇落ちキャラがいなくなったと思ったら、また新たな闇落ちキャラが……

で、長孫無忌と対抗するため、媚娘を還俗させて宮廷に呼び戻そうとする高陽公主ですが、寺で対面した際、彼女が妊娠していることを知ってしまいます。 高陽公主「まあ、亡きお父様の子を懐妊したのね!」 媚娘の心の声(誰にも知られてはいけない。お腹の子の父親が雉奴(=高宗)であることを…) ウソやん!そんな場面無かったやん(´Д`;) 媚娘が房遺愛に嫁ぐ高陽公主の侍女として宮廷を離れた後、一度太宗と再会して一夜を過ごしたらしい場面があったので、太宗の子と言われた方がまだ納得できるのですが……

そして媚娘を呼び戻そうとする動きは、未だに彼女に未練ありありの高宗や、高宗の寵姫となった蕭淑妃と対抗するために、媚娘の力を利用しようとする王皇后の思惑とも一致。高宗はまた、宮廷で絶大な力を握る長孫無忌ら関隴世族と対抗するため、長孫無忌の画策により左遷同様に安州に派遣されていた異母兄呉王李恪も宮廷に呼び戻そうとしていたのでした。

高宗は亡母文徳皇后の法事で感業寺に出向いた際に、父皇の子を懐妊した媚娘を保護するためということで、太妃として彼女を連れ帰ろうとしますが、そこを隋朝の残党が襲撃。都へと向かっていた呉王の救援により危機を脱し、三人して宮廷に戻ります。ようやく味方を得た高宗は強気になり、関隴世族と対立する寒門出身の李義府らを重用し、長孫無忌の盟友褚遂良の汚職を告発させて排除に成功。更にやはり左遷同様に地方に派遣されていた軍の重鎮李勣を呼び戻します。

一方、媚娘は蕭淑妃の子李素節にいじめられていた高宗の庶長子李忠を助けたことで、早速蕭淑妃に目の敵とされてしまいますが…… 太妃となった媚娘はネクスト・ジェネレーションの王皇后や蕭淑妃によって、ありし日の徐慧をも打ち倒したレジェンドみたいな扱いになっとりますな (^_^;)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2015年7月に読んだ本

2015年08月02日 | 読書メーター
文明の誕生 - メソポタミア、ローマ、そして日本へ (中公新書)文明の誕生 - メソポタミア、ローマ、そして日本へ (中公新書)感想
メソポタミアを出発点に古代ギリシア・ローマ、中国・日本に至るまで、都市・職業・身分・暦・交通網などテーマ別に発展の跡を追っていこうという趣旨なのだが、各地域間の話があんまり有機的につながってないなという気が……
読了日:7月1日 著者:小林登志子
風と共に去りぬ 第5巻 (新潮文庫)風と共に去りぬ 第5巻 (新潮文庫)感想
「金ぴか時代」の先頭を突っ走っていたはずのスカーレットだが、彼女にも破局が…… 結局最後までスカーレットにはいまいち共感できなかったが、身勝手な部分も含めて心理描写は却ってリアルに感じた。ラストの台詞も彼女ならではのものだろう。レット・バトラーがボニーの誕生後豹変したのには何となく納得。
読了日:7月5日 著者:マーガレットミッチェル
吉田松陰とその家族-兄を信じた妹たち (中公新書)吉田松陰とその家族-兄を信じた妹たち (中公新書)感想
大河ドラマの副読本として、特に「その家族」の部分を知りたくて読んでみたのですが、松陰自身の伝記がメインとなっています。松陰死後の家族の話は全9章中の最後の2章で触れるのみとなっています。その中で叔父の玉木文之進のもとに一時期乃木希典が居候しており、その縁で乃木の弟真人が玉木家の養子となる話が紹介されていますが、このあたりは大河でもちゃんと取り上げてくれるのでしょうか。
読了日:7月6日 著者:一坂太郎
ハンコの文化史: 古代ギリシャから現代日本まで (読みなおす日本史)ハンコの文化史: 古代ギリシャから現代日本まで (読みなおす日本史)感想
オリエント・西欧・中国・日本と世界各地のハンコ文化について総覧しているが、中国のハンコが鉄器・金属貨幣の使用とともにオリエントから伝来したとしている点が注目される。本書で紹介されている殷鉨については、近年近年考古発掘による出土例が紹介されていたと思うが。
読了日:7月10日 著者:新関欽哉
日本占領史1945-1952 - 東京・ワシントン・沖縄 (中公新書)日本占領史1945-1952 - 東京・ワシントン・沖縄 (中公新書)感想
GHQの最高司令官がマッカーサーでなかったら、占領政策の方向性、憲法改正(日本国憲法制定)、講和への道のりなどがまったく違ったものになったのではないか。本書の冒頭で紹介されている、マッカーサーがフランクリン・ローズヴェルト大統領と会見し、「これまでの生涯で私に向かって彼のような口調で喋るやつは見たことがない」と言わしめたエピソードが印象的である。
読了日:7月13日 著者:福永文夫
昭和史講義: 最新研究で見る戦争への道 (ちくま新書)昭和史講義: 最新研究で見る戦争への道 (ちくま新書)感想
幣原外交から終戦後の占領まで、複数の執筆者による概説書。各事項の基本的理解や背景、関連するトピックについて、詳しく知りたかったポイントを押さえていると感じた。参考文献の紹介も丁寧にされているので、今後も折に触れて参照したい良書。
読了日:7月15日 著者:
天皇の料理番 (上) (集英社文庫)天皇の料理番 (上) (集英社文庫)感想
今回放映されたドラマ版と比較すると、主役の篤蔵はドラマ版の方がクズ度が上がっているなという印象。こちらの原作の方は父親の方も最初から篤蔵に理解を示しているし、篤蔵の性格も要領の良さや抜け目無さが目立ち、若い頃の秀吉に似ているという感じ。
読了日:7月19日 著者:杉森久英
漢字から読み解く中国の歴史と文化漢字から読み解く中国の歴史と文化感想
漢字の字源を取っ掛かりに中国古代の文化や生活について見ていこうという趣旨だが、取り上げる漢字の字形が『説文解字』までしか遡らないものがちょこちょことあったりと、立ち位置が中途半端なのが気になった。古文字の字形をメインに古代の文化・生活について見るなら許進雄の『中国古代社会』、考古学の発掘の成果を中心に見ていくなら孫機の『漢代物質文化資料図説』を翻訳した方が良かったのではないか。
読了日:7月21日 著者:王貴元
天皇の料理番 (下) (集英社文庫)天皇の料理番 (下) (集英社文庫)感想
ドラマでは触れられていないトピックで面白かったのは、篤蔵と味の素との意外な関わり、篤蔵の競馬好き、エビの絵を得意としたところなど。今回のドラマ版は特に終盤でそういう個別のトピックをうまく取り入れていた。
読了日:7月21日 著者:杉森久英
中国近世史 (岩波文庫)中国近世史 (岩波文庫)感想
唐末五代から元代までの通史。講義録という性質上からか、「シナの官吏は傭人根性で、人民の利益を考えないものが多いためであって、いかなる良法も役に立たない」とか、「シナの文化の中心になる読書人の階級からは、元の政治は不便であったが、程度の低い一般人民には手ごろであったかもしれない」といったシニカルなコメントが目立つ。宋元の頃であれば日本人の「民度」も大差なかったと思うが。
読了日:7月25日 著者:内藤湖南
李自成―駅卒から紫禁城の主へ (世界史リブレット人)李自成―駅卒から紫禁城の主へ (世界史リブレット人)感想
李自成集団の成立から滅亡まで、その背景を含めてかっちりとまとめている。明を興した朱元璋との対比も面白い。李岩や陳円円については史実から離れた伝承の部分ももう少し言及してくれてもよいと思ったが、リブレットの紙幅にそこまで求めるのは酷か。
読了日:7月27日 著者:佐藤文俊
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする