博客 金烏工房

中国史に関する書籍・映画・テレビ番組の感想などをつれづれに語るブログです。

『碧血剣』その3

2007年01月31日 | 武侠ドラマ
『碧血剣』第7~15話まで見ました。

丁度物語の折り返し地点ですが、袁承志が泰山大会で七省の盟主に選ばれ、元の旦那で錦衣衛のリーダーとなった安剣清に攫われた安大娘を助け出すあたりまでのエピソードを扱っています。袁承志と阿九との絡みが増えたり、ラスボスである玉真子が早い段階で登場して袁承志と拳を交えたりと、だいぶ細かいアレンジがなされてますね。

孫菲菲演じる阿九は気品と愛嬌を兼ね備えていて実に良いです。正直、黄聖依演じる青青より好みです(^^;) ただ、彼女の武功は武術というより新体操のようですが……  安剣清も原作では単なる悪役の一人で、日本語訳では登場人物一覧に名前も出て来ない程度のキャラなんですが、ドラマ版では出番が大幅に増えているうえに武功が強く、ムダに哀愁の漂う格好いいキャラになってますなあ。

で、第15話のラストでは乱戦の中、安剣清によって早々と阿九の正体が袁承志らにバラされてしまうのですが、これは原作通り袁承志が宮殿に潜り込んだ際にお姫様姿の阿九を見て、初めて正体を悟るという展開にした方が良かったと思うのですが……
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『興亡の世界史01 アレクサンドロスの征服と神話』

2007年01月29日 | 世界史書籍
森谷公俊『興亡の世界史01 アレクサンドロスの征服と神話』(講談社、2007年1月)

今巻はまさに『興亡の世界史』と称するにふさわしい内容になっております。アレクサンドロス大王の生涯を中心に記述が進められていますが、以下のようにちょこちょこと面白い指摘がありました。

○ペルシア打倒とアジア征服、王の神格化などはアレクサンドロス大王に先駆けて父のフィリッポス2世が既に構想していた。

○アレクサンドロスは祖先とされるヘラクレスとアキレウスを崇拝しており、自分も彼らのような「英雄」になろうとした。

○ガンダーラ美術の出現はアレクサンドロス大王の東征と関連づけて説明されることが多いが、仏像の出現は1世紀後半で、これはギリシア人がガンダーラ地方を支配していた時期より後になる。またガンダーラ仏教美術にはギリシア美術に加え、イランとローマ美術の様式と技法が見られる。

○ヘレニズム文化の担い手はギリシア文化を継承したローマ人だった。

○各地に建設されたアレクサンドリアには大王の政治に不満を持つギリシア兵が多く入植させられ、不穏分子を隔離するための都市という側面が強い。アレクサンドリアの建設が東西融合制作の象徴という見方は的外れである。

○マケドニア人とペルシア人との集団結婚は、マケドニア人の男性とペルシア人の女性の組み合わせしかなく、民族融合政策と呼べるようなものではなかった。大王の側近たちの結婚については、戦利品として花嫁を分配したものにすぎず、しかもそのカップルの大半は後に離婚した。兵士たちの結婚についても、そのほとんどはいわゆる現地妻を後から承認したものにすぎない。

このように本書はアレクサンドロス大王の事績に対してかなり厳しい評価を下しています。

個人的には著者がオリバー・ストーン監督の映画『アレクサンダー』を高く評価しているのが意外でした。アレクサンドロスの東征の負の側面をちゃんと描いているというのがポイントのようですが、私はアレクサンドロスと親友ヘファイスティオンの熱い友情、というか愛情しか印象に残っていません(^^;)

もっとも本書によるとアレクサンドロスとヘファイスティオンが同性愛の関係を持っていたのは事実で、更には当時は男性同士が友情を通り越して同性愛の関係に至るのは普通のことだったということなので、その方面でも割とよく描けていた映画と評価すべきなのかもしれません……
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『大漢風』第16~17話

2007年01月28日 | ドラマ『大漢風』
今まで虞姫への愛に溺れたり、叔父の死から立ち直れずに酒びたりになったりとだめんずな描写が多かった項羽ですが、先週の鉅鹿の戦いではようやく軍神としての本領を発揮し始めます。

そして今週の第17話では、「馬鹿」のエピソード、いよいよキタ━━━(゜∀゜)━━━ !!!
しかしこのドラマでは二世皇帝も趙高に合わせて敢えて鹿を馬と言い張り、臣下の忠誠心を試すという話にアレンジされているのが残念です。折角アホ顔の俳優さんを起用しているというのに、そんな小狡い胡亥なんて見たくないよ!
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『包青天之一 狸猫換太子』

2007年01月27日 | 中国古典小説ドラマ
実は『少年楊家将』を見終わってから『碧血剣』のDVDが届くまで何となく手持ちぶさたで、年末に上海新天地で買った『包青天之一』を見始めたのですが、あまりの面白さに『碧血剣』が届いても見るのがやめられず、結局一区切りつくまでと『碧血剣』と平行して見てました(^^;)

『包青天之一』には「狸猫換太子」「双釘記」「紅花記」「九道本」の4つのエピソードが収録されていますが、今回鑑賞したのは「狸猫換太子」全7話です。

李妃と劉妃はともに宋・真宗の妃であったが、劉妃は李妃の方が先に太子となる皇子を出産したのが気に食わず、側近の宦官・郭槐に命じて皇子と狸の死体(タイトルにある「狸猫」とはヤマネコの意ですが、ドラマでは狸のように見えましたので、狸ということにしておきます。)を取り替えさせ、李妃が妖怪を産み落としたと真宗に信じさせ、李妃を陥れる。郭槐は更に李妃を亡き者にしようとするが、彼女は密かに難を逃れた。一方、李妃が産んだ皇子も宦官の陳林によって密かに救い出され、皇族の八賢王に預けられて、更に後には真宗の後を継いで仁宗皇帝となった。

李妃が民間に逃れてから二十年。彼女は開封府尹の包拯が清廉潔白で頼りがいのある人物であると知り、「狸猫換太子」の一件を訴え出ようとするが、彼女の義理の娘である梅娘が八賢王の伯父で女好きの趙国棟に攫われ、彼女自身も相国寺で鉢合わせた劉妃・郭槐に捕らえられてしまう……

このエピソードでは本来仁宗の養父である八賢王と仁宗お付きの宦官・陳林が善玉として包拯をサポートし、劉妃と郭槐が悪玉になるはずなのですが、包拯が八賢王の伯父である趙国棟を婦女誘拐・暴行の罪で処刑してしまったことから八賢王と陳林の怨みを買い、彼らの根回しによって開封府尹の地位を追われ、逆に包拯と郭槐が同郷人で昔からの知り合いであることから、郭槐が仁宗に包拯の復職を嘆願するといった具合に、ちょいと話に捻りが加えられています。開封府尹を免職になる時に包拯が今までの事件を回想するシーンがあるのですが、彼が思い出すのが尽く押し切り刀で悪人を処刑する場面なのが何とも微笑ましいです(^^;)

郭槐は粘りに粘って仁宗から包拯復職の勅命を得ることに成功しますが、李妃が南侠の展昭によって助け出され、包拯のもとに匿われていることを知ると、復職の勅命を無かったことにして彼を免職に追い込もうとします。ここから包拯がどう劣勢を挽回していくかは本編を見てのお楽しみです。なお、このエピソードでは錦毛鼠の白玉堂も梅娘の従兄弟という設定で登場しますが、展昭に食ってかかってうっかり悪人を逃してしまったり、梅娘の気を惹こうと目を離した隙に李妃が攫われたりと、まるで良い所がありません(^^;)
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『碧血剣』その2

2007年01月24日 | 武侠ドラマ
『碧血剣』第3~6話まで見ました。

このパートは石樑温家編ですね。袁承志と石樑五祖との対決や、温家と金蛇郎君との因縁が語られます。金蛇郎君は焦恩俊という俳優さんが演じていますが、これが実にカッコいい演技と見応えあるアクションを披露してくれます。個人的には金蛇郎君のイメージにピッタリです。ただ、戦闘モードに入った時に蛇のようなマスクに覆われたり目が光ったりするという演出は余計だったんじゃないかという気が(^^;)

温青(夏青青)の母親である温儀は、『射英雄伝』で包惜弱(楊康の母)役をしていた女優さんが演じているのですが、金蛇郎君と出会った少女時代も同じ女優さんが演じるのはさすがにムリがありすぎです(^^;) 『射英雄伝』でも新婚当初と中年になってからの両方を演じていましたが、若い頃も年を取ってからも大人しい性格だった前回と比べて、今回は若い頃は少女らしくお転婆なキャラクターになっているので、余計にムリが目立つのかもしれません。彼女の他にもどこかで見たような顔がチョコチョコと目に付きますね。
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『ゲド戦記5 アースシーの風』

2007年01月22日 | 小説
ル・グウィン著、清水真砂子訳『ゲド戦記5 アースシーの風』

故郷で隠居生活を送るゲドのもとにハンノキという男がやって来た。彼は愛妻が死んでから、毎晩生者と死者の世界の境目に魂が送られて大勢の死者に取り囲まれる悪夢を見るようになり、それを何とか直してもらいたいのだと言う。それと入れ替わりにテナーとテハヌーはレンバンネン王に呼ばれてハブナーへと向かっていた。西方で龍が暴れ回っているという報告が相次ぎ、その対処を彼女たちに相談したいのだという……

というわけでシリーズ完結編です。第4巻・別巻とはまたガラリと雰囲気が変わっており、ジェンダー論的な主張はだいぶ抑えめになってます(^^;) 今巻ではゲドは完全に脇役となり、テナーやテルー、レバンネン、あるいは初登場となるハンノキがメインキャラクターとして活躍します。また、第3巻のクモのような明確な悪役は存在しません。

このアースシー世界では、ゲド達魔法使いは物や生き物の真の名を知ることによってそれらを自由に操る力を得るということになっているのですが、この巻では人間がこのようなやり方で魔法を使うのが本当に良いことなのか、また民族によって魔法に対する接し方や宗教信仰が異なれば、死んだ後の魂の行き先も異なるのではないかといった、アースシー世界の根幹に関わる問題が提示されます。何というか、第1巻から何十年もかけてエラいところまで話が来たなあという感じです……
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故宮のスタバ

2007年01月19日 | ニュース
以前「北京旅行記 その3」の中で、北京の故宮博物院で営業しているスターバックスを紹介しましたが、今朝の『朝日新聞』によると中国でこのスタバ故宮店の撤去を求める声が強まっているとのこと。『朝日』のサイトでは該当記事がアップされていないので、『読売』の記事の方をリンクしておきます。

「『故宮にスタバ』場違いですか?…中国で論議」
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070118i316.htm

中央電視台のアナウンサーである芮成鋼氏が自身のブログで1月12日に故宮のスタバ撤去論を主張したことから、それに賛同する意見が続出し、論争になっているとのことです。

その芮氏のブログはこちら↓です。
http://blog.cctv.com/ruichenggang
1/12以降も関連するエントリがアップされてますね。

『朝日』の記事では「昔の皇帝もコーヒーを飲んだのか」と観光客に聞かれて中国人ガイドが困惑しているなんて話も紹介されてます。革命以後の溥儀なんかはコーヒーを飲んでいてもおかしくないんじゃないかと思いますが(^^;) 

同じく『朝日』によると、故宮側は半年以内にスタバを残すかどうか決めるということですが、CNNニュースによると、これはこの論争が直接のきっかけというわけでもなく、そもそも故宮全体の改修に伴い、他の売店も含めて撤去するかどうかが検討されていたみたいですね。

日本で言えば法隆寺とか京都御所の建物を利用してマクドナルドが開店するといった感じになるでしょうか。しかし本当に開店したところで、それほど物議を醸すこともないような気がしますが(^^;) 取り敢えず論争の行方を見守っていたいと思います。

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『碧血剣』その1

2007年01月19日 | 武侠ドラマ
昨日ようやく『碧血剣』のDVDが届きまして、取り敢えず第2話まで見ました。

アクションシーンはCGを控え目にしてワイヤーワークを強調したものとなっており、『天龍八部』や『神雕侠侶』と比べるとかなり見応えのあるものに仕上がってます。シナリオ面では『神雕侠侶』と同じく主人公の少年時代がバッサリ削られていたり、そのくせブルネイ出身の書生・張朝唐や錦衣衛のボス・安剣清なんかはきっちり登場したりしますが、そんなことが気にならなくなるぐらいにアクションの出来がいいですね。

俳優さんではヒロインの温青(夏青青)を『カンフー・ハッスル』の黄聖依が、李自成の軍師・李岩を『神雕侠侶』の甄志丙役の人が演じているのが注目されます。崔希敏も『神雕』の鹿清篤役の人ではないかと思いますが、この人、またこんなグズなキャラをやらされているのね(^^;)
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『金印偽造事件』

2007年01月18日 | 日本史書籍
三浦佑之『金印偽造事件』(幻冬舎新書、2006年11月)

『口語訳古事記』の著者として知られる三浦氏が、江戸時代に志賀島で発見された「漢倭奴国王」の金印は偽造されたものであると主張する大胆な論著です。

本書では金印偽造の中心人物であったのは福岡藩の儒者で、発見直後に金印の鑑定書を書いた亀井南冥という人物であるとしています。当時福岡藩では朱子学を奉じる修猷館と古学を奉じる甘棠館の二つの藩校が開かれ、そのうちの甘棠館の学長に就任した南冥が甘棠館の開校を盛り上げ、また金印の研究によって自らの権威を高めるために『後漢書』の記述に基づいて偽造させたと言うのです。

当時は古印など中国の文物の収集や研究が盛んで、それらの偽物も作られていたことや、また志賀島での金印発見の経緯がどうも不審であるといった、発見当時の背景を丁寧に押さえています。金印が偽造されたと主張したのは三浦氏が初めてではなく、第二次大戦後に至るまで真贋論争がなされたということですが、中国で漢倭奴国王印と同じく蛇鈕をもつ滇王印が発見されてからは偽物説はほとんど主張されなくなります。しかし本書では同じ蛇鈕とは言っても漢倭奴国王印と滇王印のそれとは全く意匠が異なり、滇王印は漢倭奴国王金印が本物であることを示す証拠にはならないとします。

このように本書では発見時の背景や金印そのものの分析まで様々な方面から検討を加えて偽造説を補強しようとしていますが、こんな調子で微に入り細に入り突き詰めていけば、前近代に発見された文物はみんな偽造の疑いが出て来るんじゃないかなあという気がします(^^;)

私の専門であります殷周青銅器やその銘文なんてのは、前近代どころか現代に発見されたものでも盗掘されて香港の骨董市場に流れ、そこから企業や博物館に買い取られたために発見地や発見の経緯がわからないなんてケースがザラにありまして、本書のような調子であれも怪しい、これも怪しいと突っ込まれれば研究に使える資料が極端に少なくなってしまいます(^^;) (まあ、実際そうやって世に出た文物の中には偽物かと疑われているものもあるわけですが……)

また本書の中で、宮崎市定がかつて中村直勝から漢倭奴国王の金印が二つあるということを聞いたという話を紹介し、三浦氏がこれは一体どういうことなのかと訝っている箇所があります。実は私もオフ会で藤井有鄰館(三浦氏も中国の古印の調査のためにここを訪れたということですが)を見学している時にたまたま館長さんとお会いし、金印が偽物かもしれないという話と、金印が二つ存在するという話をお聞きしたのですが、その詳細は聞きそびれてしまいました。本書を読めばあるいはその詳細がわかるのではないかと期待したのですが、結局二つの金印の真相はわからないままとなりました……
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『東亜文史論叢』2006年特集号

2007年01月17日 | 中国学書籍
このほど東亜歴史文化研究会編『東亜文史論叢』2006年特集号という雑誌が発行されました。私もこの本に小論を寄稿しているのですが、中国学系専門書店で販売を委託する予定ということなので、そのうち店頭で見掛けたら手にとってみてくださいませ。

以下に掲載論文を挙げておきます。

・AISIN GIORO Hualiyasun : Jin Guangping and His Studies of Large and Small Scripts in Khitai and Jurchen Languages
・吉本道雅 : 春秋紀年考
・落合淳思 : 金文の賜与物と王権
・佐藤信弥 : 任鼎銘に関する二、三の問題
・山田崇仁 : 春秋三伝の先後関係について
・鷲尾祐子 : 日本における中国家族研究の基本概念について ──同居共財・家父長制──
・都興智 : 孤竹國略論
・愛新覺羅烏拉煕春、王禹浪 : 遼朝國號非「哈喇(遼契丹)」考
・愛新覺羅烏拉煕春 : 契丹小字金代『博州防御使墓誌銘』墓主非移剌斡里朶 ──兼論金朝初期無「女真國」國號──
・愛新覺羅烏拉煕春 : 初魯得氏族考
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